2018年6月22日 (金)

国会延長など

 石破 茂 です。

 国会は7月22日までの延長となりました。IR法案はなお国民の多数の理解を得るに至っておらず、参議院においてなお丁寧な説明が必要です。
 幹事長在任中、IR(統合リゾート)の視察にシンガポールに行った際、「カジノ自体が目的ではなく、そこで得られた収益で国際展示場や国際会議場の利用料を下げ、誘致を促進することが目的」と力説され、その収支計算が精緻であったことと、不正行為や常習者対策が徹底して行われていたことが極めて印象的でした。
 日本においてそれらの課題にどのように対応しているのか、それなりの対応は当然講じられているはずで、政府の更に誠実な説明が必要です。

 加計学園の理事長が会見されたことは一歩前進でしたが、その目的は会見すること自体ではなく、この問題に対する国民の疑問を払拭し、納得を得ることにあったはずで、大阪での震災翌日、わずか2時間前の通告、岡山の記者クラブ対象という手法は、本当にその目的を達成するために最善であったかどうか、もっと工夫の余地があったように思われて残念でなりません。本来国家戦略特区の閣議決定に明示された条件を満たしてさえいれば当然に認可されるべきものであり、策をあれこれ弄する必要など無かったはずです。

 米朝首脳会談から日が経過し、その構図が明らかになりつつあります。金正恩委員長にとって大切であったのは「核放棄のプロセスの間、米国は北朝鮮を攻撃しない」という「安全の保障」が、トランプ大統領は「朝鮮半島における米軍の駐留負担の軽減と北朝鮮の経済発展に対する米国の関与」が最も大事であったとすれば、両者の思惑は見事に一致していたように思われます。

 そもそも「体制の保証」などどの国にも出来ることではありません。ロシアから分離独立したウクライナの体制を、核を放棄することを条件に、米・露・英、後には仏、中も共に保証した「ブダペスト覚書」がプーチン大統領によって反故にされたことを金委員長は熟知していたはずですし、おそらく彼はトランプ大統領に、北朝鮮のカジノ開発に米国企業が参加出来るようにする、というようなことも囁いたのではないでしょうか。

 日本はこの後どのように対応すべきなのか。決して気を緩めることなく防衛力を着実かつ早急に整備することと併せて、日韓基本条約(1965年)、日朝平壌宣言(2002年)、ストックホルム合意(2014年)などを精緻に点検し、拉致問題も含めて国際法的な立場を今一度確認し、今後の交渉力を高めていかなくてはなりません。
 更に、将来的に朝鮮国連軍が解消された場合、英国をはじめとする米国以外の10か国が在日米軍基地の使用することを可能とする「朝鮮国連軍地位協定」はその根拠を失うのであり、これは我が国の安全保障に重大な影響を与えることにもなりえます。
 これらの問題の多くは政府が「憲法上行使不可能」とする集団的自衛権行使と密接に関わります。私自身は、何度も申し上げている通り、集団的自衛権行使の態様は憲法解釈から導き出されるものではなく、あくまで政策判断であり、行使の態様は安全保障基本法で制約し、我が国の外交・安全保障の選択の幅を広げることが論理必然であるとともに国益に適う、との立場ですが、今後この問題は我が国に重くのしかかってくるに違いありません。その場しのぎの対応は必ず将来に禍根を残すものと思い、なお努力を重ねてまいります。

 先週の早稲田大学大隈塾、今週の東京・新代田の学生さんのシェアハウス「アオイエ」での講演とそれに続くディスカッションはとても内容の濃いもので、こちらも多くの刺激を受けました。政治が真剣に語れば応えてくれる方の多いことにとても安堵しています。

 大阪の震災で犠牲になられた方、被災された方に哀悼の誠を捧げ、お見舞いを申し上げます。通学路に限らず、ブロック塀の点検と改修は急務です。

 今週末土曜日から来週月曜日午前にかけては、兵庫県・宮城県・岩手県内各地において講演会や懇談会に臨みます。
 梅雨の中休みのような今日の東京都心でした。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年6月15日 (金)

米朝首脳会談など

 石破 茂 です。
 
 米朝首脳会談は壮大な政治ショーではあったものの、現段階で評価するのは極めて難しい。対立から対話へと大きく舵が切られたこと自体は評価すべきですし、それが今回の最大の成果だったのですが、長い対話の道のりの始まりとも言うべきものでしょう。
 金正恩委員長は、南北首脳会談と中国訪問に続く華々しい外交デビュー第三幕を果たして世界中にその存在を見せつけ、体制の保証(保障・Guaranteeではなく)を取り付け、中国の要人専用機に乗ってシンガポール入りして中国が後ろ盾であることも誇示し、北朝鮮の非核化については「検証可能」という言葉が落ちたことが示すように何らの言質も与えないという、失うものの無い成果を手中にし、「偉大な委員長様に米国や世界が譲歩した」という国内基盤の強化も果たしたように思われます。
 対するトランプ大統領も、「今までのどの大統領もなしえなかったことを自分だからこそ実現することが出来た」とことさらに強調することで米国内向けに存在感を示すという成果を手にしたというべきでしょう。まさしくトランプファーストそのものです。
 我々が考えなくてはならないのは、今後日本ならびに北東アジアの安全保障はどのように変化し、その中にあって日本は何をなすべきかを徹底的に考え、施策を進めることです。

 米国一辺倒、米国頼みの外交から脱却すべきだとの見解も多く見られますが、外交と防衛は一体なのであって、米国を「唯一の同盟国」として防衛の多くを依存している以上、「米国頼み」にならざるを得ないのはむしろ当然というべきであり、選択の幅はもともと極めて狭いのです。
 だからこそ国連の中核概念である集団的自衛権の行使を憲法上は容認し、その行使の態様は法律によって制約されるとすることで政策的判断の幅を広げ、防衛力を強化し、拉致問題を含む国連における発言力を高めるべき(北方領土問題も問題解決の鍵はここにあるはずです)とここ20年近く訴えているのですが、どの立場からも全くと言っていいほどにこの声が上がらないことはどういうことなのか。
 反対派は「集団的自衛権は米国と共に世界中で戦争する道を開くもの」という固定的な観念から一歩も抜け出せず(この立場に立つ政党が本当にそう信じるなら、政権に就いたら国連の場で国連憲章にある集団的自衛権条項の撤廃を訴えると公約すべきです)、保守派はこの問題については沈黙を決め込み、議論が全く進まない日本をよそに、世界の情勢は急変しようとしています。

 今回の米朝共同声明は「朝鮮半島の平和体制が実現すれば非核化が実現する」との論理であり、「非核化が実現すれば朝鮮半島の平和が実現する」という従来の米国の論理とは真逆になっています。
 戦争の終結宣言から平和条約に至るまで北朝鮮は時間を稼ぐことが出来、その間に核・ミサイルの能力向上を図ることも可能となるのではないでしょうか。実験施設を破壊するなどのデモンストレーションは行うのでしょうが、既に実験が完了した実験施設を破壊しても実質的な意味はないでしょう。
 
 北朝鮮が主張する「朝鮮半島の非核化」とアメリカの主張する「北朝鮮の非核化」は全く異なり、この溝を埋めるのは容易ではありませんが、何よりも気がかりなのはトランプ大統領が会見で「米韓演習は挑発的であり、中止することで多額の経費を節約できる」と述べるとともに、将来的な朝鮮半島からの撤退の可能性にも言及したことです。それは在韓米軍のみならず、朝鮮国連軍の存在をも失わせるものであり、平和協定締結により日本と朝鮮国連軍との地位協定もその根拠が無くなります(米国のみならず、英、仏、豪など11か国が参加する朝鮮国連軍との地位協定により、諸国は日本の港や港湾を使っての活動が可能となっています)。
 そうなった場合、日本は新たな安全保障環境に今よりも格段に困難な状況の中で直面することになりますが、これをどう回避するのか、不幸にしてそうなった場合にどう対応するのか、今から考えておかなければなりません。

 北朝鮮の核放棄に私が懐疑的なのは、今回日本の報道ではほとんど触れられていませんが、1994年に米・露・英がウクライナの核の放棄と引き換えにその独立や主権を保証することを約束した「ブダペスト覚書」(後に中国とフランスも保証)を、ロシアがあっさりと踏みにじってクリミアを併合したという歴史的事実が、金委員長の念頭にあるに違いないと思うからです。
 クリミア併合の際、ロシアは独特の論理を展開してその正当性を主張しましたが、それは1968年、チェコスロバキアの首都プラハに旧ソ連の戦車部隊が侵攻して、民主主義の萌芽を武力で摘み取った時に展開した集団的自衛権援用の論理に酷似したもので、唖然とさせられたものです。
 プーチン大統領は大統領選挙の投票日をわざわざクリミア併合記念日に設定し、圧勝しました。同大統領やロシア人の領土に対する執念や力による外交の信奉は、経済的な利益を大きく超えた、日本人の想像を絶するものであるように思われます。

 外交でも内政でも、言葉の持つ重みや信頼性が急速に失われつつあるように思われます。ゲーム感覚が当たり前のように横行し、誰を、何を信じればよいのかわからなくなっている、今まで経験したことのない時代の到来を感じています。

 週末は、16日土曜日が旧三井銀行本町支店長 星野欣也氏の米寿を祝う会(午後1時・都内)、東京都中野区三田会総会・懇親会(午後5時・同)。
 17日日曜日は大阪府下各地での講演や懇談会、「ビートたけしのTV 日本の防衛はどうなるスペシャル」出演(午後9時・テレビ朝日系列・収録)という日程です。
 私の入行店である三井銀行本町支店長を昭和55年から2年間務められた星野欣也氏は人格・識見ともに実に素晴らしい方で、後に専務取締役まで栄進されました。星野支店長ご在任中に本町支店に在籍した者が集まって支店長を囲む会をここのところ毎年開催しているのですが、40年近い時空を超えて、新入行員として無我夢中で働いたあの時代の雰囲気が蘇る、年に一度の本当に楽しいひとときです。
 
 梅雨らしい日々が続いた今週の東京都心でした。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2018年6月 8日 (金)

合区解消、CLT議連など

 石破 茂 です。

 参議院の選挙制度改革を巡っては、なお異論が燻っているようですが、他にどのような方法があるのかを示さないままに「場当たり、党利党略、お手盛り」と批判だけしている報道や発言者を見ていると、無責任な、心情の冷たい人たちがいかに多いことかを思い知らされます。
 人口減少県など日本に要らないのだ、とまで言い切る人までいる様(さま)を見ると、人間ここまで冷酷に割り切れるものなのかと空恐ろしい気も致しますが、本当にそう思うのなら正々堂々と自らの名を名乗って、合区対象県の地元紙に投稿するなり、当該県において拡声器を持って演説でもしてみればよいのです。それもせず、そもそもそんな気もないのに、匿名で自説を展開し、悦に入っているような人がいることに対しては、その無責任さ、卑劣さに対する嫌悪感を抱くとともに、日本社会の一部に広がりつつある深刻な病理を感じずにはいられません。

 本来、一票の格差は2倍以内であるべきと思っておりますが、そのためには「国会議員は憲法・外交・防衛・財政などの国政の基本にのみに専念し、地方の利益実現には関与しない」という体制を可能にする抜本的な地方分権が必要であり、これは四半世紀も前の平成5年、細川政権下の政治改革特別委員会で指摘したことなのですが、細川総理も山花政治改革担当大臣も何ら反応を示さず、その後、確たる進展もみておりません。
 地方分権が徹底せず、国会議員が国益にも資する地方の利益を実現する役割を負う以上、定数の削減は発言力の低下をもたらし、東京一極集中に更に拍車がかかることにもつながります。一方で、なかなか議論が盛り上がらない責任の多くが我々にあることは十分に承知しております。

 衆議院(2倍以内)に比べて較差が3倍以内と大きい参議院の在り方も見直さなくてはならないのであり、衆議院が「権力を作る院」であるなら、参議院は「権力を監視する院」としての特色を強く持つべきと思います。
 議院内閣制で、議員の中から大臣など政務三役のほとんどが出る以上、議会が政府の強い影響下に置かれることは不可避であり、三権分立が十分に機能しない欠点があります。参議院は政府に政務三役を出すことなく、党議拘束を緩めることなどによって、六年間の任期が保障された見識ある議員たちが、より高い見地から議論を行うなどの改革も本来検討されてしかるべきです。選出方法も権能もほとんど同じ院が二つ存在していても、二院制の妙味は十分に発揮されないものと考えます。

 最近、戦前の帝国議会で反軍演説や粛軍演説を行い、衆議院を除名となった斎藤隆夫に強い関心を持っています。昭和15年2月2日の演説の内容は決して軍を貶めるものではなく、むしろ政府と議会の姿勢を糾弾するものだったのですが、同年3月7日衆議院本会議で賛成276、反対7、棄権121の圧倒的多数で除名決議が可決されます。
 軍部大臣現役武官制の復活により、内閣は軍部に対して妥協せざるを得ず、議会も沈黙するような雰囲気が横溢していた時代です。そのような中、あらゆる批判を覚悟のうえで正論を述べた斉藤に改めて感動するとともに、除名に反対する議員が僅か7名、自らの立場を曖昧にしたまま責任を果たさなかった議員が121名であったということになんとも言えない思いが致します。
 YouTubeや、NHKの「そのとき歴史が動いた」のアーカイブ版で当時の様子は容易に観られますので、是非ともご覧いただきたいと思います。

 私が会長を務める「CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー、直交集成板)で地方創生を実現する議員連盟」は、4日月曜日に福島県いわき市と郡山市に現地視察に出向き、6日水曜日には経済同友会前地方創生委員長の隅修三東京海上ホールディングス会長、現委員長の地下誠二日本政策投資銀行常務、市川晃住友林業社長をお招きして勉強会を開き、企業人ならではの簡素で分かりやすいお話をお聞きしました。
 詳細は回を改めて論じますが、CLTは地方創生の切り札になるものと信じています。EUとのEPAの行方によってはEUからCLTが大量に輸入されることにもなりかねず、日本国内での需要の拡大とコストの低減による国産CLTの普及は喫緊の課題です。

 米朝首脳会談を来週に控え、日米首脳会談が行われました。
 「今後『最大限の圧力』という言葉は使わない。なぜならすべてうまくいっているからだ」という言葉がトランプ大統領から発せられましたが、本当に「すべてうまくいっている」のかはわかりません。
 北朝鮮はロシアと中国を後ろ盾に「核」をディールの材料として使っているのですが、アメリカファーストのトランプ大統領は国益の多くを異にする日本に対しても巧妙にディールを仕掛けてきているのは明白です。それは首脳同士の親密さとは全く別個のものであり、総理の苦悩は察するに余りあります。
 日米間でディールをするためには日本もその材料を持たねば、そもそもディールは成り立ちえません。憲法や日米安全保障体制の見直しの本質は、まさしくそこにこそあると思っています。

 週末は、9日土曜日は徳島市で市町村関係者との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル・徳島市万代町)、「衆議院議員 福山守を励ます会」で講演・懇親会・夕食懇談会(午後5時~・同)。
 10日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、徳島市自民党関係者との朝食会(午前7時半・徳島市内)、徳島びっくり市21周年記念感謝祭(午前9時・繊維卸団地)、帰京後は都内で講演会と懇談会に出席する予定です。
 
 東京も梅雨入りし、すっきりしない天候が続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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