2022年8月 6日 (土)

台湾訪問とその後

 石破 茂 です。
 旧統一教会と政治との関わりについて今週多くの議論があり、私自身もご指摘とご叱正を頂いております。事実関係については既に報道に公開したとおりであり、選挙の際のボランティアによる支援や集票活動など一切の関わりは全くありませんが、自民党として所属全議員に対して今までの関係を調査・公表し、今後一切これを断ち切るとの宣言を行うことも検討されてしかるべきと思います。
 ただし、合同結婚式やその商法が司法の場で違法と判断された旧統一教会についてはそのような対応をするとしても、その他の団体に対して明確な基準なしに政治との関係を問題視する方向に拡大していくことには、憲法の信教や思想信条の自由との関連から、難しい問題があるように思います。先般のあるテレビ番組で共産党の小池晃議員が「信教の自由はあってもカルトの自由はない」「基準を設ける必要はない」と主張しておられましたが、一見聞こえは良いものの、かえって恣意性や法的不安定性を招きかねないものと思いました。

 

 安倍元総理の国葬について、国論が二分するような状態は決して良くありません。今後国会の場で、これを決断した総理ご自身から誠心誠意のご説明をいただき、多くの国民に共感していただくべく最大限の努力をしていただけるものと信じています。
 戦前の国葬は、主権者であった天皇陛下から賜るという形でした。ですから、現行憲法下においては主権者である国民が判断すべき、具体的には司法・立法・行政の判断が一致することが望ましい、との意見は、今後の国葬の在り方を決める上において大いに傾聴に値するものだと思います。本件については「国葬の成立 明治国家と『功臣』の死」(宮間純一中央大学教授著・勉誠出版・2015年)が詳しく、週末によく読んでみたいと思っています。

 

 先月27日より30日まで、超党派の「日本の安全保障を考える議員の会」のメンバー4名で台湾を訪問してまいりました。蔡英文総統、頼清徳副総統、蘇貞昌行政院長をはじめ、立法院長、外交部長、国防部長など、当方が会談を希望したすべての方にお会いでき、それぞれ単なる表敬にとどまることなく、かなりの時間をとった有意義な意見交換をすることができました。台湾政府や議会、政党関係者の誠心誠意のご対応に心より感謝致しております。
 会談の内容を詳らかに申し上げることは控えますが、お話しさせていただいた方すべてが、一切ペーパーを読むようなことをせず、自身の言葉で論理的に熱情を込めて語られたことは極めて印象的でした。
 学者出身の蔡総統からは、極めて物静かで理知的な雰囲気と、その奥に秘めた強い信念を感じました。「国民が自分の国を守る強い意思を持たなければ、どの国も助けに来るはずはない。ウクライナから我々はそれを改めて学んだ」との言葉を、我々もよく嚙み締めなければなりません。
 台湾における新型コロナ対策に大きな力を発揮された内科医出身の頼副総統は、次期総統候補の筆頭ともいわれる方ですが、やはり高い見識と深い知識、静かな情熱をお持ちでした。
 これまで外国要人と数多く会談をしてきましたが、何度でも会って話をしたい、というケミストリーが合う方と面識が持てることは、背負っている国益や利害の相違があってもとても大切なものです。日台間に国交がない以上、政府間の協議には自ずから限界がありますが、そうであるだけに政党や議員の果たすべき役割は今日の情勢に鑑みて極めて重いと考えます。

 

 ペロシ米国下院議長が訪台し、これに中国が強く反応する事態となっています。
 1995年から1996年にかけてのいわゆる第三次台湾海峡危機において、台湾の民主的選挙に対する恫喝として中国が台湾周辺にミサイルを撃ち込み、これに対してアメリカは空母二隻を急派して、軍事介入する意図と能力を示し、その時にアメリカとの軍事力の差を痛感したことから、中国はその後海軍力の増強に邁進してきました。
 今秋に共産党大会を控え、三選を企図する習近平体制としてはここで事態を決定的に悪化させることは望まないのではないかと思いますが、予断を許しません。
 今回、中国が我が国の排他的経済水域にミサイルを着弾させたのは看過出来ない事態であり、断固として抗議すべきは当然ですが、国連海洋法条約上、公海上の訓練は原則として認められています。EEZにおける経済的権益に留意しなければいけないという趣旨の規定はありますが、「公海自由の原則」をあえて無視する中国と同じ行動を我が国がとるようなことがあっては本末転倒です。中国は武力戦のみならず、「三戦(輿論戦・心理戦・法律戦)」すべてにおける様々な作戦を周到に準備しているに違いなく、これを凌駕する論理を我が国も明確に構築し、今後に備えなくてはなりません。

 

 今日は比較的涼しいものの、今週の都心は酷暑と雷雨に見舞われました。
 大雨で被災された方々にお見舞いを申し上げますとともに、復旧に当たられておられる方々のご労苦に感謝申し上げます。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2022年7月26日 (火)

台湾訪問など

 石破 茂 です。
 明27日より30日まで、超党派の安全保障関係議員7名で台湾を訪問致します。政府要人との会談の他、議会や軍関係者との意見交換を行う予定にしております。
 北東アジア地域の平和と安定を実現するためには、この地域における外交を主とした相互対話のできる環境の醸成と、軍事バランスの均衡によるバランス・オブ・パワーの実現を図らなくてはなりません。大いに己の不明を恥じなくてはなりませんが、私も含めて多くがロシアのウクライナに対する軍事侵攻を予測できませんでしたし、今後の展望も明確に描けてはおりません。今日のウクライナは明日の台湾だ、と主張される向きもありますが、台湾をめぐる構図は格段に複雑であり、考えられるあらゆるシナリオを想定して、適用されるべき法律や条約・協定を精査し、運用と装備について徹底的に検証しておくべきは当然のことです。
 防衛庁長官離任後に単身台湾を訪問し、漢光演習を見学後、台湾海軍のラファイエット級フリゲートに乗ったのはもう15年以上前のことになります。当時とは状況も一変しており、とにかくもう一度よく見ておかねば日本の今後の安全保障政策を語ることは出来ません。

 安倍元総理の国葬は9月27日と決定しました。賛否については多くの議論がありますが、ここは静かにお見送りする環境を整えるべく、誠実かつ丁寧に国民の理解を求めなくてはなりません。「決まったことだから」「反対する人はおかしい」というような姿勢は極力排すべきものと思います。かつての吉田茂元総理の国葬の時にも様々な議論があり、国葬というスタイルをとったために、宗教色を一切出さず、感情を抑制した極めて形式的なものになってしまったと当時の報道は伝えています。現時点において国葬の賛否は拮抗しているようですが、国論を二分するような状況は決して好ましいものではありません。あと二か月もあるのですから、政府・与党として可能な限りの努力をせねばなりません。

 昭和54年、新入行員として三井銀行本町支店に在勤中、本当にお世話になったかつての上司・斎藤輝人さんが逝去されました。ノンキャリアの叩き上げで、実務に極めて精通された方でしたが、それだけに大卒で実務の全く出来ない私は幾度となく厳しく叱責されたものでした。あまりに悔しくて自分なりに懸命に働き、やがて少しは認めていただけるようになって、入行して一年近く経った頃に横浜のご自宅にお招き頂いて奥様の手料理をご馳走になった時のことは、銀行員時代の最高の思い出です。
 そういえば、防衛庁長官在任中に日経新聞の「交友抄」から求められて、銀行でお世話になった上司や同僚のことを書いて原稿を出したのですが、もっと有名な人との交友を書いてもらいたいとの理由で掲載されなかったことがありました。先方のニーズに応じられなかった私がいけなかったのですが、今でも思い出すと残念な気持ちになります。この世の地位や名誉などはうたかたの幻のようなもので、一生を終えて最後に残るのは人に与えた優しい気持ちや真の思い遣りなのだ、との古のフランス詩人(聖職者との説あり)の言葉を最近しみじみと思います(出典は「続・氷点」)。

 女優の島田陽子さんが69歳で逝去されました。昭和46年、三浦綾子の前掲小説「続・氷点」がNET(現テレビ朝日)でテレビドラマ化された際、主人公の辻口陽子役に抜擢された当時18歳の彼女が、朝日新聞の「ひと」欄に載っているのを見た時に受けた「こんなに清楚で綺麗な人が世の中にいるのだ」という衝撃は今も忘れられません。その後、彼女は公私ともに波乱万丈の人生を送られたようですし、ご本人にお会いする機会もありませんでしたが、最も印象に残る女優さんの一人でした。出演作では「犬神家の一族」(昭和51年・東宝)や「砂の器」(昭和49年・松竹)が有名ですが、私は「球形の荒野」(昭和50年・松竹)の野上久美子役がとても好きでした。御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。

 今日の都心は朝から雨模様が続いていますが、明日からはまた真夏の日々が戻ってくるようです。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2022年7月25日 (月)

イシバチャンネル第百二十五弾

イシバチャンネル第百二十五弾、「参議院選挙を振り返って」をアップロードしました

是非ご覧ください

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