2022年9月30日 (金)

松尾潔さんとの対談など

 石破 茂 です。
 故・安倍元総理の国葬儀は、テロなどの事件や事故が起こることもなく、無事に終わりました。国葬儀を執り行うにあたり、不眠不休で職務に当たられた政府職員、警備に当たられた警察関係職員の方々に心より敬意を表します。

 国葬儀の法的な位置づけについて、何を根拠法とし何を手続法とするのか、この際きちんと議論した上で、結論を出すべきです。
 旧憲法下ではただお一人の主権者であらせられた天皇陛下が下賜を決定され、根拠として「国葬令」が存在していたのですが、国民が主権者である現行憲法が施行され、根拠法は存在しないことになったのではないでしょうか。今回、政府の見解としては、内閣府設置法第4条第3項が定める国がつかさどる事務「国の儀式並びに内閣の行う儀式、および行事に関すること」が根拠法となる、即位の礼もこれに該当する、手続きとしては閣議決定で足る、ということだったと思うのですが、即位の礼の根拠法は皇室典範であり、また省庁の設置法は基本的に手続法的な性格を持つものであり、これのみを根拠法とすることには無理があるのではないか、との思いがあります。ましてや、閣議決定が根拠法に代わる、との見解は、三権分立的にもかなり問題があります。
 この種の法学的な議論は一般にはなかなか理解されにくいものですが、民主主義、三権分立、法治国家、といった国家の根本にかかわることを、決して曖昧にしてはなりません。法律的にも、運営面でも、今後の糧とすべきことは多いように思います。

 葬儀は粛々淡々と行なわれ、菅前総理の思いのこもった弔辞には深く感銘を受けました。
 遠く海外から来られた方々に対して、「わざわざ来て本当によかった」と思って頂ける配慮があったことを祈ります。
 英国エリザベス女王の国葬は、黙祷、英国国教会大司教の説教、トラス首相の聖書朗読、国歌斉唱、女王直属のバグパイプ奏者による演奏などが行われ、一時間程度で終わったとの報道に接しました。日本においてこのような宗教を伴う形式は現在考えられませんが、そもそも憲法第20条の定める「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」にかかる範囲はどこまでなのでしょうか。有名な津地鎮祭事件の最高裁判決(昭和52年7月13日)は「その行為の目的が宗教的意義を持ち、その行為が宗教に対する援助、助長、促進または圧迫、干渉する場合は政教分離原則違反となる」との見解を示していますが、この趣旨を踏まえてもう一度よく考えてみる意義はあるものと思われます。

 先週22日木曜日に開催した自民党鳥取県連の臨時常任総務会では、県議、市議を中心とする出席者から「自民党として旧統一教会との関係を一切断つとの党本部の見解は是とするも、それはいかなる理由によるものであり、対象範囲をどこまでとし、どのように法的な整理をするのか、期限を定めて明確にしてもらいたい」との意見が多く出されました。日々有権者と直接向き合っている地方議員にとって、これは極めて切実な問題であり、ましてや来年には統一地方選を控えています。これに迅速かつ誠実に答えるのは、党本部の責任だと思います。
 党員や支援者に対して、その都度「あなたの宗教は何か?」と問い、それを理由として入党や支援を拒否することは、現実的・法律的に可能なのでしょうか。もし仮に、「それぞれの地方組織が実情を踏まえて臨機応変に対応すべし」というようなことになれば、もはや組織政党の体をなさないとの批判を免れません。自民党の危機はいつも地方から始まることを忘れてはなりません。

 先週24日の北海道和寒町・名寄市での一連の日程は、とても有意義かつ楽しいもので、北海道の持つ無限のポテンシャルを実感するとともに、もう一度中央と地方とが一体となって地方創生に強力に取り組む必要性を痛感させられました。奥山和寒町長、加藤名寄市長はじめ、お世話様になった皆様、講演にお越しくださった方々に、心より厚くお礼申し上げます。

 今週の「サンデー毎日」に、日本レコード大賞も受賞された作家・音楽プロデューサーの松尾潔さんとの対談が掲載されていますが、示唆に富む有り難いひとときでした。本当に才能のある方との対談は、いつも自分の駄目さ加減を思い知らされます。
 対談の中で松尾さんが紹介されていた「選挙、野党、自由な報道、の三つが揃った国では、決して飢饉は起こらない」というインドのノーベル経済学賞受賞学者・アマルティア・センの言葉は強く印象に残りました。紙面の都合上、政治関係の対談部分のみが掲載されていますが、カットされてしまった音楽の話もとても面白かったので、いつか何かの形で活字になることを願っています。

 明日から10月、本当に早いものですね。今次の台風で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

| | コメント (0)

2022年9月28日 (水)

ラーメン産業展

 事務局です。

 本日、「ラーメン産業展」の日本ラーメン協会設立15周年記念特別セミナーとして、日本ラーメン協会・玉川理事長と対談させていただきました。ラーメン議連有志の先生方にもご参加いただきました。

116942 116927

 

| | コメント (5)

2022年9月22日 (木)

ローカル鉄道の今後など

 石破 茂 です。
 地方のローカル鉄道の今後の在り方について、国交省の検討会が7月に提言を取りまとめたこともあって、各地で議論を呼んでいます。「鉄オタ」と見られていることもあって(実際は単なる「乗り鉄・呑み鉄」なのですが)、最近講演やテレビ出演の際にこのテーマでの話を求められる機会が増えています。検討会の有識者の先生方は、政府の立場もあって難しい議論をしておられますが、私には日本総研主席研究員の藻谷浩介氏と、関西大学教授の宇都宮浄人先生の所論が一番わかりやすいように思われます。
 *そもそも鉄道とクルマ(道路)はイコール・フッティングになっていない(車の走る道路は税金で建設され、信号機やガードレールなどの安全施設も税金で設置・維持されているのに対し、鉄道は税金の投入は極めて少なく、ほとんどすべてを民間会社が自社で賄う)。鉄道は赤字になればすぐに廃止の議論になるが、道路の採算性が議論されることはなく、廃止された道路もない。道路は災害で橋が流出した際などは直ちに国交省地方建設局が復旧工事を始めるが、鉄道は長期間放置され、やがて廃止の議論へとつながっていく。同じ公共交通でありながら、どうしてこのように差がついているのか。
 *統計上、近年の年間の交通事故死者は3000人超、内閣府によればその経済的損失は6.7兆円と膨大なものであるが、この議論も全くない。
 *鉄道を維持する負担は利用者が負うべきで、広く税負担で支えるのは不公平というが、実は地域すべての人が受益者であり、いま利用していなくても将来利用する可能性は多くあるのではないか。
 *インバウンド客の鉄道利用を促進すると言っているのに、鉄道の切符はすべて日本語のみであるのはおかしくないか。
 ……等々、今まで気づかなかった多くの論点が提示されており、きわめて興味深いものです。
 
 そもそもお客様を増やす努力をせずに、補助金に頼る経営姿勢そのものも問題です。北海道帯広市を拠点とする「十勝バス」の事例はすべての公共交通機関に適用されるべきものなのに、これが普遍化しないのは、どこかに補助金頼みの無責任体質があるからではないでしょうか。
 なんでもヨーロッパが素晴らしいとは言いませんが、宇都宮先生が紹介しておられたオーストリア・ザルツブルグでは、20年間で自動車の交通分担率を一気に12%引き下げ、これにあたって道路の建設・維持管理予算を鉄道へ再分配する手法を採用したのだそうです。自動車王国でもある同国では反対論が強かった中、「20年後、30年後の町づくりをすることが我々の仕事であり、反対があるからできないというだけでは役人として失格だ」と述べ、住民の説得に力を尽くした同国の官僚の姿に、彼我の差を痛感したことでした。 

 

 24日土曜日は、宗谷本線活性化協議会令和4年度事業「持続可能な地方と鉄路を創造するために」で講演する予定です(午後5時15分・名寄市・グランドホテル藤花)。これを踏まえてこの問題については再度論じてみたいと思います。
 名寄市での講演の前には、「三浦綾子先生生誕100周年記念講演会 三浦文学と地方創生を考える」で講演する予定です(午後2時半・和寒町・公民館恵み野ホール)。
 和寒町は三浦綾子の代表作の一つである「塩狩峠」の舞台となったまちであり、ここでこのテーマで講演させていただくことに深い感慨を覚えています。高校2年生の冬に「塩狩峠」を読み、あまりの衝撃に2日間ほど部屋から一歩も出られませんでした。読み返すのが怖くて今まで再読していなかったのですが、半世紀近くぶりに読み返しても、深い感動を覚えます。貴重な機会を与えてくださった和寒町の皆様に心より感謝申し上げます。

 

 来週火曜日27日には安倍元総理の国葬が執り行われます。第二次安倍政権において、幹事長や国務大臣として四年間、安倍総理にお仕えした者として、当然参列し、静かにお見送りしたいと思っております。当選同期で、畏友でもある村上誠一郎議員は国葬への欠席を表明されましたが、村上議員がその見識と責任において判断されたことです。自民党は国民政党であればこそ、国民の意見を反映した闊達な議論があって当然であると思っています。
 英国のエリザベス二世女王陛下の葬儀にまつわる映像の中で、まだ女王に就任される前に「すべてを英国に捧げることを誓う」旨発言しておられたものがありました。「すべての英国国民のために」との思い、「分断を避けるために一身を捧げる」という尊いお心、まさにその通りのご生涯であったからこそ、あのような素晴らしい葬儀になったものと思います。我々政治家も立場は大きく違えど、心して臨まねばならない姿勢だと思いました。
 日本の国葬においては宗教色を一切排すこととなっており、これもまた憲法の要請であるということになっているのですが、それは本当に現行憲法の意図する趣旨に沿ったものなのか、いま一度よく考えたいと思います。

 

 今週は実働が四日しかなかったため、とても慌ただしい一週間となってしまいました。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

| | コメント (24)

«古川貞二郎さんご逝去など