2020年3月27日 (金)

東京都の対策など

 石破 茂 です。
 我が国において、新型コロナウイルスの感染が現在の程度にとどまっているのは、各位の個人的努力とともに、国民皆保険により、経済的な事情の如何に関わらず国民みんなが医療にアクセス出来ることによるものに違いありません。先人が大変な努力の末に作り上げてくださった国民皆保険制度の有り難さと、医療現場の皆様の献身的なご努力に改めて感謝の他はありません。

 知識が十分でないままに軽々なことは申し上げられませんが、ウイルスは確実に「進化」を遂げているとの説もあるようです。
 1918(大正7)年春、カンザス州の米陸軍兵舎で発生したスペイン風邪は、日本では同年5月に台湾巡業から帰った力士と、第一次世界大戦に従軍してインド・太平洋方面で活動して帰国し横須賀に停泊中だった巡洋艦「矢矧」乗組員から発生しました。世界中で猛威を振るい、世界で5億人が感染し5000万人が死亡、日本でも当時の人口5600万人の0.8%に当たる45万人が死亡したと記録されています(現在の人口に当てはめれば120万人が死亡)。流行は1918年の第一波、1919年の第二波に分かれ、1920年に自然に終息したのですが、これは集団免疫が獲得されたためと言われています(以上、古谷経衡「日本はパンデミックをいかに乗り越えたか」より)。
 ウイルスの存在すら確認出来なかった当時に比して、医学や衛生の水準は格段に進歩しており、100年前と同じような凄惨な事態は起こらないものと思われますが、第一波と第二波ではウイルスが変異していた可能性が指摘されていることには注意が必要でしょう。

 昨日東京都が発表した移動制限的な要請を含む措置には様々な反応がありますが、少し気の緩んだ感のあった三連休前と比べて事態は相当に深刻なものになっていると思われます。
 ライブ・イベント関係や集会などの再開に向けたガイドラインの策定には、より慎重な配慮が必要となりますが、困窮した事業者や国民に対するつなぎ資金、食費や家賃などの生活資金の支援は迅速に行わなくてはなりません。当面の対策は、困窮の程度に配慮しつつ、即効性と迅速性をより重視すべきです。移動を伴う消費喚起策は二律背反的となりかねず、減税も即効性には乏しいため、順位的には劣後してもやむを得ないものと考えます。
 それぞれの政策分野において対策が立案されていますが、安全保障分野において自衛隊にあまりに過大な負荷をかけないように留意することも必要です。衛生部隊を中心に、ダイヤモンド・プリンセス号の乗客・乗員に対する対応や自衛隊病院における検査や受け入れなど、自己完結型の自衛隊ならではの最大限の活動を展開してきましたし、これは今後も続けていくべきものです。しかし、自衛隊について最も重視すべきはあくまで有事に備えた機能・能力の保全(最後の拠り所たる自衛隊が大きなダメージを受ければ、国と国民生活そのものが危機に瀕するという意味において)です。性格上、十分な距離を取りえない部隊、閉鎖空間とならざるを得ない部隊もあり、新型コロナウイルス対策に忙殺されている間にも、北朝鮮の弾道ミサイル発射や中国による尖閣海域領海侵犯事案の継続など、我が国周辺の安全保障環境が依然として厳しいことに変わりはありません。

 東京オリンピック・パラリンピックの一年延期については、新型コロナウイルスの推移如何によるのであって現時点では評価の仕様がありませんが、これを政局と絡めたりすることには大きな違和感を覚えています。スポーツと政治とはある面で密接不可分であることは十分に承知の上で、常にそのような発想をする向きに対しては嫌悪感に近いものすら感じています。「アスリートファースト」とは一体何か、もう一度よく考えてみるべきです。

 今週記すつもりであった「大江バレーステイ」については回を改めますが、同施設のホームページにアクセスしてみていただければと存じます。

 今週末も出席する予定であった全国各地での会合は中止・延期となりました。原則として移動も制限されており、鳥取県内で自民党県連会長としての党用務に限って参加します(自民党三朝町支部総会 3月28日午後4時半等)。
 空いてしまった時間を使って本を読もうと努めているのですが、なかなか思うようには捗りません。ダンテの「神曲」と並んでイタリア文学の最高峰との評価が高い、ペストの蔓延で荒廃した17世紀のミラノを舞台とするマンゾーニの「婚約者」(河出書房新社版)を今日との比較において読んでみたいと思っているのですが、あまりに大部なので無理かな…。
 皆様どうか十分にご注意のうえ、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年3月19日 (木)

若桜鉄道など

 石破 茂 です。
 政府・与党として新型コロナウイルスのもたらす影響への対応を打ち出し、効果を期待するところですが、イベントや各種行事、旅行や外出など、自粛ムードが蔓延しすぎて経済・雇用そのものが破壊されつつあるように思われてなりません。どうしてこのように極端に振れ、オール・オア・ナッシングになってしまうのか。政府として対象を細かに分析した、ガイドライン的なメッセージと対策を早急に発する必要があります。

 バス旅行やコンサートなどのイベントは、たとえお客様が半分になっても一席ずつ開ける、換気を頻繁に行うか、換気装置の整った会場に限る、乗車や入場前の体温検査やアルコール消毒、マスク着用などを徹底させる、などの方策を講じた上で、必要な経費や損失補填は助成してでも行うべきと思います。屋外で開催されるお花見なども、全面的な禁止は行き過ぎではないでしょうか。健全な良識を持った日本人には、自ずと秩序ある行動をとる人が圧倒的に多いことは震災などの災害時にも実証されていることであり、日本が世界の先導的役割を果たさなくてはなりません。前回も記したとおり、症状が軽く、致死率が低い新型コロナウイルスはそれ故に逆にとても厄介な存在であり、その故にこそ相応しい対応を採らなくてはならないと考えます。
 17日火曜日に開催された超党派の「新型コロナウイルスからライブ・エンタテイメントを守る議員の会」で、コンサートや演劇などをはじめとするライブ・エンタテイメント業界の方々の窮状をお伺い致しました。自粛要請以来、1500以上の講演が中止となったとのことですが、歌い手さんや役者さんのみならず、バックバンド、大道具・小道具、照明、着付け、メイク、花、グッズ販売、関連ジャーナリズムなど裾野は相当に幅広く、損失は16日時点で450億円以上に上るそうです。当日は5人の方からお話を聞きましたが、涙ながらに訴える方もおられ、自分の認識不足を恥じたことでした。
 2月末に公演を実施した「東京事変」の椎名林檎女史に猛烈なバッシングが浴びせられたことが大きく報ぜられましたが、これに心を痛めた人もおられるはずです。そのようなものは不要不急ではないかとのご批判は承知しておりますが、音楽や演劇に生きる希望を与えられる人もまた数多く、人間には「身体の健康」とともに「心の健康」「精神の健康」も必要です。
 社会的活動の自粛・禁止レベルを高めるほどに感染リスクは低下しますが、それと反比例する形で社会的・経済的損失は高まります。オール・オア・ナッシングではなく、その二つの描くカーブの交点が必ずあるはずであり、「国民的被害の最小化」を念頭に、時限性を強く認識しつつ日々努めたいと思っております。

 今週発売の週刊誌に載っている、自ら命を絶たれた財務省近畿財務局職員の方の手記には胸が塞がれる思いです。事実関係について知悉しておりませんので軽々に論評をしてはなりませんし、予断をもって述べることも厳に慎むべきですが、弱い立場の人に負担を押し付けるようなことが断じてあってはなりません。今後行われるであろう民事訴訟において、事実の確認や因果関係についての精緻な議論がなされ、御霊が報われるような司法の判断がなされることと思います。
 責任をとる、と口で言うことは容易ですが、とても難しいことです。9年前、イージス艦「あたご」の事故に関して防衛大臣として海上自衛隊の幹部に対して退官や降格などの処分を行った際、対象となったある幹部の方が大臣室にお見えになり「大臣、この度は責任を取らせていただき有り難うございました」と言われ、深く感銘を受けた時のことは今も鮮明に記憶に残っています。その方はその後重要な地位に就かれましたが、人間として、公人として、武人として身をもって責任の取り方を示されたことは実に立派なものだと思いました。

 14日土曜日、若桜(わかさ)鉄道・八東(はっとう)駅に列車の行き違い施設が完成し、従来の1日10往復が15往復となり、郡家(こおげ)駅で大阪・京都・岡山方面への特急に9本が30分以内に接続できることとなり、利便性が大幅に向上しました。
 昭和5年に鉄道省の路線として開業以来、旅客や貨物の利用が多かった昭和30年代から40年代初めにかけても、行き違い施設が一カ所もなかったため一日10往復しか走らせることが出来ず、日中数時間も運転間隔が空いてしまうこともありました。第3セクターへ移行した後も乗客は減少傾向で、廃線も何度か取り沙汰されたものですが、車両もそのほとんどがJR九州の「ななつ星in九州」をデザインされた水戸岡鋭治氏の手による「昭和」号、「八頭」号となったことや、改装された終点の若桜駅でサントリーが監修するアルコール飲料(サントリーオールドがベース)や軽食が販売されるようになったことと併せ、今回の事業は新しい鉄道の在り方を示唆するものとして実に画期的だと思います。
 数年前、千葉県の「いすみ鉄道」を見学した際、「乗ること自体を目的とする『乗って残そう〇〇線』などと言っているうちは駄目で、『乗りたくなる鉄道、乗って行きたくなる地域』を創らなければ地方鉄道の存続はあり得ない」と言われたことが強烈に印象に残っているのですが、本当にその通りと思います。
 新型コロナウイルスの影響により、関連行事も簡素で、報道の扱いも小さかったことは残念でしたが、このような明るくて希望の持てる出来事はもっと大きく取り扱っていただくべきと思っています。京阪神から三時間弱で行ける若桜町は、間もなく桜の季節を迎えます。味が抜群の吉川(よしかわ)豚や中山間地産米、ジビエ料理、原料米の収穫される田圃ごとに管理されている地酒等々、食の質も全国屈指のものと思います。全国最少の鳥取県の中でも最も人口減少率の高いこの町だからこそ、全身全霊で生き残りをかけた取り組みを展開しています。同町内の宿泊施設は舂米(つくよね)地区に「氷太くん」があり、隣町の八頭町大江地区には廃小学校を改装した「大江バレーステイ」もあります。
 自慢することではありませんが、我々鳥取県、特に県東部の因幡地方は相当な宣伝下手と言わざるを得ません。「大江バレーステイ」については次回ご紹介しますが、これも実に素晴らしい画期的なホテルです。今回は地元の宣伝が多くて恐縮ですが、何卒ご容赦くださいませ。

 週末は、21日土曜日に「福岡NEWSファイルCUBE」出演(10時25分・テレビ西日本・福岡市内)。
 22日日曜日は彼岸のお墓参りの後、自民党鳥取市美保南支部総会に出席致します(午前11時・数津公民館・鳥取市数津)。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年3月13日 (金)

新型コロナウイルス関連対策など

 石破 茂 です。
 今回の新型コロナウイルスによる症状の特徴は「比較的軽く、感染しても自覚症状のない人もおり、致死率が低い」ことにあります(もちろん重篤になる方も亡くなる方もおられますが)。それらは今までの常識からすれば「良いこと」なのですが、米国ジョンズホプキンス大学の2018年の研究論文は、今後の新型ウイルスについて「自覚症状がないため、感染していることに気付かないまま街中を歩き、ウイルスを拡散させ」「宿主である感染者が死亡すればその体内でウイルスも生存できないが、死亡しなければ生き続ける」ことになり「公衆衛生上の危機ではなく、全世界の社会経済的な危機に直結しうる」ものと論じていたそうです。この内容について確認するような知見は持っておりませんが、これが本当に2018年に書かれたものだとすれば、驚く他はありません。

 株価の大幅下落も加わって世の中は既に危機管理モードに入っており、感染拡大と経済の失速を阻止するために、リスクと批判を覚悟のうえであらゆる施策を総動員しなくてはなりません。事業者に対する信用保証協会の保証付き融資も、金融機関の融資手続きを簡素化するとともに保証協会の原資を潤沢に確保しなくてはなりませんし、パートや派遣などの未組織労働者の方々や、フリーランスなど個人事業主の方々への給付も迅速になされるべきです。三月は期末月であり、ことは急を要します。
 政府として当面考えられる対策は用意したところですが、これらについて国民の立場に立って徹底した広報・宣伝をしなくてはなりません。飲食店の多くは今や閑古鳥が鳴いていますが、そこで働く人(法的には「個人事業主」であることもある)が「明日からしばらく来なくていい」と言われた場合、一体どうすればよいのでしょうか?答えとしては、最寄りの都道府県労働局へ行き、「雇用調整助成金を受け取りたい」と言えば良いですよ、ということなのですが、それは何処にあり、どのような書類が必要で、手続きはどうなるのか。「明日からしばらく来なくていい」という際に、雇用主のほうから「こういう手当てがありますよ」と言えるような手立てまできちんと講じておかなくてはなりません。
 本来、このような作業は行政があまり得意な作業ではない中で、確実に実行されるように促すのは我々議員の仕事です。政策が国民一人一人の心に響くよう、「何処で誰が何に困っているのか」を想像力の限りを働かせて把握しなくては政府に対する信頼は生まれませんし、信頼なくして危機管理は機能しません。防災省の創設については全く議論が進んでいませんが、CDC(米国疫病管理予防センター)についても同様です。知見をお持ちの方の御教示をお願いいたします。

 かねてより今の日本は「株主優先金融資本主義」とでも称すべき状態になりつつあるのではないかと思っております。株価が高いこと自体は歓迎すべきことではありますが、日本国民の株式保有率は9%であり、裨益する人はそう多くはありませんし、本来の「投資」ではなく「投機」の傾向が強くなり実体経済との乖離が大きくなれば、これはあるべき方向性についての詰めた議論と明確化が必要です。

 法相の発言の混乱ぶりはかなり理解困難ですが、政府には東京高検検事長の定年延長について、その理由とそれに至った経緯を納得できるように説明する責任があります。法相は元々誠意ある明晰な方だと思いますので、今後の精励を期待します。

 この週末も各地での講演・会合はそのほとんどが延期となりました。規模を縮小し、ウイルスへの対策を講じた上で、いくつかの会合や催しが開催されますため、久々に地元へ帰ります。
 14日土曜日は第3セクター若桜鉄道八東駅行き違い施設完成竣工式(午前10時・八東駅・八頭町下野)、若桜鉄道関係者との意見交換・懇談会(午前11時・オオエバレーステイ・ダイニングレストラン)、若桜鉄道若桜駅リニューアル見学(午後0時55分)、自民党若桜町支部と語る会(午後1時・ダイニングカフェ「新(あらた)」)、自民党鳥取市津ノ井支部総会・国政報告会・懇談会(午後4時・ますこ食堂・鳥取市津ノ井)、という日程です。
 今週末、移動の時間などを利用して「世界は宗教で動いている」(橋爪大三郎著・光文社新書・2013)、「日本列島回復論」(井上岳一著・新潮選書・2019)を読了したいと思っています。米国大統領選挙も今秋に控えており、日本人には理解しにくい「宗教と政治」について少しでも学んでおかなくてはならないと思っているところです。
 過度に恐れず、適切に行動する。言葉にするのは簡単ですが、難しいですね。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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