2019年12月 6日 (金)

中曽根康弘先生の思い出など

 石破 茂 です。
 中曽根康弘政権は5年にわたる長期政権であり、最後の一年は私も新人議員として議席を得ておりましたが、政権が終わるまで緊張感に満ちたものであったことを鮮烈に記憶しています。長期政権になれば緩みや弛み、驕りが出るというのは違うと思います。必然的にそうなるのでは決してありません。与党の一員として、今の状況に重い責任を有していることを強く自覚しなければならないと痛感します。

 

 中曽根先生は内務官僚から海軍に志願し、太平洋戦争中は各地を転戦されましたが、戦艦や巡洋艦に乗艦して海戦を戦うのではなく、主計将校として主に輸送部隊に勤務し、物資・燃料の補給に当たられたようです(終戦時の階級は海軍少佐)。補給や兵站を軽視した帝国海軍は輸送船に十分な護衛を付けることがなく、輸送部隊は次々と米潜水艦の標的となって多大な犠牲が生じたことも、敗戦の大きな要因の一つです(「輸送船護衛に就くのは腐れ士官の捨て所」。輸送や補給などの兵站や情報を軽視したのは帝国陸軍も同様で「輜重兵が兵ならば蝶々蜻蛉も鳥のうち」と言われたそうです)。先生の安全保障観や日米同盟観の根底には、間違いなく死線を彷徨われた戦争体験があったものと思われます。
 総理就任後、一番に訪問先として選ばれたのは韓国でした。中曽根総理は先の戦争について「私は、いわゆる太平洋戦争、大東亜戦争とも言っておりますが、これはやるべからざる戦争であり、間違った戦争であると申しております。中国に対しては侵略の事実もあった」と述べておられます(昭和60年10月29日・衆議院予算委員会・東中光雄議員に対する答弁)。その言葉の持つ意味を今一度冷静に分析し、考えてみなくてはなりません。
 中曽根先生と同年であり、一兵卒として日中戦争に従軍された田中角栄先生は生前、「戦争を知っているヤツが世の中の中心にいるうちは日本は安全だが、戦争を知らない世代が中核になると怖い。だからよく勉強して貰わなくてはならない」と語っておられたそうですが、まさしくそのような時代となりました。
 戦争の歴史を学ぶことの重要性が一層増しているにも拘らず、憲法論議においても場当たり的な議論が一部で横行していることに強い危機感を感じています。再発足した、安全保障を考える超党派の議連において、戦史も学び直すことが出来ればとても有意義だと思っています。

 

 今週3日火曜日に「秘密のケンミンSHOW」の収録があったのですが、明治9年に鳥取県が島根県に「併合」され、明治14年に再置された際の詳細な経緯など、自分が鳥取県民でありながら知らなかったことも多くあり、とても勉強になりました。

 

 「桜を見る会」事案については、依然として国民の納得が十分に得られない状況が続いています。政治が嘲笑の、官僚が憐憫の対象となってしまうことは何とも悲しく情けないことで、これを解消することは我々の責務であり、やがて世間は忘れるだろうとタカを括ることがあってはなりません。政治ですからすべてが綺麗ごとで済むとは思いませんが、綺麗ごとが全く失われた政治はその名に値しないということを自重自戒しています。

 

 週末は、7日土曜日が「衆議院議員 赤澤亮正君を励ます会」(午前11時・皆生グランドホテル天水・鳥取県米子市)、自民党鳥取県ちんたい(賃貸)支部との懇談会(午後2時・同)、大学アメリカンフットボール関係者忘年会(午後7時・都内)という日程です。
 週末残余の時間は暮れの挨拶廻りや、溜まりに溜まっている資料整理に充てる心算でおります。

 

 師走の慌ただしさが日に日に増して参りました。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

 

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2019年11月29日 (金)

「日本の安全保障を考える議員の会」、大勲位ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨28日の「日本の安全保障を考える議員の会」は、香田洋二元海将、番匠幸一郎元陸将を講師としてお迎えして勉強会を開きました。
 2004年、前身である「21世紀の安全保障を考える若手議員の会」が発足したのには、2003年から 2004年にかけて審議された有事法制関連法案が9割の議員の賛成で成立した(反対したのは共産党と社民党のみ)という背景が存在していました。
 政府は極力誠実な答弁に努め、特別委員会の現場においては、与党の久間章生筆頭理事、野党の前原誠司筆頭理事の大変な努力がありました。
 このように、安全保障など国の根幹にかかわる政策は、与野党で徹底的に議論し、一致点を見出すべきものであり、当時「新国防族」と呼ばれた我々には、精神論を極力排し、法律・条約・運用・装備などに知見を持ち、内局の言うなりではなく、制服組に阿るのでもなく、政治家として責任ある安全保障政策を推進したい、との思いがありました。
 あれから15年が経ち、もはや若手ではなくなってしまいましたが、その後メンバーのそれぞれが防衛や外務の大臣、副大臣等を経験し、安全保障環境が激変する中にあって、敢えて再発足の運びとなりました。
 かつて小泉内閣の防衛庁長官在任時、国会で「航空自衛隊のF-15戦闘機で北朝鮮を叩けるのか」という議論があった際、「空自のF-15は侵入してきた敵機を排除する能力は世界第一級でも、他国領域まで進出してミサイル基地を叩くような能力は保持しておらず、そのような訓練もしておりません。それでも行けというのは神風特攻隊と変わらず、そのような命令は出せません」というような答弁をした記憶があります。戦闘機を用いた策源地攻撃のためにはその位置を正確に把握することは勿論、AWACSや護衛戦闘機、空中給油機、電子戦機なども随伴させなくてはなりません。その能力を保持するか否かは政治の判断ですが、能力を造成するためには長い年月を必要とします。
 安全保障政策は「合理性」と「リアリズム」を基本とすべきものであり、基本的な認識や知識を共有すれば、自ずと一致点は見出せるものと考えております。

 それにしてもマスコミ各社の報道は「ポスト安倍を睨んだ与野党連携か」的なものばかりで心底うんざりしてしまいます。
 昨日の、論客として知られる元制服組最高幹部との議論は久々に多くの示唆を受けた充実したものでしたが、その内容についての報道は一切ありません。報道する気も全く無いのでしょうが、これでは議員も政策について真摯に学ぶ意欲が削がれることもやむを得ないのかもしれません。しかし、ここで諦めてしまえば国の将来が危うくなります。

 昨日の衆議院憲法審査会の運営については、いかがなものかと思わざるを得ませんでした。政権にとって都合の悪い議論を忌避している、と国民に思われることは、決して国家のためにはなりません。いつの日にか大きな報いとなって跳ね返ってくることを認識すべきですし、それが自分たちにとってならば自業自得というものかもしれませんが、国家国民に跳ね返るような事態になることを心から怖れます。

 「桜を見る会」についても、それ自体が国家の重大事でないからこそ、早急に解明し、改めるべき点を直ちに改め、詫びるべき点は率直に詫びて、国家の重大事を議論できる環境を作らなくてはなりません。「こんな些末なこと」だからこそ、ある意味かえってリアリティを持って国民に受け止められているのではないでしょうか。
 敗戦直後、責任追及を免れるため軍や政府の書類が多く焼却処分されたと言われていますが、これを彷彿とさせるような事象にも嘆息を禁じ得ません。公文書の保存に尽力された福田康夫元総理の真摯さを改めて思い出します。

 本日、大勲位 中曽根康弘元内閣総理大臣が101歳で逝去されました。
 昭和61年、我々が初当選した際の総理大臣で、7月の同時選挙では自民党総裁として衆参公認候補4名応援のため、鳥取市にもご来援くださいました。偉大なご業績については後日改めて記したいと思いますが、当選直後、衆議院当選1回生を集めた会で、「君たち当選1回生にとって一番大事な仕事は、当選2回生になることだ」と言われたことを強烈に覚えています。
 「どんなに立派なことを言っても当選を重ねなければ実現は出来ない。政策や信念を実現するためには、当選したからと言って浮かれることなく、地元の基盤をしっかりと固めるように」、というようなお気持ちであったか思います。
 「暮れてなお 命の限り 蝉しぐれ」「したたかと 言われて久し 栗をむく」どちらも大勲位が作られた俳句ですが、徹底したリアリストでありながら理想を決して曲げず、したたかに政権を運営しながらロマンチストの一面を失われなかった、在りし日のお姿を偲び、御霊の安らかならんことを心よりお祈り申し上げます。

 週末は、30日土曜日が自民党綾部支部政治経済懇談会で講演(午前11時50分・京都府綾部市林業センター)、昼食懇談会(午後1時半・同所)、自民党福知山支部講演会で講演(午後4時・サンプラザ万助)、夕食懇談会(午後5時半・同所)。
 12月1日日曜日は自民党西脇支部時局講演会にて講演(午後1時半・西脇ロイヤルホテル・兵庫県西脇市)、内藤兵衛兵庫県議自民党県議団幹事長就任祝賀会(午後4時・同所)、という日程です。
 とうとう師走に入ります。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年11月22日 (金)

「桜を見る会」の招待基準など

 石破 茂 です。
 「桜を見る会」についての混乱は収まる気配がなく、今週も更に拡大の様相を呈しています。「こうなったら解散だ!」などという論も自民党内の一部にはあると報じられていますが、理解が困難です。野党が一致して「疑惑隠し解散」と攻撃してくることが容易に予想される中、「そんな些末な問題で国政を停滞させてはならない」とでも訴えるつもりなのでしょうか。これ自体が国政上の重大問題とは思いませんが、問われているのは我々の政権の公正性と透明性であり、その疑念を晴らして一刻も早く重要課題に取り組むことこそが政府・与党の責任でしょう。

 来年の「桜を見る会」は中止し、招待基準や人数を見直して再開するとのことですが、基準や人数の何処が何故見直されるべきなのかを早急に明らかにし、「各界において功績、功労のあった人を招き、日ごろの労苦を慰労する」という本来の趣旨に立ち返ったうえで、来年も開催すべきものではないかと思います。
 叙勲や褒章の受章者は皇居に招かれて天皇陛下からお言葉を賜る機会があるのですが、同じく厳正な審査を経て選ばれる各省大臣表彰者はそのような栄には浴しません。あくまで一案ですが、「公正性」「透明性」を確保する観点からは、そのような方々を招待するというような基準も考えられてよいのではないのでしょうか。
 民主党政権の時も同じようなことをやっていた、との視点もあり、それなりの牽制・抑止効果はあるのでしょうが、どこかとの比較ではなく「自民党は立派だ」とのご評価を頂くことこそが大切なのであり、自らを省みて反省すべきことばかりが多いことを痛感します。

 これを書いている時点ではまだ日韓GSOMIAについて最終的な結論は出ておらず、当面失効は回避されたとの報道があったところですが、日本側も引き続き協議を続け、「破棄やむなし」という姿勢は採るべきではないと思います。日米同盟、米韓同盟は存在しても「日韓同盟」は存在せず、両国を結ぶものの一つがGSOMIAであった以上、今後の努力は必要です。韓国を北朝鮮や中国の側により近づけてしまうことは日本の国益に反するものであり、韓国側の対応の背景や理由を知った上で、それも踏まえて日本の主張の正当性を相手方にも国際的にも理解されるような形で説明することが、北東アジア地域の平和に資するものと思っております。

 昨日の政策集団「水月会」の勉強会は赤澤亮正代議士の「災害は忘れる間もなくやってくる」と題する防災についての講演で、運輸官僚や防災担当内閣府副大臣の経験も踏まえた、とても内容の充実したものでした。啓発されるところ実に大でしたので、内容について次の機会にご紹介したいと思います。

 週末は、23日土曜日が能登地域青年会議所合同事業「我が国における過疎地域の未来」で講演と高野誠鮮氏との対談(午後1時・コスモアイル羽咋)。
 24日日曜日は日刊建設工業新聞社の新春対談(午前8時・鳥取市内)、国道482号線舂米(つくよね)バイパス開通式典・祝賀行事(午前10時・八頭郡若桜町現地)、物産館みかど花御所柿祭(午後1時・八頭町大門)、自民党賀露町支部総会にて憲法改正について講演、懇親会(午後3時・賀露神社)、等という日程です。
 花御所柿(はなごしょがき)は地元・八頭町の旧郡家(こおげ)町・旧大御門(おおみかど)村で主に生産されている、糖度が20度以上の非常に甘い柿で、東京ではごく一部の高級果実店を除いては販売されていませんが、通信販売も行っておりますのでネットでご検索の上、是非一度お試しください。
 来週で11月も終わり、いよいよ師走となります。週末は不安定な天候となることが予想されていますが、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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