2019年3月22日 (金)

知事選挙など

 石破 茂 です。
 昨21日、全国11道府県の知事選挙が告示されたのを皮切りに統一地方選挙がスタートし、地元の平井伸治鳥取県知事候補の出陣式で自民党県連会長として挨拶した後、愛知県と大阪府を廻ってまいりました。
 福井、島根、徳島、福岡など本来自民党が強い県で分裂選挙となっているのが今回の特徴ですが、政策の相違というより多選批判や自民党内の勢力争いに起因するものが多く、有権者の戸惑いには相当のものがあるようです。「野党があまりに弱いので大きくなり過ぎた自民党が割れる現象がおきている」のは確かにその通りですが、それは「野党が付いた方が勝つ可能性が高い」ということでもあります。
 かつて鳥取県でも、平成11年、四期を務めた西尾邑次知事(故人)の後継を巡って鳥取県出身の自治省高官を推すベテラン県議グループと、岡山県出身ながら鳥取県で総務部長を務めた同じく自治官僚の片山善博氏を推す若手県議グループが対立し、危うく分裂になりかけたことがありました。当時私は片山氏を推す立場にいたのですが、同じ自治省出身の平林鴻三代議士(元鳥取県知事・森内閣で郵政相・比例中国ブロック選出・平成15年勇退)の裁定により知事候補は片山氏に一本化されました。その後しばらくはゴタゴタしたのですが、やがてすっきりと纏まり、晩年の西尾前知事には私も随分とお世話になりました。中選挙区時代に私と激しく争った平林先生のご決断には今も感謝しておりますし、それが今日の鳥取県政の安定に繋がっています。重大な局面で人を得ることの大切さを今もしみじみと思います。
 16日土曜日に大分県宇佐市安心院(あじむ)で開催された「日本農泊連合結成記念シンポジウム」で記念講演をしてきたのですが、このシンポジウムの主眼は「バカンス法」の制定にありました。フランスをはじめとする欧州の多くの国には「有給休暇取得率」という概念が存在せず、有給休暇は権利として100%取得、そのうち何日かは細切れではなく連続してとることが当然とされており、彼我の差には大きなものがあります(フランスでは個人が勝手に有給を放棄すれば健康保険を受給する権利を失う、との話もありますがこれは要確認)。
 仮に法制度を整備して労働者の有給休暇連続取得を可能としても、その受け皿がない、子供の休みと重ならないなどの問題点も多々指摘されていますが、農泊の推進も含め、労働者の健康保持や生産性の向上、農山漁村の活性化という観点からも真剣に検討し、ILO52号条約も視野に入れて実現に向けて努力したいと思っています。
 振り返ってみれば昭和54年に銀行に就職して以来、新婚旅行以外で三日以上の休みを取ったことがないのが自分の現実です。銀行員時代は高度経済成長時代の名残りがあった頃で、勿論週休二日制度もなく、土曜日は「五時に仕事が終わる日」、有給の日は「自分の名前で書類を作らない、自分の判を推さない『居ないことになっている』日」というような位置づけでした。日曜日に独身寮ですることもなく過ごしていた時に「早く明日が来ないかな」と思い、これはワーカホリックの初期症状ではないかと恐ろしくなったことを鮮明に覚えています。妙に毎日が楽しかったのもまた事実ですが、若手社員でまだそれほど責任が重くなかったからだったのでしょう。
 家庭や家族を大切にし、会社の仕事以外の人生の価値を見出し、「自分がいなければ」と言う思い上がりを排し、健康を害してかえって社会に迷惑をかけることもなく、仕事の質を上げていくためにも適切にお休みを採ることは必要なのですね。
 週末23日は福岡Student&Scholar&Lawyer講演会「憲法改正 保守の原点を学ぶ」で講演(午後1時・西南学院大学)、その後24日日曜日にかけて佐賀県内を遊説、25日月曜日は時事通信社内外情勢調査会福岡支部で講演(正午・西鉄グランドホテル・福岡市)、その後山梨県に移動する予定です。
 来週には東京の桜も満開となるようです。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

| | コメント (0)

2019年3月15日 (金)

袴田茂樹教授ご講演など

 石破 茂 です。
 東日本大震災・大津波から8年目となる11日月曜日、東京・国立劇場で政府主催の追悼式典が行われ、秋篠宮殿下・妃殿下がご臨席になり殿下がお言葉を述べられました。
 阪神淡路大震災の追悼式典がそうであるように、天皇陛下のお出ましは五年、十年という節目の年とする、ということのようですが、今上陛下のご譲位(お譲りになる皇太子殿下がおられるのですから、「ご退位」より相応しい言葉と思います)後、新帝陛下と皇嗣殿下(現秋篠宮殿下。皇室典範を改正して「皇太弟殿下」とする方が望ましいと思います)ご夫妻で分担されることとなり、ご負担は今以上に増すことと拝察致します。
 誠に畏れ多いことながら、皇室の在り方について議論を深め、成案を得ることが政治の責任であり、自分の考えを纏め、世に問わねばならないことを痛感しています。

 今週の水月会の勉強会は、新潟県立大学の袴田茂樹教授をお迎えして北方領土問題に関する講演を拝聴し、質疑応答を行いました。同教授は木村汎・北海道大学名誉教授と並ぶ日露関係についての権威で、かねてよりご指導を頂き、ロシアにおける専門家会議にご一緒させて頂いたこともありますが、今回の講演はコンパクトながら本質を鋭く突いたものであり、頭の整理にとても役立ちました。
 ロシアは最近、「北方領土が第二次大戦の結果、合法的にロシア領になった」との自国の主張について、国連憲章107条などにある「敵国条項」(「この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動で、その行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、または排除するものではない」)を援用し、ヤルタ協定の有効性を主張するようになっています。しかし同協定は日本が関与していない秘密協定でありこれに拘束されることはなく、アメリカはこれが無効であることを認めています(アイゼンハワー大統領1953年年頭教書・1956年国務省声明)。
 加えて、「敵国条項」自体、1995年の国連総会において同条項を削除する作業を開始する旨賛成多数で決議されており(反対は北朝鮮・リビア・キューバのみ)、かつてはソ連も無効を確認していたはずです(日ソ共同声明・1991年4月・海部・ゴルバチョフ会談)。ロシアの主張には全く正当性も一貫性も無いと断ずる他はありません。
 「敵国条項」の存在は、United Nationsが「第二次大戦に勝った国の集まり(連合国)」であることを如実に示すものであり、これを「国際連合」という、あたかもInternational Government(世界政府)かのような語感を持つ翻訳をしたことが、そもそもの間違いの始まり、日本人の国連に対する誤解や無理解を招くもとであったように思います。
 日本と同じ漢字使用国である中国はそのものズバリ「連合国」と訳しており、日中の国民の抱く国連観はかなり異なっているに違いありません。

 ロシアは日本から見ればいかなる詭弁も弄する国なのであり、さればこそ平然と「敵国条項」などを援用してくるのでしょう。この国を舐めてはいけないと思います。
 敵国条項も削除に向けた作業が決議されたとは言え、その作業は全く進捗しておらず、厳然と残っているのであり、これも等閑視すべきではありません。
 「毅然たる外交」というのは勇ましい精神論ではなく、このような地道な作業を国際社会の理解を得ながら積み重ね、成果を得ることだと考えています。
 北方領土問題は袴田先生ご指摘の通り「日本国の国家主権の問題」であり、国際法と歴史を日本国民に正しく認識していただくことこそが何よりも肝要です。

 10日日曜日には大阪で小林よしのり氏が中心となっている「ゴー宣道場」に参加し、世の中には老若男女、様々な考え方があるものだと感じ入りました。このような機会を提供してくださっている関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

 大阪の府知事・大阪市長ダブル選挙は奇手奇策と言う他はなく、全く共感も理解もできませんが、あれこれ言ってみてもこの選挙に勝つことが出来なければ結果として混乱・迷走が続くだけであり、自民党本部も大阪府連も有権者からその姿勢を厳しく問われることになります。
 常在戦場、とはなにも衆議院議員に限ったことではなく、平素から候補者を養成し、鍛錬しておかなくては政党の存在意義がありません。

 週末は、16日土曜日が「未来ある村 日本農泊連合結成記念シンポジウム」で講演(午後1時・安心院文化会館・大分県宇佐市)、その後神戸市内で数カ所の統一地方選挙立候補予定者の応援演説会。
 17日日曜日は鳥取県内で自民党の県議会議員選挙立候補予定者の集会を七か所回ります。

 来週はもうお彼岸なのですね。12年に一度の統一地方選挙と参議院選挙の重なる年は、時間的感覚も季節感も希薄となり、殺伐とした精神状態になってしまいます。
 今年はお彼岸の墓参りの日程も取れそうにありません。御先祖様、何卒お許しください。

 皆様お元気でお過ごしくださいませ。 

| | コメント (29) | トラックバック (0)

2019年3月 8日 (金)

北東アジア地域の安全保障など

 石破 茂 です。
 米朝会談から一週間余が過ぎ、様々な論説が出てくるようになりました。
 今週、アメリカ、イギリス、ドイツ、ブラジル、韓国などの欧米やアジアの有力シンクタンクの代表的な研究員たちと北東地域の安全保障について議論する機会があったのですが、国によって、人によって随分と見方が違うことを再認識致しました。政治家間や研究者間でこのようなディスカッションの機会を多く持つことの重要性を痛感したことでした。

 これに関連して、発売中の月刊誌「Voice」四月号の特集「日韓確執の深層」と「『感情』が世界を滅ぼす」は久々にかなり読み応えのあるものでした。国際政治学者の三浦瑠麗女史も「戦争と平和のコストを認識しているか」と題する論考を寄せておられますが、同女史の新著「21世紀の戦争と平和」も刺激と示唆に富んだ力作です。何度か精読して咀嚼・理解しなければならないと思っております。

 永田町にある内閣府が入る合同庁舎敷地に掲げられている看板に記載された北方領土返還へ向けてのスローガンは、いつの間にか「北方領土 かえる日 平和の日」から「北方領土を想う」に変わっていました。不覚にもあまり気に留めていなかったのですが、ある方からご指摘を受けて以来、とても気になっています。
 以前のスローガンには控えめながらも領土返還に向けた意志が込められていたように思うのですが、今の「想う」にはそれが微塵も感じられません。政府には国民の意思を体現すると同時に、正しい意味での国民に対する啓発・啓蒙の責務もあるはずです。国会においてこのような議論がもっとあるべきだと思われてなりません。

 先日、議員宿舎の整理をしていたら、遠藤周作の「ファーストレディ」(新潮社・昭和63年。新潮文庫版もあります)が出てきて、久しぶりに読み返してみました。
 雑誌連載時の題名は確か「セカンドレディ」であったと記憶しますが、終戦直後から佐藤内閣にかけて、ひたすら総理大臣を目指して権謀術数の限りを尽くす渋谷忠太郎と彼を取り巻く人間像を描いた作品です。主人公は佐藤内閣で念願の大臣に就任したのもつかの間、スキャンダルで辞任に追い込まれ、直後病に倒れるのですが、死の直前に彼が奥さんに向かって「なあ、わしの人生って何だったんやろ」と呟く場面はとても印象的です。
 遠藤周作では「イエスの生涯」「沈黙」「死海のほとり」などの同氏のカトリック信者としての思いが込められた作品を学生時代に読んだものですが、この「ファーストレディ」はかなりの異色作です。ご一読をお勧めいたします。

 予算案の審議が参議院に移ったため、衆議院はつかのまの比較的平穏な時期となっています。
 今年は統一地方選や参議院選を控えて、週末はどうしても自民党県連会長を務める鳥取県や全国各地での応援の日程が入りますため、各種団体や地方メディアからご依頼を受けている講演は、国会や党務の日程と調整しながら今の時期にこなすことが多くなります。
 今週も平日に北海道や群馬県などに出向きましたため、いつも以上に内容が稀薄かつ推敲不行き届きで粗雑な文章となりましたことをご容赦ください。

 週末は9日土曜日が秋田県、10日日曜日は大阪府へ参ります。日曜日は「ゴー宣道場」で小林よしのり氏と憲法改正について議論する予定です(14時・JEC日本研修センター江坂)。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

| | コメント (38) | トラックバック (0)

«予算委員会 中央公聴会など