2017年1月20日 (金)

陛下のお気持ちなど

 石破 茂 です。
 日本国憲法第1条(「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」)により、天皇陛下のご地位は国民の意思によるものです。
 憲法第41条(「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」)によって、形式論的には国会議員が国民の意思を代表するのであり、いかなる法形式を採るかは別として、ご譲位に関する法律が定足数を充たす衆参両院出席議員(総議員ではない)の過半数によって可決され、成立すればよい、ということになるのでしょうが、そもそも本当にこれを「国民の総意」としてよいのか、全会一致でなければ「総意」とはいえないという考え方も、憲法改正の発議と同じく3分の2で足るとの考え方もありましょう。

 昨年8月8日、天皇陛下がそのお気持ちを全国民に対してビデオメッセージという形でご表明になったのは、主権者である国民一人一人に考えて欲しいとの大御心だと畏れながら拝察します。
 自分の不勉強を棚に上げて言うのですが、小学校から大学に至るまで、憲法の天皇陛下に関する条文も、新旧皇室典範も私はほとんど学ぶことが無く、議員になってからも陛下のお気持ちのご表明までは通り一遍の上辺だけの知識しか持っていませんでした。お気持ちを承って以来、不充分ながら自分なりに勉強してきましたが、ことの重大性と緊要性に恐れおののくばかりです。
 今日までこの課題に正面から向き合おうとしてこなかったことを、長く国会議員を務めてきた者として陛下と国民に心から深くお詫びしなければなりません。本当に申し訳のないことでした。

 新年の多くの会に出席し、挨拶を聴いてきましたが、この課題に触れる人は私の知る限り皆無でした(馴染まない雰囲気を感じながらも私自身はなるべく触れるようにしてきました)。
 少なくとも、与野党を問わず国会に議席を持つ者は、この課題の持つ意味をそれぞれの選挙区において広く語り、理解を得、意見を聞く責任を有していると思います。それは日本国の在り方そのものを国民それぞれが考えることであり、戦前から戦後を通じて多くの先人たちが生命を賭して護ろうとしてきたものを次代に引き継ぐことでもあります。
 「手続きが膨大」「時間が足りない」「政局にすべきではない」などに藉口することなく、間違いなくこの課題に誰よりも真剣に向き合ってこられ、最高の権威であらせられる陛下の大御心に沿うべく、真摯に、誠実にお応えしなくてはなりません。
 陛下はお言葉の中で「天皇が(日本国の)象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めるとともに、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じてきました」と仰せになっておられます。これを今上陛下ご一代限りのものとして捉えてよいとは、私には思われません。
 「静かに議論する」ということは「議論を行わない」ことではありません。本日の国会開会式に臨まれた天皇陛下のお姿に接し、そのように深く思ったことでした。

 日本時間明日未明、ドナルド・トランプ氏がアメリカ合衆国大統領に就任致します。日高義樹氏の著書「核の戦国時代が始まる 日本が真の独立国になる好機」(PHP刊)によれば、同氏は「日本は第7艦隊の艦船の建造費の一部は分担すべき」と述べているそうです。
 最新鋭航空母艦「ジョージ・ブッシュ」は建造費だけで約7300億円、これに搭載機の価格を足せば一兆円は優に超えるものと思われ、分担率や艦艇の寿命にもよりますが、第七艦隊全体の一部負担とすれば相当の額になります。
 日米同盟の長い経緯を踏まえた者からは発想もしえないディール的な思考をする可能性も否定は出来ません。このような考え方が第7艦隊のみならず海兵隊を含む四軍すべてに及べばどうなるのか、荒唐無稽ですが可能性がないと言い切る自信はありません。ことほど左様に、我々は今まで考えても来なかった課題に直面せねばならないように思われます。
 日高氏の所論には賛同できない部分もありますが、政界に限らずアメリカの内情に通暁する卓越したジャーナリストの一人であり、いつも大いに啓発されます。昨年5月に私が訪米する途上、偶然機内でお目にかかった際に、トランプ氏当選の可能性について言及しておられたのが極めて印象的でした。

 週末は、21日土曜日がクニエダ(株)生産技術高度化施設竣工式・昼食会・内覧(正午・滋賀県守山市)、JAおうみ富士職員との意見交換会(午後2時・ファーマーズマーケットおうみんち)、川西いちご園見学、立田地区・地区計画について自治会役員会との意見交換会、野洲川歴史公園視察(午後3時以降・守山市内)、「地方創生で守山を元気にする会」で講演(午後5時・ラフォーレ琵琶湖)。
 22日日曜日は「守山を元気にする会」関係者との朝食意見交換会(午前7時半・同)、という日程です。

 都心は小雪が舞う天気となりました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年1月13日 (金)

トランプ政権と地方創生など

 石破 茂 です。
 最近、テレビ番組や講演などのテーマに「トランプ政権と今後の日米関係」を依頼されることが多いのですが、「実際に就任してみなければわからないし、してからもわからない」というのが正直なところです。
 昨日のトランプ氏の会見を見ていると、当選直後にテレビのインタビューで答えていた「メキシコとの間に壁は作らず、既に設置されたフェンスを活用する。オバマケアは修正する」などをあっさりと覆し、「メキシコ国境での壁建設計画を早期に実現する。フェンスではなく壁であり、費用はメキシコに負担させる。オバマケアは大失敗であり撤廃する」と発言したことにはいささか驚きました。公約の原点に戻ったと言えばそれまでですが、この人の真意は一体那辺にあるのか。真意、などというものはなく、その都度レトリックを使い分けているのだとすれば、これは相当に由々しきことです。
 彼のことを「ディールとサスペンスの大統領になる」と予測した人がありましたが、まさしく「相手に不安や緊張を抱かせて不安定な心理状態に置き、取引を仕掛ける」という手法を駆使するように思われます。対アジア政策も、対中・対露政策も、就中対中東政策もそうなるでしょうし、当面世界情勢は不安定にならざるを得ないものと覚悟しなければなりません。

 従来の民主主義・自由・人権・法の支配などという「普遍的な(とアメリカが思っていた)」価値を重視した外交から、アメリカの利益を重視する外交へと転換する可能性が高く、それに振り回されないようにするためには、我が国が地道に経済力と防衛力を回復・強化させていく他はありません。
 昨年10月に公表されたIMFの経済成長率見通しでは、我が国の成長率は0・6%で先進国の中で最も低く(アメリカ2・2%、ユーロ圏1・5%、英国1・1%)、その要因の一つである人口増加率はG7で唯一マイナスに転じ、労働生産性も24年連続でG7中最下位、という状況を直視すべきなのであり、その打開のための方策が地方創生であったことを忘れてはなりません。
 防衛力も、米国に対して集団的自衛権の全面的な行使が出来ない代償的義務としての基地提供義務と、米軍駐留経費の75%を負担していることが、防衛費対GDP比1%の正当性たりうるか、もう一度精緻に検証したいと思います。英国はEUからの離脱を決定しましたが、防衛費はNATO目標に従い2%を負担しています(絶対額も日本より多額)。日本周辺の安全保障環境が英国よりも良好であるとはとても考えられず、平和と繁栄にはそれに見合う負担を負わねばならないでしょう。
 まだ斜め読みしかしていないのですが、英国のEU離脱やトランプ勝利については、「問題は英国なのではない、EUなのだ 21世紀の新国家論」(エマニュエル・トッド著 文春新書)はとても面白そうです。

 天皇陛下のご譲位について、新聞各紙が「今上陛下は平成30年末で皇太子殿下にご譲位され、平成は30年で幕を閉じる」「今上陛下にのみ適用される特例法で対応する」とあたかも既定事実のごとくに一斉に報道していることには、まるで既成事実化が試みられているような印象を受けます。
 日本国憲法には「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と「日本国」と「日本国民統合」を分けて書いてあります。前者が憲法に限定列挙してある国事行為を指すとすれば、後者は今上陛下が営々と多年にわたって築いてこられた、国民と寄り添うお姿に国民が心からの敬慕の念を抱く「公的なご活動」を核とするものなのではないでしょうか。そう考えると「ロボット論」とか「今上陛下一代限り」という考えとは異なる結論も導き出せそうにも思われます。皇室の安定的な継続についても、今回何らかの解を見出すことが現在の日本国民に課せられた、日本国に対する責任のように私には思われます。
 「天皇『生前退位』の真実」(高森明勅著・幻冬舎新書)は、頭を整理する意味で有益なものでした。

 週末は1月14日(土)「激論!クロスファイア」(BS朝日系列・午前10時・収録)に出演の予定です。
 皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年1月 6日 (金)

年男など

 石破 茂 です。
 明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。新年早々本欄に多くのご意見をお寄せ頂いたことにも心より感謝申し上げます。

 元旦以来、いくつもの新年会に出席する機会がありました。当然のことながら「今年は酉年」で始まる挨拶が多いのですが、年男である私は、「そうか、アイツも今年は還暦なのか」と思われたくなくて、なるべくこの話題を避けて挨拶をしています。
 もっとも、以前は年が新しくなったことの何が目出度いのかよくわかりませんでしたが、齢を重ねて還暦近くともなると、ああこの一年、無事に過ごせてよかったなとしみじみ思います。いつのまにか今の衆院議員の平均年齢55歳も既に大きく超えてしまい、もはや決して若くはないのだ、日々を大切に生きなくてはと思わされた年明けでした。

 お正月は新聞や雑誌に比較的丹念に目が通せる有り難い時期なのですが、四日付の朝日新聞朝刊の「『経済成長』永遠なのか」と題する記事はとても興味深い視点から書かれたものでした。曰く、「今や数万円で買えるスマホの機能は、25年前であれば遥かに性能の劣るパソコン30万円、テレビ20万円、固定電話10万円、カメラ3万円、全35巻の百科事典20万円、計80万円を超えるものだったが、この便益の飛躍的な向上は国内総生産・GDPというモノサシで測ると、統計上はスマホの8万円に減ることさえある」とした上で、経済成長の持つ意味を問うています。雑誌「正論」2月号に収録された林景一前駐英大使の「トランプ孤立主義を目覚めさせる日英同盟構想」も、トランプ政権の今後と我が国のとるべき対応を英国の視点から論じたという意味で、とても示唆に富むものでした。同氏の近著「イギリスは明日もしたたか」(悟空出版刊)も是非読んでみたいと思っています。

 今朝は地元岩美町網代港での沖合底引き網漁船の新年初出航行事で、底引き網漁船の状況を見る機会がありました。昨年12月14日に、同じ岩美町の田後漁港所属「大福丸」が松江沖で転覆・沈没し、乗組員9名が遭難するという痛ましい事故があったのですが、同船は船齢30年の老朽船でした。
 沖底船許認可隻数329隻のうち200隻が船齢20年を超えているという現状は決して放置できないものですが、1隻あたり5億円はするという高価な船をいかにして建造可能とするのか、効果的・計画的な支援策を早急に講ずる必要があることを、自民党水産基本政策委員長として再認識させられました。

 週末は、7日土曜日が岩美町新年挨拶交歓会(午前10時・岩美町中央公民館)、藤井一博鳥取県議新年互礼会(午前11時・水明荘・湯梨浜町)、鳥取県東部歯科医師会新年祝賀会(午後5時半・ホテルモナーク鳥取)、同中部新年祝賀会(午後6時・倉吉シティホテル)。
 8日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、自民党鳥取県連選挙対策委員会(午前11時半・米子ワシントンホテル)、あいサポートとっとりフォーラム17で講演(午後1時・米子コンベンションセンター)、という日程です。
 あいサポートフォーラムはここ10年近く続けて参加していますが、障碍を持った方々に対する政策について考えることのできる、私にとってはとても貴重な機会です。当選2回の頃、社会福祉政策や医療政策について、自民党の社会部会や、衆議院の社会労働委員会で随分と真剣に学んだのですが、最近は縁遠い分野となってしまいました。このような機会をとても有り難く思っています。

 比較的穏やかな年の初めとなりました。皆様、ご健勝にて良い一年をお過ごしくださいませ。

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