2024年7月12日 (金)

最近のおすすめ書籍など

 石破 茂 です。久しぶりに、最近読んで感銘を受けた本のご紹介です。

 

 「なぜ日本人はかくも幼稚になったのか」(福田和也著・1996年・角川春樹事務所)
 最近はあまりお見掛けいたしませんが、平成時代の初期、保守の若手論客として活躍した福田和也氏の論考です。「まず政治家が国民に『イヤなこと』を強いなければならない」「民主主義は万能の特効薬ではない」「『侵略戦争』か『聖戦』かという枠組みで戦争の意味を考えるのは間違いだ」等々、賛否は別として、物事の本質を正面から見極めて論じた論考には改めて深く考えさせられます。

 

 「矛盾だらけの日本の安全保障 『専守防衛』で日本は守れない」(冨沢暉元陸上幕僚長と田原総一朗の対談集・2016年・海竜社)
 正に題名通り、安全保障の本質を論じた対談集で、陸上自衛隊のトップを務められた冨沢氏の見解は地に足の着いた説得力に富むものですし、田原氏の質問も極めて巧みです。自分の雑駁な知識を整理するのにとても役立ち、改めて多くの貴重な示唆を受けました。

 

 「21世紀未来図 日本再生の構想 全体知識と時代認識」(寺島実郎著・2024年・岩波書店)
 経済、国際関係、安全保障等々、各般にわたって深い知識と鋭い洞察力を持って論じた素晴らしい一冊。今の米国を論じるにあたってのキーワードは「クリスチャン・シオニズム」であるとの指摘には、深く頷かされました。混迷する今の時代にあって、あるべき保守の思想とはこのようなものではないかと思います。
 寺島氏の著書以外は既に絶版かと思われますが、ネットでは入手可能です。是非ともご一読くださいませ。

 

 東京都知事選挙は大方の予想通りの結果となりました。石丸氏が二位に入ったことを意外とする向きもありますが、「基本的には保守系」「自民党ではない」「若くて見栄えが良い」「はっきりとモノを言う」という、今の時代の要請に当てはまった候補者であり、メディアが大きく取り上げたので、ある意味当然の結果であったのかもしれません。
 ご本人と一度も会ったことが無いので、単なるメディアを通じての印象となり恐縮ですが、開票日の同氏のインタビューの受け答え振りやその内容には少なからず違和感を覚えました。メディアからどれほど自分の意に沿わない質問をされても、インタビュアーの向こうにいる視聴者や読者に向かって出来るだけ丁寧な受け答えをしなければならない、というのは自戒を込めて思っていることですが、皮肉と冷笑を交えたような回答ぶりには残念な思いがいたしました。また、今後について問われた際、国政への意欲を披瀝し、「岸田総理の広島一区も選択肢」と述べた時にはやや興醒めした思いでした。四年前に安芸高田市長に立候補した時、そして今回都知事選挙に立候補した時、それぞれに語った政策に共感して投票した人の思いについては、どのように考えているのでしょうか。いつかご本人と話をする機会もあるかもしれませんので、あくまで現時点における私の感想です。

 

 小池知事はやはり二期八年間の実績に基づく安定感が評価されたのでしょうし、公約に掲げられた地下鉄駅のシェルター化や富士山噴火対策などを着実に実施し、全国のモデルとしていただきたいものです。
 蓮舫氏の敗因として、都知事選挙に国政の争点を持ち込んだことや、共産党との共闘を挙げる向きもありますが、詳細な分析はこれからなされることと思います。かつて社会党と共産党が推した美濃部亮吉知事の選挙の際、当時不人気な長期政権であった佐藤栄作政権を意識して「ストップ・ザ・サトウ」というキャッチフレーズが大きな効果を発揮した故事もあり、一概には言い切れないようにも思います。
 同時に行われた都議会議員補欠選挙が自民党の2勝6敗という結果に終わったことこそ、総括と反省が必要です。来年は都議会議員の本選挙、参院選などが控えており、「地方選の結果に一喜一憂しない」などと言っている場合ではありません。
 私が応援演説に行ったうち、府中市、板橋区では自民党候補が勝利できました。候補者も、応援体制も立派だったと思いますが、なによりも有権者の皆様に心よりお礼申し上げます。どちらの候補者も、自民党の数々の不祥事について率直にお詫びするとともに、それぞれの地域の課題と解決策を誠実に熱意を持って語っていたことが印象的でした。

 

 昨11日は、3月に急逝された元防衛大学校長 元神戸大学教授 元防衛省改革会議座長の五百籏頭真先生を送る会に参列して参りました。様々な事故や不祥事が続いた防衛省・自衛隊を改革する際、福田康夫内閣の防衛大臣として言葉に尽くせないご指導を賜りましたことに、心より感謝しております。「送る会」では蒲島郁夫氏、北岡伸一氏、御厨貴氏のお三方の弔辞が実に素晴らしいものでしたし、ご子息の五百籏頭薫・東大教授の謝辞も感銘深く拝聴いたしました。真のリベラリストであり、教育者であり、深く学問を究められた五百簱頭真先生の、御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。

 

 今週の都心は異様に暑い日々が続きました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
 

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2024年7月10日 (水)

イシバチャンネル第百四十六弾「出生率」

イシバチャンネル第百四十六弾をアップいたしました。


 


是非ご覧ください

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2024年7月 5日 (金)

都議補選など

 石破 茂 です。
 東京都知事選と9選挙区での東京都議会議員補欠選挙の投開票日を7日に控え、私も一昨日は八王子市と府中市での個人演説会、昨日は板橋区での街頭演説会で登壇して参りました。「知名度の高さ故の人寄せ要員」であろうとはいえ、候補者の人となり、訴えている政策の他に、当該選挙区や演説会場の所在地(八王子市加住町、府中市西府町、板橋区成増など)の各種指標や地域特有の課題などを事前にある程度承知しておかなければ、説得力のある応援演説にはなりません。東京都には62の市区町村があるのですが、人口増減率、世帯平均所得、出生率、婚姻率、人口当たりの病床数等々、さまざまな数値が大きく異なることに驚かされます。
 最近はこれらに加えて、太平洋(大東亜)戦争時の戦災状況も事前に調べるように努めて心がけているのですが、東京も昭和20年3月10日の東京大空襲だけではなく、府中市を含む東京都西部は同年5月25日、板橋は6月10日に大規模な空襲を受け、多数の犠牲者を出しています。シェルターや避難所を整備するにあたって、こういった歴史の教訓も今一度よく検証するべきです。市民や国民の避難を第一に考えていない、という点において、日本は戦前と戦後が連続しているように見えることに、改めて慄然と致します。

 都知事選や都議補選が終われば、政治報道は一気に自民党総裁選挙一色になるのかもしれませんが、内外の現状をどのように認識し、どのような政策を志向しているのかを等閑視して、ひたすら活劇調に「政局」のみを面白おかしく報じることは、日本政治にとって何のプラスにもなりません。未だに既存メディアの影響力が大きい中、「第四の権力」と言われるメディアに対しては三権分立的な相互抑制のシステムが存在していません。先週もこの点を指摘しましたが、もしメディアが暴走したら、立法府、行政府はどのような手段をとるべきなのでしょうか。司法による解決は裁判所への訴えという形がありますが、これには相当の時間がかかります。

 英国の総選挙では野党・労働党が大勝し、14年ぶりに政権が交代する運びとなりました。日本ではイギリスのような単純小選挙区制とは異なり、いわゆる「死に票」を生かすために比例代表制を並立で組み合わせているため、このような劇的な形での政権交代は起こりにくく、それが中途半端な感じを与えてしまっているのかもしれません。
 現在の小選挙区比例代表並立制は、それまでの中選挙区制度の「同じ自民党同士で戦うためにサービス合戦となりカネがかかりすぎる」「政策ではなく個人を選ぶことになる」「天下国家の在り方ではなく地域の利害を語る」等々の弊害を改めるため、長い侃々諤々の議論を経て導入されたものですが、それらの弊害は改められたのか、そして他の問題が生じてはいないか。自民党で中選挙区制度で戦った経験を持つのは、岸田総理や浜田衆議院国対委員長など、当選10回生以上のごく少数になってしまいましたが、そうであるだけに我々が残っている間にもう一度徹底した議論を行い、改めるべきは改めていかなくてはなりませんし、これは小選挙区制を導入した我々の責任であると思っています。

 日本銀行券の肖像画が、一万円券が渋沢栄一、五千円券が津田梅子、千円券が北里柴三郎に変更になり、この3日より流通が始まりました。福沢諭吉先生(慶應義塾で「先生」と呼ばれるのは福沢先生だけで、塾長であれ、教授であれ、すべて「君」で呼ばれます)が使われなくなったことに慶應のOB(「塾員」といいます)が反発しているとの報道も一部にありますが、最高額紙幣の肖像になっただけでも十分に名誉なことで、それほど拘ることでもないと思っています。そもそも紙幣の肖像画に政治家や軍人を使うことには慎重であるべきで、世界的な学問的功績のあった学者を優先すべきと思いますし、もちろん、時の政府の意図が働くようなことは断じてあってはなりません。

 前々回の当欄で「昔のクルマはうっとりするほどに美しかった」的なことを記しましたが、五木寛之氏の1972年の短編「わが憎しみのイカロス」には、BMW2000CSの美しさに惚れ込んだ少年の鬼気迫るような姿が描かれ、これを読んだ時の衝撃は今も忘れられません。五木氏の小説はほとんど読んでいますが、初期の短編や中編には何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていて、今も時折読み返しております。

 明日6日土曜日は自民党愛知県連大会で名古屋市へ、7日日曜日はかねてより親交のある元竹田市長の首藤勝次氏の叙勲祝賀会で大分県竹田市へ、8日月曜日は衆議院当選同期の木村義雄前参院議員の政経フォーラムで高松市へ、それぞれ参ります。
 酷暑の中、地方への出張が続き、心身ともにかなり疲れ気味ではありますが、何とかこなしたいと思います。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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