機能する抑止力
石破 茂 です。
千葉県知事に青春の巨匠、森田健作氏が当選。中学生、高校生の頃、「おれは男だ!」をはじめとする同氏主演の青春ドラマを熱心に見ていた世代からすると、なかなか感慨深いものがあります(挿入歌の「さらば涙といおう」は名曲でしたね・・・)。
「小沢氏の影響力に翳り」とか「進退に影響か」などと言われますが、あまり関係ないのではないでしょうか。森田氏が大勝したのは、もともと知名度抜群の同氏が四年前の知事選に出馬し、六千票差まで迫った実績とその後の地道な活動が評価されたのであって、知名度も実績も乏しい民主党推薦候補が勝つ可能性は最初からまず無かったように思います。
当然のことながら、自民党もこの結果を過大評価すべきではありません。相手の失点によって得点してもそれは決して実力ではない。当方の失点を防ぎ、得点を重ねて、ただ一人の解散権者である総理のご判断がいつでも出来る体制を早く整えなければなりません。
それよりもはるかに気になるのは、北朝鮮のミサイル(ロケットでもその原理は全く一緒です)発射に対する我が国の反応です。
当然ミサイル防衛システムは完璧ではありません。しかし、(その是非について議論はあるものの)現実として存在する米国の「核の傘」という報復的抑止力と、国民保護をはじめとする避難措置、ミサイル防衛の二つの拒否的抑止力が重層的に組み合わされて抑止力が効果的に機能するのであって、このような抑止力理論がどうもきちんと理解されていないようです。
如何なる場合に核を使うか、如何なる場合は使わないのか、日米間でその共通認識を欠いたままでは「核の傘」の信頼性は担保されません。NATOにおいてはこれが定期的に行われており、北朝鮮が核実験を行ったら急に「日本も核を持つべきだ!」などという議論が沸き起こり、米国国務長官が慌てて来日して「心配するな!米国は必ず日本を守る!」と叫ぶような日本における姿とは随分と異なります。
また、安全保障とは「信じるものは救われる」などという世界ではありません。訓練を行わずして国民保護の実効性は高まりませんし、それを怠って、ミサイル防衛の信頼性にのみ疑義を呈することは、あまり意味のある議論とはいえません。
米国の拡大抑止の信頼性を高めること、国民保護を徹底すること、ミサイル防衛システムの精度を上げることに全力を尽くすべきなのであり、それが責任ある政府の対応というものです。
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コメント
4月1日新年度突入ですね。
気の利いたAprilFoolでも有れば良いのですが、そう言った事を楽しめる世情でもなさそうです。
千葉県知事選のこと仰せの通りだと思います。相変わらずのマスコミ論調で、小沢代表問題がなければ民主党推薦候補が有利などと思わされていたことが滑稽です。
安全保障という概念を、そろそろ軍事力に依存した考え方から脱却するべき時期ではないでしょうか。霊長類ヒト科も少しは進化しないと、他の生物に・・・。
投稿: annan | 2009年4月 1日 (水) 17時37分
石破大臣 こんばんは。
毎日の激務お疲れ様です。
以前 北朝鮮の○○息子が 偽造パスポートで密入国し入管に収容された時・・・当時の外務大臣であった 田中真紀子(現民主党会派)が 足を バタバタさせて 早く・早く・早く 将軍様の元へ 返しなさい と 言って 日本の法律を無視して 返しましたよね!! テポドンが飛んで来るからとか言ったりして!!!
脅しに屈するのじゃなく どうすれば 脅しを役にたたなくするか?? 何をしたら 脅さなくなるか?? などを考える必要があると思うんです。。
小沢代表のように アメリカには 頼らない! 自衛隊の海外派遣や武力行使は認めないでは 何もできない 何も進まない 何も議論できなくなりますよね??
何でも国連 国連では とても とても 政権なんか任せられないし 安心して暮らす事さえできませんよ。
民主党はバカの一つ覚えみたく 政権交代をずっと 言ってますが まずは その前に 襟を正して 審議拒否をせずに まともな質問議論をしてもらいたいです
投稿: 三重県の自民党ファン | 2009年4月 1日 (水) 22時46分
こんばんは。
大臣のブログを拝見するまで2つの抑止力がある事をしりませんでした。なるほど、核の報復的抑止力もあるのですね。
今の日本は核や自衛隊、防衛などという話になると議論を避けがちな部分があると思います。一度きちんと考えるべき話なのに曖昧にされたままなのが今の現状を引き起こしているのではないでしょうか?
メディアでも国会でもそれぞれのメリット・デメリットについて話し合う機会が必要かと思います。
投稿: 溝田 | 2009年4月 1日 (水) 23時02分
アメリカの核抑止などあてになりません。今回、仮に日本本土に落ちるようなことがあってもアメリカのイージス艦は傍観し、アメリカ本国も報復はしないでしょう。
あなたが、どうしてアメリカをそれほど信頼しているのか、理解できません。日本が核武装しなければ、日本は永遠にアメリカの植民地です。一方的に北朝鮮の脅威を植えつけられ、高い金を払わされてミサイル防衛という盾だけを持たされて、アメリカ支配の弱小な国家に成り下がる未来しかありません。
投稿: 田母神 | 2009年4月 2日 (木) 16時58分
恐ろしい事をおっしゃいますね…
エイプリルフールですか
投稿: アーガサ | 2009年4月 5日 (日) 13時14分
こんばんわ
おっしゃる通りです。安全保障とは、「信じる者は救われる」といった類のものではありません。故に、国家の安全保障とは、宗教性や民族性というものから切り離して考えるべきだと思います。しかし、政教一致している部分や民族問題を有耶無耶にしている部分があり、出来てないのが今の日本の現状でしょう。例を挙げるなら、前者は創価学会問題、後者は在日特権問題など。
北朝鮮の核やミサイル開発には日本のパチンコ業界から資金が流れていたなどという憶測話もありますし、また反戦平和団体や宗教団体が対日工作をするテロリスト共の隠れ蓑になっている可能性は否定できません。我々国民は日本国の安全保障を考え、しかるべき改善策を施さなければなりませんし、それが政治家たる皆様方や責任ある政府の役割であると思います。
おじゃましました(敬礼)
投稿: ひこ | 2009年4月 5日 (日) 21時00分
いつもブログを拝見させて頂いております
政治家の中でも安全保障に精通し正論を語る石破さんを信頼しておりますが…
「核抑止論」が未だに最重項目だと言うような意見には少し疑問を持ちます
冷戦終結後…
特に核保有国であるはずの米国が自国内でテロにあった「911」以降は…
「核がすべてを保証してくれる」と言う神話は崩れ去ったのではないでしょうか?
核が「究極の兵器」である事は間違いなく…抑止力になる事は間違いない事実ですが
それだからこそ…逆に柔軟性が効きません
個人的に日本の安全保障で今…最も重要な問題は…
「米国並み」の情報収集…分析…それに見合った素早い対応と…それが確実に出来る組織と人員の育成ではないでしょうか?
「火事」になった時…
消火器を頼りにするのも間違いではないですが…
「火事」を出さない予防や訓練の方が重要だと思いますが…
投稿: KIA/POW | 2009年4月 6日 (月) 22時44分
火事にならない努力(経済・外交・軍事・食糧その他諸々)と火事になったときの備えの両方が同じように大事だと思います。
投稿: 昇龍飛玉 | 2009年4月 7日 (火) 12時01分
初めて投稿します。常日頃私は自民党を批判しています。現在の官僚天国を作ったのは紛れもなく自民党であるからです。これまで「減税」と称して行って来た事も全て高額所得者保護策でしかない。結果として20年前からは想像も出来なかった格差社会になってしまった。
しかし自民党内でも石波大臣だけは評価しております。常にブレない姿勢と防衛に関する知識など、今の現職とは比較になりません。
さて現在のミサイル構想が抑止力にならない事は今回平然と発射されたことからも明確です。
かといって日本が核武装と言うのも現実的では
ありません。「それ見た事か」と中国、北、韓国の3国を中心に非難が集まるだけです。
そこで方策としては北朝鮮は近い将来アメリカ本土に到達するICBMを開発するでしょう。
反アメリカのイスラム圏諸国も追随してくるのは確実です。
それを大気圏外で迎撃できるミサイルを独自開発することです。それが出来ればアメリカと互角の立場に立てます。なぜならアメリカは過去1度として本土を叩かれた経験がなく、国内がパニックに陥る事を恐れている。
現在のアメリカの迎撃システムも万全ではない。太平洋上で大気圏外で迎撃できるシステムを日本が開発すれば間違いなく対等の条約が結べます。日本が打ち落としアメリカが報復攻撃をする、この連動が理想であると私は考えます。
投稿: 磯部道博 | 2009年4月 8日 (水) 14時05分
わたくし、三年前までエヴァの乗組員でした。引退後は三十四年間の体力練成を生かし整体師として頑張っています。
今回の北の事案に対する石破先生のブログ読ませていただきました。やはり石破先生らしい慎重で細やかな柔軟性のあるご意見だと思いました。さて今回の事案(北のミサイル)で改めて防衛力の乏しさを痛感して感じさせられました。話しは異なりますが正当防衛と過剰防衛と言う言葉があるとおり人はいつ、どこでどんな災難に出くわすやも知れません。そんな時、自分を守ってくれるのは誰でしょう。他人でも警察でもないはずです。自分の身は自分で守るしかないんでは。でもふだんから何も意識していない人は自分の身さえも守れきれいない。やはり相手を上回る力を持たないと身は守れないと言う事です。相手の刃を受けてばかりではいつかは体力がつき果て倒されてしまいます。相手の刃を裁いたら即、相手に打撃を与えねじ伏せる。それが真の正当防衛でありかつ、日本の防衛の将来のあり方では無かろうかと思います。アメリカとの協力はもちろん必要ですが、頼りすぎてはいけないと思います。あくまでも自分の身は自分で守る事を基本にした防衛力を日本は持つべきです。 これからは石破さ
投稿: 碇シンジ | 2009年4月13日 (月) 06時05分
http://www.news-postseven.com/archives/20110915_30947.html
小林よしのり氏の方が言ってる事は正しいな。
原発施設はただそれだけで諸外国に対する弱点晒しだ。
原子力発電所は断固として停止して、同時に核開発をすべし。
日本の安全保障に対して米国は一定以上の責任は負わない。
つまり危険水準が一定以上に高まったら日米同盟なんて機能しないんだよ。
リアリストを自称するなら「そうなった場合」を想定しないなんて嘘吐きだ。
国防の原点は性悪説なのに米国に対してだけ性善説で考えても意味が無い。
米国が日本を見捨てる段階を想定して、それに対処するのが政治家の責任。
米国と率直に話し合って核開発に協力してもらう。
日本の防衛に100%責任を負わないクセに日本の核武装を妨害するなら、
そんな米国は日本の敵国である。
米国の本性を見ましょう。
そこでうなだれるんじゃなくて、本性が酷いものなら国民にそれを公開すべき。
米国に逆らえない理由を自分から探して、
無理だ無理だ言うのは自虐以外の何者でもない。
何でフランスは元よりパキスタンですら出来た核武装が日本で出来ないものかよ。
米国を激怒させるから出来ないっていうなら、それこそ日米同盟の本質を見たり!だ。
それこそ米国の本性は日本の支配そのもの。
自民党は何も守ってないということである。
国防に限定はない。
中国から国を守っても朝鮮から国を守っても、
アメリカの属国でいいならそれは「国を守ってる」とは言えない。
「属国を守ってる」ということだ。
そんなヤツは日本の敵だ。
とりあえず石破先生は小林よしのり先生とこの問題について徹底討議すべき。
ゴー宣道場に出向いて公論を戦うべきだ。
自分の意見に自信があるなら、
いや、国防に責任をもつ気があるならそこから逃げないはずだ。
投稿: ぽんず | 2011年9月16日 (金) 03時03分