石破 茂 です。
いよいよ参院議員選挙がスタートします。
政務調査会長になってから八ヶ月余、参院選選挙公約作成と全国の選挙のお手伝いに忙殺されてしまい、自分自身の鳥取選挙区が手薄になってしまいました。
他地域同様、鳩山政権末期は「このままなら何とか勝てる」との確信に近いものを持っていたのですが、首相交代後に情勢が微妙に変化したというのが実感で、あらゆる方途を講じて勝利を勝ちとらねばなりません。
民主党も鳥取県を最重点区に位置づけ、閣僚などを大量動員してくることは確実で、何とかこの選挙区を守り抜かねばどんなに偉そうなことを言っても説得力はありません。
一昨日、珍しく平日に地元に帰り、永年の後援者である建設関係の方の叙勲祝賀パーティに出席したのですが、民主党議員の挨拶はさながら選挙演説のようでした。
曰く「与党になったからこそ、この会に呼んで貰えた。今後は支援していただけるものと嬉しく思う」「与党であればこそ仕事が出来る。○○道路も××港湾も任せて貰いたい」エトセトラ、エトセトラ。果ては「消費税アップを表明した菅総理は絶対に間違っている。まず景気の回復が第一だ」などという発言まで堂々となされる有様。
利益誘導の政治を排するのが民主党のはずではなかったのか。菅総理になって支持率が回復し何とか選挙に向かえる体制になったのに、それを批判するなど天に唾する行為です。
世の中にはTPOというものがあるのであって、受賞者を心からお祝いするつもりがないのなら、最初から来ないほうがよろしい。
消費税の議論は、税制全体をパッケージとして一切の先入観を排し、真剣かつ早急に行わなくてはなりません。
「こんなに景気の悪い時に消費税を上げてはならない。景気がよくなってからやるべきで、まず徹底した無駄の削減をはかるべきだ」「法人税を減税して、逆進性の強い消費税を上げるなど、大企業優遇の弱者苛めだ」などという一種の俗説の検証を徹底的に行うべきです。
所得課税体系から消費課税体系にシフトしたほうが、経済は効率化し活性化する、というのが米国では一般的な議論なのですが、我が国においてはなぜそうではないのか。勿論何でも米国が正しいわけではありませんが、主要国の中で唯一我が国の経済回復が遅れている理由の一つに、税の問題があるように思われてなりません。
消費税を5%程度上げるぐらいで借金が返せるほど日本の財政は生易しい状況ではありません。せめて借金が増えるスピードを落とし、プライマリーバランス・ゼロが視野に入るところまでは見通しをつけねばならない、というだけのことです。
財政出動をしようにも、それが出来ない現下の財政事情は相当に深刻です。
これに対して、「国民貯蓄はまだまだあるのだし、海外資産も多くある。どれだけ借金が出来るかは負債と資産のネットで量るべきだ」との反論があることは十分承知しています。これを言いっぱなし、聞きっぱなしではなくきちんと検証すべきなのです。
所得の少ない人は消費も少なく、支払う消費税も少ないのに対し、所得の多い人は多く消費し、消費税も多く払うのは当然です。複数税率導入などの逆進性に対する配慮は考慮に値しますが、基本的に低所得者ほど「消費税などで払う額より社会保障費などで国から受け取る額のほうが多くなる」はずなのです。
「金持ちからもっと取れ!」との議論は俗耳に入りやすいのですが、ではなにをもって金持ちとするのか。年収か、貯蓄か、資産か。それよりは消費課税のほうが余程国民全体に資するのではないか。
橋本内閣時に消費税を2%アップし景気が急激に冷え込んだのを忘れたのか、との説も根強いのですが、この年はアジア通貨危機、国内金融機関の破綻などが発生し、消費マインドが大きく低下した年でもありました。景気が悪化したことをすべて消費税の所為にすることはあまりにも一面的な見方であるように思われますが、この点についても冷静な検証が必要です。
我が国は、既に世界一の少子・高齢化社会に突入し、そのスピードは今後も変わりません。
年金・医療・介護などは、景気によって大きく税収が振れる所得税等の直接税ではなく、比較的安定した税収が見込める消費税で賄うべきなのではないでしょうか。景気が悪くなったから医療や年金の水準を大幅に下げてよい、というものではありません。
…などなど、詰めねばならない論点は多くあります。
「財務省に洗脳されている!」との批判をよく耳にしますが、それだけでは何の反論にもなっていません。財務省の主張であろうがなんであろうが、間違っていると思うなら具体的な論駁をせねばなりません。
「無駄遣いをやめよ!」と言うのなら、何が無駄で、何が無駄でないかの基準を明らかにすべきです。
実際、たいした仕事もせず、高給を食んでいる天下り先受け入れ法人などは相当に淘汰されましたし、今後とも徹底的に削減すべきです。しかし小泉政権時に公共事業や社会保障費を大幅に削減・抑制した結果、地方の疲弊は限界に近いところまで来ているのが実情で、無駄がそう多くは残っていないというのは事業仕分けの結果からも明白なのではないでしょうか。
日本の財政は既に危機管理の段階に入っています。
防衛において「日本人はミサイルの一発でも落ちないと目覚めない」などと政治家が言ってはならないのと同様、「破綻して初めてわかる」などと言ってはなりません。
危機管理論は演説のウケもよくありませんし、ほとんど誰も強い関心を持って聞いてはくれません。
でもそのときになって国民に「何故あの時ちゃんと言ってくれなかったのだ」と言わせてはならないのです。
国会議員の定数は減らすべきです。
日本の議員数は他国に比して決して多いわけではありませんが、ほとんど活動らしい活動もしない議員があまりに多いように思われてなりません。
本も論文も読まない、会議には出席しない、出席しても発言もしない、発言はしても地元の利益しか語らない、陰で批判はするくせに、いざとなれば上の言うことに唯々諾々と従う、そんな議員ははっきり言って要らない。
こんな人に限って選挙のときには立派なことを言うのです。当選後の議員の活動をもっと有権者が把握し、判断できるシステムを作らなくてはなりません。
定数減は各論になると「地方の発言権を封じるのか」などの反対論が続出します。でも断行せねばなりません。
国民に負担をお願いするには、それが筋というものです。
選挙中はほとんど不眠不休体制となりますので、ブログの更新は当分出来ないかもしれません。
梅雨の不順な天候が続きます。
皆様どうかご自愛の上、お元気でお過ごしくださいませ。