石破 茂 です。
選挙後の慌しい一週間が終わろうとしています。
マスコミの関心は、九月の代表選挙を睨んだ民主党内の主導権争いがどうなるかに集中しているようですが、いい加減小沢一郎氏を巡る政界の混乱には終止符を打たなければなりません。
平成元年に海部政権が発足し、小沢氏が自民党幹事長に就任して以来二十年余、常に彼が政局の中心にあり、その間日本の政治は混乱を続けました。私自身、小選挙区制導入を争点とした自民党内抗争の中で、当時の小沢氏に共鳴し、その後宮澤内閣不信任案賛成、自民党離党、新生党・新進党への参加という経験を持っています。小沢氏の本質が見抜けなかった若気の至りと不明を恥じています。
小選挙区制がその機能を発揮するためには、
「国会が地域の利益に直接関わることなく国家の基本が議論できるようにするための地方分権の徹底」
「党の中枢、特に幹事長に権限が集中することを避け、政党助成金という国民の血税による利益を享受するに相応しく政党内の経理や意思決定システムを明確にする義務を政党に負わせる政党法の制定」
「主義主張による政界の再編」
の三つが不可欠であり、これがないまま小選挙区制だけスタートさせれば混乱が増すだけだ、との考えは当時の自民党内でのコンセンサスでもありました。
小選挙区制を強く主導した小沢氏はそのどれも全く実行していません。
それに加えて、選挙さえ勝てば国家財政がどうなろうと(恒久財源なき子ども手当てが典型)、その産業がどうなろうと(農家戸別所得補償が典型)構わないという選挙至上主義、そして幻想・妄想とも言うべき国連至上主義には絶対に賛成できません。今に至っても小沢氏を信奉する議員がいるのが私には不思議でなりません。
このような時期には様々な噂が飛び交うもので、今日まことしやかに語られているのは「民主党が再可決に必要な衆議院での三分の二を確保するため自民党衆院議員の一本釣りに着手した」という話です。
ポストに目が眩む者が皆無とは言い切れませんが、仮にそれが成功しても国民の猛烈な反発を買い、決して長続きはしないでしょう。そして民主党サイドに走った者は間違いなく次の選挙で落選するでしょう。
この噂がもし事実だとすれば、随分とつまらないことを考えるもので、もはや末期症状としか言いようがありません。
今回の自民党の「勝利」は、かなりの部分が敵失によるものであり、自民党が比例区で獲得した票が過去最低であった事実を直視しなくてはなりません。
候補者の若返りを進め、派閥支配を完全に払拭し、政策を更に洗練されたものに仕上げなくては今後の展望は開けません。
特に税制改正は今度こそ失敗は許されず、誰にもその必要性がわかるよう、余程丁寧にわかりやすく説明できるようにしなければなりません。
みんなの党のように、「国債を日銀が買い支えれば金利も上昇しない」との説を唱える向きもありますが、一時的には有効でも永久に続くことはありません。あたかも「麻薬は禁止する必要はなく、中毒になる一歩手前でやめればよいのだ」と言っているようなもので、1930年代の教訓をよく想起すべきでしょう。
新人の頃、先輩から「当選のバンザイの瞬間から次の選挙だ」と教わりましたがまさしくそのとおりで、ご挨拶廻りも、夏祭りのハシゴも、徹底してやらねばなりません。選挙が終わったからといってホッとしているようでは駄目なのです。
我が国に残された時間は極めて短く、政策選択の幅は恐ろしく狭い。新しく再生した自民党が核になってこの国難を乗り切るために、全身全霊を尽くす覚悟です。
自民党に関するマスコミの関心事は秋の党役員人事のようです。総裁を代える理由は何もなく、谷垣総裁続投は既定路線ですが、他はどうなるのか。
こんな時は猟官運動などは一切控え、すべて総裁に一任して、どのような人事であっても不満を言わないことが大切です。
大島幹事長について「顔が怖い」などとよく言われますし、怖いことなら私だって似たようなものですが、今回北海道、宮城、徳島、福岡、佐賀などで若手を公募によって思い切って登用し、勝利に結びつけたのは幹事長の大きな功績ではないでしょうか。評価は公正かつ公平になされるべきものと思います。
来週から新議員会館への引越しが始まります。
スペースが倍になるのはとても有り難く、お客様を廊下でお待たせすることもなくなり、書類や書籍の収納も楽になって仕事の効率は随分と上がるのではないかと期待しています。
本来は議員の数を半減してスペースを倍にすべきだったのでしょうが、なかなかそう上手くはいきません。
しかし、執務机や応接セットなど、まだまだ使えるものもすべて廃棄処分というのはどうにも納得がいきません。せめてリサイクルに出すとか、そのような発想はなかったのでしょうか。
我が第二会館で言えば、重宝していたお鮨屋さんと理髪店が閉店となってしまい、困ったなと思っています。
有志議員で存続運動でも起こそうかと思ったのですが、何でも新会館の運営は民間に委託するとかで、利用者の意見は聞く余地がないとのこと。どうもお役所のやることはよくわかりません。
実は一番納税者の視点を欠いているのは国会で、この改革に手をつけることが絶対に必要だと思っております。
週末は土曜、日曜と地元のご挨拶回り、月曜の海の日は「太田総理・秘書田中」の収録のため上京します。
お休みが欲しいな、と思いますが、選挙に負けることを思えば夢のような話で、贅沢を言ってはなりません。
皆様、よい週末をお過ごしくださいませ。