石破 茂 です。
随分と以前のことになりますが、前原前外相が偽メール事件の責任を取って民主党代表を辞任した際、私は「好漢、再起を祈る」と記したように記憶しています。
年齢で六歳、当選期数では二期私の方が上なのですが、彼のご両親が鳥取県出身、互いに外交・安全保障畑が長く、「集団的自衛権行使は合憲であるし、この行使を可能としなければならない」が持論で、鉄道好きという共通の趣味もあり親近感を感じてきました。有事法制審議の際、法案修正の共同提出者として並んで答弁に立ったことや、雑誌の対談で意気投合したことも懐かしい思い出です。近年は、彼も私も党や政府でそれなりの立場にあったため、すれ違った際に言葉を交わす程度の関係なのですが、いつも気になる存在ではあるのです。
二大政党についての彼の持論は、「憲法、外交、安全保障で共通の認識を持つ者が二大政党の双方に居ることが政治の安定に不可欠である」というものであり、これに対して私は「同じ認識を持つ者だけではなく、全く違う認識を持つ者も双方に居れば、結局党内路線闘争に明け暮れるか、互いが妥協して何を言っているのかわからない抽象的・曖昧な政策しか出せないか、どちらにしても政治の前進には何ら寄与しない。憲法観の異なる者が一つの政党に居ることなど本来あるまじきことであり、日本の危機的状況から考えれば、基本的価値観による政界再編が必要だ」との持論を持っています。
他人を非難することも、「あんな人だとは思わなかった、見損なった」「化けの皮が剥がれた」とマスコミの論調に乗ることも簡単です。しかしそれだけでその人をすべて否定し、葬り去るべきではないでしょう。
公人たる者は常に厳しい批判にさらされますし、互いを庇い合うようなことは戒められなくてはなりません。ただ私はいつも、「自分は人を批判する資格があるような立派な人間なのだろうか」との思いを持っています。
人権擁護法案について、多くのコメントをお寄せいただいています。
私の立場は、すでに多く指摘されている問題点がすべて解決された場合に限り、人権侵害に迅速・適切に対応する機関を設立するための法案は制定されるべきというものであり、無条件に、ましてや現在政府・与党が検討していると伝えられている法案などには絶対に反対するというものであることを申し上げておきます。
何が「国が救済すべき人権侵害」に当たるのかを明確にすること、それを認定する組織が公正なものであること、その構成員に不適切性が認められる場合はそれを排除しうるるシステムとすること、異議・不服の申し立ての扱いが適切になされること。そしてこのような議論を国民の前に、透明性をもって行うことも必要です。
当然ながら、人権擁護の名を借りた不当な圧力を容認することは許されません。ただ、不当な圧力などの病理現象を除去する仕組みにつき、十分な議論もしないままに「絶対反対だ!人権擁護法案に少しでも肯定的な姿勢を示す者はすべて非愛国的な思想の持ち主であり、保守の顔をした左翼なのだ!」的な決めつけだけには与することが出来ません。
「人権思想そのものが危険なのだ」との中川八洋先生をはじめとする論説も随分読んではみましたが、いまだに十分納得しかねているのが現状です。
TPP参加の是非もそうなのですが、賛成にせよ反対にせよ、学者でも思想家でもない私たち政治に携わる者は、決して思考停止に陥ってはなりません。単純な賛成のみ、単純な反対のみでは、それは政策とはなりえないのではないでしょうか。
どちらの立場にせよピュアな方々からは厳しいご批判を頂くことになりますが、政治とはそういう仕事なのだと思っております。
国旗損壊罪について。
国会が混乱していることに加え、統一地方選を控えて慌ただしくなってきた今週は、議論する時間がなく、いまだに継続扱いのままとなっています。
「国旗は尊重すべきであり、それを辱めるような行為があってはならない」という点では党内一致しているのですが、刑罰をもって臨むべきか否かについて見解は割れたままで、一致点を見出す努力中です。
かつて教育基本法改正の議論の中で愛国心についての論争があり、私は「愛国心は法をもって強制するべきではない」との立場でした。「愛国心」という抽象的な概念と、「国旗損壊」という具体的な行為とは自ずから性格が異なるのではないかと思うのですが、もう少しよく考えてみたいと思います。
米国メア日本部長の発言は看過できるものではなく、更迭は当然というべきですが、発言全文を読んでみると米国の一部(あくまで全体ではありません)の本音がよくわかる気がします。
特に「日本国憲法改正は米国の利益にならない」という部分は、我々日本人が今後米国と向き合ううえで最も関心を持つべきことでしょう。
私は日米同盟は強化すべきとの立場で一貫していますが、憲法改正を忌避する限り、この同盟は真に信頼性のある同盟にはなりえないものと考えており、この点についての議論が決定的に欠けていることに強い危機感を感じています。
土肥隆一議員の行動は軽率の一語に尽きます。
ただ、日本国民、そして国会議員のどれほどが「何故竹島は国際法的にも歴史的にもゆるぎない日本固有の領土なのか」という認識を持っているかは甚だ疑問であり、自民党として今一度、国民に積極的に訴える努力が必要だと痛感しています。以前、党内で竹島問題についてまとめたことがありますが、それをベースとしてより多くの国民の皆様にわかりやすく、かつ広く訴えて参りたいと思います。
今週はとてもバタバタしていたので、少しずつ書き足したため、纏まりの無いものになってしまいました。お詫びいたします。
今日11日(金)は名古屋市議会議員選挙の応援が七カ所、その後新潟で自民党新潟第一選挙区支部総会で講演(午後六時半、新潟県民会館)。
12日(土)は地元で鳥取県議会議員候補者の支援集会が四カ所、その後地区支部総会など。
13日(日)は熊本県自民党人吉支部大会で講演(午後2時、ホテルサン人吉)、熊本県議選候補者応援が二か所、林田前代議士春の親睦会で講演(午後5時半、熊本ニュースカイホテル)。
14日(月)は自民党埼玉県連統一地方選挙出陣式(午後2時、埼玉県民健康センター)という日程です。
政権奪還、という目的を達するためには、一つ一つの選挙区を丁寧に支援していかなくてはなりません。口で威勢のいいことを唱えているだけでは、目的は決して達成されないのだ、と自戒いたしております。
皆様お元気で週末をお過ごしくださいませ。