« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »

2011年4月30日 (土)

一次補正可決

 石破 茂 です。

 第一次補正予算と財源確保法案が本日の衆議院本会議で可決し、参議院に送付されました。
 本政府予算案は、
 ①子ども手当、農家戸別所得補償などの所謂「ばら撒き政策」については見直しがいまだ不十分である。
 ②基礎年金の国庫負担部分引き上げのための財源を流用することは認めるべきではない。
 ③それらの見直しもなされず、財源として復興債を発行しないことは適切ではない。
等々、特に歳入面で多くの問題が指摘されますが、歳出は瓦礫の処理、仮設住宅の建設、被災地自治体や中小事業者への資金的な対応など緊急を要するものがその内容であるため、最終的に自民党として予算案に賛成するとの結論に達しました。

 昨夕、民主、自民、公明の三党政調会長間で確認された文書の内容の概要は
 ①子ども手当などの制度的な在り方、税制改正法案の扱いについて各党で早急に検討を進める。
年金臨時財源については第二次補正予算編成の際に見直しも含め検討を行う。
これらを前提として特例公債の発行を可能とする法案について各党で真摯に成立に向け検討を進める。
 ②復興財源については歳出の削減とともに復興のための国債の発行等により賄い、従来の国債と区別して管理し、償還を担保する。
 ③社会保障改革と税制改革の一体的検討につき政府・与党は実行可能な案を可及的速やかかつ明確に示し、国民の理解を求める。
とのものであり、この確認により財源確保法案についても賛成することとなった次第です。
 この確認は実は多くの内容を含んでおり、今後この存在が大きく各場面で影響することになりましょう。

 補正予算の成立により、菅内閣は「一息ついた」という形になります。
 実に不愉快なことですが、一方において世論調査では「菅内閣即時退陣」を求める声は二割程度しかなく、「年内一杯まで続けるべき」とするのが二割強、「来年九月の民主党代表任期満了まで続けるべき」という意見が三割もあるのです。
 民主党内で「ポスト菅」の有力候補が見当たらないことが、「他に適当な人がいない」との消極的支持理由になっており、自民党の支持率は確かに民主党より10ポイント程度高いのですが、解散が当面行なわれない状況では如何ともしがたく、ただ閉塞感のみが漂います。

 民主党の政策に自民党の考えを極力反映させるしか当面の手はありません。
 多くの方はご不満でしょうし、そのことは十分に承知していますが、今この作業を地道にこなすことなく、ただ徒に政局に走ることは決して良い結果をもたらさないのだと自分に言い聞かせる他はありません。

 とにかく少し疲れました。
 五月一日はフジテレビ系の報道2001生出演。
 三日、四日は女川町、石巻市の被災地で現地をよく見、できる限り切実な声を聴いてきたいと思っております。

| | コメント (224) | トラックバック (0)

2011年4月23日 (土)

第1次補正予算案

 石破 茂 です。

 第一次補正予算についての考え方が政府・与党から示されましたが、「一次補正については国債を発行しない」「子ども手当などの『バラマキ予算』の抜本的な見直しは今回行わない」「基礎年金(国民年金)の国庫負担部分の三分の一から二分の一への引き上げは今回は恒久財源による対応を行わず、税と社会保障の一体改革の中で結論を得る」という、すべて面倒なことは先送り、との発想に貫かれた極めて不見識なものと言わざるを得ません。  

 民主党政策担当者の苦悩もそれなりに充分に理解はします。
 「とにかく第一次補正予算に野党も反対はできないだろう」とタカをくくり、「一次予算で国債は発行しない、財政健全化への姿勢をはっきり示すのだ」という菅総理の自己満足が透けて見えます。
 一次補正で国債を出さなくてもどのみち二次補正では出さざるを得ないのは誰の目にも明らかなのに、一体何を恰好をつけているのか。この期に及んでも「バラマキは政策として誤っていた」とは絶対に認めたくない往生際の悪さ。
 しかしこれを認めれば、民主党の議員のほとんど全員がその存在の正当性を失ってしまい、即、解散・総選挙が求められます。「被災地では当分選挙はできないのだから野党も解散が求められるはずがない」とまたタカをくくる悪辣さ。
 加えて民主党内には相も変わらず「マニフェストは国民との契約だ!これを絶対に死守しなくてはならない」などと叫ぶ度し難い人々が居り、これが「菅降ろし」を画策するという倒錯状況。鳩山元総理が自民党幹部と会談し、不信任に同調するかのような発言をしたとの報道を読むと、生理的な嫌悪感にかられます。いくら「敵の敵は味方だ」と言っても、その先の展開は全く描けません。自民党とマニフェスト至上主義者が組むなど正気の沙汰とも思われず、国民の鉄槌が下ることは必定です。ここまで民心を愚弄する鳩山某がたとえ短期間であったにせよ日本国内閣総理大臣であったことは、歴史の汚点としか言いようがありません。
 
 自民党内の一部にあると言われる「小沢元幹事長の勢力と協調する」との意見もまた同様です。細川内閣、羽田内閣、小渕内閣。小沢氏が関与した政権は悉く悲惨な末路を辿ってきたのではなかったか。「国民の生活が第一」といういかさまのスローガンを掲げて議席を簒奪し、国連に自衛隊を差し出せば憲法九条はクリアできるなどという暴論を振り回し、天皇陛下も自らの思いのままという天をも恐れぬ発想をして恬として恥じないような人物とどうして組めるのか。

 批判ばかりするな、ではどうするのだ、と問われます。
 答えは明白です。菅総理自身が、マニフェストの誤りを認め、これらすべてを撤回した上で震災復旧に廻すことを明言し、反対するマニフェスト死守派を切り、責任を取って辞職の時期を明言すれば、後の展望は自ずと開けます。一時的には離合集散・大混乱の状況が生じますが、それでいいのです。
 首班指名において自民党の基本理念である「今さえよければいいのではない、日本さえ、自分たちさえよければいいのではない」との考えの下、健全な財政の確立と、憲法解釈の見直しと、自主防衛力の強化による健全な同盟の構築を掲げて誠心誠意訴え、なお勝負に敗れるのであれば、それはそれでやむを得ません。

 まず取り組むべきは議員定数の大幅な削減(結果的に政党交付金の削減)と公務員給与のカットです。それなくして国民に負担をお願いできるはずはありません。
 議員を一定数確保しなければ、政府に対する議会の監視機能の弱体化に繋がるものと思い、今まで私は懐疑的でしたが、ここ数年の議会の動きを見ていて考えを改めました。
 比例名簿に名を連ねただけで、開票が済んだら議員になっていた、などという人がどうして議会に必要なのか。このような人と、選挙区で全身全霊で戦って議席を得た議員とが同じ衆議院議員であることはどう考えてもおかしい。純粋比例は「余人をもっては代え難い」人に限定されるべきであり、年齢制限など付すべきではありません。復活当選も本当の「惜敗」に限るべきです。これでは死票が増えて民意が反映されない、というのなら、併用制か中選挙区複数連記制の導入も真剣に検討しなくてはなりません。とにかく今年中なら今年中と、期限を区切って結論を出さなくてはなりません。

 公務員はとにかく倒産がないのですから、それだけでも大変な特権というべきであり、加えて官公労に守られているのですから自ら血を流すのは当然です。そんなことも出来ないでどうするのか。一部不眠不休で働いている公務員も実際に居ますが、その一方で午後五時になったら帰ってしまう者も数多くいるのです。信賞必罰を徹底しなくてはなりません。いい仕事をした者が正当に評価され、多く報われる、というシステムが壊れているから、公務員にいい人材が集まらないのです。

 いずれ発行せざるを得ない復興債は期間限定でできるだけ早期に償還しなくてはなりません(これに対しては異論もあり、意見集約が必要です)。基幹税である所得税、法人税、消費税のバランスをよく考慮し、高額所得者や法人に多くご負担をお願いし、なお足りない部分につき時限的な消費税の負担を考慮することになりましょう。
 そもそも消費税は社会保障目的に充当すべきものであることにも留意が必要であり、なし崩し的に復興からの目的変更はしてはなりません。「増税によらない復興を」というのは「増税なき財政再建」と似て一般受けしますが、本当にそんなことがあり得るのか。「景気が回復してから」というのはそれなりに理解できますが、バブル景気の時でも、二千年代初頭の景気拡大局面でも、誰も増税を言いださなかった事実を忘れるべきではありません。「どのような時に負担を求めるか」はきちんと合意を得ておくことが必要です。日銀の国債引き受け論」も根強くありますが、この歯止めをどのようにかけるのか、リスクがあまりに大きいように私には思われます。

 復興基本法についても、共同提出が駄目というのであれば自民党案を早急にまとめて提出し、民主党の判断を待つことになるのでしょう。
 農山漁村を抱える広大な被災地、脆弱な地方財政、少子化・高齢化地域、原発災害等。阪神大震災とは様相が全く異なるのに、同じスキームでいいとはどうしても考えられず、強力な権限を持つ時限的な「復興再生院」が必要だと考えますが、このような省庁改変を伴う法案が内閣から提出されるはずもなく、議員立法しか途はありません。成立のためには与党の協力が必要なはずなのに、この動きを(朝日新聞の報道によれば)「石破政調会長のクーデターだ」などと言う人は一体何を考えているのか。批判するなら公の場で名を名乗って言って頂きたい。

 日独国交150周年決議を巡って、本日の本会議で自民党に大きな混乱がありました。いかなる理由があるにせよ、政策的なものはすべて私が責任を負わねばなりません。
 この案文については、議院運営委員会の現場で激しいやり取りが行われ、「侵略戦争」「お詫び」などの文言を削り、(だからこそ社民・共産両党は反対に回りました)相当に自民党の主張に近いものとなっていたのです。
 現場の理事の皆さんのここに至るまでの苦労と、修正前との案文の違いも併せて評価してもらいたかったのですが、プロセスにおいて反省すべき点が多くあることを痛感させられました。

 昨日・今日の週刊誌やテレビ報道についても、多くのことを考えさせられ、公職にある者が本当のことをわかっていただくことがいかに難しいかを改めて思い知らされました。
 その多くがマスコミによって作られた漠たる評価は一瞬にして変わる、そのことは十分に知っていたつもりですが、ここのところ疲れが極限に来ており、一瞬の判断を間違えることがあったかも知れません。
 自分にやましいことが無ければそれでいいというものではなく、善意や率直な感情の表明が受け入れられることも少ないのだ、ということを改めて肝に銘じなくてはならないと痛切に思います。それでもなお、理解し、応援して下さる方のコメントを読むと、本当に涙が出るくらい嬉しいです。

 多くの夢を与えてくれ、同時代を生き、年若くして夭逝された田中好子さんの御霊安かれと心より祈ります。

 来週は一体どんな週になるのでしょう。被災地の方々のご労苦に思いをはせつつ、纏まりの無い長い文章になってしまったことをお詫び申し上げます。
 
 土日は短時間地元に帰る他は、溜まりに溜まった用事を片づけることに費やします。
 日曜日朝六時(一部は五時半)より、本日収録した時事放談が放映されます。

| | コメント (342) | トラックバック (0)

2011年4月15日 (金)

政策協議

 石破 茂です。

 連立話は一応沈静化したようです。民主党の統一地方選挙での惨敗もあり、自民党内でも「到底民主党などとは組めない」との空気が支配的になっています。
 永田町は一転政局モードになってしまいました。
 私自身、もともとマニフェスト絶対遵守を唱え、選挙至上主義的なポピュリズムにどっぷりと漬かった小沢元幹事長一派や旧社会党的思考から脱却できない人たちと組むつもりはさらさらなく、「政策協議を」との主張はそのような人たちと決別する手段として申し上げてきたつもりです。

 こんな時に政策協議など必要ない、と仰る方もおられますが、政策協議はその気になりさえすればすぐにできるものなのです。
 次の世代に過大な負担を負わせない健全な財政を確立する。集団的自衛権行使を可能とすることにより、日米が相互に防衛義務を負う健全な同盟関係を構築する。煎じ詰めればこの二点に尽きます。
 与党である民主党内で意見が纏まらず、何事も決まらず自民党との協力関係も築けないのは、菅総理が小沢グループの離反を怖れてか、この二点を避け続けているからではないのでしょうか。
 「マニフェストを撤回して震災復興に充て、それで足らざる部分は人件費、国会議員定数削減などを即刻断行した上で償還財源を明確にした復興債でこれを賄う」たったこれだけのことなのに、なぜそれが言えないのか。
 この方針は今回の一次補正予算で明らかにしなくてはなりません。二次補正予算がいつ編成されるかも明らかではなく、その時までこのままの状態が続いてよいはずがない。
 
 こんな決断もできないような人なら、このまま総理の座に留まってはいけないでしょう。マニフェストの撤回と国債発行額の抑制は震災前から我々が何度も指摘をしてきたことなのに、まだそれがわからないのか。わかっていても小沢一派の離反が怖くてやらないというなら、もはや許し難いと言う他はありません。
 
 総理の辞任は、自分から辞めるか、不信任案が可決されて解散の道を選ばず総辞職するか、そのどちらかしかありません。地方議会と異なり、有権者による首長リコール請求の規定は無く、議会解散請求もできません。総理が「石に噛りついても辞めない」と言っている限り、衆議院で内閣不信任案を可決する以外にない。

 報道ベースでは鳩山前総理が自民党幹部と会い、不信任案同調を仄めかしたように伝えられていますが、「菅総理憎し」だけが動機の鳩山氏や小沢系などと組むということ自体、私にはあり得ないことのように思われます。仮に「敵の敵は味方だ、目的のためには手段を選んではいられない」といって倒閣に成功したとして、そのあとは一体どうなるのか。マニフェスト絶対維持派で、日米同盟を危機の渕まで追い込んだ勢力と組んで内閣を組織するなど、絶対にあってはならないことです。そのような企てには、私はたとえ一人になっても絶対に反対です。この期に及んでなお小沢・鳩山両氏と組もうなどという考えがまだあること自体、私には到底信じられません。
 
 こんな騒動は、国民から見れば「また国民不在の権力闘争に明け暮れている」としか映らないに違いありません。そのことはよくわかっています。
 菅総理は、一度立ち止まって虚心坦懐に考えるべきです。

| | コメント (447) | トラックバック (0)

2011年4月 8日 (金)

中身も詰めないままに

 石破 茂 です。

 災害現場状況把握(視察、という言葉は苦手なもので)を含む震災・津波・原発対応、いわゆる連立構想、統一地方選挙など、今週は多くの課題が山積しており、なかなか更新ができておりませんことをお詫びいたします。

 連立構想は、いつも申し上げておりますとおり、政策協議抜きにはあり得ません。
 こんな緊急時に何が政策協議か、というご指摘もありますが、連立とは即ち政策を異にする自民党議員が内閣・閣議のメンバーとなることであり、憲法第66条に規定されている通り「内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う」のですから「震災・津波・原発災害に関してのみの連立」という概念はそもそもあり得ないのです。
 日本国がなすべきことは災害対策だけではなく、税と社会保障の一体改革やTPP、対中・対北朝鮮・対ロシア外交や普天間基地移設など、震災なかりせば国政の大テーマになっていたことが消えて無くなったわけではありません。
 マニフェスト凍結にも何ら言及せず、そのようなテーマも一切捨象して、ただ連立を呼びかけるのは不見識も甚だしい。被災の甚大さ、悲惨さにかこつけた延命工作と言われても仕方がありません。
 谷垣総裁に連立話を断られてすぐに政策協議に入るよう菅総理が指示を出していればもっと事態は違っていたのかもしれませんが、何らそのようなアクションも取りませんでした。
 協力対象を限定するのであれば閣外協力しかないのであって、自民党としてはこの範囲において知恵と力の限りを尽くして政府に協力して参ります。
 
 昨日枝野長官、玄葉国務大臣が自民党本部を訪ねられ、自民党からの要請に対する回答を持参されました。
 内容はまだまだ不十分ですが、訪問されたこと自体は評価(この言葉もあまり好きではありませんが)すべきと思います。
 民主党にも自民党にもいろいろな人が居て、本来一緒にやるべき人が別の党にいるということはなるべく早く解消しなくてはなりません。この震災はそのことも示唆しているように思われます。
 「救国大連立」という言葉はきれいですが、その中身も詰めないままに言葉や感情だけが先行していることに危うさを感じております。
 
 繰り返しますが、このページに頂いた具体的なご意見はすべて関係部署に届けております。どうか引き続きよろしくお願いいたします。
 
 土曜日は統一戦最終日、私の選挙区でも激戦が続いているところが多く、一日だけ選挙区に帰ります。
 選挙応援終了後、夜行列車で上京、日曜日は午後まで考え方の整理など震災対応関連に費やし、夜は選挙区に帰り、月曜朝一番の便で帰京するつもりです。
 
 都内は桜が満開となりました。お元気で週末をお過ごしください。

| | コメント (397) | トラックバック (0)

« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »