« 2011年10月 | トップページ | 2011年12月 »

2011年11月25日 (金)

生源寺先生など


 石破 茂 です。
 今週は日程が錯綜したため、纏めて考えを記す時間が無くなってしまいました。税と社会保障、円高、欧州の経済危機、沖縄問題を核とする日米安全保障関係問題など案件山積で、予算委員会筆頭としては考えなくてはならないことばかり多く、時間がいくらあっても足りない状況です。
 TPPについて、農業ばかりが課題ではないことは十分に承知いたしており、農業について論じると「これだけが課題ではない!」とされるリアクションには正直当惑してしまいますが、持論自説だけが正しいという姿勢は厳に慎まなくてはならないと自戒いたしております。

 TPPに入るか否かと関係なく、農政改革は急務です。入らないのなら農政改革は必要ない、ということにはなりません。
 どの国でも農業は保護されているのですが、これを関税で負担することが正しいのか、納税者が負担することが正しいのかについては、「消費者は食料品が高いとは思っていない」ことが大きな論点です。もっともこれも「やはり高い」という人も存在しますが。
 この論点については前東大農学部長・現名古屋大学教授の生源寺真一先生が数日前に読売新聞のインタビューで触れておられます。高関税でも負担に感じない、ということと、高関税で国内の生産構造を温存する、ということは異なるはずです。
 その多くが貿易に廻る鉱工業製品と異なり、穀物は劣化が避けられないという商品特性と安全保障の観点から貿易に廻る量は2割から3割であり、そのため市場価格の乱高下は必ず起こり、かつ安全保障上の観点からカロリーベースで2千キロカロリー程度の自給は目指さなくてはなりません。
 価格を維持するために高関税を張り、生産調整を行って水田そのものを耕作放棄地にする政策は本当に正しいのか。私は決してそうは思いません。
 先日山形県新庄市で講演する機会があったのですが、新品種「つや姫」は中国で一俵7万5千円で売れているとのことでした。これを安定的なビジネスとして確立し、水田を維持することは決して不可能ではないはずですし、輸出が増えれば自給率は上がる計算になるのは欧州の例を見れば明らかです。

 私が農政を学ぶ中で、最もスタンダードなテキストとして使ってきたのが生源寺先生の著作です。客観的、実証的なお考えは、先生のお人柄と共に心より信頼しております。どの立場であれ、近著の「日本農業の真実」(ちくま新書)のご一読をお勧めします。
 いろいろな学者が居られますが、本当に信頼できる方はごく僅かなのだ、と思うとともに、世の中には自分よりはるかに知識と知恵のある人が居られるのであり、「自分だけが正しい」とか「国民はみんなそう思っている」などという言い方は厳に慎まなくてはならないと自戒いたしております。

 週末は26日土曜日が在職25周年記念の会(午前十時・ホテルニューオータニ鳥取、午後一時・倉吉シティホテル)。
 27日日曜日が時事放談(TBS系・午前6時・一部地域は別時間・収録は25日)、多目的ダム「殿ダム」完成記念行事(午前11時半・現地)。その他の時間には色々な行事が入ります。
 殿ダムは昭和37年以来、約50年にわたる大事業でした。当時私は5歳、「コンクリートから人へ」などというまやかしのスローガンに影響されることがなかったのは本当に幸せだったと言う他はありません。

 今年ももう僅か、お元気で週末をお過ごしくださいませ。 

| | コメント (88) | トラックバック (0)

2011年11月23日 (水)

イシバチャンネル第十四弾「TPPについて」など

事務局です。

イシバチャンネルの動画でアップロードしました。


是非ご覧ください

| | コメント (61) | トラックバック (0)

2011年11月18日 (金)

茶番

 石破 茂 です。

 先週末に行なわれた各社の世論調査の結果には「野田内閣の支持率は概ね10ポイント程度低下し、40%前後となった」「民主、自民両党とも支持率を落とし、20%前後でほぼ並んでいる。他の政党も伸びていない」という2つの特徴がありました。
 鳩山、菅という前二代の政権の失敗に懲りた野田総理は「民主党内に対立構造を作らないため、人事や政策に配慮して党内融和に努める」「不用意な発言を控えるべく、なるべく多くを語らない」という二つの大方針のもとに政権を運営してきましたが、これが「何をやりたいのか全く分からない」という国民の不安を増大させる結果となりつつあるようです。このまま推移すれば、恐らく年内に支持率は30%台前半まで下がり、そろそろ危険水域に入ります。

 内閣支持率が下がれば与党民主党の支持率も下がるのは当然ですが、これに代わって本来上がってしかるべき自民党の支持率も下がっているのは「自民党も何がやりたいのかよくわからない」と多くの国民が感じているからなのでしょう。単なる批判政党ではなく、「自民党ならこうする」というものを示すべく努力してきたつもりですし、現執行部においてもそのようにしているはずですが、残念ながら結果は思惑通りになっていないようです。

 先週末のAPECを前にした民主党内の動きはまさしく茶番というべきものでした。
 野田総理は記者会見を一日延ばし、衆議院予算委員会での集中審議をほとんど無意味なものにした挙句に、出発直前に「TPP参加に向けて各国と協議に入る」と述べたのですが、この発言自体は実に当たり前のことで、日本が交渉参加の意思を表明しても各国において日本の参加を認めるかどうかの手続きが必要なのであり、それを経ない前に「交渉に参加する」と言えないのは当然のことです。それをあたかも党内慎重派への配慮の如くに演出し、それを受けた慎重派の代表格である山田前農相が「ほっとした。よく思い留まってくれた」などと大袈裟に評価している発言を聞くと、民主党すべてがグルとなって国民を欺いているとしか見えません。
 菅直人内閣への不信任案提出の直前に開かれた民主党両院議員総会において鳩山・菅両氏の間で繰り広げられた猿芝居を彷彿とさせるもので、一体この人たちは何なのかと憤りを感じずにはいられません。

 一方の自民党はどうすべきなのか。総選挙において「わが党が政権を担当すればTPP交渉からは直ちに離脱する」とでも公約するつもりなのか。そこまでの覚悟があるのならそれはそれで構いませんが、私はそのような公約をすることには反対です。
 第一次大戦後のオレンジ計画の立案や開戦直前のハル・ノート提示、真珠湾攻撃を事前に知っていながら敢えて日本にやらせた、などの傍証をもって語られるアメリカ陰謀国家論はそれぞれ相当に疑わしく、仮にそのような面があったにせよ、それに対応するしたたかさが日本に欠けていたのもまた事実でしょう。
 オレンジ計画などの立案はアメリカの得意とするところですし、アメリカとは常にそのような国家なのではないか。ハル・ノートは仮にこれを受け入れていればどうなったのか、国土が焦土と化した悲惨な結末よりはまだましではなかったかとの考察が必要ですし、真珠湾攻撃陰謀説に至っては、開戦の通告を結果的に奇襲後に遅らせてしまった、当時の在米日本大使館の職務怠慢による大失態をどう考えるのか。
 
 「外交に疎く、農政を中心とする諸政策には一貫性を欠き、官僚機構も掌握できず、国論はおろか与党内も纏められない民主党政権ではこの交渉は失敗に終わる。自民党政権であれば交渉をこのように導く、農業政策をはじめとする国内対策の内容はかくの通りであり、交渉終結前にスタートさせる」とのメッセージを早急に発するべきなのではないでしょうか。
 ウルグアイラウンドが実質合意に達したのは1993年のことでしたが、EUは既にその前年に農政の大改革方針を決定していたのに対し、日本の対策決定は翌年の1994年、6兆1千億円の対策の中身のほとんどは基盤整備に充てられ、温泉ランドや農道空港などという、どう考えても農業の体質強化とは無縁の事業も多く含まれていました。私は当時当選3回の野党新進党議員として何度も質疑に立ちましたが、与党であれ、野党であれ、EUと比べて危機感や真摯さにおいて大きな落差を感じたことでした。

 税と社会保障の改革を内容とする消費税率の引き上げにも民主党政権の卑劣さを感じます。
 野田総理は「確かに任期中に消費税を上げないとは言ったが、消費税を上げる法案を成立させないとは一言も言っていない」などと言っていますが、これはまさしく詭弁以外の何物でもありません。多くの国民は「民主党政権の下で消費税を上げる法案が提出される」とは思わなかったはずですし、実際にそのようなことはマニフェストで全く触れていません。一休さんの頓智問答やベニスの商人ではあるまいし、言葉を弄ぶのはいい加減にして貰いたい。
 来たる総選挙では、民主党も自民党も消費税アップを掲げて戦い、どちらが勝っても税制改革は確実に行われる、というのも一案かも知れません。消費税を5%引き上げてみたところで、その4%は今借金で賄っている分に充てられるのであり、社会保障の充実には1%のみしか使えません。早晩更なる引き上げは不可避であり、上げ幅を抑えるためにも引き上げは出来る限り早期に行なうべきでしょう。
 
 円高対策にしても、補助金の拡充など財政出動を伴うものはなるべく抑え、むしろ法人税・関税の引き下げやCo2の25%削減の撤回、電力の安定供給、労働規制の緩和などといった負担軽減策を優先させなくてはなりません。GNPの伸びに対してGDPが上がらないことが日本経済の問題であり、海外からの投資を容易にする政策をもっと積極的に講ずるべきです。GDPを上げていかない限り所得の増加も雇用の維持も実現できません。今や製造業はその優位性を失いつつあり、これを所与のものとして政策を立案せざるを得ない現実を直視しなくてはならないと思っております。

 週末は本日18日金曜日が「政策リテラシーを考える市民塾」での講演(午後7時・グランドヒル市ヶ谷・新宿区市ヶ谷)。
 夜行列車で帰郷した19日土曜日はいくつかの行事に出席した後、専門工事業団体協議会公開フォーラムで講演(午後1時半・白兎会館・鳥取市末広温泉町)、税理士による石破後援会で講演(午後5時半・ホテルモナーク鳥取・鳥取市)。
 20日日曜日は在職25周年記念「鳥取県西部地区石破茂を囲む会」(午後1時半・ホテルサンルート米子)、東京に戻った後、TBS特番「スパモク・ジョブチューン」収録(午後7時・TBS砧スタジオ・放映は12月8日午後7時)という日程となっています。
 来週一般の方々にもご参加いただけますのは、22日火曜日の慶應義塾大学三田祭「Beauty&earth in KEIO」でのスピーチ(午前11時・慶応三田キャンパス西校舎ホール)、「ふるさと武蔵野市民の集い」での講演(午後7時・武蔵野公会堂)、23日水曜日・勤労感謝の日の「加藤紘一秋祭り2011」での講演(午後6時半・山形県新庄市・新庄玉姫殿)などではないかと思います。

 年齢を重ねた所為でしょうか、疲れがなかなかとれません。体調不良でかえって相手様にご迷惑をかけてもなりませんし、年内一杯、1日でもお休みがあればいいな、と思っておりますが、なんとかなるのかな…。
 皆様、お元気で週末をお過ごしくださいませ。

| | コメント (80) | トラックバック (0)

2011年11月11日 (金)

三次補正可決

 石破 茂 です。

 昨日、衆議院予算委員会ならびに衆議院本会議において第三次補正予算が可決され、参議院に送付されました。歳出については概ね野党の提案も盛り込まれており、災害復興を急ぐ観点からも我が党が賛成するのは妥当な判断であったと思っております。
 本来このような内容の補正予算は第二次補正予算として秋口には成立させ、被災地に厳しい冬が到来する前に執行が開始されているべきものでした。民主党内でマニフェスト修正などが関係する歳入法案の調整の目途がつかず、菅内閣がその延命を目的として剰余金を財源としたトリッキーとも言うべき第二次補正予算を組んでしまったため、本格復興予算が大幅に遅れる結果となってしまいました。いくらなんでも酷いではないか、との批判が委員会でも随分と行われましたが、圧倒的多数を背景とした政府からは一切反省の弁は聞かれませんでした。

 昨日の予算委員会でも申し上げましたが、自分たちの誤りは率直に認め、反省・改善しなければ新たな進歩もありません。
 あれこれ言ってみても、結果として膨大な負債を作ったのも、農業・農村の衰退と荒廃をもたらしたのも自民党政権であり、そこには何らかの誤りがあったと言わざるを得ません。
 農業部門でTPP交渉入り反対を叫ぶ方々には、では今までのままでよいのかという提起がほとんどありません。ただただ反対していれば明るい未来が開けるはずもなく、今のままの衰退が続くだけです。
 農産物貿易で得られる関税は総額4千億円、これがすべて農業保護に充てられているわけではありませんが、関税といういわば目に見えにくい消費者の負担によって農業を保護するよりも、納税者の負担による、きちんと政策効果が目に見える形で農業・農村は保護されるべきです。
 コメの規模拡大のスケールメリットは10ヘクタールがほぼ上限ですが、これを実現させることは日本においても可能なはずであり、いきなりアメリカやオーストラリアと比較するところに飛躍があります。反収の向上や分散した農地を集積するためにもっと予算は充てられるべきなのです。
 自給力を維持するなら、米価維持のために農地を減らす生産調整を行うこと自体が矛盾であり、穀物の国際取引量が鉱工業製品に比べて少なく、価格の変動が激しいからこそ、食糧安保の観点からは高関税を張り、生産調整を行って米価を維持するより、生産調整の段階的廃止によって農地を確保する方が正しいというべきです。
 農家の方はご存知ですが、2反や3反の規模でコメ作りをしても、トラクターやコンバインなどの投資で赤字になるのは常識であって、それでもなお作り続けるのは「自分の家だけやめれば集落の水田全体に迷惑をかける」という理由か、若しくは「農地の課税は低いので資産として保有しておいた方がよい」との理由か、どちらかでしょう。所有と経営の分離をさらに徹底させる政策を推進することにより、本当にコメ作りで生きていく農家をもっと支援すべきです。
 あらゆる農家を対象として戸別所得補償を行えば、これとは別の負の政策効果が発生することは経済合理性から言って自明であり、だからこそ農地の貸しはがしなどが起こるのです。
 現に果樹や野菜などの関税は極めて低いにもかかわらず、産業として存続しています。野菜や果樹対策は、関税ではなくもっときめ細かい対応によるべきなのですが、農水省の予算や事務の相当部分が生産調整や高関税維持に割かれてしまっていることは極めて勿体ないことと言わざるを得ませんし、畜産は負債対策にもっと予算を割くべきです。

 医療は昨日の厚生労働大臣の答弁にあったように、制度の根幹にかかわる部分は交渉対象から外れているはずですし、仮に交渉対象となるなら断じて拒否すべきです。
 混合診療の緩和については歯科医療で既に一部導入されていますが、それによって金持ちしか歯科医療が受けられないとか、皆保険制度が崩壊したとかいう話は聞いたことがありません。国民皆保険を導入しようとしているオバマ政権が日本の皆保険を潰そうという発想をするとも思えません。一部でも保険外診療を受ければすべてが保険の対象外になるという混合診療の全面禁止にはどうにも完全に納得できないものを感じます。難病の方に混合診療は大きなマイナス、との見解は傾聴しなくてはなりませんが、それは制度設計次第なのではないでしょうか。
 労働についても同様で、安い労働力の流入を一番警戒しているのはアメリカではないでしょうか。

 ISD(S)条項についての一昨日の経済産業大臣の答弁は明らかな認識不足でした。「投資を受け入れる国が投資保護協定に違反したことによって損害を受けた投資家が投資受け入れ国を訴えることが出来る規定で、公平を期すために投資家の本国でも受け入れ国でもない第三者である国際仲裁機関によってなされる仲裁」というのがISD(S)条項の定義のはずですが、基本的な知識や認識が不足しています。こんなことで大丈夫か、と思わずにはいられませんでした。
 農政についても、経験のない総理にはきちんとした対策についての考えが無く、経験豊かなはずの農林水産大臣も全く明快な答弁をしませんでした。

 こんなことで交渉に参加してよいとは思えませんが、自民党はどんなに遅くとも一年十か月後には政権を担当するべく努めているのであり、その時どうするのかを明らかにしなくてはなりません。
 我が国が仮に交渉への参加を表明しても、米国の議会手続きには最低三か月を要します。それまではただただ民主党の批判をしていればよい、後のことは政権を取ってから考えればよいとの姿勢であるとすれば、必ず手痛いしっぺ返しを食うと私は思っております。

 山岡大臣のマルチ商法関連の追及は私は得手ではありませんが、平沢議員や私の質問に対する答弁はあまりに不誠実なもので、このような人物を「消費者保護行政や警察行政のトップとして最適任」とした野田総理の姿勢は厳しく批判されなくてはなりません。
 山岡氏がネットワークビジネスの大会で演説したビデオを昨日予算委員会の理事会で視聴しましたが、よくもまあこんなネットワークビジネス推奨の話ができるものだと呆れてしまいました。「呼ばれればどんな会なのかも確認せずに行く」と平然と答弁する神経が私には全く理解できません。

 テレビ中継なしの委員会質問は久しぶりでしたが、総理が出席しない一般質疑はそれなりに各閣僚に対する質問が出来て意味のあるものだったと思っています。テレビには若くて力のある議員をもっと立てるべきだと改めて感じました。

 福島県の被災地の産業用動物救済については、農水大臣の答弁がその場しのぎのものでないことを祈ります。その後の対応について、また情報をお寄せ下さい。

 週末は、本日金曜日から明日土曜日にかけて、震災で延期されていた県議会議員選挙の支援で宮城に入ります。両日とも宮城県内での街頭演説や個人演説会に廻ります。
 土曜日は宮城から帰京後、党本部で自民党神奈川県連学生部での講演(午後3時半)、その後自民党横須賀支部時局講演会(午後6時半・セントラルホテル・横須賀市若松町)、地元議員との懇談会。
 13日日曜日は自民党富山県第三選挙区支部時局講演会(午後1時・オークス砺波平安閣・砺波市三島)、地元首長懇談会、という日程です。
 週明け月曜日は中日新聞懇話会での講演(正午・オークラアクトシティ浜松・浜松市中区板屋町)、片山さつき埼玉後援会(午後5時半・浦和ロイヤルパインズホテル・さいたま市浦和区仲町)と続きます。

 朝夕はめっきり寒くなりました。お元気で週末をお過ごしください。

| | コメント (135) | トラックバック (0)

2011年11月10日 (木)

イシバチャンネル第十三弾「石破茂セミナー2011(後期)~震災後の日本~」

事務局です。

イシバチャンネル”第十三弾「石破茂セミナー2011(後期)~震災後の日本~」”をアップロードしました。


是非ご覧ください。

| | コメント (12) | トラックバック (0)

2011年11月 7日 (月)

予算委員会スタート

 石破 茂 です。
 今日から予算委員会が始まりました。
 明日、明後日午前と総理と全閣僚入りの基本的質疑(NHK中継あり)、明後日午後が財務大臣と要求閣僚入りの一般質疑(中継なし)、10日に締めくくり総括質疑と採決という予定になっていますが、歳入法案の3党協議次第では変更もあり得ます。
 私は明後日午後の質疑に80分立つ予定です。テレビ入りは新政調会長や若手議員の役回りですので、私の質疑につきましてご関心をいただける方はインターネット中継などをご利用くださいませ。

 TPPについて、多くのご意見を頂き有り難うございます。
 もっと批判的なご意見が多いかな、と思っておりましたが、冷静なコメントも多く寄せられたことに感謝いたしております。
 医療、保険、ISD(S)条項などについてのご懸念が多いことも承知いたしました。これらにつきましては近日中に整理して私なりの考えを申し上げます。
 農業だけに矮小化するつもりもありませんし、農業について論じることが矮小化になるとも思いません。
 何卒ご了承くださいませ。

| | コメント (86) | トラックバック (0)

2011年11月 4日 (金)

TPPに思う

 石破 茂 です。

 10月31日に開催いたしましたセミナーには、当欄をお読みいただいている皆様をはじめとする多くの方々にご参加を頂き誠に有り難うございました。心よりお礼申し上げます。
 質疑応答の時間が足りなくなってしまい、ご迷惑をおかけしてしまいました。次回からは1時間のお話と30分の質疑応答、という今の時間設定を少し見直したいと思っています。
 大学の講義がそうであるように、やはり一通りのお話をしようとすればワン・テーマで1時間半は必要です。それに1時間の質疑応答を加えて2時間半、これだと党本部の使用時間の関係で午後5時から開始しなくてはならず、お仕事をお持ちの方、遠くから来られる方にご迷惑がかかりますし、さてどうしたものか。いっそのこと休日に充分時間をとって開催することも一案なのかもしれませんが、ぜひご意見・ご提案をお寄せくださいませ。

 TPPについて、もう自分の考えを示す時ではないか、とのご指摘を頂きます。自民党の会議で少しでも参加に前向きな意見を述べる議員があると、「賛成なのか、反対なのか、はっきりしろ!」という野次が飛ぶ有様です。東谷暁氏や関岡英之氏の「平成の開国が日本を滅ぼす」的な所論を読んでいると、TPP交渉参加肯定論者は国賊以外の何物でもないように思えてきますが、これはそう簡単な問題ではありません。

 多くの関係分野がありますが、農業だけに限って申し上げれば、この二十数年、総生産額も、農業者の所得も、農地面積も、農業者数も減少の一途です。農業者数は減少のみならず高齢者の比率が拡大の一途であり、産業としての持続可能性そのものが危うくなっています。政策が正しければこのようなことになるはずはないのであって、これはどこかが決定的に誤っていたと考える他はありません。
 よく「TPPに参加しようがしまいが、農政改革は急務だ」という意見を聞きますが、それにかかる年数は交渉次第としても、原則すべての関税を撤廃するTPPは、「関税による消費者負担型の農業保護」から「納税者負担型の農業保護」への転換を意味するものであり、この点は決定的に重要です。
 アメリカでも、EUでもどの国も農業は手厚く保護をしているのであって、その負担をだれが負うのか、という問題です。
 人口減少と高齢化でコメの国内需要が減少するのは確実で、今後は海外市場にも販路を求めていく他に、多面的機能を果たし、国土を守る水田を確保する道はありません。
 多面的機能は重要だ、と主張する一方で、水田面積の減少を伴う生産調整を続けることは、矛盾しているとしか考えられません。
 しかし、生産調整を一気にやめてしまえば最も影響を受けるのは大規模稲作農家であって二種兼業農家ではないのですから、これは段階的に行わなくてはなりません。米価下落による影響補填は直接支払の方法により大規模農家を中心として集中的になされるべきであり、すべてにバラマキ的に行ってはなりません。

 水分を多く含んだ日本の短粒種は海外需要がない、というのは誤りで、日本人が美味しいと思うものは海外の米食国民にも美味しいのです。何人かのアジア人から「日本のコメは麻薬のようなものだ。一度食べたらもう今まで食べていたコメを食べる気がしない」との声を聞きました。勿論すべてがそうではないとしても、アジアの所得の向上に伴い、美味しいコメの需要は増えると考えるのが自然でしょう。
 価格の点で競争力が無い、というのも同様で、品質の全く異なる中国米と比較すること自体おかしなことですし、中国産米のコストは今後、賃金の上昇に伴い増高するでしょう。
 反収向上や分散圃場解消の努力もせずにコスト高を喧伝することにも問題があります。
 日本の農産物が食味や安全性、外観で世界トップクラスであるのは多くの人が認めているところですが、いくらコスト削減をしてみても相手国の関税が高ければ輸出阻害要因になります。コスト削減と相手国の関税撤廃は農業界こそ率先して行うべき主張です。
 コスト削減や積極的な海外マーケッティングなどの努力をしなくてもコメが何とかなっていたのは高関税を張り、輸入を阻止し、高くても買ってくれる豊かな消費者に支えられて国内だけで何とかなっていたからです。
 しかしその結果として日本のコメ事情は惨憺たることになりました。後継者はなく、耕作放棄地は増大の一途です。この事実をもっと直視すべきだと私は思います。
 自給率、という概念にほとんど積極的な意味はありません。安全保障を中核概念とするなら今のような飽食を前提として自給率を論ずること自体滑稽なことです。普通に働いて食べていけるカロリーを摂取できればそれでいいのですが、農地や農業者がなくなってしまってはそれ自体が不可能になります。大切なのは「自給率」ではなく「農地」「農業者」「農業技術」「農業生産基盤」を要素とする「自給力」なのです。

 現職議員のほとんどにはその経験がありませんが、ガット・ウルグアイラウンド交渉の際「コメは一粒たりとも入れない」と強硬に主張した結果、要りもしないミニマム・アクセス米を輸入させられる結果となり、後に関税化に切り替えたものの、その量は増える一方でした。
 農林水産大臣当時、WTOドーハ・ラウンド交渉で例外品目を出来るだけ多く確保したいという政府・自民党の従来通りの方針に沿った主張を行いましたが、表には出なかったもののその代償措置は相当に過大なものとなることは必至でした。
 「関税化を阻止した!」「高関税を設定した!」「例外品目を多く獲得する!」という大本営発表的な宣伝とは裏腹に、多くの負担を農業者や国民に強いてきたことは「実を捨てて名をとる」ものであったように私には思われます。
 私自身はこの交渉方針には相当に懐疑的でしたが、自民党農政の抜本的な転換はそう容易なものではなく、生産調整政策の転換を主眼とした農政改革に取り組んだ私に浴びせられた批判は「あのような最低の農水大臣は即刻辞任させよ、農水大臣が何人代わろうと自民党農林族は永遠なのだ」というものでした。
 麻生総理には、敢えて自民党農林族の主流から外れた私を農水大臣に起用し、農政改革を断行させようという意図がありました。そのご期待に応えることが出来なかったことを今でも申し訳なく思っています。

 農協のビジネスモデルも転換が必要です。農業自体の持続可能性が危ぶまれる中にあって、農協だけが生き残るはずがありません。農協が土地改良区とともに、地域の維持と再生を目的として活動することを可能とする「地域マネジメント法人法」が必要です。
 農水大臣在任中にこの法律の策定に着手したのですが、国交省や総務省など多くの省庁に跨る大法案だけに,未完のまま終わってしまいました。しかし、農協の基本理念である「一人は万人のために、万人は一人のために」という精神はまさしく地域再生の担い手として生かされるべきものだと私は思います。

 TPPの問題は、どこか普天間基地移設問題と通底しているような気がします。
 日本に海兵隊も創設せず、海外邦人救出や離島防衛の法的根拠や能力も持たずにこれをアメリカに依存し、集団的自衛権行使を容認しないため、極東の平和と安定に積極的な役割も果たせないままに沖縄に海外軍の膨大な駐留(沖縄に限りませんが)を押し付けて平然としている様は、まず自国で為すべき努力もしないままに「バーンとアメリカに言ってやった」という点で似通っているように思えてなりません。
 勿論これらを放置してきた最大の責任は我々自民党が負うべきものですし、農政や安全保障などの分野に長く携わってきた自分自身が最も重く負うべきものであることは十分承知しております。
 だからこそ、言うべきことは言わねばならないと思うのです。

 外交交渉についての見識や能力を持たない民主党政権による交渉入りには、まさしくその理由により否定的にならざるを得ませんが、私は交渉自体を否定する立場には立ちません。
 そう遠くない将来において実現せねばならない政権再交代後、我々はいやおうなくこの問題に直面せざるを得ないのであり、自民党としての方針を早期に示さなくてはなりません。

 昨日は札幌市において開催された「日本と北海道の今を語る」セミナーに講師・パネラーとして出席してきました。堰八北銀頭取、横山アークス社長、大谷アインファーマシーズ社長、星野札幌観光協会長などのパネラーの皆様、コーディネーターの中村美彦氏など、生き生きとした皆様と討論ができ、とても楽しい時間でした。

 5日土曜日は早稲田祭で講演(午前10時15分・早稲田大学14号館101教室)、鳥取県立鳥取西高校同窓会である鳥城会で講演(正午・アルカディア市ケ谷)、三原朝彦前衆議院議員後援会で講演(午後6時・福原学園自由が丘会館・北九州市八幡区自由が丘)。
 6日日曜日は朝6時に「時事放談」(東京・TBSテレビ、本日収録)、岡山よりフジテレビ系「新報道2001」に中継出演(岡田克也議員との討論・午前7時半)、その後帰鳥し、いくつかの地元行事に出席して東京に戻ります。

 皆様お元気で週末をお過ごしくださいませ。

| | コメント (184) | トラックバック (0)

2011年11月 1日 (火)

セミナー御礼

 事務局です。
 昨日は、約150名様という大勢の方々にお集まりいただき、盛会理にセミナーを行うことができました。
 お越し頂いた皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
 なお、残念ながらお越し頂けなかった方も、次回以降また当ブログにてご案内させていただきますので、ご予定が合いましたら是非お出かけ下さいませ。
 当日の朝、皆様に振る舞うカレーの準備に余念がない代議士の様子です。
S20111031_094219


| | コメント (37) | トラックバック (0)

イシバチャンネル第十二弾「政調会長退任」

事務局です。

イシバチャンネルの動画でアップロードしました。


是非ご覧ください。

| | コメント (22) | トラックバック (0)

« 2011年10月 | トップページ | 2011年12月 »