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2011年12月28日 (水)

御用納め

 石破 茂 です。

 今年も今日で御用納めとなりました。
 閣僚や党役員を務めていた直近の四年間に比べて、少しだけ精神的に余裕のある年末ではあります。そうはいっても、読まねばならない本、整理しなければならない書類や資料、書かねばならないお礼状などなど、山積している事柄は一杯あって、とてものんびりした気分にはなれません。
 たまには家族でゆっくりとうちの温泉に来ませんか、などという本当に有り難いお誘いも時折頂くのですが、その後に滞ってしまうであろう仕事の処理を思うと、どうしても二の足を踏んでしまいます。気持ちの切り替えが下手で要領が悪いのでしょうね。この年末年始には、歴史認識、戦後賠償問題、領土問題、この三つについてもう一度自分の考えを整理しておきたいと思っております。

 先日、今公開中の東映映画「山本五十六」の試写を見る機会を得ました。
 たしか1968年、昭和43年だったと思うのですが東宝で同名の映画が公開され、親に連れられて観に行ったことをよく覚えています。三船敏郎主演でとにかく格好良かったとの記憶がありますが、今回はむしろいかに山本が開戦に徹底して反対であったか、そしてそれにもかかわらずなぜ大日本帝国は開戦への道を辿ったのかが主題であるように思われます。お時間があればどうか是非一度ご覧下さい。
 太平洋戦争海軍関連の映画はこの他に「戦艦大和」「トラ!トラ!トラ!」「連合艦隊」「男たちの大和」、変わったところでは「謎の戦艦陸奥」(実に不思議な作品です)などいろいろ観ましたが、個人的な好みで言えばやはり「連合艦隊」が一番であるように思います。これは何度見ても泣ける作品です。
 第二次大戦に関する海外ものでは「Uボート」が秀逸でしたね。あと「戦艦シュペー号の最期」も印象的な作品でした。私がまだ見ていないものでもいい作品が沢山あるのでしょう。是非お教えくださいませ。
 私の山本五十六元帥についての思いは、先日発売された山川Mook 山本五十六(山川出版社刊)に記しておきました。ご関心のある方はこちらもご覧ください。

 金正日没後の朝鮮半島情勢について当面楽観視する論説を散見しますが、どう考えてもそうは思われません。今が静かなだけに、事態は突然急変するように思われてならないのです。あらゆる事態を想定し、どのような事態にでも対応できるようにしておくのが政府の責任ですが、とても今の政府にはそれを望むべくもありません。
 本来は政治家がどんなに無能でも、官僚機構がそれを支えるものですが、それが全くといいほど機能していない様は「政府崩壊状態」としか形容のしようがありません。政治家と官僚機構の信頼関係や連携体制が完全に壊れているようです。
 その象徴が今日の沖縄県に対する環境影響評価書の未到達に表れています。
 沖縄防衛局の職員が持参する、郵便で送る、いや、目立たないように宅配便を使おう、などと愚かな議論を重ねた挙句にこの有り様です。政治家が誰一人職を賭して動こうとはせず、総理は中国とは異なり差し迫った緊急の課題があるとも思われないインドに出かけてしまう。一体これは何なのでしょうか。

 民主党からもバラバラと離党者が出始めました。消費税増税も、八ツ場ダム建設もマニフェストに反するので離党する、というのだからそれなりに筋は通っており、いくらでも離党すればよろしい。路線の対立がこれ以上修復の仕様がない状態になったのですから、民主党執行部も慰留などせず、政界再編の契機とすべきなのです。

 年明け、内閣支持率が急降下することは必定ですが、自民党がただ相手の自滅を待ち、解散総選挙を唱えてさえいればいいとも思われません。
 消費税率引き上げも、ただそれだけがクローズアップされている傾向がありますが、税制改正全体の中で位置づけられるべきものですし、金融緩和をただ行ってみたところで市場に溢れる資金をいかにデフレ脱却、国土強靭化、そしてイノベーションに資するように誘導するかを論じなくては意味がありません。日銀法改正が必須だとは必ずしも思いませんが、日銀の独立性は確保した上での協調のあり方はもっと詰めて議論し、成案を得る必要があります。「景気が回復したら消費税率を上げる」などという抽象的な選挙目当ての決まり文句を言っている限り、税制改正は不可能です。
 歳出の削減も掛け声ばかりでは仕方がなく、公務員人件費の削減ももっと具体的な根拠や基準を示さなくてはなりません。日本の公務員やそれに類する人の数は他の先進国に比べて少ないのは事実ですが、一人あたりの人件費が際立って高いこと、能力に応じた給与設定がなされていないことこそが問題です。
 国会議員の数もただ少なければいいというものではありませんし、比例定数のみの削減は民意の反映を更に歪なものにしてしまう危険性がありますが、いくらなんでも意欲や能力に欠ける人が多すぎはしないでしょうか。自分のことを棚に上げて言ってはいけませんので、さらに精進しつつも、定数削減の具体案を明示し、実行しなくては税制改正の実現はとても国民の理解が得られません。

 F-Xについては、F-35を選択したことが正しいとされるコメントが比較的多かったようです。「政府が決めたことに文句を言うな」的なご批判は国民の税金の使い道を審議する国会の権能を否定するものですし、「F-2の生産中止を決めたのはお前だろう」とのご指摘は、それなりに優れた戦闘機ではあっても拡張性に乏しいF-2の生産を続けることが日本の防空体制にいかなる寄与をするのかを論じて頂かなくては困ります。生産ラインの維持は重要なことですが、それ自体が自己目的なのではありませんし、その唯一の答えがF-2の継続生産ではないはずです。
 私がF-35の決定に釈然としないのは、この戦闘機をいかなる用途に供するのか、そのコンセプトがよく理解できないということです。ステルス性は確かに重要ですが、日本の防空戦闘機のミッションは、ステルス機のみならず非ステルス機である第四世代戦闘機も含めて大量に侵入してくる侵攻国機をどう排除するかにあり、その場合には搭載兵器の量と質、それを可能とするパワーとハードポイント数が重要なのですが、この状況においてはF-35も機体外に諸兵装を装着することになり、売り物のステルス性は意味を失うのではないか、老朽化が進みつつあるF-15の後継機との関係をどう考えているのか、など実に素朴な疑問が消えません。
 少なくとも政府はこれらの疑問にほとんど答えていない。軍事機密に関することでもあり、公の場で明らかにできないことも当然多くありますが、そうであるなら国会の委員会に本当の意味での「秘密会」を設けて、重い罰則付きの厳重な情報管理体制を構築して説明すべきでしょう。
 何度秘密会の設置を提案しても、議院運営委員会が全く関心を示さないのは困ったもので、これを何とかしなくてはなりません。

 武器輸出三原則等の緩和は、民主党政府唯一の賞賛されるべき決定です。
 共同研究、共同開発、共同生産、共同使用することにより、膨大なリスクとコストをシェアし、インターオペラビリティを向上させ抑止力を高める、実に当たり前のことですが、今まで自民党政権下でも成し得なかった。
 私もこの意義を国会答弁で何度も述べたのですが、答弁の最後には必ず「なお、ただ今私が述べましたことは政府としての決定ではございません」と言わざるを得ず、随分と歯痒い思いをしたものでした。

 年末年始は、大晦日がフジテレビ特別番組「大晦日 景気満開テレビ 被災地応援スペシャル」(生放送・午前6時より8時半)、大晦日恒例の「どんどろけの会お茶配り」(午後10時頃より元旦午前1時頃まで・鳥取事務所前、鳥取市戎町)。
 元旦は実践倫理宏正会鳥取会場元朝式(午前5時・鳥取市卸センター)、自民党国府町支部新年参拝・新年祝賀会(午前八時・宇部神社・鳥取市国府町)。
 3日がTBS「時事放談新春スペシャル」(午前7時・一部地域は別時間・収録は12月末)。
 4日は地元での新年会が続き、5日より平常業務となります。

 27年前に結成された若手有志の会「どんどろけ(鳥取県東部の方言で雷の意)の会」もジュニア世代を迎えるようになりました。
 私の鳥取事務所は商店街の真ん中にあるのですが、25年前に商店会が「午前零時から元旦初売りをやる!」と決定し、「議員の事務所は何も売るモノが無いのですが」と言ったところ「一軒だけ閉まっているのは具合が悪いので、とにかく開けて貰わなくては困る」とのお返事。仕方がないので零時の時報とともに鏡開きをやって、道行く人に酒を振る舞うということから始まりました。当時はまだおおらかな時代で、こうしたことが許されたのですが、公職選挙法が厳しくなり、酒を振る舞うなどもっての外、さりとてやめるわけにもいかず「お茶配り」として今まで続いております。
 ところがご多聞に漏れず鳥取市も中心市街地の空洞化が進み、とうとう今年から元旦初売りも新年イベントもすべて中止、一軒も開いていない中で当事務所だけがやるべきか否か、随分と議論したのですが、「ここでやめるのはいかにも悔しいし、縁起物だからやはりやるべきだ」との結論に到達した次第です。
 いつも変わらないメンバーの友情に感謝しておりますが、さて一体どうなりますやら。どうか近くにお住まいの方、初詣で通りかかられる方は是非お立ち寄りくださいませ。

 この1年、皆様には本当にお世話様になりました。
 当欄をご覧の方々には多くのご示唆を頂き、街頭演説や演説会・講演会、メディア出演では得られない反応を賜りました。啓発されることが多々あり、心より感謝いたしております。来年も何卒よろしくお願い致します。

 万感の思いを込めて、どうか来たる年が祖国日本にとって、そして皆様にとって良い年でありますようにと切にお祈り致します。

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2011年12月22日 (木)

金正日総書記死亡など

 石破 茂 です。

 金正日総書記の死亡自体については、さしたる驚きはありません。
 既に当日午前十時過ぎに、北朝鮮中央放送が正午に重大発表を行う、との情報が入っており、恐らく金正日総書記が死亡したのだろうなとの推測はしていました。

 問題は、後継者である金正恩なる人物が体制を掌握できるか否かの一点につきます。
 推定28歳と若いこと、金日成から金正日への移行時に比べて期間が極めて短いこと、前回と比べて北朝鮮国内の疲弊が相当に進み、国民の不満が鬱積していると推定されることなどから考えて、常識的には体制掌握はかなり困難であると思われます。クーデター、暴動などが発生して国内が大混乱に陥るか、そうなる前に金正恩が冒険主義的な行動に出るか、いずれにせよ何が突然起こっても不思議ではない緊迫した状況が続くものと考えられ、日本としてあらゆる事態を想定し、これに備えておかなくてはなりません。

 このように書くのは簡単ですが、実際は絶望的な状況です。
 正午に重大発表があるとの情報が事前に伝えられていたにもかかわらず、野田総理は新橋駅頭での街頭演説に向かうべく官邸を出発していた、というのは一体どういうことなのか。総理や政治家の補佐官たちに経験がないのは百歩を譲って仕方がないとしても、危機管理監や安全保障担当の官房副長官補などの官僚たちは何故誰も総理の出発を止めなかったのか。
 山岡国家公安委員長兼拉致問題担当相、という本問題に関して最も関係のある職にある大臣に至っては、平日であるというのに地元栃木県の後援会関係者の行事に秘書官もつけずに政務出張、事前の情報も一切伝えられず、事態を知ったのは発表後の正午6分過ぎ、慌てて宇都宮から新幹線に乗ったものの、総理官邸に入った時には安全保障会議は終了していたというお粗末ぶり。
 この国の危機管理体制は一体どうなっているのか。

 次期戦闘機F-XがF-35に決定したということも、甚だ理解に苦しみます。
 多用途戦闘機とはいえ、隠密理の対地攻撃に力点を置いて開発されたF-35がなぜ日本の防空戦闘機として相応しいのか、私には理解が出来ません。「極めて優れた戦闘機」といいますが、「何に優れているのか」が問題です。まだ開発段階といってもいい状況で、カタログデータだけで判断し、内容に不備があったらどのように手当てするのか、納期が遅れたら一体どうするのか、我が国の防衛産業はどのような体制になるのか、疑問は尽きませんが、これについてはまた回を改めて論じたいと思います。

 大臣を補佐する官僚たちが民主党政府に対する信頼を完全になくしている、との指摘もありますが、それならそれできわめて由々しきことです。
 この期に及んでなお、山岡氏や一川氏を適材適所として留任させるのなら、もはや野田総理自身の資質を疑う他はありません。
 来年こそ政権再選択の年としなくてはなりません。自民党こそが問われている、と改めて痛感した一週間でした。

 週末は珍しく地方出張も無く、地元に帰って忘年会をはじめとする諸行事に出来る限り出席する予定です。
 三連休の方もおられるのでしょう。寒波も襲来しており、お風邪など召しませんようお過ごしくださいませ。

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2011年12月20日 (火)

イシバチャンネル第十五弾「2011年を振り返って」

事務局です。

イシバチャンネル第十五弾「2011年を振り返って」をアップロードしました。

是非ご覧ください。

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2011年12月16日 (金)

問責の意味

 石破 茂 です。

 今週は国会が閉会したこともあって、シンポジウムのパネラーや小規模の講演会、ラジオ出演の多い週でした。終了後の懇談会には時間の都合がつく限り参加していますが、必ずしも自民党支持者とばかりは限らない集まりはとても刺激的で勉強になります。

 そのような席で時々「メディアに登場する政治家はどんな人物かある程度わかるが、そうでない政治家の良し悪しはどう判断すればよいのか」とのご質問を頂きます。
 何をもって「良し悪し」とするかは判断される方の基準によりますが、ホームページやブログで何を発信しているかは重要であり、これがインターネットが未発達であった頃との決定的な相違であるように思います。
 私も役目柄、全国の各種議員のお手伝いに行きますが、常に更新し、自分の意見を述べている人もいれば、何年も更新していない人、そもそもそのような媒体を全く使っていない人など様々です。
 選挙の際の各種メディアの「候補者の横顔」とか「私の抱負」などというものは、選挙妨害にならないよう相当に配慮されて作られていますので、あまりアテにはなりません。
 前回も田中美知太郎氏の論を引用して書きましたが、今度の選挙こそ政治家と同時に「日本国民は主権者たりうるか」が問われるのだと思っております。

 昨日ソウルの日本大使館前に設置された「(所謂)慰安婦の像」につき、今週末にも予定されている日韓首脳会談において、野田総理から李大統領に対しその撤去を求めるべきである旨、官房長官・外務大臣に申し入れて参りました。
 この問題は極めてデリケートなものですが、条約の解釈権は双方にあるとはいえ、「日本政府としてウィーン条約第22条第二項に定められた接受国の義務に抵触すると考えるので撤去されたい」と申し入れるのは当然のことであり、既成事実化させることは断じて避けなければなりません。
 自民党政権時代も厄介な問題ではあり、国連人権委員会のペーパーなどに明白に反論せず、いわば「泣き寝入り」してしまったことにも遠因があるように思われますが、日韓首脳会談において、野田総理が明確な姿勢をとることを願ってやみません。

 国会閉会中に、TPPを中心とする予算委員会の集中審議を行うことは与野党の合意事項でしたが、突如として与党側から、「参院で問責決議が可決された一川防衛大臣、山岡国務大臣に、与党側が出席を求めた場合に、野党側が審議に応じることを確約しなければ、開催には同意しない」との申し出があったため、年内には開かれないことになってしまいました。
 与党の思惑は「参議院の問責決議には法的拘束力が無く、二大臣を辞めさせなくてはならない義務もない。異なる院である衆議院に出席させ、野党を審議に応じさせることによって問責決議の意味を無くしてしまいたい」という実にあからさまなものですが、何を考え違いしているのか。
 我々は一川・山岡両大臣は閣僚として不適格であるから問責したのであり、国民の多くもそのように感じているのです。党利党略で政権の足を引っ張っているわけではありません。

 福田・麻生政権の時も参議院で与野党は逆転しており、いつ問責を受けてもおかしくない状況でしたが、各閣僚に対しては一回も決議が出ませんでしたし、福田康夫内閣総理大臣、麻生太郎内閣総理大臣に対する問責は可決されたものの、直ちに衆議院で信任決議案を可決し、内閣はその職務を継続しました。
 民主党が本当に両大臣を「適材適所」だと信じるのであれば、堂々と衆議院に両大臣の信任決議案を出し、いかにその任に相応しいかを述べればいいのです。そのような度胸もなく、国民世論に背を向け、与党の責任も忘れ果てて野党に無理難題を吹っ掛けるなど、責任与党として言語道断の振る舞いと言う他はありません。

 今年もあと二週間となりました。
 17日土曜日は小豆島で講演(午後一時半・小豆島大観音伝道の間・小豆郡土庄町小馬越)、どんどろけの会クリスマス会(午後七時・ホテルニューオータニ鳥取)。
 18日日曜日は地元での諸会合の後フジテレビ「なかよしテレビ 踊る!日中韓」収録(一月十七日19時より放映)という日程です。

 寒波が襲来し、地元鳥取は雪の予報が出ています。
 お風邪など召しませんように、週末をお過ごしくださいませ。

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2011年12月 9日 (金)

国会閉会

 石破 茂 です。

 国会は今日で閉会となりました。
 一川・山岡両大臣の問責も可決され、彼らが自発的に辞任するか、小規模の改造を行うか、あるいは考えにくいことではありますが罷免するか、とにかくこの問題を決着させない限り国会審議は進まず、法案の成立も見込めないのですから、政権側の立場にすれば閉会もやむを得ない選択なのかもしれません。
 一川氏も山岡氏も、国家の独立と国民の生命財産を守るべき防衛相、国家公安委員長兼消費者担当相としては極めて不適格で、問責は当然のことでした。
 「党利党略に明け暮れるより法案成立を優先せよ」とのご批判が当然予想されますが、明日起こるかも知れない非常事態の際、彼らが大臣の任にあってよいはずもなく、総理が任命責任を素直に認め、交代させればよかっただけのことです。
 何でもいいから大臣になりたかったといわれる山岡氏はともかく、一川氏は専門とする農林水産大臣ならまだ適任であったかもしれません。気の毒と言えば気の毒ではあります。
 なんでも「とにかく小沢グループの参議院から一川を入閣させろ」との要請があり、前任の北沢氏が一川氏を強く推したとか。小沢系の輿石氏と、輿石氏と反目する北沢氏の両方の顔を立てた結果だ、との解説がまことしやかに伝えられていますが、防衛トップの人事をそのようなことで決めたとすれば、総理の見識を疑わざるを得ません。このような馬鹿らしい事情で国政が停滞するようなことだけは、二度としないで貰いたいものです。

 一昨日、勉強会が発足いたしました。名称は「さわらび会」。
 名称の出典は万葉集 巻八 1418番 
「石(いわ)ばしる 垂水(たるみ)の上のさわらびの 萌え出づる春に なりにけるかも(志貴皇子)」
 岩をほとばしる滝のほとりの早蕨が萌え出る春になったのだなあ、という意であり、今から始まる清新さのある歌で、「早蕨」に新しい時代の扉を託す、というのが命名者の橘代議士の解説でした。
 マスコミは「石破派結成か」とか「来年九月の総裁選挙出馬に向けた足場固めとみられる」などと書きますが、各分野に優れた知見を持つ議員が集まり、互いの考えを述べあい、真実を見つけることこそ、この会の第一目的です。
 「誰がやるか」以前に「何をやるか」を明確にし、それを互いに共有しなくてはなりません。総理・総裁というものはあくまで「何かを成し遂げるための手段」なのであって、なること自体が目的なのではありません。
 
 憲法、外交、安全保障について私なりの考えはある程度確定的なものを持ってはいますが、このブログのコメント欄でも多くのご意見があるように、財政、金融、貿易、税制、社会保障などの課題について私なりの考えを発してきてはいるものの「これだ」というものを未だに固め切れていません。
 これらの課題はそれぞれが単体として存在するのではなく、すべてがワン・パッケージなのであり、それだけに取り纏めは極めて困難な作業です。
 たとえば「経済成長と財政再建の両立」というのはスローガン的にはよいのですが、この二つの課題は二律背反的な要素を含んでいます。すなわち経済が成長すれば金利が上がり、膨大な国債残高では国債費がかさんで財政再建が困難になる、という懸念がどうしても生じます。これを両立させるための方策とタイミングが重要です。
 年明けからこの勉強会は本格的に動き出します。使命感と責任感を持って臨みたいと思っております。

 消費税率アップの議論が年内に纏まるのかどうか、全く予断を許しません。野田総理もここにきて「年内を目途に」とややトーンダウンしており、一体どうなるのか。
 論点は「増税か否か」ではなく「現下の経済にとって最も望ましい税制とは何か」ということのはずなのですが。とにかく「問題先送り」「責任転嫁」「スローガン絶叫主義」という民主党政治の悪弊も改めて貰いたいものです。

 「この人民ありてこの政治あるなり」(福澤諭吉)というのは確かに真理ではありますが、それは政治が国民に対して真実を語り、それでもなお理解されなかった場合の話であって、最初から「どうせ国民にはわからないのだから」とばかりに迎合的・ポピュリズム的な姿勢をとるのであれば、政治はその存在意義がありません。
 同時に、誠に世間受けしないことを十分承知の上で敢えて申し上げますが、「人民が主権者であるならば、自分がもし国家の立場に立ったらどうするかということを絶えず考えなければならない」「ああしてくれ、こうしてくれ、とばかり言うのは決して主権者ではなく、臣下臣民、家来の立場である」(田中美知太郎・「日本人と国家」)ということもまた一面の真理ではあるのでしょう。
 政治と国民の間には、信頼関係と共に一定の緊張関係がなくてはならないと考えます。

 週末は十日土曜日が自民党綾部支部政経懇談会で講演(午前11時45分・ホテル綾部・綾部市味方町)、自民党福知山支部で講演(午後四時・マリアージュ福知山・福知山市駅南)、その後舞鶴地区有志との懇談会。
 日曜日は地元の諸会合に出席します。

日に日に慌ただしくなります。お体ご自愛の上お過ごしくださいませ。

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2011年12月 2日 (金)

不適切発言など

 石破 茂 です。

 本当に今年もあとひと月、年齢を経るにつれて時の流れが速くなるように感じられるのは何故でしょうか。一説によると「幼い頃は体験するあらゆる物事がすべて新しく、人間の頭脳の中で理解する作業に相当の時間を要するが、年齢を経るにつれてそれが既知のものとして短時間で処理されるため、時間の経過速度が短く感じられる」のだそうです。どの記事で読んだのか忘れてしまいましたが、そう言われればそうであるような、わかったような、わからないような…いずれにせよ、年の瀬に感じる何とも言えない焦燥感は今年も全く同様です。

 田中那覇防衛局長(当時)の発言は、普天間基地移設問題の前進を決定的に損なうものでした。
 発言内容の不適切さは改めて指摘するまでもありませんが、なぜあのような人物を那覇局長に抜擢したのか、防衛省中枢の倫理観や使命感、そして緊張感が恐ろしく弛緩していると思わざるを得ません。
 政権交代後、防衛に全く見識のない人物を防衛大臣に任命し、それをいいことに官僚たちがこれに阿り、阿諛追従してきたからこのようなことが起こるのです。
 局長を更迭すればそれで済むというものではありませんし、政務三役ではなく事務次官が謝罪に赴くとは一体どういう考えなのか。責任が取れる立場ではない官僚が行ってもどうにもなりません。「栄誉と賞賛は現場に与えられ、あらゆる責任は政治がとる」という当然のことが前二代政権においては全く分かっていませんでしたが、野田総理も全く同類です。
 2001年、私が防衛庁副長官当時、沖縄において自衛官が暴行事件を起こしたことがありましたが、翌日私は沖縄に飛び、あらゆる関係者に謝罪しました。イージス艦と漁船の衝突事故の際も、当日は副大臣が、翌日は大臣であった私が現地に行き、関係の方々に謝罪し、その後すぐに福田総理も謝罪に千葉を訪れました。別に我々が立派なわけではなく、これが極めて当然の対応なのです。
 総理の女房役の藤村官房長官に至っては「事務方が起こした問題だから事務方のトップである事務次官が行った」と述べたそうですが、この人も全くわかっていません。民主党や政府内部に総理にものが言える人がいないとすれば、これは由々しき問題です。最近野田総理を「意外としたたか」「大化けするかもしれない」などと評価する向きが散見されるようになりましたが、逆に私の中での総理に対する評価は失望感が増すばかりです。防衛大臣の問責は当然ですが、このような人物を任命した総理の責任こそ厳しく問うていかなくてはなりません。 本日一川大臣が訪沖したようですが、遅きに失したと言う他はありません。

 一昨日の党首討論はかなり厳しい評価がなされています。谷垣総裁の質問は、演説が多く、総理を追い詰めるには至らなかったというものですが、ことほど左様にディベートは難しい。
 一番の問題は、自民党内において、消費税やTPPなどの課題に、結論とは言わないまでも一定の方向性が見出だせていないことにあります。
 自民党は昨年の参議院選挙で消費税の10%への引き上げを公約に掲げて選挙を戦ったのですから、あとは実施時期や複数税率の導入の是非、中央と地方の配分などを詰めておくべきでしたし、TPPも総理が参加の方針を事実上表明した以上、交渉方針や農林水産業に対する支援のあり方、ASEAN+3との関係などを質し、政府の認識不足ぶりを炙り出すべきだったのではないでしょうか。
 「民主党の出方を見てから」というやり方が自民党に対する支持率の停滞を招いている大きな原因なのであり、これについては二年政調会長を務めた私も責任の多くを負わねばなりませんが、トップリーダーの決断には一種の強引さや非情さも求められるのだと改めて思わされたことでした。
 
 大阪W選挙の結果は、橋下氏のキャラクターもさることながら、自民・民主をはじめとする既成政党への強烈な不信感の表れであったと受け止めるべきです。
 殊更に「1地方の選挙結果にしか過ぎない」というような等閑視を決め込んではなりません。
 
 12月1日木曜日は私の友人である総務官僚が客員教授を務めている東大教養学部のゼミナールで「政治改革と選挙制度」をテーマにお話しして参りました。活発な質疑もあり、こちらも随分と啓発される有意義な時間でしたが、「政治を変えるために若者は何をすればよいのか」というストレートな問いには正直返答に窮しました。一般的にシニア層は投票率が高く、若い世代は低いと言われており、「若い世代が投票に積極的に行ってほしい」という以外にうまい回答が見つかりませんでした。

 投票行動そのものにも、求められるべき点が多くあるように思います。
 これはまた回を改めて論じたいのですが、田中美知太郎氏の著作「人間であること」(昭和59年・文芸春秋刊)におさめられた「日本人と国家」という講演録は誠に示唆に富むものです。

 週末は3日土曜日が「釧路の未来を考える会」で講演(午後5時半・釧路プリンスホテル・釧路市幸町)。
 4日日曜日は各種会合に出席の他は、溜まりに溜まってしまった資料の整理に充てたいと思っています。
 急に寒くなりました。お体に気を付けて週末をお過ごしくださいませ。

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