御用納め
石破 茂 です。
今年も今日で御用納めとなりました。
閣僚や党役員を務めていた直近の四年間に比べて、少しだけ精神的に余裕のある年末ではあります。そうはいっても、読まねばならない本、整理しなければならない書類や資料、書かねばならないお礼状などなど、山積している事柄は一杯あって、とてものんびりした気分にはなれません。
たまには家族でゆっくりとうちの温泉に来ませんか、などという本当に有り難いお誘いも時折頂くのですが、その後に滞ってしまうであろう仕事の処理を思うと、どうしても二の足を踏んでしまいます。気持ちの切り替えが下手で要領が悪いのでしょうね。この年末年始には、歴史認識、戦後賠償問題、領土問題、この三つについてもう一度自分の考えを整理しておきたいと思っております。
先日、今公開中の東映映画「山本五十六」の試写を見る機会を得ました。
たしか1968年、昭和43年だったと思うのですが東宝で同名の映画が公開され、親に連れられて観に行ったことをよく覚えています。三船敏郎主演でとにかく格好良かったとの記憶がありますが、今回はむしろいかに山本が開戦に徹底して反対であったか、そしてそれにもかかわらずなぜ大日本帝国は開戦への道を辿ったのかが主題であるように思われます。お時間があればどうか是非一度ご覧下さい。
太平洋戦争海軍関連の映画はこの他に「戦艦大和」「トラ!トラ!トラ!」「連合艦隊」「男たちの大和」、変わったところでは「謎の戦艦陸奥」(実に不思議な作品です)などいろいろ観ましたが、個人的な好みで言えばやはり「連合艦隊」が一番であるように思います。これは何度見ても泣ける作品です。
第二次大戦に関する海外ものでは「Uボート」が秀逸でしたね。あと「戦艦シュペー号の最期」も印象的な作品でした。私がまだ見ていないものでもいい作品が沢山あるのでしょう。是非お教えくださいませ。
私の山本五十六元帥についての思いは、先日発売された山川Mook 山本五十六(山川出版社刊)に記しておきました。ご関心のある方はこちらもご覧ください。
金正日没後の朝鮮半島情勢について当面楽観視する論説を散見しますが、どう考えてもそうは思われません。今が静かなだけに、事態は突然急変するように思われてならないのです。あらゆる事態を想定し、どのような事態にでも対応できるようにしておくのが政府の責任ですが、とても今の政府にはそれを望むべくもありません。
本来は政治家がどんなに無能でも、官僚機構がそれを支えるものですが、それが全くといいほど機能していない様は「政府崩壊状態」としか形容のしようがありません。政治家と官僚機構の信頼関係や連携体制が完全に壊れているようです。
その象徴が今日の沖縄県に対する環境影響評価書の未到達に表れています。
沖縄防衛局の職員が持参する、郵便で送る、いや、目立たないように宅配便を使おう、などと愚かな議論を重ねた挙句にこの有り様です。政治家が誰一人職を賭して動こうとはせず、総理は中国とは異なり差し迫った緊急の課題があるとも思われないインドに出かけてしまう。一体これは何なのでしょうか。
民主党からもバラバラと離党者が出始めました。消費税増税も、八ツ場ダム建設もマニフェストに反するので離党する、というのだからそれなりに筋は通っており、いくらでも離党すればよろしい。路線の対立がこれ以上修復の仕様がない状態になったのですから、民主党執行部も慰留などせず、政界再編の契機とすべきなのです。
年明け、内閣支持率が急降下することは必定ですが、自民党がただ相手の自滅を待ち、解散総選挙を唱えてさえいればいいとも思われません。
消費税率引き上げも、ただそれだけがクローズアップされている傾向がありますが、税制改正全体の中で位置づけられるべきものですし、金融緩和をただ行ってみたところで市場に溢れる資金をいかにデフレ脱却、国土強靭化、そしてイノベーションに資するように誘導するかを論じなくては意味がありません。日銀法改正が必須だとは必ずしも思いませんが、日銀の独立性は確保した上での協調のあり方はもっと詰めて議論し、成案を得る必要があります。「景気が回復したら消費税率を上げる」などという抽象的な選挙目当ての決まり文句を言っている限り、税制改正は不可能です。
歳出の削減も掛け声ばかりでは仕方がなく、公務員人件費の削減ももっと具体的な根拠や基準を示さなくてはなりません。日本の公務員やそれに類する人の数は他の先進国に比べて少ないのは事実ですが、一人あたりの人件費が際立って高いこと、能力に応じた給与設定がなされていないことこそが問題です。
国会議員の数もただ少なければいいというものではありませんし、比例定数のみの削減は民意の反映を更に歪なものにしてしまう危険性がありますが、いくらなんでも意欲や能力に欠ける人が多すぎはしないでしょうか。自分のことを棚に上げて言ってはいけませんので、さらに精進しつつも、定数削減の具体案を明示し、実行しなくては税制改正の実現はとても国民の理解が得られません。
F-Xについては、F-35を選択したことが正しいとされるコメントが比較的多かったようです。「政府が決めたことに文句を言うな」的なご批判は国民の税金の使い道を審議する国会の権能を否定するものですし、「F-2の生産中止を決めたのはお前だろう」とのご指摘は、それなりに優れた戦闘機ではあっても拡張性に乏しいF-2の生産を続けることが日本の防空体制にいかなる寄与をするのかを論じて頂かなくては困ります。生産ラインの維持は重要なことですが、それ自体が自己目的なのではありませんし、その唯一の答えがF-2の継続生産ではないはずです。
私がF-35の決定に釈然としないのは、この戦闘機をいかなる用途に供するのか、そのコンセプトがよく理解できないということです。ステルス性は確かに重要ですが、日本の防空戦闘機のミッションは、ステルス機のみならず非ステルス機である第四世代戦闘機も含めて大量に侵入してくる侵攻国機をどう排除するかにあり、その場合には搭載兵器の量と質、それを可能とするパワーとハードポイント数が重要なのですが、この状況においてはF-35も機体外に諸兵装を装着することになり、売り物のステルス性は意味を失うのではないか、老朽化が進みつつあるF-15の後継機との関係をどう考えているのか、など実に素朴な疑問が消えません。
少なくとも政府はこれらの疑問にほとんど答えていない。軍事機密に関することでもあり、公の場で明らかにできないことも当然多くありますが、そうであるなら国会の委員会に本当の意味での「秘密会」を設けて、重い罰則付きの厳重な情報管理体制を構築して説明すべきでしょう。
何度秘密会の設置を提案しても、議院運営委員会が全く関心を示さないのは困ったもので、これを何とかしなくてはなりません。
武器輸出三原則等の緩和は、民主党政府唯一の賞賛されるべき決定です。
共同研究、共同開発、共同生産、共同使用することにより、膨大なリスクとコストをシェアし、インターオペラビリティを向上させ抑止力を高める、実に当たり前のことですが、今まで自民党政権下でも成し得なかった。
私もこの意義を国会答弁で何度も述べたのですが、答弁の最後には必ず「なお、ただ今私が述べましたことは政府としての決定ではございません」と言わざるを得ず、随分と歯痒い思いをしたものでした。
年末年始は、大晦日がフジテレビ特別番組「大晦日 景気満開テレビ 被災地応援スペシャル」(生放送・午前6時より8時半)、大晦日恒例の「どんどろけの会お茶配り」(午後10時頃より元旦午前1時頃まで・鳥取事務所前、鳥取市戎町)。
元旦は実践倫理宏正会鳥取会場元朝式(午前5時・鳥取市卸センター)、自民党国府町支部新年参拝・新年祝賀会(午前八時・宇部神社・鳥取市国府町)。
3日がTBS「時事放談新春スペシャル」(午前7時・一部地域は別時間・収録は12月末)。
4日は地元での新年会が続き、5日より平常業務となります。
27年前に結成された若手有志の会「どんどろけ(鳥取県東部の方言で雷の意)の会」もジュニア世代を迎えるようになりました。
私の鳥取事務所は商店街の真ん中にあるのですが、25年前に商店会が「午前零時から元旦初売りをやる!」と決定し、「議員の事務所は何も売るモノが無いのですが」と言ったところ「一軒だけ閉まっているのは具合が悪いので、とにかく開けて貰わなくては困る」とのお返事。仕方がないので零時の時報とともに鏡開きをやって、道行く人に酒を振る舞うということから始まりました。当時はまだおおらかな時代で、こうしたことが許されたのですが、公職選挙法が厳しくなり、酒を振る舞うなどもっての外、さりとてやめるわけにもいかず「お茶配り」として今まで続いております。
ところがご多聞に漏れず鳥取市も中心市街地の空洞化が進み、とうとう今年から元旦初売りも新年イベントもすべて中止、一軒も開いていない中で当事務所だけがやるべきか否か、随分と議論したのですが、「ここでやめるのはいかにも悔しいし、縁起物だからやはりやるべきだ」との結論に到達した次第です。
いつも変わらないメンバーの友情に感謝しておりますが、さて一体どうなりますやら。どうか近くにお住まいの方、初詣で通りかかられる方は是非お立ち寄りくださいませ。
この1年、皆様には本当にお世話様になりました。
当欄をご覧の方々には多くのご示唆を頂き、街頭演説や演説会・講演会、メディア出演では得られない反応を賜りました。啓発されることが多々あり、心より感謝いたしております。来年も何卒よろしくお願い致します。
万感の思いを込めて、どうか来たる年が祖国日本にとって、そして皆様にとって良い年でありますようにと切にお祈り致します。
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