施政方針演説など
石破 茂 です。
さる二十四日に行なわれた野田総理の施政方針演説に対する谷垣総裁の代表質問が昨日行われました。全体的に対決姿勢を鮮明にし、公約違反の民主党に消費税増税を含む税と社会保障の一体改革を国民に問う資格は無いと断罪し、解散・総選挙を迫るものでした。
野田総理の施政方針演説は、政権発足時の低姿勢は影も形もなく、「正心誠意」という言葉も一度も使われず、ひたすら消費税増税の必要性を説き、それに応ずることが野党の責任であるとの主張でした。
福田総理の「与野党が話し合い、国政を動かすことが政治の責任」、麻生総理の「消費税を含む税制抜本改革を行うため2011年度までに必要な法制上の措置を講じる」との発言を引用し、自民党は過去言ってきたことを守るべきだと強調したのにはいささか驚きました。
福田内閣、麻生内閣両内閣に籍を置いた私はあの時に民主党がこれらの提案に対し誠に冷淡で、歯牙にもかけない姿勢で反対したことが鮮明に記憶に残っています。そのことについての反省や謝罪があった上で自民党に歩み寄りを迫るのならともかく、これでは我々として「貴方にそのようなことを言われる筋合いはない」「貴方だけには言われたくない」と反応せざるを得ません。
昨年政権発足時のままに、低姿勢を維持し、「あの時の民主党の対応は間違っていた。率直にお詫びする。だから国家国民の為知恵と力を貸して貰いたい」と言えば自民党の対応は随分と違っていたはずなのですが、一体これはどうしたことなのでしょうか。
景気対策や複数税率などの逆進性緩和策、若年層を豊かにすることによって高齢者を支える社会を築くための方策、公務員総人件費20%削減に向けた道筋などを一切示さないままに、ひたすら消費増税だけを説く姿は「自己陶酔的」とも映ります。陶酔するのは勝手ですが、このまま与野党の対決色だけが強まれば、それこそ「何も決まらず、何も進まず」という状態が続き、国民の不信が高まるだけです。
野田氏本人は本来そのような人ではなかったはずなのですが、内閣総理大臣という職責の持つ魔力は、人をこのように変えてしまうものなのかもしれません。
田中直紀防衛大臣の任命についても同じ感じがしてなりません。一川大臣任命の際の過ちを認めず、性懲りもなく経験のない者を防衛の責任者に任じて「これが最強の布陣だ」と言い放つ姿勢にはとても恐ろしいものを感じます。
自民党はこれにどう対応すべきか、かなり苦慮します。
国民を欺き、政権を盗った民主党に増税を語る資格は無く、直ちに解散して信を問え、というのは理屈としてはその通りなのですが、国民がこの自民党の訴えに強く共感しないのは「なにも好きで民主党に票を投じたわけではない。自民党の国民を軽視した姿勢に嫌気がさして一度代わってもらいたいと思ったのだ。自民党はどう変わったのか、自民党ならどうするのかをはっきりと示せ」と思っているからなのではないでしょうか。
衆議院の任期満了まであと一年半しかなく、その間に自民党の変わった姿を示さなければ、たとえ比較第一党となり、政権を担当しても不安定な政権運営が続かざるを得ません。ほとんど同時期に半数の改選を迎える参議院で安定多数が取れる確たる見込みも乏しく、政権復帰後の絵姿がどうにも描けないのです。
政権与党は国家運営についての第一義的な責任を負っているのですから、たとえ格好が悪かろうと非は率直に認めて謝罪し、野党に協力を乞うべきでしょう。現時点ではまだ日程の協議中ですが、恐らく来週から始まるであろう予算委員会において、野田総理の誠実かつ真摯な対応を期待してやみません。
週末は地元日程となります。
28日土曜日が公明党新春の集い(午前11時・鳥取市白兎会館、午後6時・倉吉シティホテル)、日本海新聞社主催:日本海政経懇話会特別例会での講演(午後1時・ホテルニューオータニ鳥取、午後4時・日本海新聞中部本社)。
29日日曜日はTBS時事放談出演(収録、放映は午前6時、一部地域は別時間)、日本海政経懇話会講演(午後5時・米子全日空ホテル)、残余の時間は諸会合の出席や予算委員会の質問準備に充てたいと思っております。
寒い日が続きます。ご自愛の上、週末をお過ごしくださいませ。
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