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2012年1月28日 (土)

施政方針演説など

 石破 茂 です。
 さる二十四日に行なわれた野田総理の施政方針演説に対する谷垣総裁の代表質問が昨日行われました。全体的に対決姿勢を鮮明にし、公約違反の民主党に消費税増税を含む税と社会保障の一体改革を国民に問う資格は無いと断罪し、解散・総選挙を迫るものでした。

 野田総理の施政方針演説は、政権発足時の低姿勢は影も形もなく、「正心誠意」という言葉も一度も使われず、ひたすら消費税増税の必要性を説き、それに応ずることが野党の責任であるとの主張でした。
 福田総理の「与野党が話し合い、国政を動かすことが政治の責任」、麻生総理の「消費税を含む税制抜本改革を行うため2011年度までに必要な法制上の措置を講じる」との発言を引用し、自民党は過去言ってきたことを守るべきだと強調したのにはいささか驚きました。
 福田内閣、麻生内閣両内閣に籍を置いた私はあの時に民主党がこれらの提案に対し誠に冷淡で、歯牙にもかけない姿勢で反対したことが鮮明に記憶に残っています。そのことについての反省や謝罪があった上で自民党に歩み寄りを迫るのならともかく、これでは我々として「貴方にそのようなことを言われる筋合いはない」「貴方だけには言われたくない」と反応せざるを得ません。

 昨年政権発足時のままに、低姿勢を維持し、「あの時の民主党の対応は間違っていた。率直にお詫びする。だから国家国民の為知恵と力を貸して貰いたい」と言えば自民党の対応は随分と違っていたはずなのですが、一体これはどうしたことなのでしょうか。
 景気対策や複数税率などの逆進性緩和策、若年層を豊かにすることによって高齢者を支える社会を築くための方策、公務員総人件費20%削減に向けた道筋などを一切示さないままに、ひたすら消費増税だけを説く姿は「自己陶酔的」とも映ります。陶酔するのは勝手ですが、このまま与野党の対決色だけが強まれば、それこそ「何も決まらず、何も進まず」という状態が続き、国民の不信が高まるだけです。
 野田氏本人は本来そのような人ではなかったはずなのですが、内閣総理大臣という職責の持つ魔力は、人をこのように変えてしまうものなのかもしれません。

 田中直紀防衛大臣の任命についても同じ感じがしてなりません。一川大臣任命の際の過ちを認めず、性懲りもなく経験のない者を防衛の責任者に任じて「これが最強の布陣だ」と言い放つ姿勢にはとても恐ろしいものを感じます。

 自民党はこれにどう対応すべきか、かなり苦慮します。
 国民を欺き、政権を盗った民主党に増税を語る資格は無く、直ちに解散して信を問え、というのは理屈としてはその通りなのですが、国民がこの自民党の訴えに強く共感しないのは「なにも好きで民主党に票を投じたわけではない。自民党の国民を軽視した姿勢に嫌気がさして一度代わってもらいたいと思ったのだ。自民党はどう変わったのか、自民党ならどうするのかをはっきりと示せ」と思っているからなのではないでしょうか。
 衆議院の任期満了まであと一年半しかなく、その間に自民党の変わった姿を示さなければ、たとえ比較第一党となり、政権を担当しても不安定な政権運営が続かざるを得ません。ほとんど同時期に半数の改選を迎える参議院で安定多数が取れる確たる見込みも乏しく、政権復帰後の絵姿がどうにも描けないのです。

 政権与党は国家運営についての第一義的な責任を負っているのですから、たとえ格好が悪かろうと非は率直に認めて謝罪し、野党に協力を乞うべきでしょう。現時点ではまだ日程の協議中ですが、恐らく来週から始まるであろう予算委員会において、野田総理の誠実かつ真摯な対応を期待してやみません。

 週末は地元日程となります。
 28日土曜日が公明党新春の集い(午前11時・鳥取市白兎会館、午後6時・倉吉シティホテル)、日本海新聞社主催:日本海政経懇話会特別例会での講演(午後1時・ホテルニューオータニ鳥取、午後4時・日本海新聞中部本社)。
 29日日曜日はTBS時事放談出演(収録、放映は午前6時、一部地域は別時間)、日本海政経懇話会講演(午後5時・米子全日空ホテル)、残余の時間は諸会合の出席や予算委員会の質問準備に充てたいと思っております。

 寒い日が続きます。ご自愛の上、週末をお過ごしくださいませ。

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2012年1月20日 (金)

東京の初雪など

 石破 茂 です。

 東京は例年より相当遅く、今日初雪となりました。我々日本海側の降雪地域に育った者は、ほんの少し雪が降っただけで交通が大混乱する東京の様子を大いに訝しく思ったものでした。幸い今日はそのような大きな混乱もなく、雪も小康状態となっています。
 小学生の頃、鳥取はもっと雪が降ったように記憶しています。大雪になると学校は臨時休校となり、スキー遠足に切り替わって絶好の初心者向けコースに姿を変えた鳥取砂丘でスキーに興じたものでした。
 その甲斐あってか、一応スキーは一通りできるので、もう一度やってみたい誘惑に駆られるのですが、もう三十年以上もやっていないのでやめた方が無難かもしれません。海での水泳についても同じことで、もう一度故郷の美しい海に潜って雲丹やらサザエやらを採ってみたり、魚たちと一緒に泳いでみたりしてみたいとは思うのですが、これもやめたほうがよさそうですね…。人生の三分の二は過ぎつつあるのでしょうが、もうあの楽しさは味わえないのだと思うと、とても寂しい気持ちにさせられます。

 我に返ってみれば、明日から明後日にかけて自民党大会、来週からは通常国会が始まります。
 党大会は昨年とは大きく趣向が変わって、ワークショップも終日701号会議室の一部屋のみ、屋台村は駐車場使用問題もあってか今年はやらないことになったそうです。遊び心的なものは一切排して「解散に追い込むべく全力を集中する」との一点に絞った党大会になるのでしょうか。

 私は今週いくつかのテレビ番組で、解散だけを声高に叫ぶことには懐疑的であること、消費税増税について民主党が、前回の総選挙での公約に反していることを率直に認めてこれを謝罪し、「税と社会保障の一体改革の素案」について閣議決定をしたならば、自民党は国会においてきちんと審議すべきである旨申し上げました。
 どちらも政府・与党がその気になれば今すぐにでもできることです。それをしないままに「協議に応じない自民党が悪い」と責任転嫁をしてみたり、「消費税法案が成立しなければどうなるかわかっているのか」と恫喝する姿勢は極めてアンフェアなものですが、さりとて今審議もしないままに解散に追い込んでも、支持率が低迷したままでは安定過半数の議席は得られず、参議院はどんなに早くも来年の夏までは「逆ねじれ状態」が続きます。
 たとえ衆議院で第一党になり、「谷垣総理」の下で政権に復帰してもそれは極めて不安定なものであり、何も物事が進まないということになりかねません。
 
 もう一つの懸念は、景気回復や財政再建に向けて何も進まない日本の状況を市場がどのように判断するのか、ということであり、これは決して理屈のみで動くものはありません。消費税率のアップはあくまで総動員すべき政策のワン・オブ・ゼムでしかないのですが、これだけが取り上げられて論ぜられる状況は決して健全ではありません。政策全体とそれぞれの実施時期をパッケージで説明しなければ「不景気でデフレの時に消費税を上げるなどもっての外だ」という論に対して説得力を持ちません。

 「流石は自民党だ」と国民が評価し、支持率が民主党を大きく上回るようになったときこそが国民の支持のもとに解散に追い込む好機なのではないかと私は考えます。
 よしんば総理がそれを拒み、任期満了まで解散を引きずったとしても、それは精々来年八月末の任期満了までのことであり、民主党の大敗と自民党の議席増はさらに確実なものになるでしょう。
 税制の他にも、普天間、エネルギー、TPP、震災復興など民主党ではとても解決できない課題が山積しています。自民党はこの一年を「政権党へ復帰する準備期間」と位置づけ、党改革をさらに進めるとともに国家国民のために持てる力を最大限に発揮すべきだと思うのです。

 週末は党大会関連行事のため在京です。
 22日日曜日はBS朝日「激論クロスファイア」で前原氏との討論が放送される予定です(収録・午前10時)。
 
 寒さ厳しき折、ご自愛の上週末をお過ごしくださいませ。

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2012年1月13日 (金)

内閣改造

 石破 茂 です。

 本日内閣改造が行われました。
 党代表も務めた岡田氏を副総理に、長くこの問題に携わってきた松原氏を拉致担当相に、とそれなりに評価すべき点もないではありませんが、防衛大臣に田中直紀参院議員を充てた、という一点だけでこの改造は全く評価することが出来ません。一体何を考えているのか、理解に苦しむ、などという表現を遥かに越えて、野田総理の資質そのものに根本的な問題があるのではないかと思われます。
 「安全保障委員長をやっていた」ということと本人に見識があるかどうかは全くの別問題です。一川氏の失敗に何も学ばず、参院枠や当選年次、小沢系などに配慮することが安全保障に優先する、というのなら、それだけでもう政権を担う資格がありません。
 田中新大臣の資質は予算委員会の質疑をやってみればわかることです。前任者については、あまりのマインドのなさに、質疑するこちらの方が馬鹿馬鹿しくなってしまい、質問を途中で切り上げてしまったこともありましたが、今度はそういうわけにはいきません。

 週末は地元新年会のピークのラストとなります。久々にゆっくりと地元の方々とお話しできる機会が得られたことをとても有難く思っております。週明けからはまた地方での講演、遊説が始まります。

 皆様、お元気で週末をお過ごしくださいませ。

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2012年1月 5日 (木)

新年明けましておめでとうございます

 石破 茂 です。
 新しい年が始まりました。こうして新年を迎えられたことに心から感謝しております。
 本年が祖国日本にとって、そして皆様にとって良い年でありますことを切にお祈りいたします。

 年末年始、皆様はどのようにお過ごしになられたでしょうか。私は政府や党の役職に就かない久々の年末年始を、少しだけ精神的緊張感で張り詰めることなく過ごさせていただきました。年末年始もなく、国の防衛や治安の維持にあたられた方々、被災地をはじめ各地で忙しく過ごされた方々に心より感謝申し上げます。

 元旦は鳥取事務所で恒例の「どんどろけの会 新年お茶配り」を行いました。
 「新年あけましておめでとうございます!本年もよろしくお願い致します!」と絶叫しつつ熱いお茶などを道行く人に配るのも今年で二十四回目になりました。
 今年から商店街の「元旦初売り」も「新年カウントダウンイベント」も無くなってしまい、周りのお店が全部閉まっている中で絶叫する光景は、やや異様と言えば異様ですが、例年になく若い人たちが多く立ち寄って下さり、賑やかな中に終えることが出来ました。関西方面からわざわざお越し下さった方も居られ、本当に有り難いことでした。いつもの通り参加してくれた「どんどろけの会」のメンバーに心から感謝です。

 お休み中にあれこれ読まなくてはならない資料もあったのですが、年末年始地元と東京を三往復、寒波降雪の為に飛行機の欠航が多く、移動のほとんどが列車だったこともあって、肩の凝らない読み物を読むことが多くなってしまいました。
 アーサー・ヘイリーの「権力者たち」(原題はIN HIGH PLACES 新潮文庫)を久々に読み返したりしていたのですが、これは実に面白い。政治に携わる者の悩みや苦しみはいつの時代でも、どの国でも同じようなものだと思わされます。冷戦真っ只中の1962年の作品ですが、今に共通する課題も多く、是非ご一読ください。

 年末年始も任に当たられた自衛官、警察官、消防官のご労苦は心から多としつつも、オウム真理教幹部の出頭に対する警察の対応はやはり相当に問題があったと思わざるを得ません。寡聞にして存じませんが、この件について国家公安委員長は何らかのコメントを出したのでしょうか。この緊張感の欠如は相当に恐ろしいことであり、やはり「上が駄目なら全体が駄目になる」という見本のように思えてなりません。
 税と社会保障の一体改革について、野田総理は不退転の決意を示していますが、それのみに集中して他が疎かになってはいないでしょうか。今年は二月にイタリア、三月にギリシャ、四月にスペインが大量の国債償還期を迎えます。これに欧州の金融機関が対処できなければ、巷間伝えられている通り、リーマンショック以上の経済危機が発生しかねません。
 朝鮮半島情勢もいつ何が起きても不思議ではなく、国家の体制自体を立て直さなくてはどうにもなりません。

 今はまだお屠蘇気分でいる永田町ですが、週明けあたりから極度の緊迫した情勢になることは確実です。自民党は「とにかくまず解散だ」と主張していますが、今の時点で解散することが本当に国家の為なのか、私はかなり懐疑的です。
 いずれにせよ来年夏には任期が満了するのであり、自民党はそれまでの間を政権担当準備期間と位置付けて国家国民のために何をすべきなのか、真剣に議論し、答えを出さなくては国民の評価は得られません。支持率であの民主党を少し上回っているだけ、という事態は相当に深刻で、予算委員会が開会するまでに私としても当然この答えを見出していかなくてはなりません。

 三連休ともなる週末は、地元で各種新年会のラッシュです。ここ数年東京に居て出られなかったものも多く、出来るだけ務めたいと思っております。
 8日日曜日はこれも新年恒例となった「あいサポートとっとりフォーラム」で野沢和弘毎日新聞論説委員、松永正昭社会福祉法人コミュニティネットふくい専務理事との福祉関係の座談会に参加します。
 集中して福祉について考える有り難い機会と思って例年参加しております。啓発されることが多い会で、私も出来る限りの準備をして臨みたいと思っております(午前11時40分、米子コンベンションセンター国際会議室)。

 皆様、本年も何卒よろしくお願い致します。どうかお元気でお過ごしくださいませ。

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