石破 茂 です。
先週末は土曜日に宮城県多賀城市、七ケ浜町、塩釜市、日曜日に岩手県久慈市と、震災・大津波から一年を経た被災地に行って参りました。復旧・復興は未だ道遠し、というのが率直な印象であり、政治は更なる力を尽くさなくてはなりません。
瓦礫も最終処分はともかくとしてあらかた片付き、市街地中心部は相当に急に復しているようにも見えますが、海岸に近い地域は未だに被災直後の惨状がほとんどそのまま残っておりました。
津波で家が流されてしまったか、ほとんど全壊に近い被害を受けた家は撤去され更地になっていますが、建築からそれほど時間が経過しておらず、何とか住める家は住民が帰りつつあり、全体が集団移転するか否かで地域全体が割れてしまっており、この解決は容易ではないことを痛切に感じました。
仮に三割が残ったとしても、そこはもはや地域としての機能を果たすことはできず、生活インフラの整備をどうするのか、空き地をどうするのかという問題に直面しますし、集団移転となればまだまだ使える家の補償は誰がどのようにして行うのか、これもまた厳しい課題です。
国が確固たる方針を示さないため、何の権限もない役場の職員は住民の罵声をうなだれて聞いている他はない、というのが現実の姿のようです。
私にも答えがあるわけではありません。建築基準法の制限もあり、今の日本の家は移築することが相当に困難であることも(日本古来の伝統工法はパズルのような「木組み」であったので解体、移築が容易であった)この問題を複雑にしています(日本の伝統工法については 白井裕子著「森林の崩壊」新潮新書 にわかりやすく書かれています)。
時間をかければ解決するというものでは決してなく、法的・予算的な面も含めて国が指針を早く示すことこそが求められています。
「ワンストップで問題が解決する」ことを目指した復興庁も必ずしも所期の目的を果たしていません。
問い合わせても「国交省に聞いてくれ」「金融庁に聞かなければわからない」という答えばかりで、現場には大きな失望が広がっています。震災後一年、自民党として問題点を総点検する必要がありそうです。
岩手県久慈市では震災後五日で一部区間を復旧させた三陸鉄道北リアス線の現場を見て参りました。
高度成長とともにその役割を終えたかのように見えた鉄道ですが、新しい時代は再び鉄道をベースとした街づくりが求められると思ったことでした。
この様子は3月11日のフジテレビ系震災一周年特別番組で放映される予定です。
昨日、平成24年度予算は衆議院予算委員会、本会議で自民党はじめ各党が提出した予算案組み替え動議が否決され、政府原案の通り可決、参議院に送付されました。
本来修正があってしかるべきものですが、政府原案通りというのは我々が長く政権を持っていた時代からの「決まり」のようなもので、議会の役割とは何なのかを考えざるを得ません。
この間およそ一か月、予算委員会の筆頭理事職に忙殺され、ほとんど他の仕事ができませんでした。
審議拒否を一切やらなかったのですが、それでも審議時間は近年最長、中身も相当に深いものになったのではないかと思っています。
「何も決まらない、何も進まない国会」というのに国民はうんざりしているのであって、「税と社会保障」「エネルギー政策」「TPP交渉方針と国内産業強化策」「普天間基地移設方針」などにつき、積極的に話し合いを進め、一定の結論が出たのちに解散して国民の審判を仰ぐ、という真っ当な道を歩むべきだと私は思います。
「消費税を上げる前にやるべきことがある」それはその通りですが、これがポピュリズム的な「消費税引き上げ絶対反対」になるのであるならとても賛同はできません。
「デフレの時に上げるべきではない」という主張と「日銀の国債直接引き受け論」がセットになるようなら私はこれにも反対です。
対価として裏打ちがある実体価値や市場評価を伴わない日銀の国債直接引き受けは「木の葉のお札」のようなもので、やがてインフレになることは必至です。まさかハイパーインフレを起こして「インフレ税」的に国債の返済を容易にしようと考えているわけではないでしょうが。
社会保障の「選択と集中」についても早く正面から議論して成案を得、賛同できない人は別の政党でも作って国民に訴えればよいのです。
「病気になったが資産も収入もない」「身体が不自由になったが資産も収入もない」「高齢になったが資産も収入もない」というリスクに備える保険が医療保険、介護保険、年金の本質なのであり、リスクを回避できた人まで恩恵に浴するのでは保険として成り立たないのは当然です。
所得再配分機能も働かず、年金をそのまま貯金して子どもに相続させるようでは格差は拡大する一方です。このような悪平等により財政は危機的になり、本当に救われるべき人に手当が行き届かないのが現実なのではないのでしょうか。
このようなことを言えば非難の嵐であることは十分に承知していますけれど、この議論を回避する限り、消費税はどこまで上げても足りません。これからが高齢社会のピークなのであり、今また大盤振る舞いなどしてはなりません。
久しぶりに自民党の会議に出られるようになりましたが、憲法改正案作成作業は起草委員会での議論が終わり、全体討議に入っていました。
私も起草委員ではあったのですが、とても出られるような状況ではなく、何とか全体討議に間に合ってよかったなと思っております。これについては次回にでも論じたいと考えています。
週末は10日土曜日が久々に終日地元日程です。自衛隊入隊予定者激励会(午前10時半・とりぎん文化会館)、鳥取県歯科衛生専門学校卒業式(午後1時・同校)、後援会女性部(さつき会)春の懇談会(午後2時・ホテルニューオータニ鳥取)、鳥取県倫法人会若手経営者講演会(午後6時・ホテルセントパレス倉吉)。
11日日曜日は東日本大震災一周年追悼式典(午後2時半・国立劇場)という日程です。
今日の東京は冷たい雨となりました。震災から一年、犠牲になられた方々の御霊安らかならんことと、被災者の方々のご平安を祈ります。