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2012年5月25日 (金)

国家安全保障基本法、政策会議へ

 石破 茂 です。

 税と社会保障の委員会が連日開催されていますが、全くと言っていいほどに議論が深まらないのは、野田総理をはじめとする政府・与党に「何が何でもこの法案を成立させたい」との熱意が無いからである、と断じます。
 田中、前田の問責二閣僚について、「しっかり反省して職務に邁進してもらいたい」と繰り返すばかりでは全く埒があきません。「世論も関心を失ったではないか。輿石幹事長の顔を潰すわけにはいかないし、そのうち何かの取引材料に使えるかもしれないから当分このままにしておこう」との意図があまりに見え透いて、野田総理の人格まで否定したくなります。国会開会中に問責を出した時期が問題だ、と岡田副総理は述べていますが、何を馬鹿なことを言っているのか。時期が問題なのではではなく、人が問題なのです。権力を握ると人はこんなにまでも傲慢になるものでしょうか。

 民主党のマニフェストには消費税の引き上げについて、どこにも書かれていません。
 「消費税を上げる、とは言わなかったが、消費税を上げる法案を出さない、とも言っていない」という詭弁を未だに繰り返す姿勢には誠実さの欠片もありません。口先では「誤解を与えたこと、知識が不十分であったことは申し訳なかった」と言っていますが、一度も頭を下げてはいませんし、民主党議員が選挙区でこのことを詫びたという話を聞いたこともありません。

 年金一元化や最低保障年金創設などという出来もしない愚かな政策は未だに撤回されていません。
 マニフェストには「すべての人が七万円以上の年金を受け取れるようにする」と書かれてあったはずですが、「保険料を払えなかった人は格別、払えるのに払えなかった人にはおいそれと支給するつもりはない」と平然と答弁する神経は一体何なのか。七万円の根拠も全く不明であることに加え、選挙の際その実現が実は四十年後であることを全く言わなかったことは、まさしく詐欺師の手法以外のなにものでもありません。

 社会保障の改革は税の改革と一体であったはずなのですが、具体像がほとんど提示されていないことも極めて問題です。
 マニフェストでは後期高齢者医療制度を24年度に廃止すると謳い、長妻大臣は昨年の通常国会に法案を出すと言っていたはずなのですが、全く実行されていない。
 名前こそ不適切なものでしたが、基本的には高齢者にも一部ご負担いただき、年齢的に発症率の高い方々を区切ることにより制度の安定を図った考えは正しかったのであり、「自民党は年寄り虐めの政党だ!」と絶叫した手法も詐欺師的でした。

 社会保障は医療も、年金も、介護もその本質が保険であるのに、あたかも贈与のような形態になってしまっているため、財政が持たなくなってしまっており、この改革が議論の本質です。これを避けている限り、その使途が社会保障に限定されている消費税は税率が際限なく上がっていくことになります。
 消費税と直接関係しないものの、生活保護も、困窮の実態と勤労機会や勤労意欲の有無、給付継続の条件などをさらに精査しなければなりません。市町村に判断を任せているという今のあり方も見直す必要があるのではないでしょうか。

 本日、日英21世紀委員会合同会議なるものに出席してきました。今回で29回目ということですが、今まで参加する機会がありませんでしたので、初出席です。日英から相当のメンバーが集まり、なかなか面白い議論が展開されました。
 台頭する中国、と言われますが、あの国の持続可能性はどこまであるのか、というのが私の根本的な問題意識です。どう考えてもこのまま発展し続けるとは思われません。
 中産階級が構成されないままに経済がピークアウトすることが予測され、一党独裁体制の正統性も揺らぎつつあり、文民統制(あくまで中国式の)も機能不全に陥っている中にあって、中国の行く末は予断を許しません。
 英国の出席者も述べていましたが、さりとて今すぐに民主主義が導入されればよくなるかと言えばかえって脆弱性が増すだけであり、この対応は極めて難しい。
 歴史上、中国は紀元前から19世紀の半ばまで、ごく一時期を除いてアジア最大の覇権国であり、1200年間世界最大の経済規模を誇りました。清朝の時代に海洋権益に対する意識が希薄になったため、西欧列強による侵略を許したことが中国の強烈なコンプレックスとなり、今や中華マハニズムともいうべき、19世紀末のアメリカの戦略家アルフレッド・マハンの理論そのままに海洋権益の拡大に邁進しています。
 国会審議の推移にもよりますが、ごく短期間中国を訪問して議論してみたいと思っております。

 本日の日英の議論のテーマにもなりましたが、集団的自衛権の行使を可能とする国家安全保障基本法がようやく自民党の政策会議において近々審議される運びとなりました。
 「集団的自衛権の行使は可能とするべきだが、そのためには解釈の変更・基本法の制定によるのではなく、あくまで憲法の明文改正が必要だ」とする立場も一部に根強く、党議決定までにはまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。
 しかし、現行憲法においても論理的に行使不可能が導き出されるわけではなく、わが国の周辺情勢の変化からこれを認めることは喫緊の課題でありますし、日本が真の独立主権国家となるために何としても必要なことと信じておりますので、いかなる困難があっても実現したいと願っています。

 週末は26日土曜日が香川県民文化大学第五期講座で講演(午後1時半・アルファあなぶきホール・高松市玉藻町)。
 27日日曜日は自民党いわき政経セミナーで講演(午後6時・いわきワシントンホテル椿山荘・いわき市平)、という日程です。

 東京は雨模様です。皆様お元気で週末をお過ごしくださいませ。

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2012年5月18日 (金)

一体化特委審議入り、「慰安婦の碑」撤去申し入れなど

 石破 茂 です。

 税と社会保障の委員会がようやく本格的な質疑に入りました。
 「GDPの成長に資する」「これ以上の財政悪化を防ぐ」「毀損の著しい所得再配分機能を回復させる」「若い世代に対する所得移転を推進する」「医療、年金、介護の本質である保険としての機能を回復させ、本来の裨益者たるリスクを回避できなかった人に対する処遇を厚く、回避できた人は削減することにより、過度な税率の引き上げを避ける」など、具体的な論点は数多くあります。
 政府案はそれらにほとんど答えることなく、「とにかく消費税率を上げる。そのほかのことは後から考える」というだけのものでしかなく、ましてや所謂ばら撒き政策的なものも残っており、自民党としてこのままでは到底賛成はできません。自民党としての案を党議決定の上早急に示し、これを「丸呑み」するか否かを野田総理に迫るべきだと私は思っております。ことは急を要します。欧州の危機は対岸の火事ではありません。

 産経などの一部報道にありますように、昨日官房長官、外務大臣に米国ニュージャージー州パリセイズパーク市に設置された「慰安婦の碑」の早期撤去を申し入れてまいりました。
 この碑の写真をご覧いただけるとわかりますが、極めて事実歪曲的なものであり、日本政府は国家の威信と名誉にかけて整然と、かつ誠実に対応しなくてはなりません。まだ第二次大戦は終わっていないこと、外交の場は戦いの場であることを改めて痛感させられる事案です。

 尖閣衝突事件で強制起訴された中国人船長に対し、那覇地裁は控訴棄却を決定しました。
 中国側が「尖閣諸島は中国領土であり、日本の司法手続きを受け入れることはできない」として起訴状の送達を拒否したためですが、日本政府はこれに対してどう対応したのでしょうか。
 仮に控訴棄却が確定した場合には、もはや裁判は開かれないことになるのですから、「裁判に影響を与える」との理由で全面公開しないままでいる衝突の映像を解説付きで公正に公開すべきは当然のことでしょう。

 天皇、皇后両陛下がご訪英中です。旅のご安全と実り多いご訪問となりますことをお祈りいたします。
 以前も書いたのですが、ごく一部を除いて、何故報道はテレビも新聞も両陛下に対してきちんとした敬語を用いないのか、私は不思議でなりません。
 皇室に対する尊敬、敬愛の情に差はあるのでしょうが、憲法上も「国民統合の象徴」であらせられる天皇陛下に正しい敬語を用いるのは至極当然のことではないのでしょうか。たとえば「英国訪問中の天皇、皇后両陛下は17日、ロンドン市内にあるホーランドパークを訪れ、園内を散策した」(18日付毎日新聞朝刊)というのは「英国ご訪問中の天皇、皇后両陛下は…ホーランドパークにお出かけになり、園内を散策された」とするのが本来だと考えます。立場上あまり適当ではないので差し控えていますが、新聞に投書したいくらいです。
 私の立場でできることはもちろんいたしますが、どなたかこの運動を地道に、しかし粘り強く市井の立場からも展開していただけないものでしょうか。

 自民党内で選挙制度改革をめぐり、中選挙区復活論が台頭しつつあります。
 小選挙区に移行した結果が現在の有様ですのでわからないわけではありませんが、私は以前も申しあげたとおり、小選挙区制を機能させるための必要条件であった地方分権も、政党法制定も、政界再編もなされないままで小選挙区制だけを導入したためにこのような結果が生じたのであり、運用面の改善も併せて議論する必要があると確信しています。
 定数是正もそうなのですが、選挙に関する事項を選ばれる側である国会議員が決めることにそもそもの無理があるのでしょうか。いかなる制度や定数であれ、与えられた条件の中で戦うべきなのであり、己に都合の良い制度を希求するなどあってはならないことです。公職選挙法の改正を憲法との関係も念頭に置きながら研究する必要性があります。

 週末は本日金曜日が秋葉けんや代議士青年部設立総会で講演(午後6時半・レトロバックページ・仙台市青葉区国分町)。
 19日土曜日が河村健夫代議士後援会「女性のための政治セミナー」で講演(午前10時・美祢グランドホテル・美祢市大嶺町、午後2時半・ANAクラウンプラザホテル・宇部市相生町)。
 20日日曜日がフジテレビ系列報道2001出演(午前7時半・広島県安芸市からの中継)、大和ミュージアム見学(午後1時半・呉市同所)、寺田稔前衆院議員を激励する会で講演(午後3時・呉市文化ホール)、広島県隊友会呉支部懇親会で挨拶(午後6時・阪急ホテル・呉市中央)、平口洋前代議士後援会との夕食会(午後7時半・リーガロイヤルホテル広島)。
 21日月曜日が平口前代議士世話人研修会で講演(午前7時半・同)という、山陽道日程です。

 今日の東京は一時スコールのような雷雨に見舞われました。本当に夏に限っては亜熱帯気候になりつつあるのでしょうか。
 お元気でお過ごしくださいませ。

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2012年5月14日 (月)

「石破茂君を囲む会2012」のお知らせ

 事務局です。

 来たる5月28日(月)、「石破茂君を囲む会 2012」を開催させていただくこととなりました。
 年一回開催しておりますパーティ(政治資金規正法8条の2に規定する政治資金パーティです)ではございますが、今年は代議士より40分程度お話しさせていただく時間を設けました。
 もしご興味のある方がおられましたら、石破茂事務所(03-3508-7525、g00505@shugiin.go.jp)までご連絡くださいませ。
 【開催要領】
 平成24年5月28日(月)
 17:30~ 講演会
 18:30~ 懇親会
 ホテルニューオータニ東京 本館宴会場階 「芙蓉の間」 (東京都千代田区紀尾井町4-1)
 会費:20000円

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2012年5月11日 (金)

消費税関連法案の本会議など

 石破 茂 です。
 今週から税と社会保障に関する本会議質疑が始まりましたが、参議院で問責決議が可決された田中、前田両大臣が相変わらずその職に留まっているため、その他の質疑は一切行われないまま無為に日々が過ぎています。
 連休中に発生した竜巻・突風などの災害対応や高速バス事故、さらには総理訪米などに対する質疑などが一切行われていない状況は極めて異様です。
 政府・民主党は「会期を残したこの時期に問責を出すことが問題だ」と的外れの逆ギレを起こして野党に責任を転嫁し、「両閣僚にはその職責を果たして貰いたい」とあくまで更迭を否定しています。憲法上根拠を持たず、可決されても更迭の義務は生じない参議院の問責決議でいちいち閣僚が交替するようなことがあってはならない、というのは自民党自身が与党時代も言っていたことですが、今回は問責可決に正当性があるのであって、会期云々の問題では全くありません。会期中であるから不適格の閣僚であってもその職を続けてよい、などという議論はまさしく本末転倒です。
 
 昨年の震災で我々は「『想定外』という言い訳をしてはならない」ということを学んだはずです。明日朝鮮半島有事が起こっても、首都直下型地震が発生しても全くおかしくない状況にあって、なお田中大臣が最適任である、と断言する野田総理の神経が私には理解できない。
 もちろん内心そうは思っていないのでしょうし、輿石幹事長に対する配慮、民主党内紛激化への懸念以外の何物でもないのでしょうが、そちらの方が国家国民の安全より優先すると判断しているとするなら、それだけでもはや一国の指導者の資格はありません。
 
 先般の日米2プラス2(日本国外務大臣・防衛大臣プラス米国国務長官・国防長官による会議)は、在沖海兵隊移転計画の大きな変更など、重要な内容を含むものでしたが、実際に四者が一堂に会した会議は一度も行われませんでした。
 「外相同士が別の会合で話した」「国防相同士が電話で会談した」などということを言ってはいますが、事務方が全てお膳立てしたものに大臣がサインだけしたに過ぎない、というのが実態のようです。
 このような重大なことが実際の会談抜きで行われてよいはずはなく、自民党政権時代はこのようなことは一度もありませんでした。玄葉外相はともかく、何もわからず、会談や記者会見で何こそ口走るかわからない田中氏を2プラス2に出すことだけは避けたかったのでしょう。

 両大臣の交替を消費税法案修正協議入りの材料として使いたいので今は職に留まらせている、との解説もありますが、あまりに姑息というべきです。この内閣はやはりもう終わりなのかもしれません。では小沢系議員と組んで不信任を可決するのか、となるとまさしく去年の「菅降ろし」の再現で、またあのような茶番をやられてはたまりません。

 本日の本会議における消費税法案に対する質疑においても、総理の答弁は残念ながら実に誠意に欠けるものでした。
 野党の質問に正面から答えることをせず、詭弁を駆使し、消費税率引き上げの必要性の部分だけ財務官僚の手になる答弁を延々と繰り返す様は聞いていて情けなくなります。本当にこれで自民党の協力を得たいのか、疑わしいものです。
 総理を支えるべき民主党議員からは野党の質問に対するヤジも、総理答弁に対する拍手も全くなく、週末金曜日の午後のせいもあってか与党席の空席ばかりが目立ちました。野党の質問の中では野田毅議員の質問が出色でした。お時間があれば是非ネットでご覧ください。

 小沢氏の裁判で指定弁護士が控訴の方針を決めたことについて、小沢氏は「理解に苦しむ」とのコメントを出し、小沢系議員は「控訴棄却だ!」と息巻いています。本当にどうにもならない人たちですし、無罪判決確定まで、と決められていたはずの小沢氏の党員資格停止処分もあっさり覆され、控訴が決まってからも何らそれが変更されない民主党も本当にどうしようもない党です。異常がここまで続くと感覚が麻痺してしまい、世間も大して驚かなくなってしまったようで、さほど関心を呼ばなくなってしまったようにも思われます。
 確かに東京地裁の一審判決は「虚偽記載につき違法性の認識があったとは言い切れない」という意表を突く論理で共謀性を否定して無罪判決を導きましたが、政治改革論議の中であれほど政治資金の透明性と公開性を主張していた小沢氏が、四億円もの巨額の資金の虚偽記載を認識していながら違法性の意識を持たなかったというのはいかにも不自然です。
 私も含めて他の議員の政治資金報告書の修正とどこが違うのか、とのご意見も頂きましたが、本罪は故意犯であり、ましてや虚偽記載は認識していたのですから本質が全く異なります。

 連休中は予定されていた講演や行事に参加する以外は、資料の整理や宿舎の片付けで終わってしまいました。映画も観たいな、美術館にも行きたいな、などとあれこれ考えてはいたのですが、街を歩いていて「あ、あの人政治家だ!」と指差されることがどうにも億劫で、結局どこにも出かけませんでした。
 日頃とったことのないお休みなど頂いたせいか、最終日には熱を出して一日寝込むなどという有様。体力派の私でも熱を出すことはたまにあるのですが、忙しく働いているうちになんとなく治ってしまうというのが常で、やはり慣れないことはするべきではないのかもしれない、と思ったことでした。

 週末は12日土曜日が地元の諸会合に出席。
 13日日曜日が三原朝彦前代議士の政経セミナーで講演(午後2時・八幡市民会館・北九州市八幡東区尾倉)という日程です。
 三原前代議士は同期当選でもあり、人柄も、識見も極めて優れた方で、なんとか少しでもお役に立てれば、と思っております。

 皆様、お元気で週末をお過ごしくださいませ。

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