国家安全保障基本法、政策会議へ
石破 茂 です。
税と社会保障の委員会が連日開催されていますが、全くと言っていいほどに議論が深まらないのは、野田総理をはじめとする政府・与党に「何が何でもこの法案を成立させたい」との熱意が無いからである、と断じます。
田中、前田の問責二閣僚について、「しっかり反省して職務に邁進してもらいたい」と繰り返すばかりでは全く埒があきません。「世論も関心を失ったではないか。輿石幹事長の顔を潰すわけにはいかないし、そのうち何かの取引材料に使えるかもしれないから当分このままにしておこう」との意図があまりに見え透いて、野田総理の人格まで否定したくなります。国会開会中に問責を出した時期が問題だ、と岡田副総理は述べていますが、何を馬鹿なことを言っているのか。時期が問題なのではではなく、人が問題なのです。権力を握ると人はこんなにまでも傲慢になるものでしょうか。
民主党のマニフェストには消費税の引き上げについて、どこにも書かれていません。
「消費税を上げる、とは言わなかったが、消費税を上げる法案を出さない、とも言っていない」という詭弁を未だに繰り返す姿勢には誠実さの欠片もありません。口先では「誤解を与えたこと、知識が不十分であったことは申し訳なかった」と言っていますが、一度も頭を下げてはいませんし、民主党議員が選挙区でこのことを詫びたという話を聞いたこともありません。
年金一元化や最低保障年金創設などという出来もしない愚かな政策は未だに撤回されていません。
マニフェストには「すべての人が七万円以上の年金を受け取れるようにする」と書かれてあったはずですが、「保険料を払えなかった人は格別、払えるのに払えなかった人にはおいそれと支給するつもりはない」と平然と答弁する神経は一体何なのか。七万円の根拠も全く不明であることに加え、選挙の際その実現が実は四十年後であることを全く言わなかったことは、まさしく詐欺師の手法以外のなにものでもありません。
社会保障の改革は税の改革と一体であったはずなのですが、具体像がほとんど提示されていないことも極めて問題です。
マニフェストでは後期高齢者医療制度を24年度に廃止すると謳い、長妻大臣は昨年の通常国会に法案を出すと言っていたはずなのですが、全く実行されていない。
名前こそ不適切なものでしたが、基本的には高齢者にも一部ご負担いただき、年齢的に発症率の高い方々を区切ることにより制度の安定を図った考えは正しかったのであり、「自民党は年寄り虐めの政党だ!」と絶叫した手法も詐欺師的でした。
社会保障は医療も、年金も、介護もその本質が保険であるのに、あたかも贈与のような形態になってしまっているため、財政が持たなくなってしまっており、この改革が議論の本質です。これを避けている限り、その使途が社会保障に限定されている消費税は税率が際限なく上がっていくことになります。
消費税と直接関係しないものの、生活保護も、困窮の実態と勤労機会や勤労意欲の有無、給付継続の条件などをさらに精査しなければなりません。市町村に判断を任せているという今のあり方も見直す必要があるのではないでしょうか。
本日、日英21世紀委員会合同会議なるものに出席してきました。今回で29回目ということですが、今まで参加する機会がありませんでしたので、初出席です。日英から相当のメンバーが集まり、なかなか面白い議論が展開されました。
台頭する中国、と言われますが、あの国の持続可能性はどこまであるのか、というのが私の根本的な問題意識です。どう考えてもこのまま発展し続けるとは思われません。
中産階級が構成されないままに経済がピークアウトすることが予測され、一党独裁体制の正統性も揺らぎつつあり、文民統制(あくまで中国式の)も機能不全に陥っている中にあって、中国の行く末は予断を許しません。
英国の出席者も述べていましたが、さりとて今すぐに民主主義が導入されればよくなるかと言えばかえって脆弱性が増すだけであり、この対応は極めて難しい。
歴史上、中国は紀元前から19世紀の半ばまで、ごく一時期を除いてアジア最大の覇権国であり、1200年間世界最大の経済規模を誇りました。清朝の時代に海洋権益に対する意識が希薄になったため、西欧列強による侵略を許したことが中国の強烈なコンプレックスとなり、今や中華マハニズムともいうべき、19世紀末のアメリカの戦略家アルフレッド・マハンの理論そのままに海洋権益の拡大に邁進しています。
国会審議の推移にもよりますが、ごく短期間中国を訪問して議論してみたいと思っております。
本日の日英の議論のテーマにもなりましたが、集団的自衛権の行使を可能とする国家安全保障基本法がようやく自民党の政策会議において近々審議される運びとなりました。
「集団的自衛権の行使は可能とするべきだが、そのためには解釈の変更・基本法の制定によるのではなく、あくまで憲法の明文改正が必要だ」とする立場も一部に根強く、党議決定までにはまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。
しかし、現行憲法においても論理的に行使不可能が導き出されるわけではなく、わが国の周辺情勢の変化からこれを認めることは喫緊の課題でありますし、日本が真の独立主権国家となるために何としても必要なことと信じておりますので、いかなる困難があっても実現したいと願っています。
週末は26日土曜日が香川県民文化大学第五期講座で講演(午後1時半・アルファあなぶきホール・高松市玉藻町)。
27日日曜日は自民党いわき政経セミナーで講演(午後6時・いわきワシントンホテル椿山荘・いわき市平)、という日程です。
東京は雨模様です。皆様お元気で週末をお過ごしくださいませ。
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