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2012年8月31日 (金)

会期末など

 石破 茂 です。
 
 このたびの問責決議案に対する自民党の対応には、多くのご批判があることはよく承知しています。総裁に対応を一任した以上、ご批判は自民党国会議員全員が甘んじて受けなくてはなりません。
 総裁は「小異に拘ってはならない。何より大切なのは野田政権に対する問責を可決することだ」といった趣旨の発言をなさっておられました。しかし、問責の提案理由には「消費税の引き上げは国民の声に背くものであり、民・自・公の三党合意も議会制民主主義に反するものである」という文言が入っており、これに賛成することは自己否定に他ならない、とのご批判を招くこととなりました。

 ではどのような対応が正しかったのか。問責に反対する、との選択はあり得ない以上、公明党と同様に欠席以外になかったのですが、そうなれば問責は否決されてしまう、との二律背反に陥ったのだと考えられます。
 そちらの方が確かに筋は通るのですが、そうなると秋に召集が予定されている臨時国会に冒頭から出ない理由が無くなってしまい、解散に追い込めなくなる、という読みがあったのでしょう。
 冒頭解散に追い込めなくなれば、補正予算、特例公債法案、25年度予算編成と与党ペースにはまり、ズルズルと解散が先延ばしにされることも十分に予想されます。本当に苦渋の決断だったのだと思います。

 他人事みたいに言うな、とのお叱りを受けそうですが、参議院の運営について我々衆議院議員は一切関与が出来ません。それは逆もまた然りです。関与できるのは総裁、幹事長など党全体を統括する職にある人たちだけなのです。院の独自性とはそれほど強いものなのです。

 仮に今国会での解散が無い場合には、自民、民主、公明の党首選挙を挟んで10月に国会が召集され、自民党をはじめとする野党は「問責を受けた総理の下での国会審議には一切応じられない」と審議に参加せず、与党は「このように重要な法案審議に応じない野党は怪しからん」と国民世論に訴え、またチキンレースが始まるという展開になりそうです。

 しかし、それで多くの国民の共感が得られるかどうかはよく考えなくてはなりません。特例公債法案と、一対二の格差を最低限是正する衆議院定数「0増5減」法案だけは通してしまうことは必要でしょう。
 前者は野党が、後者は与党が歩み寄ればそれで済むことです。特例公債法案はいつかは必ず通してしまわなくてはならないものですし、定数是正の民主党案は解散先送りだけを目的とした極めて複雑かつ理屈の通らないものだからです。

 国会は事実上閉会し、各党の党首選挙モードをマスコミが煽る状況になってきました。いつの間にか私も当事者の一人になりつつありますが、総裁が今国会中に(事実上閉会はしていますが、会期は8日まであります)解散に追い込むと言っておられる以上、それまではこれを支えるのが党員の義務です。また、立候補には国会議員20人の推薦が必要なのであり、そのような方々のご要請もない段階で出馬について云々するのは、少なくとも私の流儀ではありません。
 派閥を離れている私を押して下さっているのは主に無派閥の方々なのですが、派閥の庇護も何もない方々のお気持ちはとても有り難いものです。
 
 私自身もかつては中曾根派(後の渡辺派)と橋本派(後の小渕派・津島派・額賀派)に所属し、派閥への割り当てで役職も頂いてきましたし、資金面や選挙の支援も頂いてきました。
 派閥の恩恵をそれなりに享受してきた者が派閥に否定的なのも矛盾した行動なのですが、中選挙区制時代と異なり、派閥は政策集団というよりポストや資金を配分する機能に特化しつつあるように思われます。それはそれで意味のあることかもしれませんが、私は議員たる者、常に独立した(インディペンデントな)存在であるべきだと考えております。党よりも、派閥よりも、まず国家と有権者・国民に忠誠を誓う存在でありたいと思っているのです。

 竹島については、私が平成18年に自分なりの考えを纏めて領土に関する委員長として発表したものがありますので、末尾に載せておきます。その時点と基本的に認識は変わっておりませんのでご高覧下さいませ。

 週末・週明けは、1日土曜日が地元、BS日テレ「ニッポンの大疑問」にて山田吉彦東海大教授と対談(午前9時・収録)。
 2日日曜日がフジテレビ系「報道2001」に中継出演(午前7時半・山陰中央テレビ鳥取支社・石原都知事他との討論会)、三志会創立50周年記念式典にて講演(午後2時半・サンライズ本宮・福島県本宮市本宮字矢来)。
 3日月曜日が自民党新潟県第1区支部・石崎徹激励会で講演(午後5時半・ANAクラウンプラザホテル新潟・新潟市中央区万代)、という日程です。

 今日で8月も終わりです。せめて一日、お休みが欲しかったなぁ…。
 明日から9月、なにかと慌ただしい月になりそうです。両親の命日も9月なのですが、先祖の遺徳の有り難さを改めて思ったりしております。

 皆様、どうぞお元気でお過ごしくださいませ。

「H18TakeshimaRPT.pdf」をダウンロード

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2012年8月29日 (水)

「国難」発売されます!

 事務局です。
 8月31日、新潮社より「国難 -政治に幻想はいらない- 」が発売されます!
 「国防」に続く単著第2弾となります!ぜひよろしくお願いいたします!

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2012年8月24日 (金)

質問を終えて、尖閣など

 石破 茂 です。

 昨日の予算委員会の模様はインターネットで動画配信されておりますので、ご関心のある方はそちらをご覧ください。
 あそこまで滅茶苦茶な答弁をされるとは正直思っていなかったので、相当に驚きました。
 総理大臣が細かい法律まで知っているはずはありませんが、担当大臣すら今回の政府の対応のカギとなる「出入国管理及び難民認定に関する法律」を全く理解していないことは、もはや内閣の体をなしていないということです。

 我が国は法治国家であり、あらゆる事象は法律をもって対処されます。官僚たちは法律のプロなのですが、彼らを使って国家を運営する政治家が法律について何の知識も持たないのであれば、官僚の思うがままの政治になっても致し方ありません。
 もちろんすべての法律に通暁することなど不可能ですが、自分の所管する官庁の法律くらいは知っているのが当然であり、知らなければ自分で調べ(そのために国会には政策秘書や委員会の調査室や国会図書館が置かれているのです)、官僚たちにその適用の是非を質すべきなのです。

 「公務員の公務執行を妨害する目的で煉瓦を投げつけても、実際に公務の執行が妨害されず、損害も軽微であるなら、公務執行妨害罪は成立もせず、その嫌疑すら無い」という今までの法解釈や判例をすべて覆す答弁が閣僚から平然となされる有り様に、私は愕然としました。
 「とにかく事を荒立てるな、香港の活動家に死傷者が出るような事態は避けよ」と言うオーダーが政治から出され、法の適用に苦慮した官僚たちが政治家の無知をいいことに出鱈目な法解釈を編み出した、というのが今回の一番の問題だったのではないでしょうか。

 尖閣については、いかに実効支配を強め、抑止力を確保するかに尽きます。
 「言うまでもなく日本固有の領土であり、そもそも領土問題が存在しない」というのが従来からの一貫した立場であり、それは確かにその通りなのですが、ただそれをお題目のように言い続けるだけでは、理解は深まらないでしょう。

 「このほど米日両国の国会は沖縄返還協定を採決した。この協定のなかで米日両国政府は公然と釣魚島などの島嶼をその返還区域に組み入れている。これは中国の領土と主権に対するおおっぴらな侵犯である。これは中国人民の絶対に容認できないものである。」
 「第二次世界大戦ののち、日本政府は不法にも台湾の付属島嶼である釣魚島などの島嶼をアメリカに渡し、アメリカ政府はこれらの島嶼に対していわゆる施政権を持っていると一方的に宣言した。これはもともと不法なものである。…いま、米日両国政府はなんと不法にも、再び我が国の釣魚島など島嶼の授受を行っている。中国の領土と主権に対するこのような侵犯行為は中国人民のこのうえない憤激を引き起こさずにはおかないであろう」
 (中華人民共和国政府外交部声明・1971年12月30日)
 これが中国側の主張の核といえます。
 つまり、「尖閣諸島はサンフランシスコ平和条約によって日本の領土から最終的に切り離されることとなった台湾などの地域に含まれていたのであって、南西諸島のように『引き続き日本の領土として残されるが、当面は米国の施政下に置かれる地域』に含まれていたものではない。しかも中国の領域権は沖縄返還協定調印時にも存続している」というのが中国の主張です。
 これに有効に反論しなければ、国民の理解は深まらず、中国の一方的な主張や我が国の実効支配に向けた挑戦を許すことになってしまいます。

 中国は1945年10月25日には台湾などの領土編入措置を終了させていますが、その後中国で発行された地図などには、尖閣諸島は中国領の範囲から除外し、日本領たる琉球群島の一部としています。当時、尖閣諸島を中国領に編入することに関して、何らの障害も考えられないのですから、この時点では尖閣諸島が中国領であるとの認識はなかったわけです。そのことは人民日報など中国側の資料によっても十分裏付けられます。

 抑止力については、海上保安庁法や自衛隊法の改正などの法整備、自衛隊の海兵隊的機能の増強、日米共同演習の実施などの運用面の強化が必要であり、精神論だけ唱えてもどうにもなりません。

 竹島についてはまた稿を改めますが、この問題は尖閣よりもはるかに厄介です。いままで韓国の非を強く指摘してこなかった我が国の対応にも相当の問題があったと認識しています。

 週末は25日土曜日が関西鳥取県ファンの集い(午前11時半、リーガロイヤルホテル大阪)。
 26日日曜日が山下たかし自民党岡山第二区支部長事務所開き(午前10時半、岡山国際ホテル・岡山市中区本町)、同時局講演会(午後1時半、西大寺ふれあいセンター、岡山市東区西大寺中)、橋本岳出陣の集い(午後5時半、倉敷アイビースクエア)、という日程です。
 
 皆様、よい週末をお過ごしください。

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イシバチャンネル第二十一弾

事務局です。

イシバチャンネル第二十一弾をアップロードしました。


是非ご覧ください。

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2012年8月17日 (金)

竹島、尖閣など

 石破 茂 です。

 李明博韓国大統領の竹島上陸とそれに続く一連の言動は、日本国として、また日本国民として到底容認できるものではありません。
 香港の民間団体による尖閣不法上陸も同様であり、今後の政府の対応は極めて重要です。
 この二つの問題について、自民党領土に関する特命委員会は外交部会との合同会議を開催し、声明を発表するとともに、昨日夕刻、藤村官房長官に申し入れを行ってまいりました。声明の内容及び会見の様子につきましては自民党ホームページをご覧ください。

 竹島問題については、今まで自民党政権時代も含めて、なるべく事を荒立てないように対応してきたことのツケがこのような形で表れてしまったと言わねばなりません。
 1905年に国際法に則って我が国の領土であることを確認し、以来今日に至るまで一切放棄した事実はありません。日本が主権を回復することが確実となるサンフランシスコ講和条約が発効する直前の時期を狙って、韓国が一方的に竹島を含む水域に主権宣言を行い、1954年以降不法占拠を続けているものです。
 国際法はもとより、歴史的にも韓国の主張に全く正当性は認められないのですが、政治的にも明らかに対立していたソ連とは異なり、また過去の植民地支配についての経緯もあり、穏便な対応をしてきたことが韓国を増長させたことは否めません。
 

 ましてや、天皇陛下に関して「日王(天皇陛下)が韓国を訪問したければ、独立運動で亡くなられた方々を訪れ心から謝罪していただきたい。『痛惜の念』だとか、こんな単語ひとつで来るというなら来る必要はない」などという暴言を吐くような非礼が許されるはずはありません。
 そもそも陛下のご訪韓を要請したのは韓国側であるにもかかわらず、このような発言をする神経が理解できない。「痛惜の念」は「遺憾の意」と同じく官僚造語ではありますが、あの高潔無私な陛下のお言葉であるが故に、いかに陛下がお心を痛めておられ、世界の人々に誠実に向き合っておられるかは、十分に理解されているはずです。陛下ならびに皇室に対して日本国民が持っている尊敬の念を踏みにじることなど、何人たりとも決して為してはならないことです。日本政府は決してこれを看過すべきではなく、謝罪・撤回を求めることは当然ですし、それは天皇陛下の政治利用でもなんでもありません。
 日本国憲法に「国民の総意に基づく日本国ならびに国民統合の象徴」と規定されている陛下に対する侮辱は日本国ならびに日本国民に対する侮辱でもあるのです。
 

 しかし、領土問題について、国民に対し正しい認識を問いかけることを怠ってきた我々自民党の責任は、免れることができません。「竹島は日本固有の領土である」と教科書に記述するだけでは全く不十分であり、国際法的・歴史的に何故そうなのかを韓国の主張と比較する形で記述すべきですし、それこそが教育というものです。北方領土についても同様であり、領土問題は存在していないにしても尖閣諸島についてもそうでしょう。
 
 尖閣に不法上陸した香港の活動家を強制退去させる、という政府の今回の対応も、明らかに誤りです。
 「小泉政権時の対応に倣った」とあたかも自民党と同じことをして何が悪いのだと言わんばかりの姿勢ですが、あの時と今とでは状況が全く異なります。その後中国船が再三にわたり領海侵犯を行い、漁船が海上保安庁巡視船に体当たりするなど、中国側の行動はさらにエスカレートしているにもかかわらず、同じ対応でよいという思考法は一体何なのでしょう。

 「厳正に法に従って対処したことで中国に対する毅然たる法治国家としての姿勢を示した」と言いますが、「出入国管理及び難民認定法」を読んだ上での発言なのでしょうか。
 同法第65条は「司法警察員は…被疑者を逮捕し…た場合には…その者が他に罪を犯した嫌疑のないときに限り、刑事訴訟法の規定にかかわらず…当該被疑者を入国警備官に引き渡すことができる」と定めており、この特例は不法入国した外国人がそれ以外の罪を犯した嫌疑のない場合には、その外国人について刑事手続を進めるよりも、退去強制の速やかな実現を図る方が国益に合致することがあり得ることを考慮して設けられたものとされています(同法逐条解説第三版)。
 公務執行妨害罪や器物損壊罪、あるいは傷害罪の嫌疑すら全くないと誰がどのようにして判断したのか、刑事手続を進めない方がいかなる国益に合致すると誰が判断したのか、ビデオの公開とともにそれを明らかにしない限り「法に従って厳正に対処した」などと言えるはずはありません。
 
 このような方針は、活動家が尖閣に向けて出港した時点で開かれた官僚たちによる関係省庁会議で決定され、総理に報告され、それにただ唯々諾々と従っただけというのが実際のところでしょう。このどこが「政治主導」なのか。
 活動家が上陸した時、海上保安庁を所管する国土交通大臣も、警察を所管する国家公安委員長も登庁していなかったという事実が、いかに「政治主導」がなかったかを如実に物語っています。

 今回不法上陸した香港の活動家は反政府的な言動が多く、日本政府が厳しい対応をとれば反日運動が激化し、それが反中国政府運動に転ずることを中国政府は最も懸念している。だから日本政府が穏便な対応をすることで中国の不安定化を防ぐことは日本の国益でもある、との論を説く評論家がおられますが、中国に配慮するあまりやがて国家主権たる領土を失うであろうことをどのように考えているのか。
 今回の不法上陸に同行した香港のテレビは中国政府寄りの報道で知られている局であり、今回の行動の背後に間接的に中国政府がいたと考えるのが普通でしょう。

 自民党が野にある今こそが、我々が過去の誤りを検証し、正していく唯一の機会なのであり、残された時間は長くはありません。

 お盆は竹島、尖閣事案への対応で、結局お休みが全くなくなってしまいました。
 職務柄、当然のことですし、こんな時に休むことなどあり得ませんが、全力疾走が続くとどうも判断力や思考力が鈍くなってしまうようで怖い気も致します。
 「オリンピック三昧だった」「久々にゆっくりと過ごした」という人々の幸せを守るために我々は存在しているのだ、そう思う以外にありません。

 週末は18日土曜日が自民党福井県衆議院第2選挙区支部セミナーで講演(ゆりの里公園ユリーム春江 福井県坂井市春江町石塚)。
 19日日曜日がTBS系列「時事放談」で増田寛也元総務大臣と対談(収録・午前6時・一部地域は別時間)、フジテレビ系列「新報道2001」で長島総理補佐官他との座談会(午前7時半・関西テレビから中継)、鳥取市大和地区国政報告会(午後3時・大和地区公民館・鳥取市倭文)という日程です。

 厳しい残暑が続きますが、もうつくつく法師が鳴き始めました。あの鳴き声を聞くと、いつも言いようのない焦燥感と過ぎゆく夏への寂寥感にかられます。今年も何一つ夏らしい思い出が作れなかったな、との思いを強くしながら、その鳴き声を聞いています。

 皆様、よい週末をお過ごしくださいませ。

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2012年8月10日 (金)

李明博大統領竹島訪問、浜田幸一先生ご逝去など

 石破 茂 です。

 本日の李明博韓国大統領の竹島訪問は、日本外交の大きな敗北です。
 自民党政権時代も含めて、歴史的、国際法的に正当である我が国の主張をもっと明確に国際社会に対して発する努力に欠け、難題を直視してこなかった結果が今日の事態を招いたとの反省のもとに、対応方針を見直さなくてはなりません。
 さきほど、自民党本部の記者会見で領土に関する特命委員長として申し上げたことですが、ロシア大統領の北方領土訪問、中国漁船の海保巡視船との衝突事案など、民主党政権になってから起こっている一連の事案は、現政権に国家主権や安全保障、日米同盟についての意識が乏しく、危機管理能力を欠いていることを、周辺諸国から見抜かれているのが原因です。
 外交は後になってからでは取り返しがつかないことが多いのであり、政権交代を急ぐべき一番の理由です。

 さる8月5日、元自民党衆議院議員 浜田幸一先生が逝去されました。享年83。
 昭和58年、夏の暑い日だったと思うのですが、私が田中派木曜クラブの派閥秘書を務めていた頃、目白のご自宅で田中角栄先生が「キミも政治家になりたいのだったらハマコーの演説だけは聞きに行って勉強して来い。聴衆を笑わせ、泣かせ、その気にさせる。あれが演説というものだ。他のヤツの話は聞かなくてもよい。」と仰ったことを鮮明に覚えています。
 その後何度か浜田幸一先生のお話を聞く機会がありましたが、確かにあの演説は一種の「芸」の域に達していたと思います。計算ずくだ、やらせだなどとの批判はありましょうが、やはり政治家の原点は演説にあると思わされました。私などとてもその足元にも及びませんが、あの田中先生の教えはとても有り難かったと感謝しております。

 防衛庁副長官在任中、千葉県習志野市にある陸上自衛隊空挺団の跳び出し塔からの降下訓練(これは最初は相当に怖い)を体験したところ、「NO3」と書かれた体験証明書を貰いました。「国会議員でこの訓練を体験されたのは石破副長官で三人目です。昭和51年に当時の浜田幸一防衛政務次官、平成10年に当時の浜田靖一防衛政務次官が体験されました」とのことでした。
 勿論体験すればそれでいいというものではありませんが、口先だけではなく、少しでも自衛官の気持ちに近づこうとする浜田幸一先生の思いが伝わってきたことでした。

 私が当選一回、食糧管理制度がまだ残っており、米価は政府が決めていた時代、自民党米価委員会は幾晩も徹夜で議論していましたが、深夜2時、3時ともなると残っている議員はほんの数名という状況でした。
 そんな時突然浜田先生が立ち上がり「おい、そこにいる新聞記者、特に日本農業新聞!今ここに残っている議員の名前を明日の紙面に書け!この時間に残っているヤツだけが本物なんだ。テレビカメラが入っている時だけ出席するようなヤツは駄目だ!」と大声で叫ばれたのです。
 世の中の「政界の暴れん坊」というイメージとは異なる、真面目で真摯な一面を持った方でした。朝8時から開かれる自民党の部会の前には必ず朝刊全紙に目を通し、必要な記事のコピーを持っておられました。ああ見えて酒も煙草も嗜まず、多くの時間を勉強に充てられていたのではなかったでしょうか。

 弔問に伺った際、「ハマコーはこんな顔じゃなかったですよ、仏様みたいな顔になっちゃって」とご長男の浜田靖一元防衛大臣は言っておられましたが、本当に安らかなお顔でした。ハマコー先生の愛国心と真摯さと侠気は靖一代議士が受け継いでおられます。
 謹んで御霊の安らかならんことをお祈りいたします。

 「近いうちに解散」という文言で自民、公明、民主の3党党首が一致し、消費税法案は可決・成立する運びとなりました。
 何度も書くように、民主党のすべての物事の判断基準は解散恐怖症による「解散先延ばし」であり、国家のあらゆる政策がこのような基準で決められてよいはずがありません。「何が何でも解散を求めるという自民党は、党利党略しか考えていない」というご批判は強いのですが、民主党政権が1日でも長く続くことを阻止することは自民党に与えられた責務です。
 どの報道を見ても、「野田総理は消費税法案が成立したら直ちに信を問うべきだ」という論説を掲げるものは一つもなく、「ひたすら解散回避を図る民主党も、ひたすら解散を迫る自民党も、どっちもどっちだ」的な論調ですが、マスコミが先頭に立って「どっちもどっち」などと世論を誘導しているから「決められない状態」が長く続くのです。

 間違いなく先の総選挙において、民主党は主権者である国民が自民党に対して嫌悪感、忌避感を持っていることを最大限に利用し、国民を詐欺にかけ、もしくは錯誤に陥らせて政権を簒奪したのです。国民にそのような感情を抱かせ、結果的にこのような事態を招いた自民党の責任は重大であり、今もなお反省・再生の途上にありますが、だからといって民主党が免責されるものではありません。
 民法上、詐欺による意思表示は取り消すことができますし、錯誤による意思表示は無効です。しかし国政選挙においては、主権者たる国民が選挙結果の取り消し、もしくは無効を訴える手段を持たないため、我々野党が国民に代わって解散・総選挙を求めるのは当然のことではないでしょうか。そして野田総理が「民主党議員の延命より日本国の方が大事だ」と判断すれば、そのように事態は推移するはずです。

 消費税法案が成立の運びとなったこと自体は一歩前進です。しかしこれは財政健全化に向けたメッセージを発する効果はあっても、抜本的な解決策にはなりません。あらゆる経済対策と社会保障の選択と集中を実現させるべきは当然です。
 日本の国債が暴落もせずに安定しているのは一種の「国債バブル」的な、本来ありえない現象が起こっているのであり、そうであるが故にいつ暴落し、金利が急騰しても決して不思議ではありません。
 その引鉄は何によっても引かれ得るのであって、今我々が最も注意しなくてはならないのはイラン、イスラエル、シリアなどをめぐる中東情勢の劇的な変化です。
 近年の一連の動きは「アラブの春」などという希望的なものではなく、第4次中東戦争以来まがりなりにも続いてきたこの地域の安定を覆しかねない、世界史的な変動の要素を多分に持っており、それはこの地域に石油資源の大半を依存し、原発事故以降さらにその度合いを高めているわが国にとって死活的なものとなることは必定です。
 日本が独自の外交を展開するためには、日米関係の信頼を確固たるものにすることが必要なのであり、石油危機と財政危機が同時に到来するという悪夢のような事態を避けるためにも、政権の再構築は急務です。

 今週末からお盆に入ります。例年通り、初盆まわりや夏祭りなどに顔を出して過ごしたいと思っています。
 もう一度、子供の頃夏休みの半分近くを過ごした山陰海岸の海で泳いでみたい、とか、大山の夏山登山をしてみたいとか、夢はあるのですが今年も実現は難しそうです。
 なぜか今年の鳥取地方は異様に暑いのですが、この時期の山陰は本当に素敵です。特に天然の岩牡蠣の美味しさは格別で、よく冷えた辛口の日本酒か白ワインとの相性は最高です。今年は一度ぐらい味わえるのかな?

 田中顕氏の漫画「さくら音楽隊」第1巻が集英社より発売中です。自衛隊音楽隊を題材としたもので、ご縁あって私も作者とお話しする機会があったのですが、これは実に面白い作品です。自衛隊とは、自衛官とは何なのかを久しぶりに考えさせられたことでした。

 皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

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2012年8月 3日 (金)

奈須田敬さんご逝去など

 石破 茂 です。

 世の中のニュースはオリンピックより他ないのでしょうか。普段からあまりテレビを見る機会はないのですが、たまにニュースを見ようとテレビをつけてみてもオリンピック報道ばかりで、他に何が起こっているのかよくわかりません。
 オリンピック報道があるために報道されないことも多くあるに違いないのですが、どこの局でもいいから通常のニュースをやってくれないものでしょうか。「オリンピックを毎晩見ていて眠い、という方も多くいらっしゃると思います」などとアナウンサーがコメントしているのを聞くと、本当にそうかなあ、と思ったりもするのですが…。
 特に、中東、就中自衛隊がPKO部隊を展開しているシリア情勢は全く予断を許しません。イラン、イスラエル、GCC諸国の今後の動向は中東全体の構図が一変しかねない要素をはらんでおり、日本としてもあらゆる事態を想定した対応を今のうちに考えておかなくてはなりません。

 政界は、税と社会保障の一体改革法案の参議院採決の時期を巡っていろいろと取り沙汰されています。このまま法案を採決してしまえば、あとは政府・民主党の筋書き通りにズルズルと時が過ぎてゆくだけのような気がしてなりません。
 「二兎を追うものは一兎も得ず。消費税か、解散か、どちらの兎も追えないとすれば解散を選ぶ」と自民党総裁が言っておられるのですから、全党挙げてそれに突き進むべきだと思うのですが、そんな雰囲気が感じられないのは私が執行部にいないからわからないだけなのでしょうか。
 昨日小泉議員他の若手が総裁に「3党合意を破棄してでも解散に持ち込むべきだ」と申し入れましたが、それは全くその通りなのであって、返り血を浴びる覚悟でなければ解散などに持ち込めるとはとても思えません。
 民主党は後期高齢者医療制度も最低保障年金も「旗を降ろしていない」と強弁し、野党に協力を求めておきながら自分の党すら纏められないのですから、3党合意の前提は崩れたとみるべきです。
 民主党議員の多くは、国家がどうなろうと、安全保障がどうなろうと、経済がどうなろうと、「とにかく来年の8月までは議員でいたいから、解散は絶対反対!」としか考えておらず、すべての判断はこれを基準として行われるのですから、こんな党に一日でも長く政権を委ねておくことはできません。
 麻生内閣は一年間の間に数次にわたって補正予算を編成し、景気の失速回避に全力を挙げてきました。単なる解散先延ばし最優先ではなかったのです。

 自民党に秋波を送ったつもりなのか、保守色を出すためなのか、集団的自衛権などに言及していますが、総理個人の考えがどうあろうと、あの民主党内でそのような意見集約ができるはずもありません。補正予算も、来年度予算編成も、税制改正もやりたい、などと余計なことをやる資格は彼らにはありませんし、そのようなことを考えるべきではありません。

 7月28日、長年防衛政策についてご指導を頂いてきた並木書房会長・奈須田敬氏がご逝去になり、お通夜に参列して参りました。享年92。
 私がまだ当選4回で自民党に復党したばかりの頃、どんなきっかけからであったかは記憶が定かではありませんが、奈須田氏が主宰される勉強会に参加する機会を与えられ、多くのことを学び、同世代の自衛官を中心とする得難い友人を得ることが出来ました。
 出会い、というのは本当に大切なもので、あの勉強会に参加していなければ安全保障を基礎から体系立てて学ぶことはできなかったと思います。決してメディアに出て華々しく活躍される方ではありませんでしたが、「ざっくばらん」と題するミニコミ誌を発行され、示唆と叡智に富んだ深い思考による論説を書いておられました。
 銀座の事務所でビールを飲みながら夜遅くまで奈須田氏や自衛官たちと議論した日のことが思い出されます。彼らも皆、将や将補クラスとなりましたが、「実に有り難い方だった」としみじみと語り合ったことでした。「奈須田学校」の門下生が氏のご遺志を受け継いで果たさねばならない役割は数多く残っています。
 祭壇にはたまたま私が防衛庁長官の時にお渡しした「防衛庁長官感謝状」が飾られており、祝賀パーティでの嬉しそうな、照れたようなお顔が瞼に浮かびました。本当に立派な方、とはあのような方であったと思います。有り難うございました。御霊の安らかならんことを心よりお祈りいたします。

 ペット税についてのご意見をいくつか頂いていますが、まだ私としての考えをまとめるに至っていません。この税の性格は何か、使途を特定する目的税なのか、奢侈税なのか、真面目にペットを飼っている人もそうでない人も同じなのか、「税を払ったのだからどのように飼ってもよいのだ」などというモラルハザードを起こさないか、等々論点を尽くさないままに思い付き的な発想で出そうとしているように思えてなりません。

 週末は4日土曜日が第56回キュリー祭(プランナールみささ・鳥取県三朝町。ラジウム温泉で知られる三朝町がラジウム発見者のキュリー夫人の功績を称えて行うもの)。
 5日日曜日が山形県東根市で街頭演説(正午・イオン東根ショッピングセンター・東根市東根甲)、自民党山形県第2選挙区支部時局講演会(午後1時・村山市民会館・村山市楯岡笛田)、石破元大臣と語るセミナー(午後2時・グランデール寒河江・寒河江市元町)、その後大阪に移動して中山泰秀前代議士後援会総会(午後6時・太陽閣・大阪市都島区綱島町)、中山泰秀「やすトラダムス」収録(午後10時・kiss FM KOBE)という日程で、鳥取、東京、山形、大阪、神戸と回ります。

 夏の疲れなのか、年齢のせいなのか、ここのところあまり調子がよくありません。あまり愚痴は言いたくないのですが、今週発売の某週刊誌の見出しを見ると、世の中なかなか分かってもらえないことが多いのだなと嘆息してしまいます。どんな社会でもそんな思いをしている人は多いのでしょうね。
 皆様におかれましては、どうぞご自愛くださいませ。

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