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2013年8月30日 (金)

報道番組と集団的自衛権など

 石破 茂 です。
 
 もう明日で八月も終わりです。
 久しぶりに夏休みを頂いてはみたものの、「公務や党務が少ない」というだけで、取り立てて何処に行くわけでもなく、地元での初盆参りや終戦記念日関連行事、やや本格的な健康検診、書類整理などで終わってしまいました。
 新幹線や飛行機など家族と一緒に乗ろうものなら、指はさされるわ、ひそひそ「自民党幹事長だ…」と囁かれるわ。公人だから当然でしょ、相手にされなくなったらお終いさ、とはわかっているものの、心安らぐことはありません。外国要人のように広大な別荘でもあればよいのですが、とてもそのような財力もありませんし、まあ、これも仕方がないのかな、と半ば諦めの境地のまま九月を迎えます。

 昨夜、集団的自衛権をテーマとしてテレビ朝日の「報道ステーション」に出演致しました。
 事前に予想していたことではありますが、議論は全く噛み合わず、報道の理解の浅さにはただただ嘆息するしかありませんでした。
 「仮に集団的自衛権を認めた場合、アメリカがシリアを攻撃すれば一緒に戦うのですか?」
という質問が典型です。もしアメリカがそのように行動しても、アメリカがシリアに攻撃をされたわけではないのですから、これはそもそも自衛権に基づく行動ではありません。
 強いて考えるとすれば、米英から武力攻撃を受けたシリアが個別的自衛権を行使し、日本に対して救援の要請をして、日本がそれに応える形で集団的自衛権で米英と戦う、という全くあり得ないケースしかありません。
 「それを聞いて安心しました!」
と古館氏が述べていましたが、あり得ないことを問われてそう言われてもねえ…という感じで、まさに前途遼遠と言う他はありません。
 しかし何としてもこれにチャレンジし、成果を得なくてはならないと気を取り直しております。

 映画「終戦のエンペラー」をご覧になった方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。
 感想は人によってそれぞれ違うのでしょうが、私はいかに先帝陛下が立派なお方であられたのかが伝わってくる作品だと素直に思いました。
 畏れ多いことではありますが、先帝陛下、今上陛下のお心を我々はもっと深く静かに考えるべきなのだと強く思います。議員会館や自民党本部前などで日章旗を掲げて演説しておられる方々をときどき見かけますが、あのように声高に叫ばれることがどれだけ人の心に訴えるものなのか、私にはよくわかりません。痛惜や憤怒の念をストレートにぶつけることもまた意味のあることなのでしょうが、それだけでは世の中は変わっていかないように思います。
 他国を罵詈雑言をもって非難、軽侮することも、互いに自制する心を持たなくてはなりません。それはこちらが卑屈になることを意味するものではなく、相手の言い分を是とするものでもなく、むしろ静かに対応しつつも、安全保障環境を冷静に分析し、実運用・統合運用を念頭に置いた防衛装備を充実させ、法律を早急に整備することによって拒否的抑止力を着実に高めていくことの方がよほど重要であると私は考えております。

 異常気象続きであったこの夏もまた過ぎ去ろうとしています。
 夏の終わりに感じる寂寥感と焦燥感が今年は特に強いようです。

 お元気で週末をお過ごしくださいませ。

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2013年8月 9日 (金)

研修会など

 石破 茂 です。
 東北北部、北海道南部の豪雨災害に遭われた地域の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 昨日夕刻は秋田市で行われた富樫博之代議士のパーティに出席し、夜行特急で今朝帰京したのですが、本当に今年の夏の天候の異常さには何か不気味なものを感じます。

 一昨日は参議院当選一期生の議員に対する研修会を催しました。
 衆議院と参議院は同じ自民党といってもかなりカルチャーが異なっているのですが、どちらが良い、悪いという問題ではなく、両院の置かれた経緯とそれぞれの特色はよく認識しつつも、なるべく自民党としての一体感、相互扶助精神の醸成に努めたいと思っております。
 お互いに「頼まれれば選挙の時に選挙カーに乗ったり、街頭演説や個人演説会に参加するだけ」というのではなく、互いの選挙を全力で助け合い、それによって自分の選挙も強くなる」ということでなくてはなりません。消費税、社会保障改革、農政改革、TPP、集団的自衛権、原発再稼働など多くの困難な課題を乗り越えていくためには、「選挙に強い自民党」を作っていくことが絶対に必要です。「voice」九月号に掲載されている菅原琢准教授の論考はその観点から示唆に富んだものです。

 都議選、参院選の選挙期間中、そしてその後とほとんど自分の事務所の書類や書籍の整理が出来ていなかったため、どこに何があるのかさっぱりわからない状態となり、仕事の能率が大きく落ちてしまいました。その間も書類や書籍はどんどんと送られてくるのであり、あれを読みたい、これも読まなければと思いながら、そのうち何処にあるのかわからなくなってしまうという悪循環に陥りつつあります。夏休みの一日はこれらの整理に充てなくてはどうにもなりません。

 朝六時のNHKニュース以外、テレビというものを見る機会が全くと言っていいほどに無くなってしまいました。それでたいして困らないのですからまあこれでもいいのかもしれませんが、いつかも書きましたけれど「幹事長、今日の○○の報道についての見解を!」などと待ち構えている記者諸兄姉にマイクやレコーダーを突きつけられても対応の仕様がありません。もう少し時間の使い方をうまくやらなくてはならないのでしょうね。

 新聞にせよ、テレビにせよ、記者諸兄姉の担当期間は大臣の在任期間よりも短いのが通例で、どうしても報道は事の本質よりも現象面、事象面に偏りがちです。政治部ではなく政局部だと揶揄される所以であり、「もっと勉強してから報道してくれ!」と言いたくもなるのですが、これは諸兄姉の責任ではなく報道各社の姿勢そのものの問題であるように思われてなりません。
 憲法改正や集団的自衛権行使容認に限らず、諸懸案の解決にあたっては、このことをよく認識しながら、真摯かつ周到に運んで行かなくてはなりません。

 明日から、党務のある日を除いて一週間ほどお休みを頂けそうです。纏まった休みは十数年ぶりであるような気もしますが、海外旅行になど行けるはずもなく、墓参りや初盆のお参り、書類整理などで終わってしまいそうです。

 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2013年8月 2日 (金)

夏、歴史、靖国など

 石破 茂 です。

 八月に入り、今日から臨時国会が始まりました。とは言っても今国会の会期は六日間、衆参両院の構成だけで実質的な審議は秋の臨時国会で行われることになります。
 野党からは予算委員会をはじめとする各種審議の要求があるやに伝えられていますが、いまだに参議院において野党の委員長ポストすら決まらない状況で審議入りなどは出来ません。野党にはまずその態勢を整えていただきたいものですし、われわれ政府・与党も、多くのご指摘には、国会審議がなくてもあらゆる場を活用して適切にお応えしていかなくてはなりません。

 憲法改正の手法について麻生副総理の発言が議論を呼んでいますが、副総理自身が発言を撤回したのですから、もうこれ以上自民党の側から言及する必要はないものと考えております。
 歴史については、常に正確な知識を持つよう心がけていかなくてはならない、と改めて強く自戒したことでした。

 八月十五日が近付き、例年のことながら靖国神社に関する認識を問われる機会が増えています。
 何回か当欄でも書かせていただいたと思うのですが、靖国神社を建立した際の日本政府の国民に対する約束は、「いかなる人であっても戦争で散華した人は靖国神社に祀られる」「天皇陛下が必ずご親拝下さる」という二点であったはずです。
 第一の約束は概ね果たされてはいても、第二については所謂A級戦犯が合祀されて以来、果たされていない状況が続いています。この状況をいかに打開するかが我々政治家の本質的な使命なのであって、参拝するか否かは政治家個人個人の判断に任せ、この問題に真剣に思いを致す必要があると考えます。
 「それはお前が参拝しない理由にはならないだろう」とのご指摘は当然ありましょうが、そのことが国際的にどのような影響を及ぼし、我が国の国際的な立場がどうなるのかまで考えなくてはならないのも、政治家の務めとしてまた当然のことです。
 これについて論ずるのは極めて恐懼すべき事柄ですが、国体の護持をひたすら願っていた所謂A級戦犯の思いと、先帝陛下、今上陛下の大御心を我々は心静かに考える必要があるように思われてなりません。
 国体が護持されたからこそ今日の日本があるのであって、その歴史を看過してこの問題を論じてはならないのだと思っております。

 この夏は、本当に十数年ぶりに纏まった時間がとれそうです。来し方行く末を想い、自らを見つめなおす時間となればよいなと願っております。

 週末は三日土曜日が先日逝去された中村博彦参議院議員(副幹事長)のお通夜に参列のため徳島へ参ります。
 四日日曜日は地元でいくつかの公的行事に出席の予定となっており、テレビ等の出演の予定はありません。

 豪雨災害に見舞われた地域の皆様にお見舞いを申し上げます。

 今一つはっきりしない天候の夏です。お元気でお過ごしくださいませ。

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