税の議論、人事など
石破 茂 です。
税を巡る議論は「これが正しい」という明確な解があるわけではなく、「やってみなければわからない」という面も多分にあるように思われます。それぞれの立場からの主張もポジショントークク的なものが感じられて、そのまま鵜呑みにすることは避けなくてはなりません。
「消費税を上げて庶民を苦しめ、法人税を下げて大企業を優遇するなどもっての外である」といういかにも世間受けしそうな議論がありますが、ことはそう単純なものではありません。日本国内に企業を留め、設備投資を慫慂し、外国企業の立地を促進し、雇用を増やし、労働者の所得を上げるためには法人の負担を減らしていかなくてはなりません。
「内部留保が増えるだけ」「賃金上昇につながらない」「経営の苦しい中小・零細企業には恩恵がない」との反対論は、「だから法人の負担は重いままでよい」という結論をストレートに導き出すことにはなりません。
多くの国において、消費税的な税の引き上げと法人税の減税はセットで行われていると承知いたしております。法人税も、結局消費者や労働者の負担によって賄われるのであって、「個人」と「法人」を対立する概念として捉えるべきではないように思います。
負担軽減が行われた場合、企業が当然行うべき設備投資や労働者所得の向上、雇用者能力の向上に対しては、政府・与党が強い姿勢で臨まなくてはなりません。「賃金や設備投資はそれぞれの企業の経営判断であり、政府としては強く要請することしかできない」というのは確かにその通りですが、それぞれの企業がどのように反応するかについてはよくよく注意する必要があります。
デフレからの脱却、経済成長、財政規律の回復という三つの命題を実現するためには、政府も、企業も、国民も今までの惰性から脱却し、甘えを払拭し、敢然とこれに立ち向かっていかなくてはなりません。今後政府と与党の間で徹底した議論を戦わせ、結論を得たのちには一体となって取り組みたいと思っております。
以上の見解についてはまた多くのご意見が寄せられるのでしょうが、来週以降、党税調と政府の税制に通暁したメンバーで、その内容や時期について更なる議論が行われます。
党の責任者として私が断定的な言動を差し控えるべきなのもまた当然であり、議論の推移を注視して参ります。
臨時国会が来月半ばには開会される見通しです。それまでに政府・国会・党の人事を了し、態勢を整えておかなくてはなりません。
有能な人をそれぞれ最適のポストで働いてもらうように工夫を凝らさなくてはならないのですが、花形ポストには希望者殺到、地味なポストには希望者がほとんどいないというのはいつものこと、地味なポストを黙々とこなし、自分を磨き、成果を挙げることもまた極めて重要なことだと今にしてつくづく思います。
人事の季節は悲喜こもごもで、私自身、もっと続けたかった役職を離れた経験が何度かあります。いくつかの手掛けてきた案件を半ばで他の人に引き継ぐのはとても心残りでしたが、資料を整えて次の人に引き継いだかというと、決してそうではありませんでした。
内閣改造の際、大臣引継ぎの儀式の光景が時々テレビで放映されますが、事務方が用意した、中身が何なのかよくわからない、しかし量だけは膨大な資料を横において、引き継ぎ書類に新旧大臣が署名するだけのわずか数分のものであることが多いようです。
麻生内閣が総選挙敗北で退陣し、鳩山内閣に引き継ぐ際、農水大臣であった私は二週間かけて引き継ぎ事項を整理し、書類を作成し、民主党の新大臣に引き継いだものでした(もっともその効果はほとんどありませんでしたが…)。
引継ぎ資料をどう作り、どのように間断なく政策を遂行させるかも、大臣・副大臣・政務官を問わず政府の任にある者の大切な仕事だと思うのです。
日曜日は久しぶりに報道2001(フジテレビ系・午前七時半)に出演致します。
朝夕がめっきり涼しくなってまいりました。皆様お元気でお過ごしくださいませ。
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