« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »

2014年9月26日 (金)

臨時国会開会に向けて

 石破 茂 です。

 このところ落ち着いてこの欄を記す時間が取れない状態が続いております。大変申し訳なく思っておりますが、何卒諸事情ご了察下さいませ。
来週月曜日からは臨時国会が始まり、地方創生法案他の御審議を頂くことになっており、少ない人数の中で、独立した省庁のような官房機能を持たない組織を回しながらこの「地方創生」という仕事を軌道に乗せるのは容易なことではありません。
 明確に方向性を示し、それを不可逆的にするところまでは何とか成し遂げたいと思っております。

 「バラマキを断固排除する」「地域の熱意と知恵を政府が支援する」というのが総理からもお示し頂いた指針ですが、現状の補助金・交付金・交付税は必ずしもその精神に則っているとは言い難い面もありますし、今まで連綿とそのような状態が続いてきたのはそれなりにカンファタプルな面があったからではないでしょうか。一括交付金は政策目的が限定されることなく自由度が高い半面、政策効果が検証されにくいものですし、各省ごとの個別補助金は地域ごとのニーズが反映されにくいものです。地方交付税は財源不足を補う財源保障機能と、地方間の格差を是正する財源調整機能を有していますが、これだけでは結果平等を志向することにしかなりません。
 検証システムを確立するとともに、地方交付税制度のあり方をもう一度研究する必要があるのかも知れません。単なる思い付きに終わらせないために、基礎的な知識を整理した上できちんとした議論を周到に積み重ねる必要があるように思います。

 今週のお勧め本は、「現代史の虚実」(秦郁彦著・文芸春秋)と「地域プラットフォームによる観光まちづくり」(大社 充著・学芸出版社)です。
 「現代史の虚実」は「自虐でも自賛でもない実証的歴史観」とは何なのかを考えさせられます。
 「…観光まちづくり」はこの方面の第一人者であり、この度地方創生会議の有識者会議のメンバーにも就任された筆者の、現場主義に立脚した極めて示唆に富む本で、とても面白く読みました。

 週末は27日土曜日が須藤昭男群馬県議会議長就任祝賀会での講演(群馬県みどり市)。
 28日日曜日が鳥取・岡山両県合同ショップ「ももてなし」(岡山の桃と鳥取の梨を「おもてなし」にひっかけた造語だそうです。いろいろなことを考える人がいるものですね。ひたすら感心。)のオープニング行事(東京都港区新橋)と、第10回東京・北京フォーラムでのパネルディスカッションへの出席となっています。

 もう来週からは10月です。早くもクリスマス商品の案内が届いたりして、いつもながらの焦燥感にかられます。
 皆様、良い週末をお元気でお過ごしくださいませ。

| | コメント (50) | トラックバック (0)

2014年9月19日 (金)

スコットランド住民投票など

 石破 茂 です。

 臨時国会は九月二十九日から十一月末までとの方向です。
 地方創生に関して、法案はもとよりあらゆる論点を事前に学んで、自分の言葉で話せるようにしなくてはなりません。
 「日本の地価が三分の一になる」(三浦展 麗澤大学清水千弘研究室・光文社新書)はざっと目を通しただけですが、精読の価値があるようにも思います。
 読みやすく、内容があるという点では「しなやかな日本列島のつくりかた」(藻谷浩介対話集・新潮社)もとても興味深い本でした。

 「地方創生」というテーマは百人の方が百のご意見を持っておられ、それぞれがとても熱く語られます。先日の東京鳥取県人会をはじめ、あらゆる場所でそれを実感致しており、百人集まられても数人からしか確たるご意見を頂けない安全保障問題との違いも痛感します。抽象的で毎日の生活とは遠く感じられる安全保障問題の持つ宿命のようなものでしょうが、これについてもさらなる研鑽・努力を怠ってはならないと思っています。

 スコットランド独立の是非を問う住民投票の結果は、これを記している時点ではまだ判明してはいませんが、世界史的な重大な動きであるように思われます。憲法が明文で定められていない英国の法体系の中でこれがどのように位置づけられていたのか、不勉強でよくわかりませんが、どなたかご存知の方があればご教示くださいませ。我が国においても研究するべき問題だと強く思っております。

 先般完成をみた先帝陛下(昭和天皇)の実録は、近く入札で出版社が決まり、五年計画で刊行されるとのことです。何としても時間を作って読みたいものだと願っております。児島襄の「天皇」(文春文庫)もきちんと読み直したく思っています。
 前回、朝日新聞の先の大戦を煽った責任について論じた本のご紹介をしながら本の名前を失念していて大変失礼致しました。「昭和史20の争点 日本人の常識(文春文庫)」でした。ご一読をお勧めいたします。

 週末は20日土曜日が自民党宮崎県連の政経セミナー。
 21日日曜日は「新報道2001」(フジテレビ系列・午前7時半)と「日曜討論」(NHK・午前9時)に出演した後、「第10回ふるさと回帰フェア2014」(東京国際フォーラム)に参加する予定です。
 土曜・日曜、一日平日を挟んでの火曜日・秋分の日は、皇室行事に参列します。

 今回はいつにもまして内容の薄い、書籍紹介的なものになってしまいましたことをお詫びいたします。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

| | コメント (34) | トラックバック (0)

2014年9月12日 (金)

彼岸花など

 石破 茂 です。
 早いもので、地方創生担当国務大臣を拝命してから一週間が過ぎました。
 大臣補佐官に伊藤達也衆院議員、副大臣に平将明衆院議員、大臣政務官には小泉進次郎衆院議員が着任、能力も人柄も優れた方々に恵まれたことを有り難く思っております。
 態勢も徐々に整いつつありますが、全体像を示したうえで、短期・中期の施策を立案する作業はまだまだこれからです。なにはさておき、臨時国会に提出する法案の作成を急がなくてはなりません。

 毎日お越しになる朝野の方々から、地方創生についてのお話を聞かせて頂いておりますが、これがそれぞれ実に面白い。昨日は「なぜローカル経済から日本は蘇るのか」の著者冨山和彦氏のお話を承りました。
 7年前、福田内閣の防衛大臣として防衛省改革を手掛けていた際、改革チームのメンバーに同氏の著書「会社は頭から腐る」を配布し、組織改革の参考としたのですが、直接お目にかかるのは今日が初めてでした。
 本も面白いのですが、実際僅か1時間弱聞いていて、「目から鱗」の話が多くあり、実体験に基づくプレゼンテーション力の高さにも感嘆したことでした。
 その他、官庁幹部の話にも興味深いものが多くあり、思わず手を叩きたくなるほどでした。
 こんな体験は本当に久しぶりで、長く手掛けてきた安全保障や外交、憲法などの、極めて重要ではあっても、抽象的かつ国民から遠いテーマとは明らかに異なります。
 勿論面白がってばかりいてはいけませんが、「地方創生」というテーマが国民の皆様の関心を呼び、国民運動となる可能性を十分に感じています。 

 朝日新聞の「吉田調書」「従軍慰安婦」に関する報道についての私の考えは、昨晩のBS日テレで申し上げておいた通りですが、「記者の国語能力」などという問題は些末的なことで、本質は「第四の権力とも言われるにもかかわらず三権分立などのチェック機能が働かないマスコミのあり方」にあるのだろうと思っています。
 チェック機能が働かないが故に、マスコミには強い矜持と自浄能力が求められるのですが、所詮人間の為すことですから、過度の期待を持つことは危険です。良く知られているように、先の戦争を一番煽ったのはマスコミだったのであり、なかでも朝日新聞のそれは顕著でした。
 権力とマスコミが一体となったとき、あるいはそれを更に超えてマスコミが権力を主導するようになった時の恐ろしさを改めて思わずにはいられません。秦郁彦氏が編著された本の中に、この辺りについて優れた論考があったように記憶しています。書名を失念してしまったので、次回改めてご紹介します。

 週末は、本日金曜日夕刻より奈良駅東口での街頭演説、自民党小林茂樹衆院議員の後援会の地方議員の会で講演。
 13日土曜日は石川県金沢市での自民党金沢市支部ならびに福井県春江市支部の政経パーティで講演。
 14日日曜日は地元。
 15日月曜日敬老の日(毎年9月15日が「老人の日」、9月第3週の月曜日が祝日の「敬老の日」で、今年はたまたまこの2つが重なっています。とてもややこしいですね)は東京で県人会他に出席します。

 母の命日が9月12日、父の命日が16日、母は没後23年、父は33年になります。早めのお彼岸参りを兼ねて墓参したいと思っています。
 両親はどちらも73歳で亡くなったのですが、私も段々とその齢に近づいてきました。いつまでも時間があるわけではないことを考えずにはいられません。

 この季節、両親の墓の近くには彼岸花が多く咲いています。彼岸花の別名は、天界に咲く花を意味する「曼珠沙華」で、花言葉は「情熱」「独立」「悲しい想い出」「想うはあなた一人」なのだそうですが、澄んだ秋の空と彼岸花の光景は私の心の中の原風景の一つです。

 大雨の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。
 不順な天候が続いていますが、どうか皆様お元気で週末をお過ごしくださいませ。

| | コメント (45) | トラックバック (0)

2014年9月 5日 (金)

国務大臣(地方創生・特区担当)拝命など

 石破 茂 です。

 九月三日、自由民主党幹事長を退任し、国務大臣 地方創生・国家戦略特別区域担当を拝命いたしました。
 二年近くにわたる幹事長在任中には、多くの皆様からご激励、ご叱正を賜り、誠に有り難うございました。厚く御礼申し上げます。
 また、国務相就任にあたって頂きました多くのお祝いにも心より感謝致しております。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 麻生内閣の農林水産大臣就任以来、六年ぶりに政府に入ったのですが、防衛庁・防衛省や農林水産省という出来上がった組織があり、連綿と続く政策を遂行してきた官庁をお預かりするのとは全く異なり、組織をこれから整備し、今までの政策をすべて見直し、それなりの背景がある既得権益と各省庁の省益を排して新たな政策を立案し、短期的な効果も挙げつつ、中期的・長期的な視点で里程表も作成しておかなくてはなりません。
 あたかも未踏の荒野を行くが如き状況です。

 地方の衰退や、過疎化・高齢化の進行や、都市、就中首都圏の過密と一極集中は、何も天変地異の如く近年になって急に発生したものではありません。今の日本国の姿は、敗戦後長い時間をかけて形作られたものであり、地方と第一次産業の潜在力を生かさないままに今日を迎えたのはある意味仕方のないことと言えるかもしれません。
 過去、田中角栄内閣の日本列島改造論、大平正芳内閣の田園都市構想、竹下登内閣のふるさと創生事業など、卓越した構想もあったのですが、それらがどのようなものであり、その後いかなる経緯を辿ったのかも、この際検証してみる価値のあるものと思っております。
 九月末にも招集されると言われている臨時国会に、地方創生関連の法案を提出したいと考えており、それまでにあまり時間は残っておりません。

 地方創生を「都市対地方」「東京対地方」の構図にしてしまえば必ず失敗します。
 さらに関係する省庁は国土交通、農林水産、経済産業、厚生労働、総務などだけではなく、ほとんどすべてに及びます。
 「バラマキと重複は認めない」とは言うものの、「バラマキ」や「重複」の定義を明確にしなければその実効は叶いません。
 あちらこちらの地方に出かける前に、落ち着いて自らの考えをよくまとめることが必要だと思っています。

 「地方消滅」(増田寛也編著・中公新書)、「何故ローカル経済から日本は蘇るのか」(冨山和彦著・PHP新書)、「しなやかな日本列島のつくりかた」(藻谷浩介対話集・新潮社)、「農山村再生」(小田切徳美著・岩波ブックレット)など、取り敢えずざっと目を通したのですが、集中して何度も読み返したいと思っています。
 この他にも膨大な書籍、論文、資料を精読し、理解し、自分の言葉で話せるまで読まなくてはなりません。農林水産の仕事も長く手掛けてきたことは幸いなことでした。

 大臣執務室は、総理官邸の向かい側に最近新築された、中央合同庁舎八号館の十階にあります。防衛省や農水省の大臣室のような重厚さには欠けますが、新しく機能的であることは確かです。
 まず当然のこととして両陛下のお写真(御真影)は掲げたのですが、絵画や置物などの配置はこれからです。来週一杯かけて、折を見て少しずつ整えていきたいと思っています。

 週末6日土曜日は「報道LIVE-あさチャン!サタデー」(TBS系・午前6時半)、「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系・午前8時)、「激論!クロスファイア」(BS朝日系・午前10時)、「週刊ニュース新書」(テレビ東京系・午前11時半)に出演の後、自民党群馬県連大会にて講演。
 7日日曜日は「時事放談」(TBS系・午前6時・収録)、「新報道2001」(フジテレビ系・午前7時半)、「日曜討論」(NHK・午前9時)に出演した後、松本洋平衆院議員の結婚披露宴、最後は「週刊BS-TBS報道部」(BS-TBS系・午後9時)で終わる予定です。
 時間はきついし、リスクもあるし、何よりも世の中が歩きにくくなるので、テレビに出るのは決して好みではありませんが、「地方創生」という、重要ではあっても比較的地味なテーマを、国民の皆様に理解・共感いただくためには、個人的なことを言ってはいられません。
 この数週間、マスコミの怖さも、著名なジャーナリストの皆様の立ち位置や考えも、改めてよく考えさせられたことでした。

 日に日に秋が深まります。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

| | コメント (96) | トラックバック (0)

« 2014年8月 | トップページ | 2014年10月 »