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2015年5月29日 (金)

「そうだ会議」「スタバ」など

 石破 茂 です。

 安全保障法制の論議が衆院特別委員会で始まりました。
 この種の論議は、賛否の別はともかく、基本的な事項に関する理解の共有がないままでは擦れ違いの議論が続くことになりかねません。
 一部では、「集団的自衛権の行使→米国の戦争に巻き込まれる→侵略戦争への加担」という図式が描かれているようですが、「戦争」はそもそも国際法上違法とされているのですから、論ぜられるべきは「国際的に一般的とされる自衛権行使と我が国における自衛権行使との相違」などのはずであって、このような図式は最初から当てはまりません。
 また、抑止力とリスクの関係についても「誰に(何に)対する、誰の(何の)、どのような抑止力やリスクなのか」を明確にした質疑を期待するものです。

 岸内閣以来、日本が外交の基本方針としている「国連中心主義」との関係についても今後論じられることになるかもしれませんが、その際には、
 ・ 米国など(当初はソビエトも)大国の一部が参加しなかった国際連盟の失敗の教訓から、拒否権を持つ常任理事国の存在を認めて初めて国連が発足に至ったこと
 ・ 常任理事国である大国の拒否権行使により国連が機能しない場合に備えて、あえて集団的自衛権を国連憲章に規定し、今日に至っていること
 ・ 自衛権の行使(憲章第51条)、軍事制裁(憲章第42条)の例外を除き、「戦争」は違法化されているのであり、「戦争ができる国」という概念自体がそもそも存在しないこと
 等々、国連の沿革や本質に関する理解を共有しないと、噛み合った議論にならないのではないかと思っております。
 個々の論点には今後とも政府として誠実にお答えしていきますが、その根本にある「日本をどのような国にしようとするのか」についても、深い議論が行われることを希望します。

 一昨日の衆議院地方創生委員会において、民主党の逢坂誠二委員より「今回の安全保障法制は立憲主義に反するのではないか」との質問がありました。
 法案の具体的な内容に関することは私の所管外ですのでお答えしませんでしたが、憲法そのものに関するお尋ねでしたので、「立憲主義とは権力が市民の権利を侵すことが無いよう、権力側を拘束するものであるという概念ですが、同時に権力を分立させることにより権力側の恣意を防ぐという機構の存在もその本質なのであって、現に国会でこの議論が行われていること自体、立憲主義の具現化そのものなのではないでしょうか」と、日頃思っていることを国務大臣として答弁致しました。
 逢坂委員は極めて理性的な方ですので、議論をこれ以上続けることはされませんでしたが、「戦争法案だ」「立憲主義に反する」等との否定的な立場からのご主張には、引き続き一つ一つ丁寧に政府・与党としてお答えしていく必要があると思っております。

 地方創生関連法案は本日の特別委員会で賛成多数をもって可決され、来週衆院本会議の議決を経て参院に送付される見通しです。
 残念ながら民主党などの全面的な賛成は得られませんでしたが、概ね良い議論がなされたように思います。今後の参議院での審議にも、心して臨みたいと思います。

 27日水曜日、日本商工会議所の三村会頭を議長とする「そうだ、地方で暮らそう国民会議」が発足しました。
 民間人の方を政府にお招きして開催するこの種の会議は、時間的な制約もあって一人の発言は極めて短く、事前に用意されたものを読み上げるだけ、という会議が多いのですが、昨日は三村議長の見事な運びもあって、とても面白くて充実した時間となりました。各議員の発言はとても興味深く示唆に富むものでしたので、何とかこれを多くの方々に共有していただけるよう、早急に工夫したいと思っています。

 スターバックスが全国でただ一県のみ無かった鳥取県に一号店が出店し、千人近い人が開店前に並んだことが大きく報ぜられました。
 平井鳥取県知事の「鳥取にはスタバは無いが砂場はある」との発言で妙に有名になりましたが、別に鳥取県民がコーヒー嫌いなわけではなく、県庁所在地別コーヒー消費量(平成23~25年)では京都市に続いて第二位という、むしろコーヒー好きの県民なのに、なぜ今までスタバが無かったのか不思議といえば不思議なことです。
 全国標準、画一的なお店ではなく、それぞれに個性的な喫茶店が多く存在していたことが影響したのかもしれません(人口当たりの喫茶店数では全国第10位)。我々が中高生くらいの頃、鳥取には全国チェーンのお店は無くても、独特のコーヒー店やピザ屋さんがあったのですが、今はほとんど無くなってしまい、なんだか寂しいような気も致します。

 週末30日は地元鳥取で自民党街頭演説会(倉吉会場・西倉吉町満菜館前・午前10時、鳥取会場・鳥取駅前・午後1時)、BSSテレビ「日本のちから」の収録。
 31日日曜日は毎年恒例の「大学は美味しい!」フェア(新宿高島屋)、地方居住推進フォーラムにて講演と弘兼憲史氏との対談(午後1時半・東京ミッドタウン)、日本地方地域政治学会での講演(午後4時・玉川大学)、という日程です。

 真夏日が異例の二日連続となった今週の東京でした。来週からはもう六月、早いものですね。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2015年5月22日 (金)

大阪の住民投票など

 石破 茂 です。
 大阪の住民投票は、どこまで論点、メリット・デメリット、それに伴うリスクを明確にし、市民が判断できる情報が提供されたのか、いま一つよくわかりません。
 維新の会代表が市長、幹事長が知事を務めていながら、「大阪市を廃止しなければ大阪府との二重行政が解消されない」とするのは何故なのか。住民が区長や区議会議員を選ぶ特別区を作って、大阪市の出先機関でしかない区役所から、より住民に身近な特別区に移行が出来たとしても、それで二重行政は構造的に生じなくなるのか。
 素朴な疑問は残ったままでしたし、法定選挙費用の規定など、公職選挙法の適用が一部に及んでいないために、宣伝費用が使いたいだけ使えるようなこととなり、資金力で有利・不利が左右されるようなことがあってよいのか、という問題も残されました。

 大阪の自民党については、当時多くの議員が当選目当てで維新に移る中、敢えて野党だった自民党に残り、党の政策を訴えて選挙を戦い、大変な苦労を重ねてきたこともまた事実です。大阪の自民党はすべてダメだ、というのは単なる決めつけやレッテル貼りであって、事実とは異なります。
 大阪市が存続することになった以上、この枠組みの中で、職員や議員の利益ではなく、市民、府民の利益を第一に考えた改革が早急になされることを、心から願っています。

 一昨日の党首討論から、安全保障法制の議論が事実上スタートしました。安全保障法制はガラス細工のように精緻な理論の積み重ねであり、これから丁寧な議論が続けられることになるものと思われます。
 同盟関係には「巻き込まれる危険」と「見捨てられる危険」が常に存在しており、これを「同盟のジレンマ」と呼びますが、この理解もまた重要なポイントとなると思われます。
 安全保障は感情論ではなく徹底したリアリズムで語られるべきものであり、ご関心のある方は是非、川上高司拓大教授の一連の論考をご参照ください。

 前回C-17輸送機について書いたところ、いくつかのご意見をいただきました。
 国会では全くと言っていいほどに防衛装備に関する議論が無く、ずっと違和感を持っているのですが、国民の皆様のほうが意識をお持ちなのかもしれませんね。
 この点に関しては清谷信一氏の「国防の死角」(PHP刊)に平易な解説が記されています。

 今週は衆議院地方創生特別委員会における関連法案の審議に多くの時間を費やしましたため、あまり詳しい内容の記述になりませんでしたことをお詫びいたします。来週中には同関連法案が衆議院を通過するよう、ひきつづき努力していきたいと思っています。

 週末は、23日土曜日が「日本創生のための将来世代応援知事同盟サミット」で挨拶(午前九時・岡山県立美術館)、宮崎謙介衆院議員政経セミナーで講演(午前11時・新都ホテル・京都市)、「データなび」出演(午後9時・NHK・収録)。
 24日日曜日がマイナビ就職EXPOにて挨拶(午前11時半・東京ビッグサイト)、鳥取移住フェアで挨拶・知事との対談(午後1時・移住・交流ガーデン・中央区京橋)、自民党鴨川市支部演説会で講演(午後5時・鴨川市民会館)、という日程です。

 もう5月も後半、今年もやがて半分近くが過ぎるのですね。
 皆様お元気でお過ごしください。

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2015年5月15日 (金)

防衛省設置法改正など

 石破 茂 です。

 ネパールにおいて、今週もまた大きな余震が発生しました。各国による支援が行われており、我が国も自衛隊の医療チームを派遣して現地において献身的な活動を展開しています。
 内陸国であるために多くの困難があるでしょうが、このような時に航空自衛隊がC-17のような大型の輸送機を保有していれば、更に大きな支援が出来たのではないかと思われてなりません。現在我が国が保有するC-1、C-130では航続距離、輸送量に限界があり、特にヘリコプターのような大きな機材を運ぶことはできません。ヘリを現地に運べれば、端末輸送に大きな力を発揮します。イラク派遣の際、毎回ロシアのアントノフ輸送機をチャーターせざるを得ず、東日本大震災の時も輸送力の不足が指摘されたのですが、C-2の完成が遅れており、なかなか大きな改善を見るに至っていない気が致します。

 本日衆議院を通過した防衛省設置法改正による自衛隊の組織改編は、陸・海・空の統合運用をさらに実効性あるものとするために、防衛力を整備(造成)する段階から統合の観点を重視して行うことを主眼とするものだと理解しています。
 陸・海・空がそれぞれバラバラに車両や艦船や航空機を整備しても、個別最適の総和が全体最適になるわけではありません。防衛費の中で陸・海・空のシェアがほとんど固定化されているというのも、考えてみれば不思議なことで、今後想定されるあらゆるオペレーションを念頭に、それを達成するためにそれぞれがどのような装備を持つことが最適なのか、というところから始めなくては、国益の達成も、国民の税金の有効活用も決して十分なものとはならないはずです。
 
 イラクへの輸送の議論の際、「勿論離発着距離も大切だが、単純に考えて輸送機は大きくて航続距離の長いほうが良いのではないか。輸送機の国産化の意義はそれなりに理解するとしても、C-17導入の可能性も併行して検討すべきではないか」と問題提起したのですが、省内で支持してくれる者はほとんどなく、自民党の部会では「石破大臣は国産化に消極的だと聞くが、愛国心は無いのか」と批判される有り様で(それが国産輸送機C-2ですが、未だ実用化に至っていません)、結局C-17導入は日の目を見ませんでした。

 昨日、安全保障法制が閣議決定され、これから国会における審議が始まります。無事に成立の後は法制面において一定の前進が見られることとなりますが、安全保障は法律、装備、運用が一体となって初めて可能となるものです。文民統制の主体である政治家にこの意識が高まるよう、さらなる努力が必要です。

 週末は16日土曜日が「田勢康弘の週刊ニュース新書」(テレビ東京系・午前11時半)出演、徳島県内市町村長・議長との地方創生に関する意見交換会、福山守衆院議員環境大臣政務官就任祝賀会で講演(午後5時・徳島市内)、「日経プラス10特別編 ななつ星in九州の旅」出演(BSジャパン・収録・午後九時)。
 17日日曜日が滋賀県商工会連合会で講演(午後3時・大津市内)という日程です。

 台風一過、早くも都心は真夏日となった1週間でした。皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

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2015年5月 8日 (金)

イコモス勧告など

 石破 茂 です。

 大型連休も終わったのですが、まだ首都中枢は静かな雰囲気が漂っています。土・日を挟んで来週から本格稼働の体制に入ります。
 ネパールの災害、安倍総理の訪米、箱根の火山活動、「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界遺産登録への勧告などいくつかの重要なニュースはありましたが、私自身は久々にゆっくりとした時間を過ごすことが出来、来し方行く末に思いを巡らしておりました。こんなことは議員になってからの二十九年間で初めてのことであったようにも思います。本当に有り難いことでした。
 連休中もお仕事に忙殺された多くの皆様、本当にお疲れ様でした。

 「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産の登録は内閣官房の所掌であり、私が担当大臣を務めております。韓国からは強い異議が唱えられておりますが、時期が同国が問題としている徴用工の時期とは明確に異なること、この問題を政治の争点にするべきではないとの日本政府の立場は当然のこととして、今後六月から七月にかけてドイツ・ボンにて行われる正式決定まで、韓国も含めた国際社会に対して誠実かつ真摯に説明をしていかなくてはならないと思っております。

 五月は地方創生の国民的な機運を醸成するためのいくつかのイベントを企画しており、多くの皆様の参加を期待しております。詳細は改めてご案内いたしますが、近隣でご都合のつかれる方は是非覗いていただきたく思っております。

 今日はこれから「無双の宰相 田中角栄」をテーマとするBSフジの「プライムニュース」に出演の予定です。田中先生の存在が無ければ、間違いなく今の私は無かったのですが、議員室に掲げてある、昭和59年に先生から餞別に頂いた色紙に記された「末ついに 海となるべき山水も しばし木の葉の 下くぐるなり」という言葉の意味と重さを、時折しみじみと噛みしめることがあります。

 週末は土曜・日曜と大分へ出張し、玖珠町、日田市、中津市で講演のほか、いくつかの取材や視察をこなす予定です。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2015年5月 1日 (金)

隠岐諸島訪問など

 石破 茂 です。
 連休の谷間の金曜日、普段と変わらずお仕事の方、いつも以上にお忙しくしておられる方も多く居られることと存じますが、世間一般はいたって静かな状態で、永田町・霞が関でも議員の姿を見かけることはほとんどありません。
 閣僚もその多くが海外出張中ですが、私自身は今年は何処の海外にも出かけることなく、いくつかの国内出張、講演、テレビ出演の他は平常通りの仕事をこなします。地方創生関係や歴史物の、以前から目を通しておきたかった書籍、論文などもこの機会に可能な限り読んでおきたいと思います。

 今から三十五年も前の銀行勤めの頃、上司の多くが休みを取る連休中はなるべく出勤したものでした。お客様は少ないし、面倒なことを言う上司も居ないし、溜まった仕事を片付けるなら今のうちだ、と思いました。入行店であった日本橋本町支店に四年間いただけでしたが、あのころが一番楽しかったように今にして思います。

 一昨日、昨日と、島根県隠岐諸島に出かけて参りました。
 山内道雄町長の下、地方創生のあるべき姿を提示している海士町を一度見ておきたかったのですが、実際に自分の目で見てみると、やはり感動と驚きの連続でした。山内町長の取り組みは著書「生き残るための10の戦略」(NHKブックス)に綴られています。是非ご一読をお勧めしますし、多くの行政関係者にも読んでいただきたいと思っています。

 隣県の鳥取県出身でありながら、今まで隠岐諸島には一度も行ったことがありませんでした。
 天候に恵まれたことも大きいのですが、世界ジオパークに指定されただけのことはある、本当に自然の素晴らしい島で、久々に心から感動したことでした。日本には本当に素敵なところが多くあるのですね。
 同時に、竹島を含む国境離島でもあり、防衛の観点からも多くのことを考えさせられました。

 後鳥羽上皇、後醍醐天皇が配流された歴史の島々でもあります。
 まえがきを書く必要があって、地元鳥取の作家、松本 薫さんが書いた「天の蛍~十七夜物語」(江府町観光協会、今井出版から六月発刊予定)という、鳥取県日野郡江府町(こうふちょう)に伝わる戦国時代に端を発するお祭りをモチーフにした歴史小説の原稿を読んだのですが(これがなかなか面白い)、それぞれの地域や人々が、歴史の流れの中でどのように対応したのか、意外と習ってはこなかったように思います。地域の歴史を学び、愛着と誇りを持つことも地方創生の重要な要素であるように思います。
 
 今日から五月、東京都心は五月晴れの爽やかな陽気です。皆様良い日々をお過ごしくださいませ。

追伸:「天の蛍~十七夜物語」のあらすじ
 時は戦国、山陰では尼子と毛利が覇を競っていた。両親を失った少女・波留(はる)は妹と別れ、旅芸人一座で踊り子となる。数年後、妹を迎えに帰郷すると彼女は何者かに連れ去られていた。妹を探す中、足軽の要(かなめ)との出会い、そして偶然迷い込んだ「江美の十七夜」での江美城主蜂塚右衛門尉との出会いから城主の娘・寿々姫の世話役となり、波留の運命は変わっていく。
 城主の毛利方への転身、姫の死という混乱に揺れる中、波留は悲しみに暮れる城主たちを慰め、この世とあの世をつなぐため、再び踊り始める…  (事前宣伝パンフレットより)


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隠岐諸島視察の様子です。

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