オーストリア出張など
石破 茂 です。
今日はこれより午前零時50分発の便に乗り、フランクフルト経由でオーストリア・グラーツ・ザルツブルグへ参ります。
9月1日の早朝着便で帰国の予定で、このような日程を「2泊4日の弾丸ツアー」と言うのですが、国会開会中でもありやむを得ません。
現地ではフィッシャー大統領、ルプレヒター農林大臣との会談や、日本CLT協会とグラーツ工科大学とのCLT技術交流協定締結式、林業現場や農山村の観光への取組の視察などの予定が入っております。
麻生内閣の農林水産大臣在任中、来日されたオーストリアの農林大臣と会談して以来、オーストリアの林業政策には関心を持っていたのですが、十分に研究した上での自分なりの解を見出せないまま今日に至ってしまいました。
日本の総面積の67%は森林であり、地方ではその比率はさらに大きく、林業の再生なくして地方創生はあり得ません。日本の林業・山村の衰退、森林の荒廃の理由は「貿易の自由化により安い外材が大量に流入したため」と言われますが、果たして本当にそれだけなのか。路網の整備、コスト削減、自国産材の活用法、林業政策と住宅政策との連携、バイオエネルギーの技術的な革新など、十分な手を打たないままに今日に至ったことを謙虚に反省し、冷静な比較分析を加えた上で、今からでもオーストリアに学ぶべき点は多くあるのではないか、というのが私の問題意識です。
オーストリアでは基本法(憲法に相当するもの)に定められた国民投票により原発の設置が禁止され、将来建設する際には国民投票による旨が法律によって規定されており、また永世中立と徴兵制も基本法に明記されています。私は原発全面禁止派でも徴兵制論者でもありませんが、ドイツやオーストリアの政策につき、国会でも党でもあまり真剣に議論された記憶がなく、この機会に深く学びたいと思っております。
今週も参議院の予算委員会に呼ばれて答弁する機会があり、委員会室での待機時間や他の閣僚が答弁している時間に質疑を実際に見ることがあるのですが、野党、特に民主党の質疑を聴いていると、党として一体どのようなスタンスなのか、理解に苦しむ場面が多々あります。
本欄では何度か指摘したことですが、集団的自衛権が「大国と組んで自衛に名を借りた侵略戦争に加担・参加する道を開くものだ」と本当に信じているのなら、「民主党が今度政権を担当した暁には、国連において集団的自衛権を規定した国連憲章第51条の削除を提案する」と委員会で主張し、来年の参議院選挙の公約に堂々と掲げるべきではないでしょうか。
その本質論を回避したまま各々統一性のない議論を展開するので、見ている国民の側には何が何だかよくわからない結果になっているのではないでしょうか。国会議論を内容のあるものとするためには、政府・与党のみならず、野党もまた大きな責任を負うべきなのだと思います。
オーストリアの林業についてご関心のある方には、7月31日にもご紹介した「里山資本主義」(藻谷浩介・NHK広島取材班著・角川書店)と、「森林の崩壊」(白井裕子著・新潮新書)がお勧めです(藻谷氏の所論については批判も寄せられていることを承知しておりますが、私自身は共感するところが多くあります)。
今週読んだ本の中では「地方消滅 創生戦略篇」(増田寛也・冨山和彦著・中公新書)、「地方創生ビジネスの教科書」(増田寛也監修・解説・文芸春秋)から幾多の貴重な示唆を受けました。
来週はもう9月、朝夕の寒暖の差が大きくなりそうですね。皆様お元気でお過ごしくださいませ。
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