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2016年10月28日 (金)

三笠宮崇仁親王殿下薨去など

 石破 茂 です。
 昨27日、三笠宮崇仁親王殿下が薨去なさいました。謹んで哀悼の意を表します。
 100歳というご長寿でしたが、三笠宮親王殿下の皇位継承の現実性はさておき、これで皇位を継承できる男性皇族はお四方となり、皇室の安定的な継続を真剣に考える必要性がさらに増したように思います。

 一昨日、大切な友人であった小坂憲次元文部科学大臣のご葬儀が東京・青山斎場で厳かに執り行われました。平日の日中でしたが、本当に大勢の方々が参列され、故人の人柄と交友の広さが偲ばれました。
 私、外交評論家の岡本行夫氏、後援会長の塚田元長野市長が弔辞を述べたのですが、本日の当欄の最後に私の弔辞を載せておきますので、ご覧いただければ幸いです。立派な友人のあまりに早すぎる逝去が残念でなりません。

 26日木曜日に北陸新幹線舞鶴ルートと山陰新幹線の実現を目指す総決起大会が議員会館で開催され、国会議員連盟会長として挨拶を致しました。
 2000年、北陸新幹線や九州新幹線の着工が議論された時、「採算がとれない」「費用対効果が検証されていない」などと散々酷評されたものですが、実際開業してみるとそのようなことはありませんでした。酷評した新聞はそのことを忘れたかのように新幹線開業効果を大きく報じたのではなかったでしょうか。上下分離という社会インフラの本来あるべき費用分担の方式を無視した、意図的な報道であったように思われます。
 かつて戦艦大和、青函トンネル、東海道新幹線は「昭和の三大馬鹿査定」と言われたものですが、戦艦大和はともかくとして、青函トンネルも東海道新幹線も、そのような批判を加える人は今は全くおりません。
 並行在来線の取り扱いも、「新幹線が欲しければ地元で運営せよ」という姿勢が感じられ、同一営業主体による相乗効果の実現を目指してこれを改めるべきと考えますし、まだまだ課題は山積しています。新幹線については多くの議論がありますが、日本と欧州とでは基本的に交通政策の思想が異なるように思われます。別の機会に改めて論じたいと思います。

 週末は、28日金曜日夕刻の文化財地区、避難所、対策本部での被災状況聴き取り。
 引き続き、29日土曜日午前中に鳥取県中部における地震の被災地訪問・被災状況聴き取り(倉吉市梨選果場、JA中央本所、東郷選果場)、鳥取県八頭郡森林組合八頭町森林シンポジウムで講演(午後零時半・八東総合運動公園)、自民党鳥取県連街頭演説会(午後1時半・鳥取駅前)、慶應義塾大学法学部 新田 敏研究会創立50周年と先生の金婚式を祝う会(午後5時・ホテルニューオータニ)。
 30日日曜日は福井県大飯郡高浜町・おおい町地方創生講演会で講演(午後1時半・JA若狭高浜支店)、舞鶴市「石破代議士を囲む会」で講演と懇親会(午後3時半・ホテルマーレたかた)という日程です。

 私が所属していた財産法のゼミナール、新田研究会は、毎週A4の紙1枚のレポート提出が義務付けられるなど、厳しいことで有名でした。当時はワープロもパソコンも無く、とても上手とは言えない(私だけ?)小さな字でびっしり書いたゼミ生たちの出来のよくない(私だけ?)レポートに先生は実に仔細に目を通され、A゜、A、A´からD´、無印(評価に値せず)に至るまでの評点をされた上で、「論点が正確に理解できていない」「ここに論理の飛躍がある」「この論理構成は適切である」などと的確なコメントを加えて下さいました。
 提出の2日ぐらい前から、ああでもない、こうでもないと考えて、前夜はほとんど徹夜状態でレポートを書いていましたが、通算成績一番は長野出身の黒岩恵一郎君、私は二番であったように思います。民法の細かい条文などはほとんど忘れてしまいましたが、論理的な思考というものを学ばせて頂いたことは本当に有り難いことでした。久しぶりに先生や先輩、同期、後輩に会えることを楽しみにしています。

 寒さに向かいます折、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2016年10月21日 (金)

小坂先生ご逝去など

 石破 茂 です。
 新潟県知事選は自民・公明両党が推薦し、私も個人的に応援していた森民夫候補(前長岡市長・前全国市長会長)がかなりの差で共産・社民・自由各党が推す米山隆一氏に敗北しました。
 森氏は市長時代、市役所職員や議員よりも「市民のための市役所」を具現化した「アオーレ長岡」を建設したり、国交省都市局所掌である公園内に厚労省雇用均等・児童家庭局所掌の保育園を設置したりと、従来にない卓越した発想で市政を展開し、地方創生を牽引してきた方で、私は本心から当選を願っておりました。
 しかし原発反対、TPP反対という世論に加え、相手候補に比べて高齢であったこと、原発に慎重姿勢であった現知事のスタンスに対する対応の違い、「新潟(新発田藩)対長岡(長岡藩)」という地域感情等が相俟って、あのような差になったものと思われます。
 当欄のコメントにも森氏に対する批判が寄せられており、「本人を見て、話を聞いてください」とも思ったりいたしましたが、選挙は結果が全てですから、あれこれ言ってもどうにもなりません。
 私が新潟市に応援遊説に入った際にも多くの方々が集まって下さったのですが、「森さんを初めて見た」「話を聞いて初めて良さが分かった」という反応が多く、かなりの不安を感じたことは事実です。せめてあと一か月時間が欲しかったところですが、選挙の怖さを改めて感じたことでした。

 自民党総裁任期の延長問題は党の検討委員会で「無期延長」と「3期9年まで」が同数となり、高村副総裁一任ということになりました。今後平場(ひらば)の議論を経て最終的には来年三月に開催予定の党大会で結論が出ることとなります。
 「長く権力の座にあると腐敗する」という批判もありますが、知事や市町村長で3期12年以上立派に務めておられる方も多く居られますし(自民党本部としては4期以上の首長立候補者は推薦しないこととなっています)、一概に「2期6年まで」が正しいというわけではありません。
 私自身の立場上、何か意見を述べて興味本位に取り沙汰されるのも極めて心外かつ不愉快なので静観しております。決定したことに従うのは党員として当然のこととして、「我が党にとって優先課題である理由」「一般党員や国民への説明」は、決定それ自体と同じくらい重要であろうとは考えています。
 長く議員を務めてきて、所属議員が「議員のみの利益」や「永田町の論理」を優先させた時に、自民党は決まって国民の支持を失ってきたと思っております。現時点で自民党に代わる政党が存在しない以上、それは国にとって極めて不幸な事態を招来することになり、我々は常に自らを戒めていかねばなりません。

 昨日の政策集団「水月会」の定例勉強会は「転落の歴史に何を見るか」(ちくま新書刊)の著者である齋藤健代議士(農水副大臣)の講演でしたが、歴史に学ぶ必要性を改めて痛感させられ、啓発されるところ誠に大でした。この本は是非ご一読をお勧めします。

 本日朝、かけがえのない我が友人、小坂憲次・元文部科学大臣が逝去されました。享年70歳、あまりに早いご逝去に言葉もありません。悪性リンパ腫に侵され、今夏の参議院選への出馬を見送って療養に努めておられたのですが、今朝容態が急変して帰らぬ人となられました。
 曾祖父・小坂善之助氏から続く名門政治家の家系で、私の高校・大学の先輩にもあたる方でした。当選は私の一期下でしたが、容姿端麗、頭脳明晰で正義感に溢れ、常に真っ直ぐに信念を貫く方でした。
 リクルート事件の嵐が吹き荒れる中、政治改革の実現を目指して連日連夜共に奮闘した日々のことが鮮やかに思い出されます。「二代目であるということで他の人よりも有利なのはおかしい。能力と熱情のある人ならば党が全面的にバックアップして出られる小選挙区制を実現しよう」「世襲でなくとも出られる制度を作ることが我々世襲議員の最後の仕事だ」と二人で語り合ったものです。
 自民党が下野した時の総選挙で落選された後は参議院比例区に転じられ、参議院自民党幹事長として参議院の改革に情熱を傾けられました。 
 福田康夫総理・総裁が辞任を表明された後の自民党総裁選で、当時我々が所属していた津島派からも誰か擁立すべきとの声が若手を中心に高まった際に、小坂さんと私のどちらかが立つべしということになり、「名門で、弁舌爽やかで、学校の先輩でもある小坂さんが相応しい」と言う私と「議歴から言って石破さんが相応しい」と言う小坂先生との間で話が纏まらず、侃侃諤諤の議論の末に結局私が出ることになったのですが、あの時小坂さんが立候補していれば、その後お互いの人生は全く違ったものになっていたに相違ありません。
 心の中に大きな穴が開いたような、何とも言えない悲しくて寂しい気持ちです。御霊の安らかならんことをひたすらお祈り申し上げます。

 週末は22日土曜日が平成28年度自衛隊殉職隊員追悼式(午前10時・防衛省慰霊碑地区)、健康保険組合健康未来トーク「すべての世代の活き活き社会を目指して」で生島ヒロシ氏と対談(午後2時・東京国際フォーラム)、鳥取県地震被災地訪問(午後6時・予定)。
 23日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、鳥取県地震被災について鳥取県庁でヒヤリング(予定)、麻布大学・大学祭ホームカミングデーで講演(午後2時・麻布大学キャンパス・神奈川県相模原市)という日程です。
 本日鳥取県で発生した地震につき、お見舞いのお電話やメールを頂き、感謝しております。

 十月も半ばを過ぎたというのに、妙に暖かな日が続きます。もの想う秋が段々と短くなっているようで、あまり喜ばしくはありませんね。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2016年10月14日 (金)

新潟県知事選など

 石破 茂 です。
 補正予算も成立し、TPPの審議や、「働き方改革」の議論が本格化します。
 私が不勉強な所為なのでしょうが、「同一労働・同一賃金」や「非正規という言葉を一掃する」ということについて、いまだに正確な理解が出来ていません。
 アメリカのように労働契約の内容が明確な社会とは異なり、日本の労働契約は一般的・抽象的な内容のものが多い、と学生時代の労働法の講義で教わったように記憶しているのですが、何をもって「同一労働」と評価されるのか。非正規を一掃する、というのは恐らくすべての労働者が正規雇用となることを意味するのであり、それはそれでとても素敵なことなのですが、ボーナスや社会保険などをすべて合算すると非正規雇用と正規雇用の収入は相当に乖離しているのが現状で、まさか正規の諸待遇を非正規に合わせるわけでもないでしょうから、人件費は相当に増嵩することになると思われますが、どのようにして実現するのか。だからこそ生産性を上げて賃金を上昇させるのだ、ということなのでしょうが、経営者側や正規社員を多くの構成員とする連合の見解も是非とも聞いてみたいものです。

 時間を見つけて北朝鮮や中国、ロシアの分析をした内外の論説を読んでいるのですが、論者によって見解が大きく異なり、相当に混乱気味です。これに合衆国大統領の選挙結果が加わり、世界史的な大変革の時期が到来しつつあることは確実のように思われます。
 戦争が起こることはすなわち外交の失敗を意味するのですが、戦争を全く考えない外交が存在しないこともまた事実であって、彼我の能力と意思決定の過程を正確に把握しない時に予期せざる事態が起こることもまた歴史の教えるところです。我々は評論家ではないのですから、多くの文献を読み、内外の識者の意見を聴いたうえで自分なりの方向性を常に持たねばならないことを自覚しなくてはなりません。

 13日木曜日は早朝から新潟県知事選挙に立候補している前長岡市長・前全国市長会長の森民夫候補応援に行って参りました。極めて厳しい戦いですが、山田全国知事会長(京都府知事)、藤原全国町村会長(長野県川上村長)とともに、地方創生の仕事をさせて頂いた同志である森候補の勝利を心より願っております。

 あまり難解な本ばかり読んでいると辛いので、先日BS番組でご一緒したパトリック・ハーラン氏(ハーバード大卒タレント、とよく紹介されますが、東大卒タレント菊川怜みたいなもので、別に学歴を売りにはしていないと思います)の「大統領の演説」(角川新書)を少しずつ読んでおります。言論文化が日本と欧米では相当に異なるのですが、私を含めて多くの政治家が演説を個人芸でやっていることについては改善の余地があるように思います。

 週末は15日土曜日が第3期自民党ひょうご大学院第1回講義で講演(午後2時・自民党兵庫県連・神戸市中央区中山)、広瀬栄・養父市長市政報告会で挨拶(午後6時・八鹿文化会館・兵庫県養父市八鹿町)。
 16日日曜日が衆議院東京第10区補欠選挙応援遊説(練馬区内)という日程です。

 今週は京都、新潟、横浜、来週は名古屋、札幌、岐阜と、ここのところ矢鱈と移動の多い日程が続いています。地方創生は一種の国民運動的要素がありますので、国会審議や党務の合間を縫って何とかこなしたいと思うのですが、やや疲労が蓄積気味なのは事実です。講演や演説の内容が落ちないように気をつけたいと思っています。

 もう10月も中旬となりました。結局この秋も仕事ばかりだったなと残念な思いも致しますが、お呼びがかかるだけ有り難いことだと思わなくてはなりませんね。
 バタバタしていていつも以上に雑駁、漫な文章となりましたことをご容赦くださいませ。
 皆様、ご健勝にてお過ごしください。

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2016年10月 7日 (金)

ディベートなど

 石破 茂 です。
 平成28年度補正予算案が衆議院において可決され、現在参議院において審議されています。
 衆議院予算委員会で久しぶりに委員席から質疑を聴いていたのですが、最後まであまり議論が噛みあわず、やや残念な質疑に終始したような印象でした。
 答弁する政府側としては、質問者が何人も立って、論点が散らばり多岐にわたり、「時間がないので次の質問に移ります」と言ってくれるほど楽なことはありません。「テレビ中継があるのだから」という理由で多くの質問者を立てても、政府側を追及する効果は皆無に等しいのです。

 自民党が野党時代の平成22年12月、ディベート学の権威である北岡俊明氏を党本部にお招きして「ディベート講座」を開催し、良い質問・駄目な質問、良い答弁・駄目な答弁を直近の実例を挙げて検証し、実際のディベートも行うなど、相当に突っ込んで学んだものでした。日本では法廷でのやり取り以外は基本的にディベートの習慣が無く、その技術も未発達であり、さればこそ国会の論戦も観ていてもなかなか国民の理解が深まらないのだということを強く認識させられました。
 「してもしなくてもよい無意味な質問はするな」「言論の闘いの場においてはなるべくパネルを使うな」「あ~、え~、などと言うな」「…と思います、は禁句。断定的に自己の見解を述べよ」…等々、技術的な学びも数多くあり、その後の貴重な糧とさせて頂いているのですが、最も印象深かったのは「ディベートの最大の効用は万巻の書を読まざるを得ないということである。ディベートとは読書の戦いであると言ってもいい。大量の本を読まないと他のディペーターに徹底的に論破される」との教えでした。
 「話の引き出し」を多く持っていることは攻守どちらにおいても必要なことですが、そのためには時間を見つけては可能な限りの本や論説を読まねばなりません。私の時間管理が下手な所為か、時間はいくらあっても足らず、送られてきた今週だけでも十数冊の本や論壇誌を前にただ呆然とするばかりですが、何とか数冊でも読みこなさなくてはと思っています。「本ばかり読んでいないでもっと酒を飲み、メシを食い、付き合いの幅を拡げるべきだ」とのご指摘をしばしば頂くのですが、こればかりはスタイルなので致し方ありません。
 ディベートの技術を磨く、ということは答弁する側に立った場合にも重要なことです。その場を切り抜けさえすればよい、とか相手を揶揄すればよい、というものではなく、国民が納得する議論を展開することで初めて理解は深まるのであり、むしろその責任は政府・与党側こそ重いというべきなのでしょう。

 一部で解散が取り沙汰されています。解散は総理の専権事項であり、我々がとやかく言うべきものではありませんが、「何を問うのか」を明確にしなければならないと個人的には考えています。
 7月の参議院選挙では所謂アベノミクスの是非を問うということだったのですが、時期の如何はともかくとして、総選挙において国民にいったい何を問おうとするのか。
 改憲を問う、というのならば、現在の自民党の憲法改正草案について自民党公認候補者たる前職・新人が、防衛軍の創設や基本的人権の保障など主要な論点について正確に理解した上で、選挙において必ずその必要性を訴えるようにしなくてはなりませんし、そうでなければ主権者である国民に対して不誠実になってしまいます。
 あくまで報道ベースで、仮に年末や年始の選挙だとすれば、予算編成や税制改正などに忙殺される中となりますが、なんとしても時間を捻出してきちんと学習すべきです。公約に書いてあるから、ということで国民の理解を得たなどと強弁することは、厳に慎むべきものと考えます。憲法改正は私が議員でいる間に成し遂げたいことの最大のものですが、そうであるだけにこの思いは強いのです。

 雑誌「Voice」の11月号所載の陸・海・空元幕僚長座談会「武器さえ持てない自衛隊」は極めて説得力のあるものです。問われているのはまさしく我々政治の覚悟と決断なのであり、それなくして自衛官の悲痛な叫びや、昼夜を分かたぬ献身に応えることは出来ません。是非ご一読をお願いいたします。

 週末は、9日日曜日が「とっとりバーガーフェスタ2016 第6回全国ご当地バーガーグランプリ」で挨拶と地元FMラジオ出演(正午・大山博労座特設会場・西伯郡大山町)。
 第10回親父モデラーズ作品展示会(午後3時・ごうぎんギャラリー・鳥取市栄町)、自民党鳥取県連常任総務会(午後4時・白兎会館)、「外国人記者は見た!」出演(午後10時・BS―TBS・収録)。
 10日月曜日・祝日は東京鳥取県人会(正午・都市センターホテル)、文化庁京都市移転関係者との夕食懇談会(午後6時・京都市内)という日程です。

 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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