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2017年3月31日 (金)

抑止力など

 石破 茂 です。
 森友事案について世の中の騒ぎは沈静化しつつあるように見えますが、スキャンダルめいた話はともかくとして、行政が適切に執行されたかについては依然として釈然としないままです。コメント欄のご投稿を拝見していると、本当にそうだなと思わされるものが多くありますが、内閣支持率がそう大きくは下落していないにも拘らず、経緯についての政府の説明に納得していない人が国民の7~8割に達しているという事実には注意が必要です。きちんと説明し、今後改めるべき点は改めると率直に言った方が国民の理解と共感が広く得られるように思います。

 国連核兵器禁止条約の制定交渉に我が国は参加しないこととなりました。この交渉に米・露・英・仏・中の核保有国(勿論すべて安保理常任理事国)が参加していないので、日本が参加しても保有国・非保有国の対立を深めることにしかならない、というのがその理由と言われています。
 一方、自民党安全保障調査会・国防部会においては「敵基地に対する反撃能力」を我が国としても保有すべく、政府において検討し、成案を早急に得るよう求める提言をまとめました。
 報復的・懲罰的抑止力(攻撃を上回る報復を受けることが予測されるため、相手方が攻撃を思いとどまる、という抑止力)を持たない我が国としては、これを米国の拡大抑止に依存し、拒否的抑止力(攻撃を加えても所期の目的が達せられないことが予想されるため攻撃を思いとどまる、という抑止力)としてのミサイル防衛システムの実効性向上に努力しているのですが、飽和攻撃(多数の弾道ミサイルの飛来など防御側の処理能力を超える攻撃)を受けた場合など、対応しきれない事態も現状では当然想定されるのであって、あくまで自衛権行使の範囲内で相手の攻撃能力を奪うことは法理論上も当然許容されるものです。

 手段としてはトマホークなどの巡航ミサイルを保有することが考えられますが、バスやトラックを買ってくるのとはわけが違うのであって、米英の運用するこのシステムを我が国が取得できるのか、策源地の位置をどのように把握するのか等々、今後の課題は山積しています。
 防衛庁長官在任時に内々検討はしたのですが、具体化には至りませんでした。あれからもう15年が過ぎましたが、己の力不足を反省するが故に、今後の努力の必要性を強く感じています。

 核兵器禁止に反対する人はほとんどいないでしょうし、私も「核のない世界」を願っています。悲惨極まる広島や長崎の原爆資料館や当時の記録映像を見れば、そう思わない人などいないはずですが、問題はそこに至るプロセスをどうするか、核兵器の持つ絶大な懲罰的・報復的抑止力に代わる実効性ある拒否的抑止力をどのように構築するか、です。殉教的思想を持つテロ国家やテロリストに報復的抑止力は機能しない可能性が高いのであり、実効性ある拒否的抑止力の構築はなおさら必要と言わねばなりません。
 コメント欄でご紹介のあったローマ法王の「我々は核抑止力を乗り越える必要がある」との言葉は確かにそのとおりなのですが、どのようにして乗り越えるのか。我々の悩みは深いものですね。
 
 韓国は前大統領逮捕という事態に至りました。韓国では大統領の任期が一期五年に限られていることも、歴代大統領のほとんどがスキャンダルで終わることと無縁ではないのでしょう。
 大統領制と議院内閣制にはそれぞれ一長一短がありますが、国民感情が激しやすい国においては議院内閣制の方がよりリスクは低いのかも知れません。北朝鮮情勢が不穏である今の時期に、韓国がこのような情勢であることと、駐韓日本大使がいまだに帰任していないことには憂慮の念を持たざるを得ません。

 私は全く知らなかったのですが、「昨年最も読まれたWebマンガ」に選出された「四十七大戦」(泰文堂刊 一二三〈ひふみ〉作)という漫画があり、紹介して下さる方があってパラパラと読んでみました。
 帯には「都道府県擬人化 首都争奪戦バトル! 日本の首都鳥取に!?」、書き出しには「鳥取県。極東の島国日本の最果てに存在する世界でも類を見ない秘境である。不用意に足を踏み入れた者は不毛の砂漠に絡めとられ、生きては帰れないという」とあり、いくらなんでもあんまりだと思わずにはいられませんが、とにかく四十七都道府県それぞれにいる「ゆる神」様たちが首都争奪戦を繰り広げ、最後は鳥取県が日本の首都になるという奇想天外な物語のようです。相当にデフォルメされてはいるものの、各県の特色がよく描かれており、こういう地方を題材とした漫画が若い世代に多く読まれていることをとても興味深く思いました。

 週末は、日本製鋼所室蘭製作所訪問(4月1日土曜日 午前10時30分 北海道室蘭市茶津町)、ジビエ移動解体車見学(午前11時45分・中嶋神社)、自民党室蘭支部との昼食懇談会(正午・同)、自民党北海道9区支部室蘭地区政経セミナーで講演(午後1時・同・蓬莱殿エクセレントホール)。
 週明け3日月曜日は自民党沖縄第3区支部講演会にて講演(正午・ニューサンワ・沖縄県うるま市)、という日程です。北海道から沖縄まで、日本は広いですね…
 明日から4月、先週末から思いがけず寒の戻りとなっていた都心もようやく春めいてきました。
 季節の変わり目、皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年3月24日 (金)

政策集団 水月会 第2回セミナーのご案内

 事務局です。

 来たる5月9日(火) 18時00分~ホテルニューオータニ東京にて、政策集団 水月会のセミナーを開催いたします。

日時:2017年5月9日(火)
      17時00分 受付     
  〔一部〕18時00分 開会            
              講演(石破 茂)
  〔二部〕19時00分 懇親会

参加費:20,000円
     (事前にお振込みくださいますようお願い申し上げます。)

 参加ご希望の方は、石破茂事務所(FAX03-3502-5174/メールアドレスg00505@shugiin.go.jp)まで、「第2回水月会セミナー参加希望」の旨と、お名前、ご住所、お電話番号、ご職業を明記の上、ご連絡ください。ご案内状を郵送にてご送付いたします。
 お電話でご連絡いただく場合は、03-3508-7525までお願い致します。

 なお、この催しは、政治資金規正法第八条の二に規定する政治資金パーティです。

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G1サミットなど

 石破 茂 です。 
 23日木曜日に、参議院に引き続き衆議院予算委員会で籠池森友学園理事長に対する証人喚問が行われ、私も予算委員として現場で質疑を聞いておりました。
 誰が虚偽を述べているのか、証人が偽証罪にも問われる可能性のある証人喚問という場を自民党主導で設定したのですから、真実が明らかにされ、安倍総理、昭恵夫人、政府関係者が述べていることが正しいという確証を国民が持つように最大限努力するのが与党の務めでしょう。あまりにも当然のことであり、「政権の足を引っ張るのか」などと短絡的に反応するのは的外れとしか思えません。
 我々、立法府や行政府に籍を置く者は、常に納税者や消費者の立場を忘れてはなりません。今回国が負わないとした瑕疵担保責任(売買の目的物に通常の注意では発見できない欠陥がある場合に売主が負うべき賠償責任・民法561条以下)は消費者保護の観点を含むものですし、財政法は財産の共有者でもある国民や納税者の立場から「国の財産は適正な対価なくして譲渡や貸し付けをしてはならない」(第9条)と定めています。これらの趣旨からすれば、今回の一連の行政の対応は、違法ではないと思われますが、極めて異例であるようには感じます。

 21日春分の日に、久しぶりに参加したG1サミットのパネルディスカッションでは、安全保障分科会で神保謙・慶大教授、津村啓介・民進党衆院議員、小原凡司・東京財団研究員と、地方創生分科会では鈴木英敬・三重県知事、阿部守一・長野県知事、末松弥奈子・ツネイシホールディングス専務とご一緒させて頂きました。
 パネル自体はそう長い時間ではなかったのですが、核心的・本質的な議論が出来たように思います。基本的な知識を共有し、空想的ではなく現実的な議論が展開できる方々との時間はとても充実していて楽しいのですが、翻って国会は…我々は更なる努力が必要ですね。
 GIサミットの会場となったルスツリゾートは、東京ディズニーランド、ディズニーシー、ユニバーサルスタジオジャパンに次ぐリゾート施設なのだそうです。新千歳空港から車で一時間半もかかるのが難点のように思うのですが、リゾート地とは本来そういうものなのかも知れません。G1サミットは「日本版ダボス会議」を目指しているものですが、スイスのダボスがそうであるように、そう簡単には行けず帰れない地で開催し、日頃の仕事を離れて濃密な議論を行うことには大きな意義があると思います。

 今週の政策集団「水月会」勉強会は「医学の勝利が国家を滅ぼす」(新潮新書)の著者である國頭英夫・日本赤十字社医療センター化学療法科部長の「サトゥルヌス(古代ローマの農耕神。英語ではサターン。ゴヤの絵画『我が子を喰らうサトゥルヌス』は有名)」と題する講演で、とても刺激と示唆に満ちたものでした。この本は是非ご一読をお勧め致しますし、皆様のご意見をお寄せ頂ければ幸いです。
 國頭部長は本書を「里見清一」のペンネームで著しておられますが、これは山崎豊子氏の「白い巨塔」で描かれている良心的な医師・里見脩二に因むものだそうです。この小説も実に考えさせられる内容の深いものでした。

 週末は、25日土曜日が自民党石川県連珠洲支部政経セミナー(午前11時・珠洲商工会館)ならびに自民党輪島支部能登半島地震復興10周年講演会(午後2時・輪島文化会館)にて講演。
 26日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、地域交流館みほふれ愛プラザ施設見学、同竣工式にて挨拶(午前9時半・茨城県稲敷郡美浦村)、自民党兵庫県連宍粟市支部・春名哲夫県議会議員主催の講演会にて講演(午後4時・宍粟防災センター)、竜友会OB会懇親会(午後7時・鳥取市内)という日程です。
 
 東京都心は全国で一番早い桜の開花宣言となりました(標準木は靖国神社のソメイヨシノ)。満開となるのは4月1日とかで、まだとてもそんな感じではありませんが、もうしばらくするとお花見の時期となるのですね。
 まだ当選一、二回の頃、当時住んでいた九段議員宿舎近くの千鳥ヶ淵に夜桜見物に行った時のことが懐かしく思い出されます。毎年この季節になると荒井由実の「花紀行」(1975年)や麗美の「花びらの舞う坂道」(作詞・田口 俊 作曲・荒井由実 1985年)を無性に聴きたくなります。若い世代の方はご存じないかも知れませんが、とても素敵な作品です。
 来週末はもう4月、皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年3月17日 (金)

森友事案など

 石破 茂 です。
 奇怪な「森友事案(事件ではなく)」で今週も国会は混乱気味でした。火曜日の衆議院本会議における民進党議員の質問などを聞いていると、ただ感情的に絶叫するばかりで、あれでは議論は全く深まりませんし、本来の議題である物品役務相互提供協定(ACSA)には付け足し程度に触れるだけで、時間のほとんどを森友事案に費やしていたことも不見識と言わざるを得ません。
 
 本案件について、国民のほとんどは「何が何だかよく理解出来ない」というのが実感のように思われます。
 政府としては「何故今回、国は瑕疵担保責任を負わなかったのか」「ゴミの除却費用の算定をどのように行ったのか」「森友学園側が除却を適正に行ったか否かの検証はどのように行われるのか」などについてわかるように説明しなくてはならないでしょう。
 政府が「委員会ではきちんと説明している」といくら言っても、どんなに説明しても、理解が得られなくては疑問が増すばかりで、説明していないのと同じことになってしまいます。私自身、国民に対して得心のいく説明をしたいと思っているのですが、現時点でその域には達しておりません。与党議員がこんなことではいけないと自戒を込めて思っています。
 政治家の関与があったかも大事ですが、まずは一つ一つの事実の解明が優先されるべきです。政府を支える立場の与党こそがその責を負わなくてはならず、「自民党は逃げている」という印象を国民に持たれることは断じて避けなくてはなりません。
 来週23日木曜日には、衆・参の予算委員会において籠池氏の証人喚問が行われる予定です。場合によっては同氏が偽証罪にも問われる極めて効果のあるものとは思いますが、何をもってして「偽証した」と告発し得るのか、議院証言法のコンメンタールや判例の解説をよく読んでみなくてはなりません。

  私は籠池氏なる人に会ったこともありませんので論評する立場にはありませんが、私が覚える違和感の最大の所以(ゆえん)は、彼ならびに親族の不可思議な言動ではなく、「このような人が保守を名乗るのか」という一点に尽きます。
 故・江藤淳氏は著作「保守とは何か」(文芸春秋刊・平成8年)の中で「保守主義というと、社会主義、あるいは共産主義という主義があるように、保守主義という一つのイデオロギーがあたかも存在するかのように聞こえます。しかし、保守主義にイデオロギーはありません。イデオロギーがない、これが実は保守主義の要諦なのです」と述べておられますが、そのとおりだと思います。この本は自社さ連立政権時代に書かれたものですが、今読んでも示唆に満ちています。
 イデオロギーがないが故に、保守主義は奥深くかつ内省的なものであり、反中国や反韓国を唱えることが保守なのではない、というのは先般も申し上げた通りです。

 自衛隊の日報問題も、事実の早急な解明が最優先であることは論を俟ちませんが、文民統制の名のもとに政治家や官僚たちが制服自衛官たちにあまりに高圧的な姿勢で臨むべきではありません。
 実力組織は単に権威や権力で統制は出来ないのであり、法律・装備・運用・人員について可能な限りの知識を持つとともに、自衛官や家族の皆さんの共感と信頼を得る努力を最大限にすべきです。
 私自身、在任中精一杯の努力はしましたが、足らざるところは極めて多かったと反省しております。
 しかし同時に、誰が大臣であろうとも国の独立と国民の生命・身体を守るため、全力でこれを支えるのが組織というものであって、仮に感情でこれを怠るようなことがあれば、それは国家国民に対する背信行為です。
 文民統制は統制する側もされる側も、常に強い自覚と責任を持たなくては機能しないものです。
 「警察は政府に隷属し、軍隊は国家に隷属するのであり、同じ実力組織でありながら警察に文民統制の概念が存在しないのはその故である」というような論に以前接したことがあります。この論をすべて肯定は出来ませんが、文民統制の本質を含んでいるようにも思ったことでした。

 3月11日に米子市で開催した自民党鳥取県連主催「憲法改正を考える県民集会」は島根県連のご協力も得て2000名を超える方々にお集まりを頂き、ひとまずの成功を収めることができました。開催に当たってご尽力くださった安田優子県連幹事長はじめ関係の皆様に心より感謝致します。
 自民党が本当に憲法改正を目指すのであれば、47都道府県連においてこのような会を開催し、所属国会議員がその思いを述べ、広く党員から意見を聴いて理解を広げるべきです。
 憲法について議論することは国のあり方そのものを考えることに繋がります。政治の側から積極的・能動的に動かなくては憲法改正の機運など高まることはあり得ません。それもしないままに「国民の関心が薄い」などと言うのはエクスキューズに過ぎません。

 第9条ばかりが取り沙汰されますが、第6章「司法」についても改正の必要性を強く感じます。総選挙の際に最高裁判所裁判官の国民審査が行われますが、一体どれだけの人がその名前と経歴、彼らがどのような裁判においていかなる立場を採ったのかを実際に知っているのでしょうか。圧倒的多数の人が何も知らないままに不信任の×印を付けることなく投票しているというのが実態ですが、これこそ形骸化の典型ではないでしょうか。
 自民党憲法改正草案では、国民審査の方法は憲法に定めず、法律でこれを決めることとしています。
 最高裁裁判官は内閣の任命によることとなっており(長官は天皇陛下のご認証を要する)、時の内閣の意向がどうしても反映されがちになるでしょう。三権分立をより実効あらしめる観点からも、審査の方法に加えて国会の関与についても議論し、より良いものとする点があるように思います。
 これらの憲法の議論につき、15日水曜日の水月会勉強会における門山宏哲代議士(比例南関東・千葉一区)の講演やその後の質疑はとても有意義なものでした。

 週末は、18日土曜日が「石破茂君を囲む会」にて講演、その後懇親会(午前11時・リーガロイヤルホテル大阪)。
 20日春分の日は第9回G1サミット第9部分科会A「日本の防衛政策 東シナ海・北朝鮮の脅威にどう対抗すべきか」、第10部全体会「地方創生 政府・自治体・企業の役割とは」にパネラーとして出席(午前8時~ ルスツリゾート北海道 北海道蛇田郡留寿都村)という日程です。
 党役員や閣僚在任中はG1サミットにはなかなか参加できなかったので、今回はとても久しぶりです。
 
 寒の戻りで、東京都心はとても寒い日が続きました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年3月16日 (木)

イシバチャンネル特別篇「石破茂外伝」

 事務局です。イシバチャンネル特別篇「石破茂外伝」をアップロードしました。石破茂とはどのような政治家なのか、平将明代議士に語っていただきました。



ぜひご覧ください。

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2017年3月15日 (水)

イシバチャンネル第七十三弾

 事務局です。イシバチャンネル第七十三弾をアップロードしました。ダイヤ改正の季節です、寝台列車に関連する話題などです。



ぜひご覧ください。

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2017年3月10日 (金)

北朝鮮ミサイル発射など

 石破 茂 です。
 今般の北朝鮮のミサイル発射については、突然「新たな段階に入った」ものではありません。北朝鮮を中国と西側の緩衝地帯と位置づけ、当面の現状維持をよしとしている間に、時間は北朝鮮に有利に働き、今日の状況となりました。
 ロフテッド軌道で発射された場合の高速落下、多数集中発射、潜水艦からの発射、米国本土までの到達(在日米軍でもハワイでもグアムでも本質は変わりません)、それらの技術は着々と進歩しつつありますが、どのように、いつまでに、これらに対応するのかは一にかかって政治の責任です。
 すべてを国会の場で議論できるものではありませんが、巡航ミサイル、弾道ミサイル、新たな迎撃システムなどの導入の可否について徹底的な議論を行い、結論を得なくてはなりません。防衛力の造成には多大の時間と費用が掛かるのであり、乗用車やトラックを買うようなわけにはいかないことも十分に留意が必要です。
 かつて小泉内閣で、鴻池防災相(当時)が「日本がミサイル攻撃を受けたら、北朝鮮を火の海にする」というような意味の発言を委員会で行った際、当時防衛庁長官であった私は「他に手段が無い場合、策源地攻撃は法理的に否定されないが、自衛隊には現状そのような能力は与えられていない。基地の所在もわからず、空中給油能力も十分ではないままに作戦を命ずることはできない。今後、自衛隊に策源地攻撃能力を与えるかどうかは政治の判断である」との旨を答弁し、あれから15年が経ちました。
 7日火曜日に日本プレスセンターで行われた安全保障についてのパネルディスカッションに杉山外務事務次官、黒江防衛事務次官らと共にパネラーとして参加したのですが、なお課題の多いことを痛感させられたことでした。

 韓国の憲法裁判所による朴槿恵大統領の罷免は、我が国のみならずアジア・太平洋地域の平和と安全に多大な影響を与えます。60日以内に行われる大統領選挙では非保守系の候補者が当選する可能性が極めて高いと見られており、親北朝鮮政権の誕生が懸念されます。この点に関しても我が国において、中国が強く反対するTHAADミサイルの韓国配備を含む、北東アジア地域全体のミサイル防衛の実効性向上につき、精緻な議論をしていかなくてはなりません。

 私はテレビを見る時間がほとんど無いのですが、世の中は森友学園の話題で持ちきりのようです。本件は国の独立や平和には関係のない事案であり、この案件で国政が混乱することも、政府・与党が疑惑を持たれることも避けなくてはなりません。国民に「逃げの姿勢」と受けとられることのないよう、野党に指摘されるまでもなく、徹底解明する責務を有していると考えます。

 週末は、11日土曜日が自民党鳥取県連憲法改正推進本部主催「憲法改正を考える県民大会」での基調講演(午後1時半・米子産業体育館)。
 12日日曜日が第7期岡山市民大学in福山で講演。
 両日とも前後に関係者や地域の方々との会食・懇談会等が予定されています。

 党本部の指示により、各都道府県連に憲法改正推進本部が設置されましたので、鳥取県連としては広く県民に対して憲法改正の必要性をご説明し、それぞれのご意見を聞いて世論を喚起したいと思っております。地道な努力なくして憲法改正など到底出来るものではありません。
 国家主権が無い占領下において作られたものであるために、独立を守る組織たる「軍隊」についてのみならず、「国家」に関わる規定が決定的に欠けていることについてはよくご理解を頂きたく、更に努力を重ねたいと思っています。当日は東日本大震災・大津波・原発事故から6年、会は黙祷から始めます。

 先月27日に衆院で予算が通過しましたため、今週は気分的に少し余裕も出来ましたが、月曜日に高知県で全国の地方創生に携わる大学関係者の会で講演、水曜日に静岡県で地元金融機関主催の講演会など移動の多い一週間でした。
 各地に出向く度に、自分の知らない地域、知らない方々や物事があまりに多いことに気付かされます。

 先週末いわき市に向かう途中に臨時停車した水戸の偕楽園では梅が満開でした。もう桜の季節となるのですね。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
 

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2017年3月 3日 (金)

水産講演、ユニバーサル社会形成推進法など

 石破 茂 です。 
 大阪府豊中市の「森友学園」の国有地格安払い下げの件は、何とも言えない奇怪な雰囲気を感じます。国民の財産である国有地が、鑑定価格からゴミ除却費用とされる8億3千2百億円も割り引かれて1億3千4百万円で売却されることなど、一体どこで誰がいかなる権限に基づいて決めたのか。ゴミ除却にかかる費用はどのように算定され、十分にそれが行われなかったとすれば、この不当な利得はどうなるのか。学園が我が国に支払った額は僅か2百万円とも指摘されており、素朴に考えてもわからないことだらけです。

 国家権力が教育現場に過度に介入すべきでないことは当然ですが、学校教育法に「学校」として位置付けられ、教育基本法において政治的中立性が定められている幼稚園において、あまりに偏った教育を施すべきではないことは当然でしょう(「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治活動をしてはならない」教育基本法第14条第2項)。園児たちに対する教育を映像で見る限り、たいへんな違和感を覚えます。
 現政権を支持しているからよいのだという考えも一部にはあるのかも知れませんが、反対の立場に立つ教育が行われたとしたらこれを認めることには到底ならないでしょう。教育内容についての指導の権限が都道府県に降りているとしても、政府・文科省からも大阪府を通じて是正を指導するなどは考えられないのだろうかと思います。野党に言われるまでもなく、政府・与党としてこの問題の真相を明らかにするのは国民に対する責務です。

 私はかなり以前から、「保守」はイデオロギーではなく「雰囲気」であるという江藤淳氏的な考えに共感しているのですが、「保守」があたかも共産主義風に変質しつつあることには強い違和感を覚えます。中国や韓国をただ罵倒することが保守なのだとは思いません。
 保守論壇誌「諸君!」(文芸春秋・現在休刊中)や「正論」には、福田恒存氏らを中心とする静かで深みのある論説が多く載せられていたのですが、いつからか声高で強烈な主張を中心とする論説が中心となり、読む楽しみが減ってしまいました。かつて三島由紀夫は「反共に明け暮れていると段々と相手に似通ってきてしまう」と語っていたそうですが、確かにそのような面があります。
 このような時、すべての国民とすべての国々の人々に、深い慈愛のお心を持って接してこられた天皇陛下のご存在が、この上なく有り難く思われてなりません。ベトナム残留日本兵の家族のことを今回のベトナムご訪問の前にお知りになり、特に面会を希望されたというお心にはただただ恐懼するばかりです。

 先月28日火曜日、水産経済新聞社主催によるセミナーで今後の日本の水産業について講演してまいりました。長く議員を務めていますが、水産政策に絞った講演は初めてで、とても勉強になりました。
 世界第6位の排他的経済水域を有し(海水の体積では世界第3位)、寒流と暖流が交わる豊かな漁場を持つ我が国において何故水産業が衰退し続けるのか。水産業が成長産業と位置付けられる米国、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーなどとはどこがどのように違うのか。
 以前もご紹介した羽田空港内で日本初の鮮魚加工センター「羽田市場」を運営するCSN地方創生ネットワークの野本良平代表が語っている「魚が一番売れる日曜日に漁師と卸売市場が休んでいるのは消費者やマーケットを見ていないと言わざるを得ない」「年末年始や大型連休などの一年で一番稼げる時期に休むということ自体、感覚に大きなズレがある」「これからの漁業は『どれだけたくさん獲るか』ではなく『獲った一匹をいかに高く売るか』である」という言葉に本質があるように思います。
 これは農業においても同じことで、農業生産額が世界第7位である日本の農産物輸出額が、何故オランダ、ドイツ、フランス、イタリア(土地利用型農業のアメリカやカナダなどではなく)よりも遥かに低いのか。それらの各国はEU経済圏なので、日本であれば「移出」にあたるものが「輸出」にカウントされるからだ、との論にはそれなりの説得力もありますが、いずれにせよ子細な検討が必要です。

 本日の自民党内閣部会において、私が会長を務める自民党ユニバーサル社会推進議員連盟が今国会に議員立法として提出を予定している「ユニバーサル社会形成推進に関する法律案」の骨子が了承され、今後公明党、野党各党との協議に入ります。
 当選4回の時、衆議院運輸常任委員長や筆頭理事として駅や空港などの公共交通機関にエスカレーターやエレベーター等の設置を推進する「移動等円滑化法」(バリアフリー法)の策定に関わった時からの繋がりですが、当時「車椅子に乗って、羽田空港から京浜急行を使って品川プリンスホテルまで行く」という体験を実際にしてみて、障害を持たれた方々のご苦労を全く実感していなかった自分を大いに恥じたことでした。
 ユニバーサル社会とは「障害の有無、年齢等に関わらず国民一人一人が対等な社会の構成員として自立し、相互に人格と個性を尊重し合いながら支え合う社会」と定義されます。障害を持たれた方のみならず、すべての人は何らの不自由を感じることなく活動できる権利を有しており、それに応えるのが行政の義務なのですが、日本はまだそれに程遠いのが実情です。
 議連事務局長として法案作成に尽力して下さっている盛山正仁衆院議員(兵庫県第一区・近畿比例)に心より感謝しております。

 週末は、4日土曜日がいわき青年会議所3月例会で「人口減少社会と地方創生」をテーマとする講演と理事長との対談(午後4時・いわき文化センター)、自民党鳥取県連党大会参加者との懇談夕食会(午後8時・東京都内)。
 5日日曜日は第84回自民党定期党大会・懇親会(午前10時・グランドプリンスホテル高輪)、という日程です。

 2月中はずっと体調が悪くて辛い日々が続き、多くの方にご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。ようやく少し回復してきましたので、気分を入れ替えて臨みたいと思います。
 3月に入り、今日はお雛祭りとはいうものの、都心は風の冷たい日々が続いています。
 皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

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