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2017年5月26日 (金)

憲法改正、与謝野先生ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨25日金曜日の前川喜平前文部科学事務次官の会見で、加計学園の今治市への獣医学部新設問題は新たな局面を迎えているように見えますが、問題の核心は以下の通りと考えています。
 すなわち、私が国家戦略特別区域担当大臣であった平成27年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」において示された、
「①既存獣医師養成でない構想が具体化し
②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり
③既存の大学・学部では対応が困難な場合
④近年の獣医師需要動向も考慮しつ
全国的見地から本年度内に検討を行う」
との、4条件ブラス「全国的見地」に適合する公正・公平な決定であったかどうか、それが問われるべきであり、政府はこれを明確に立証すればよいのです。4条件が満たされ、全国的見地から必要とされれば、提案主体がどこであろうと認めなくてはなりませんし、その逆もまた然りです。これは広島県と今治市を国家戦略特区として3次指定した際の同年12月15日の閣議後定例記者会見で担当大臣として申し上げていることであり、ご関心のある方はそちらをご参照くださいませ。

 報道や伝聞でしか知りませんが、憲法改正について自民党内にどのような組織を作るかについて水面下で様々な動きがあるようです。
 自民党では平成17年11月に「新憲法草案」を、平成24年4月に「日本国憲法改正草案」を、侃侃諤諤の議論の末に取りまとめて党議決定し、政権復帰後、衆・参それぞれ2回の国政選挙においてこれを掲げて国民の審判を受けています。
 もちろん、これらは絶対ではありませんし、今後の議論や修正の余地も多分にありますが、これを弊履のごとく捨て去ろうとする姿勢が党内にあるのであれば、それには強い違和感を覚えます。
 「日本国憲法改正草案」の策定後に議席を得た自民党議員が全体の約半数にもなるのですから、まずこれをベースとして、どのような過程でこれが作成されたのかを丁寧かつ濃密に検証することが作業のスタートになるはずです。「時間が無い」「そのような作業は手間がかかる」として改正案作りに関わるメンバーを限定し、作業を簡素化して年内に案を作ろうとするのであれば、将来に禍根を残すことにもなりかねません。

 あらゆる法規範の頂点に立つ日本国憲法に真摯に向き合わないとするならば、すべてにおいてその姿勢は誠実を欠くということになると私は思います。
 天皇陛下のご生前ご譲位の議論の際も、「皇室典範の改正には手間がかかるのだから、チャチャッと特例法でやるべきだ」と、大意そのような発言をテレビでしていた方を見て愕然としたものでしたが、憲法においてもそのような発想は断じてあってはなりません。
 問われているのは自民党の真剣で断固たる姿勢ではないのでしょうか。党本部8階には所属議員全員を収容できるホールがあるのですから、そこで毎週一回でも全議員を対象とした勉強会を開催することによって自民党議員の理解は深まりますし、何よりもそのことが「自民党の本気度」を示すことになります。ただ野党を批判してばかりいても自民党自体は全く向上しません。「民進党よりはまだマシだから」ではなく「自民党が良いから」を支持理由に挙げて頂くための努力が更に必要です。

 一部報道でしか総裁の考えを窺い知ることは出来ませんが、第3項を加えるか、9条の2というかたちにするか、いずれにしても議論の焦点は
・「国民の多くがその存在を肯定している自衛隊を憲法に書き込む」という現状追認型の憲法改正とするのか(それでも現第2項との論理的整合は極めて困難と思われます)
・独立国とは何か、それを守る組織とは何か、同盟とは何かに至るまで、国の根幹を問い直す憲法改正とするのか
であるべきではないのでしょうか。
 確かに国民は政治家を信じてはいないでしょう。しかし政治家が「どうせ国民にはわからないから」という態度で国民に真剣に向き合わないのなら、政治家の側も国民を信じてはいないことになります。国民を信じていない政治家が、国民に信じてもらおうなどと甘いことを考えてはなりません。政治すべてにおいて、我々は主権者たる国民に対して常に畏れと怖れの気持ちを持つべきなのだと自戒しております。

 憲法についてはよくわからない、という方もおられると思いますが、「憲法のことがマンガで3時間でわかる本」(津田大愚著・明日香出版社・2006年)は、マンガの体裁をとりつつも、かなり深い内容を平易に解説している好著です。あまりに多くの文献を読んで頭が混乱した時に、このような本はとても有益です。

 今週移動中に目を通した本の中では「フランスはどう少子化を克服したか」(高崎順子著・新潮新書)から多くの示唆を受けました。1980年代に合計特殊出生率が1・4前後にまで低下していたフランスは、現在2・0前後にまで回復しているのですが、単に婚外子を認めたり、移民を受け入れたりしたことだけが回復の理由ではないことがよくわかります。
 日本でそのままフランスの政策を導入することは困難だとしても、検討し、採用すべきものも多くあると考えます。

 官房長官や財務大臣、自民党政調会長などを歴任された与謝野馨先生が逝去されたことは、極めて残念です。私利私欲を持たず、一貫した姿勢で財政健全化などの政策の実現に尽くされたお姿は、政治家のあるべき理想像の一つでした。
 平成20年9月、福田康夫総裁の辞意の表明を受けて急遽行われた総裁選で候補者としてご一緒し、麻生内閣でも共に閣僚を務め、その憂国の情とバランスのとれた政治姿勢に深い感銘を受けました。野党時代に離党されることなく、自民党再生のためにご尽力いただくことを望んでいたのですが、ご自身に残された時間が少ないことを悟られて政策実現に邁進されたかったのでしょう。
 東日本大震災発災直後、大連立を呼びかけるお電話を頂いたこともありました。「それならばまず政策協議から始めましょう。外交や安全保障政策について最低限の一致が無いままの、震災対応のためだけの連立などあり得ません」と政調会長を務めていた私はお答えしたのですが、それきりご連絡はありませんでした。

 総裁選の最終日は、雨の降る横浜での最後の合同街頭演説会でした。登壇を待つ街頭宣伝車の車中で「石破さん、今日は孫が聞きに来ているんだよ。少し私のことを褒めてくれないかな…」と与謝野先生は照れたように仰いました。
 総裁選を通じて先生のお人柄に敬服していた私は、さりげなく、でも心を込めて、先生を褒める言葉を自分の演説の中に織り込みました。あの時の先生のお顔が今も鮮やかに蘇ります。
 本当に立派な、素敵な方でした。御霊の安らかならんことを心よりお祈りいたします。

 先週は建築板金業者全国大会が茨城県ひたちなか市で、日本左官業組合連合会の創立80周年記念大会が東京で開催され、振興議員連盟会長として出席し、昨日は日本鳶工業連合会の全国大会の後、鳶工業議員連盟が設立され(鴨下一郎会長)、夕刻には全国建設クレーン業協会の全国総会で顧問として祝辞を述べて参りました。
 建設・建築の第一線で活躍されている業界の方々の総会のシーズンなのですね。どの業界も人手不足、後継者難、法定福利費など共通した課題を抱えており、その解決のために我々は尽力しなくてはなりません。
 額に汗して働く人々が報われる社会、というのは決して革新政党だけのスローガンなのではありません。

 週末は、27日土曜日が自民党鳥取県連総務会(午前10時・倉吉体育文化会館)、自民党鳥取県連定期大会(午前11時・同)、ボーイスカウト日本連盟平成29年度全国大会鳥取大会開会式(午後1時・とりぎん文化会館・鳥取市)、鳥取県中部1市4町議員の会勉強会で講演とその後の懇親会(午後3時・倉吉シティホテル)。
 28日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、自民党衆議院茨城県第1区田所よしのり発信大会で講演(午後2時・水戸プラザホテル)、田山東湖茨城県議会議員県政報告会で講演(午後5時半・大洗町文化センター)、という日程です。
 大洗町は井上靖の「大洗の月」という短編小説を読んで以来、一度行ってみたかった町です。最近は漫画「ガールズ&パンツァー」で有名なようですが…。

 昨日までの暑さとはうって変わって、今日の都心は肌寒い雨模様です。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年5月23日 (火)

イシバチャンネル特別篇「石破茂外伝2」

 事務局です。イシバチャンネル特別篇「石破茂外伝」をアップロードしました。石破茂とはどのような政治家なのか、山下貴司代議士に語っていただきました。

ぜひご覧ください。

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2017年5月19日 (金)

ICBMなど

 石破 茂 です。
 連休中の安倍総裁の憲法第9条「加憲」発言に加えて、14日日曜日早朝には北朝鮮のロフテッド軌道によると思われる「新型」ミサイル発射があり、今週はいつにもまして慌ただしい日々が続きました。
 ミサイル防衛については「ロフテッド軌道」「コールド・ローンチによる発射」「装軌式TEL(テル。電話ではなく、輸送起立発射機のこと)」「SM-3ブロック2A迎撃ミサイル」等々、一般の方々には馴染のない専門用語が飛び交い、これに法律用語が加わりますので、テレビなどでなるべくご理解いただけるように話すのはかなり難しいことで、わかりやすく話すように努めるあまり正確性を欠くことがあってもなりませんし、それなりに苦労の連続です。
 着弾精度に劣るロフテッド軌道で発射したことには、ロフテッドそれ自体に意味があるのではなく、長距離を飛翔させる能力を示す意図があったのかも知れませんが、いずれにせよ技術が確実に進化しつつあることだけは事実です。

 ここで我々はもう一度、ICBM(大陸間弾道弾)という兵器の持つ意味を考えてみなくてはなりません。
 人工衛星もICBMも原理は同じものですが、射程1万キロのICBMは、長距離を飛翔した後に大気圏に時速マッハ24で再突入し、その時の表面温度は摂氏7000度にもなります。これに耐えて正確な角度で弾頭を落下させるためには相当に高度な技術を必要とするのであって、未だ北朝鮮はその技術を会得していないものと思われます(ちなみに米国・旧ソ連ともに、核爆発とICBMの実験は何度も行ってきましたし、米国は今もICBMのテストを頻繁に行っていますが、両者を組み合わせた実験は一度も行われていません)。
 つまり、米国は未だ北朝鮮のICBMの脅威には直面しておらず、北朝鮮が韓国を攻撃する際にはロケット砲や地対地ミサイルなどで十二分に事足り、我が国はノドンなどのIRBM(中距離弾道弾)の射程にかなり以前から国土のほぼ全域が入っている、というのが現状です。日本、米国、韓国の三か国が緊密に連携して、という表現が常套句のように使われ、それは確かにその通りなのですが、三か国の置かれた状況は全く異なるのですから、それぞれの脅威認識の相違を念頭に置いたうえでの協議でなければ、一致した対応が困難になりかねないことを危惧しています。
 米国まで届くICBMを保有し、体制の保障などの要求をのませるのが北朝鮮の狙いだと考えられますが、これは「この子の命が惜しければ言うことを聞け」という誘拐犯の手法と何ら変わらず、絶対に認められるものではありません。

 いつも申し上げることですが、拡大抑止もミサイル防衛システムも決して万能ではありません。これらに加えて国民保護や民間防衛のシステムを構築しなければならないのですが、我が国の人口あたりの核シェルターの普及率は、スイスの100%、ノルウェーの98%、アメリカの82%、イギリスの67%、シンガポールの54%などに比べて三桁少ない0・02%というのが現状です。この数字はNPO法人日本核シェルター協会の資料によるものですが、「やりっぱなしの行政・頼りっぱなしの民間・全然無関心の市民」という地方創生が失敗する際の原則は、安全保障でも当てはまるようにも思われます。

 憲法第9条の議論がにわかに活発になりつつありますが、「集団的自衛権行使の範囲」や「専守防衛の意義」が大きな論点になるはずです。集団的自衛権についてはすでに何度も言及しているので繰り返しませんが、専守防衛についてもこの際徹底した議論が必要です。
 専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けた時にはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度に限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」(防衛白書)と説明され、私自身も何度か国会でそのように答弁してきましたが、これがあらゆる防衛戦略の中で最も難しいものであることがどこまで国民に理解されているのでしょうか。
 専守防衛は基本的に国土が戦場になることを想定しているいわゆる「籠城戦」的な戦略ですが、これが成功するためには「強い国民の意思」「堅固な守りの体制」「十分な兵糧・弾薬・人員」「国土の縦深性」「味方来援の確実性」の5つの要素が必要となります(野口裕之氏の所論による)。専守防衛に徹するなら、この確保に全力を注がなければならないのであって、ただひたすらにこれを唱えていればよいというものではありません。
 「決して他国の脅威とならない」とのフレーズもよく使われますが、脅威とは意図と能力の掛け算の積なのであって、決して他国を侵略しないという国民の強い意志があればその積は零なのであり、能力向上を怠ってよいことには決してなりません。

 14日日曜日に訪問した福岡県うきは市の取り組みには、とても勇気づけられました。他の地域からうきは市に移住した方々が「本当にここはよいまちだ」と口々に言われていた姿がとても印象的で、RESAS(リーサス)システム(地域経済分析システム)を率先して活用してこられた高木典雄市長をはじめとする皆様の真摯な姿勢に心から敬意を表します。
 敬愛する岡山県真庭市の太田昇市長が再選されました。27年の合計特殊出生率が全国トップレベルの2.21に達するなど確実に成果をあげておられます。市長は「まだ緒についた段階」と言っておられますが、全国各地で着実に地方創生を実践しておられる市町村長さんにお会いできることはとても嬉しいことです。

 週末は、20日土曜日が公益社団法人オイスカ(The Organization for Industrial, Spiritual and Cultural Advancement)「名取市民の森平成29年度植樹祭 海岸林再生プロジェクト10か年計画」開会式でオイスカ活動促進議員連盟会長として挨拶、植樹(午前9時・宮城県名取市市有林)、その後徳島県市町村長との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル)、福山守衆議院議員地方創生フォーラムにて講演(午後5時・同)、祝賀懇親会(午後6時・同)。
 21日日曜日は自民党埼玉県衆議院第12選挙区支部大会にて講演(午後4時・熊谷流通センター組合会館)、同懇親会(午後5時半・熊谷市内)、という日程です。

 5月も後半となりました。時々爽やかな初夏の日和となり、ほんのつかの間の楽しさを感じることもあった一週間でした。
 もうすぐ梅雨入り、荒井由実の「雨の街を」(1973年)が似合う季節となりますね。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年5月12日 (金)

加憲案など


 石破 茂 です。
 5月3日の憲法記念日に、民間団体が主催する憲法改正フォーラムにおいて安倍総裁が「憲法第9条に新たに第3項を加えて自衛隊の存在を憲法上明確にしたい」旨発言し、同趣旨は当日の読売新聞朝刊にもインタビューに答える形で表明されました。
 このようなご発言は本来、3月5日に開催された自民党大会において自民党総裁として表明して頂ければもっと良かったと思いますし、一民間紙ではなく党の機関紙である「自由民主」に掲載していただければ良かったと思います。
 
 憲法改正、なかでも第9条に関する議論が遅々として進まないのは、肝心の自民党内における意思統一が十分になされていないことも大きな原因だと考えています。憲法改正が立党の原点であり党是でもある自民党においては、長い議論を経て平成17年に「新憲法改正草案」を取りまとめ、更に手を加えて野党時代の平成24年に「日本国憲法改正草案」を決定しているのであり、あくまでもこれが議論のベースとなります。
 もちろんこれは完全なものではありませんし、修正の余地も多分にあると私自身も思いますが、まずは憲法改正を発議する国会を構成する自民党の国会議員全員がこれを正確に理解し、改めるべきは改めて党議決定し、他党の理解を求め、国民投票を行う国民に説明できるまでにならなくて、憲法改正が出来るとは思えません。我が国の最高法規である憲法についての議論を疎かにする政党は、国家の将来について真摯であるとは言えません。

 かつて自民党においては、多くの課題を巡って侃侃諤々たる議論がありました。まだ米価が政府決定であった頃は幾晩も徹夜で議論したものでしたし、湾岸戦争勃発時に日本国がなすべき活動についても、小選挙区制導入を柱とする政治改革についても、賛成・反対、様々な立場から多くの議員が参加して大激論が交わされ、議論に負けないように必死で勉強し、それが党の活力であったように思います。
 今の自民党は、残念ながらその雰囲気が薄れてしまった気がします。党大会・両院議員総会に次ぐ、通常時の最高意思決定機関である総務会においてすら、「今日は石破総務が発言しなかったので早く終わってよかった」(総務会メンバーの発言。5月10日付毎日新聞報道による)というように、議論そのものを敬遠する空気が広がっている気がします。

 20年以上前の政治改革論議の際、「小選挙区にして党中央に権限が集中すれば、議員たちは党幹部の顔色を窺い、発言しなくなる」との指摘を受けて必死に反論したものですが、小選挙区制を採用している国すべてがそうなのではありません。

 「仮に自民党内がまとまっても、それだけでは衆・参両院それぞれにおいて総議員の3分の2の賛成は得られない。政治は現実であり、結果を得ることこそが大事なのだから、最も多数の賛成が得られる案として、現行憲法第9条第1項と第2項をそのまま残し、自衛隊の存在のみを3項に加えてはどうか」という考え方であるとせば、第3項として「日本国の独立を守り、地域ならびに国際社会の平和の維持に寄与するため、陸・海・空自衛隊を保持する」と規定するのが最も現実的な案のようにも思われますが、そうであったとしても第1項、第2項との論理的整合性をどう確保するかに解を出さなくてはなりません。

日本国憲法第9条第1項
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
*国権の発動たる戦争:最後通牒を発し宣戦布告を行うことによって開始される正規の戦争のこと。国連憲章は自衛権の行使と集団安全保障による以外の一切の武力行使を禁じているので、今日的な意味は乏しい。
*武力による威嚇又は武力の行使:最後通牒も宣戦布告も伴わないが、事実上行われる戦争のこと。
*国際紛争を解決する手段としては:侵略のための武力行使は認められないが、自衛のための武力行使は認められる、との意味。

同第2項
「前項(第1項)の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」
*陸海空軍その他の戦力:自衛のための必要最小限度を超えるもの。
*国の交戦権:「戦争をする権利」ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称(例えば人を殺傷し物を破壊しても殺人罪・傷害罪・器物損壊罪に問われない、正規の交戦者は捕虜となる資格を持つ、など)。自衛のための必要最小限度の範囲内のものは認められる。

 政府見解を注意書きしましたが、これを外して文言のみを素直に読めば、第1項で自衛のための武力行使は認められているものの(このような書き方は他国の憲法にも例がみられます)、第2項において実力としての軍は保有しないのだから、他国から侵略を受けた際は国民一人一人が、捕虜としての待遇も受けられず、惨殺される覚悟で戦う他はない、ということになります。
 憲法前文で「日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意した」ことになっているのですから、信頼が裏切られたらそうなる他はないということなのですが、それではいくら何でも酷かろう、ということで衆議院憲法改正特別委員長であった芦田均が「前項の目的を達するため」という「芦田修正」を加え、第66条に文民条項も付け加えて、将来的に実力組織(陸海空軍)を保有する余地を持たせた、というのが歴史的経緯として伝えられています。
 しかし、吉田茂総理はこれに全く言及せず、安倍総理も「政府として芦田修正の立場は採らない」旨明言し、自衛権は国家固有の権利であるとしています。
 吉田総理は、将来的に全面改正をすることを念頭に、中途半端な文言を付け加えるような対応を忌避したのではないかと推測されますが、その立場を維持する限り、第2項をそのままにして第3項に自衛隊の存在を明文化すれば論理的整合性を欠くことになり、今の矛盾を憲法で固定化してしまうことにもなりかねません。

 いつも申し上げることですが、日本国憲法が作られた時、連合国の占領下にあった日本国は国家主権を持たず、独立国家ではありませんでした。従って「国の独立を守る」ことを主たる任務とする軍隊の存在が規定されていなかったことは極めて自明のことなのであり、サンフランシスコ条約発効により独立を果たし、国家主権を回復したからには、「軍」の存在を明確に規定するために、論理的整合性をもたせて前文や第9条の改正を行うことは理の当然です。これは右とか左とかいった立場の相違などとは全く関係がないはずです。
 このような経緯を丁寧に説明して、それでもなお理解が得られなければどうしようもありませんが、最初から「どうせわかるはずがない、できるはずがない」と決めてかかってはならないのではないでしょうか。

 天皇陛下のご譲位についても、この19日にも閣議決定がなされると報道されています。世論調査によって国民の7割近くが「今上陛下ご一代限りではなく、恒久的な制度とすべきだ」と考えていることとどのように整合しているのか、これを明らかにする責任が自民党にはあるはずですが、本日午後2時より急遽開催された自民党の会議において、政府は私の問いに答える形で、衆参正副議長による議論の取りまとめにおいて示された「このような法形式をとることにより…これが先例となって、将来の天皇の退位の際の考慮事情としても機能し得る」との文言が生きていることを言明しました。この趣旨を来週23日の総務会で確認するとともに、法案審議における議論も注視していきたいと思います。

 9日火曜日に開催した政策集団水月会の講演とパーティは、当日同時刻に衆議院法務委員長解任決議案を取り扱う本会議が開催されるなどの突発事態のために綱渡り的な運営になったものの、おかげさまで2200名様ものご参加を頂いて、なんとか無事に終えることができました。誠に有り難うございました。相変わらず報道は政局的な見方しかしてくれませんが、時節柄致し方ないのでしょうね。

 週末は13日土曜日が「石﨑とおる衆議院議員パパママこども会」(午前11時・新潟ジョイアミーア)、自民党衆議院新潟4区支部「党勢拡大 地方創生を語る会」にて講演・懇親会(午後1時・ホテルオークラ新潟)、帆苅謙治新潟県議会議員在職30周年記念講演会で講演・祝賀会(午後3時・ANAクラウンプラザ新潟)。
 14日日曜日は道の駅うきは視察(午後2時・福岡県うきは市)、うきはビジネスカフェ視察(午後3時・同)、日本青年会議所九州地区福岡ブロック協議会第45回大会で講演(午後4時20分・うきは市文化会館)、という日程です。

 今週は、まるで夏のような天候の日々となりました。皆様ご自愛の上、お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年5月 4日 (木)

村本さん、堀さんと

事務局です。昨日収録したテレビ大阪「わざわざ言うテレビ」ウーマンラッシュアワー村本さんと、堀潤さん との写真です。場所はいつものつるのやさんです、ありがとうございました!
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