石破 茂 です。
愛媛県今治市の国家戦略特区に指定された加計学園の獣医学部新設についての議論が続いています。
「従来の岩盤規制にドリルで穴を開けるものであり、誰も私のドリルから逃れることは出来ない」と安倍総理がその意気込みを語る国家戦略特区なのですから、加計学園についても、その意義が世の中に広く理解されなくてはなりません。これを説明し、国民に納得していただくことが政府の責任であり、「何かやましいところがあるのではないか」などと言われることは国家戦略特区制度の今後の進展のためにもなりません。
獣医学部・学科の新設は52年間行われてきませんでした。それにはそれなりの理由があったのでしょうが、「既得権を守る岩盤規制」であるとの批判もありました。
さればこそ「(感染症や生物化学兵器に対する対策など)従来にはない新たなニーズが生じている」「新設を希望する法人にはこれらに対応するに足る教育内容と教授陣・教育施設が用意されている」「全国に16校ある既存の国公立・私立の獣医学部・学科ではこれらに対応できない」「獣医の需要と供給に配慮し(ペットの獣医は充足されているのに対し産業用動物の獣医は著しく不足しているが、これは産業用動物の獣医の処遇が低いことが原因と思われる)、(一部の地域のみが利益を受けるのではなく)全国的見地から必要と認められる」という4つの条件をクリアすれば、大学設置審議会においても開学が認可されるべきものでしょうし(ただ大学設置に関してはそれ以外の一般的な条件もあります)、逆もまた然りです。
この問題は、何時までも引きずるべきものではありません。政府の明確な対応が望まれる所以です。
自民党憲法改正推進本部の陣容が強化され、私も顧問として幹部会に出席することとなりました。改正項目を絞り込み、発議案を遅くとも年内を目途に作成する方針が保岡本部長より示されました。そうであるなら、この議論はよほど濃密かつ丁寧に進めなくてはなりませんし、党所属の全議員に発言の機会が保障されなくてはならないと思います。
第九条の改正については、既に読売新聞(2004年)と産経新聞(2013年)から改正試案が発表されており、これらは両社の社論ともいうべきものなのでしょうから、起草された方々から意見を伺うことは極めて有益なことと思います。現行憲法第9条関係のものを見てみると、次のようにあります。
【読売新聞 憲法改正試案】
第11条(戦争の否認、大量破壊兵器の禁止)
(1) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2) 日本国民は、非人道的な無差別大量破壊兵器が世界から廃絶されることを希求し、自らはこのような兵器を製造及び保有せず、また、使用しない。
第12条(自衛のための軍隊、文民統制、参加強制の否定)
(1) 日本国は、自らの平和と独立を守り、その安全を保つため、自衛のための軍隊を持つことができる。
(2) 前項の軍隊の最高指揮監督権は、内閣総理大臣に属する。
(3) 国民は、第一項の軍隊に参加を強制されない。
第13条(理念)
日本国は、地球上から、軍事的紛争、国際テロリズム、自然災害、環境破壊、特定地域での経済的欠乏及び地域的な無秩序によって生じる人類の惨禍が除去されることを希求する。
第14条(国際活動への参加)
前条の理念に基づき、日本国は、確立された国際機構の活動、その他の国際の平和と安全の維持及び回復並びに人道的支援のための国際的な共同活動に、積極的に協力する。必要な場合には、公務員を派遣し、軍隊の一部を国会の承認を得て協力させることができる。
第15条(国際法規の遵守)
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する。
【産経新聞 「国民の憲法」要綱】
第15条(国際平和の希求)
日本国は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国が締結した条約および確立された国際法規に従って、国際紛争の平和的解決に努める。
第16条(軍の保持、最高指揮権)
国と独立と安全を守り、国民を保護するとともに、国際平和に寄与するため、軍を保持する。
2 軍の最高指揮権は、内閣総理大臣が行使する。軍に対する政治の優位は確保されなければならない。
3 軍の構成および編成は、法津でこれ定める。
ニュアンスの違いはあるものの、どちらも「交戦権否認の削除」「国の独立を守るための軍の保持」「条約と確立された国際法規に基づく軍の行動」「総理大臣の最高指揮権の保持」という点においては共通しています。
起案したメンバーはおそらく従来の伝統的憲法学者ではなく、国際法や防衛に通暁した、現実を直視する方々と思われますが、まともに考えれば、おおむねこのような結論に到達するのではないでしょうか。
読売の担当記者諸兄姉はまずこれを理解すべきでしょうし、産経新聞も同様です。
「第3項加憲」という発想は、日本政策研究センターの伊藤哲夫代表が最近の講演の中で「あくまでも目指すのは欠落部の補充であり、3項加憲という奥の手がある」と述べられていることと軌を一にすると思われます。
「第1項はもちろん、第2項も残します。解釈も一切変えません。自衛隊の存在だけを憲法に書き加えるのだから異論はないでしょう?」ということなのでしょうし、これなら国民も賛成するであろうとの意図かと考えますが、国際環境が激変する今こそ、第9条自体が内包する矛盾を解決すべき時であるのに、わざわざこれを憲法上固定化してしまうという考えのように思われ、私には現在のところ理解できません。
私もかつては憲法について突き詰めて考えることはなく、漠然と第9条は改正すべきであると考えていた程度に過ぎませんでした。考えが変わったのは、佐瀬昌盛先生(元防衛大教授)や故・小室直樹博士、色摩力夫先生(元駐チリ大使)の一連の著作を読んでからのことで、事の重大性に気付かされるとともに、自分の考えの足らなかったことを深く反省したことでした。
色摩先生は最新刊「日本の死活問題 国際法・国連・軍隊の真実」(グッドブックス刊)の中でこの問題を簡明に論じておられます。ご一読をお願い致します。
週末は、10日土曜日が自民党鳥取県連青年局・女性局平成29年度合同大会(午後2時・倉吉シティホテル)、日本柔道整復師会鳥取大会開会式・懇親会(午後7時・ホテルモナーク鳥取)。
11日日曜日は集落活動センター「いしはらの里」見学(12時半・高知県土佐郡土佐町)、高知県集落活動センター連絡協議会で講演・懇親会(午後3時・三翠園・高知市鷹匠町)、という日程です。
入っている日程自体は少ないのですが、移動距離や時間が矢鱈と長いようです。
六月も半ばとなりました。30日は1年の折り返しの行事である夏越の祓の日です。このような日本の風習は大事にしたいと思います。
皆様お元気でお過ごしくださいませ。