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2018年6月29日 (金)

長野祐也先生ご逝去など

 石破 茂 です。

 27日の党首討論は、前回5月の討論後に枝野立憲民主党代表が「党首討論はその歴史的使命を終えた」と述べたことに対して、安倍総理が同様の発言をする、という不可思議な展開となってしまいました。
 極めて限られた時間にも関わらず、互いが延々と自説を述べあうことになっては、討論にはなりません。それを「歴史的使命を終えた」などと言ってしまうと、運用を間違えて本来の機能が発揮できていないのに、それを制度のせいにしてしまうことにもなりかねません。
 党首討論は正式には「国家基本政策委員会」という名称なのですが、国家の基本政策があのような短時間で論じられるはずもないのですし、討論を仕切る委員長には議歴を重ねたベテランが就任しているのに、単なる開会と閉会の宣言役となってしまっており、議論をリードするという本来の役割を発揮できておらず、討論になりようがありません。見ている国民が、ますます政治への関心や共感を低下させるという悪循環に陥らないかと心配になります。
・党首討論の回数と時間を増やし、視聴者が見やすい時間帯に行なう
・代わりに予算委員会など各種委員会への総理の出席を減らす
・テーマを予め設定する(「外交政策」などという漠然としたものではなく「朝鮮半島情勢と日本の対応」といった具体的な国民の関心事に絞る)
・委員長が強い権限を持つ(委員長は中立・公平な立場にあって議論をリードし、互いに延々と自説を述べるようなことをさせない)
などの工夫により、党首討論は本来の役割を果たすことが出来ると考えます。与野党ともに、国民に向き合い、語り掛け、互いの足らざるところを改めるという議会本来の役割をよく認識しなくてはなりません。
 九月に予定されている自民党総裁選においては、政治に向かう基本姿勢、政策、党の在り方などについての堂々たる論争、単なる言いっ放しではない真のディベートが展開されなくてはならないと思います。

 この度、日本・アラブ首長国連邦(UAE)友好議員連盟の会長に就くことになりました。テロ特措法に基づきインド洋に海上自衛隊の補給部隊を派遣した際、何度か訪問したご縁によるものかと思います。
 面積は北海道とほぼ同じ、人口は約450万人、日本は原油の四分の一を依存し、自動車や電気製品を輸出するという関係ですが、英・仏・米・中などに比して人的交流はなお希薄な状態が続いています。
 もともと関係の深いイギリスは士官学校に王族を多く迎え入れ、フランスはソルボンヌ大学の分校とルーブル美術館の分館を設置し、ルクレール戦車とコルベット艦を輸出、最も多くの留学生を受け入れているアメリカは同国にアメリカン大学を設置しF-16戦闘機を輸出、中国は大量の労働者を派遣しています。
 日本が採れる政策の選択肢の幅は狭いのですが、中東で比較的政情が安定し、親日的で、西アジアの安全保障などにおいて国益が共通するUAEとの連携強化のため、尽力してまいります。

 竹下内閣において厚生政務次官を務められ、議員引退後は政治評論家として活躍された、元衆議院議員 長野祐也先生が膵臓がんのため逝去されました。享年78。
 私の初当選以来、議員ご在職時も、引退されてからもとても暖かいご配慮を頂いてまいりました。当選一回生の時、海のものとも山のものともわからない私に対して物心両面にわたってお助けいただいて以来、その関係はご逝去になるまで変わることがありませんでした。
 中央大学御在学中に全国学生弁論大会で三年連続優勝された、他の追随を許さない弁舌で正論を唱えられ、先見性と、弱きを助け強きを挫く気概を持たれた素晴らしい方でした。
 ラジオ日本で20年近く続く「政界キーパーソンに聞く」という番組を持たれ、5月23日議員会館にお越しになり、討論させていただいたのが最後となってしまいました。随分と面変わりされ、ご病状がただごとではないことが察せられたのですが、番組冒頭の「政治評論家の長野祐也です!」という張りのあるお声はいつもと変わらず、この番組にかける先生の鬼気迫る情熱を感じました。
 結局私とのこの討論が番組の最終回となってしまいました。ご生前に賜りました幾多のご厚情に深謝し、御霊の安らかならんことをひたすらお祈り申し上げます。

 週末は講演や懇談のため、青森県へ参ります。
 関東甲信地方は本日、平年より22日早く梅雨明けとなり、真夏の日差しが照りつけています。関東甲信が6月に梅雨明けするのは統計を取り始めた1951年以来初めてとのことで、暑くて長い夏が始まります。
 皆様ご自愛の上、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年6月22日 (金)

国会延長など

 石破 茂 です。

 国会は7月22日までの延長となりました。IR法案はなお国民の多数の理解を得るに至っておらず、参議院においてなお丁寧な説明が必要です。
 幹事長在任中、IR(統合リゾート)の視察にシンガポールに行った際、「カジノ自体が目的ではなく、そこで得られた収益で国際展示場や国際会議場の利用料を下げ、誘致を促進することが目的」と力説され、その収支計算が精緻であったことと、不正行為や常習者対策が徹底して行われていたことが極めて印象的でした。
 日本においてそれらの課題にどのように対応しているのか、それなりの対応は当然講じられているはずで、政府の更に誠実な説明が必要です。

 加計学園の理事長が会見されたことは一歩前進でしたが、その目的は会見すること自体ではなく、この問題に対する国民の疑問を払拭し、納得を得ることにあったはずで、大阪での震災翌日、わずか2時間前の通告、岡山の記者クラブ対象という手法は、本当にその目的を達成するために最善であったかどうか、もっと工夫の余地があったように思われて残念でなりません。本来国家戦略特区の閣議決定に明示された条件を満たしてさえいれば当然に認可されるべきものであり、策をあれこれ弄する必要など無かったはずです。

 米朝首脳会談から日が経過し、その構図が明らかになりつつあります。金正恩委員長にとって大切であったのは「核放棄のプロセスの間、米国は北朝鮮を攻撃しない」という「安全の保障」が、トランプ大統領は「朝鮮半島における米軍の駐留負担の軽減と北朝鮮の経済発展に対する米国の関与」が最も大事であったとすれば、両者の思惑は見事に一致していたように思われます。

 そもそも「体制の保証」などどの国にも出来ることではありません。ロシアから分離独立したウクライナの体制を、核を放棄することを条件に、米・露・英、後には仏、中も共に保証した「ブダペスト覚書」がプーチン大統領によって反故にされたことを金委員長は熟知していたはずですし、おそらく彼はトランプ大統領に、北朝鮮のカジノ開発に米国企業が参加出来るようにする、というようなことも囁いたのではないでしょうか。

 日本はこの後どのように対応すべきなのか。決して気を緩めることなく防衛力を着実かつ早急に整備することと併せて、日韓基本条約(1965年)、日朝平壌宣言(2002年)、ストックホルム合意(2014年)などを精緻に点検し、拉致問題も含めて国際法的な立場を今一度確認し、今後の交渉力を高めていかなくてはなりません。
 更に、将来的に朝鮮国連軍が解消された場合、英国をはじめとする米国以外の10か国が在日米軍基地の使用することを可能とする「朝鮮国連軍地位協定」はその根拠を失うのであり、これは我が国の安全保障に重大な影響を与えることにもなりえます。
 これらの問題の多くは政府が「憲法上行使不可能」としてきた集団的自衛権と密接に関わります。私自身は、何度も申し上げている通り、集団的自衛権行使の態様は憲法解釈から導き出されるものではなく、あくまで政策判断であり、行使の態様は安全保障基本法で制約し、我が国の外交・安全保障の選択の幅を広げることが論理必然であるとともに国益に適う、との立場ですが、今後この問題は我が国に重くのしかかってくるに違いありません。その場しのぎの対応は必ず将来に禍根を残すものと思い、なお努力を重ねてまいります。

 先週の早稲田大学大隈塾、今週の東京・新代田の学生さんのシェアハウス「アオイエ」での講演とそれに続くディスカッションはとても内容の濃いもので、こちらも多くの刺激を受けました。政治が真剣に語れば応えてくれる方の多いことにとても安堵しています。

 大阪の震災で犠牲になられた方、被災された方に哀悼の誠を捧げ、お見舞いを申し上げます。通学路に限らず、ブロック塀の点検と改修は急務です。

 今週末土曜日から来週月曜日午前にかけては、兵庫県・宮城県・岩手県内各地において講演会や懇談会に臨みます。
 梅雨の中休みのような今日の東京都心でした。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年6月15日 (金)

米朝首脳会談など

 石破 茂 です。
 
 米朝首脳会談は壮大な政治ショーではあったものの、現段階で評価するのは極めて難しい。対立から対話へと大きく舵が切られたこと自体は評価すべきですし、それが今回の最大の成果だったのですが、長い対話の道のりの始まりとも言うべきものでしょう。
 金正恩委員長は、南北首脳会談と中国訪問に続く華々しい外交デビュー第三幕を果たして世界中にその存在を見せつけ、体制の保証(保障・Guaranteeではなく)を取り付け、中国の要人専用機に乗ってシンガポール入りして中国が後ろ盾であることも誇示し、北朝鮮の非核化については「検証可能」という言葉が落ちたことが示すように何らの言質も与えないという、失うものの無い成果を手中にし、「偉大な委員長様に米国や世界が譲歩した」という国内基盤の強化も果たしたように思われます。
 対するトランプ大統領も、「今までのどの大統領もなしえなかったことを自分だからこそ実現することが出来た」とことさらに強調することで米国内向けに存在感を示すという成果を手にしたというべきでしょう。まさしくトランプファーストそのものです。
 我々が考えなくてはならないのは、今後日本ならびに北東アジアの安全保障はどのように変化し、その中にあって日本は何をなすべきかを徹底的に考え、施策を進めることです。

 米国一辺倒、米国頼みの外交から脱却すべきだとの見解も多く見られますが、外交と防衛は一体なのであって、米国を「唯一の同盟国」として防衛の多くを依存している以上、「米国頼み」にならざるを得ないのはむしろ当然というべきであり、選択の幅はもともと極めて狭いのです。
 だからこそ国連の中核概念である集団的自衛権の行使を憲法上は容認し、その行使の態様は法律によって制約されるとすることで政策的判断の幅を広げ、防衛力を強化し、拉致問題を含む国連における発言力を高めるべき(北方領土問題も問題解決の鍵はここにあるはずです)とここ20年近く訴えているのですが、どの立場からも全くと言っていいほどにこの声が上がらないことはどういうことなのか。
 反対派は「集団的自衛権は米国と共に世界中で戦争する道を開くもの」という固定的な観念から一歩も抜け出せず(この立場に立つ政党が本当にそう信じるなら、政権に就いたら国連の場で国連憲章にある集団的自衛権条項の撤廃を訴えると公約すべきです)、保守派はこの問題については沈黙を決め込み、議論が全く進まない日本をよそに、世界の情勢は急変しようとしています。

 今回の米朝共同声明は「朝鮮半島の平和体制が実現すれば非核化が実現する」との論理であり、「非核化が実現すれば朝鮮半島の平和が実現する」という従来の米国の論理とは真逆になっています。
 戦争の終結宣言から平和条約に至るまで北朝鮮は時間を稼ぐことが出来、その間に核・ミサイルの能力向上を図ることも可能となるのではないでしょうか。実験施設を破壊するなどのデモンストレーションは行うのでしょうが、既に実験が完了した実験施設を破壊しても実質的な意味はないでしょう。
 
 北朝鮮が主張する「朝鮮半島の非核化」とアメリカの主張する「北朝鮮の非核化」は全く異なり、この溝を埋めるのは容易ではありませんが、何よりも気がかりなのはトランプ大統領が会見で「米韓演習は挑発的であり、中止することで多額の経費を節約できる」と述べるとともに、将来的な朝鮮半島からの撤退の可能性にも言及したことです。それは在韓米軍のみならず、朝鮮国連軍の存在をも失わせるものであり、平和協定締結により日本と朝鮮国連軍との地位協定もその根拠が無くなります(米国のみならず、英、仏、豪など11か国が参加する朝鮮国連軍との地位協定により、諸国は日本の港や港湾を使っての活動が可能となっています)。
 そうなった場合、日本は新たな安全保障環境に今よりも格段に困難な状況の中で直面することになりますが、これをどう回避するのか、不幸にしてそうなった場合にどう対応するのか、今から考えておかなければなりません。

 北朝鮮の核放棄に私が懐疑的なのは、今回日本の報道ではほとんど触れられていませんが、1994年に米・露・英がウクライナの核の放棄と引き換えにその独立や主権を保証することを約束した「ブダペスト覚書」(後に中国とフランスも保証)を、ロシアがあっさりと踏みにじってクリミアを併合したという歴史的事実が、金委員長の念頭にあるに違いないと思うからです。
 クリミア併合の際、ロシアは独特の論理を展開してその正当性を主張しましたが、それは1968年、チェコスロバキアの首都プラハに旧ソ連の戦車部隊が侵攻して、民主主義の萌芽を武力で摘み取った時に展開した集団的自衛権援用の論理に酷似したもので、唖然とさせられたものです。
 プーチン大統領は大統領選挙の投票日をわざわざクリミア併合記念日に設定し、圧勝しました。同大統領やロシア人の領土に対する執念や力による外交の信奉は、経済的な利益を大きく超えた、日本人の想像を絶するものであるように思われます。

 外交でも内政でも、言葉の持つ重みや信頼性が急速に失われつつあるように思われます。ゲーム感覚が当たり前のように横行し、誰を、何を信じればよいのかわからなくなっている、今まで経験したことのない時代の到来を感じています。

 週末は、16日土曜日が旧三井銀行本町支店長 星野欣也氏の米寿を祝う会(午後1時・都内)、東京都中野区三田会総会・懇親会(午後5時・同)。
 17日日曜日は大阪府下各地での講演や懇談会、「ビートたけしのTV 日本の防衛はどうなるスペシャル」出演(午後9時・テレビ朝日系列・収録)という日程です。
 私の入行店である三井銀行本町支店長を昭和55年から2年間務められた星野欣也氏は人格・識見ともに実に素晴らしい方で、後に専務取締役まで栄進されました。星野支店長ご在任中に本町支店に在籍した者が集まって支店長を囲む会をここのところ毎年開催しているのですが、40年近い時空を超えて、新入行員として無我夢中で働いたあの時代の雰囲気が蘇る、年に一度の本当に楽しいひとときです。
 
 梅雨らしい日々が続いた今週の東京都心でした。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2018年6月 8日 (金)

合区解消、CLT議連など

 石破 茂 です。

 参議院の選挙制度改革を巡っては、なお異論が燻っているようですが、他にどのような方法があるのかを示さないままに「場当たり、党利党略、お手盛り」と批判だけしている報道や発言者を見ていると、無責任な、心情の冷たい人たちがいかに多いことかを思い知らされます。
 人口減少県など日本に要らないのだ、とまで言い切る人までいる様(さま)を見ると、人間ここまで冷酷に割り切れるものなのかと空恐ろしい気も致しますが、本当にそう思うのなら正々堂々と自らの名を名乗って、合区対象県の地元紙に投稿するなり、当該県において拡声器を持って演説でもしてみればよいのです。それもせず、そもそもそんな気もないのに、匿名で自説を展開し、悦に入っているような人がいることに対しては、その無責任さ、卑劣さに対する嫌悪感を抱くとともに、日本社会の一部に広がりつつある深刻な病理を感じずにはいられません。

 本来、一票の格差は2倍以内であるべきと思っておりますが、そのためには「国会議員は憲法・外交・防衛・財政などの国政の基本にのみに専念し、地方の利益実現には関与しない」という体制を可能にする抜本的な地方分権が必要であり、これは四半世紀も前の平成5年、細川政権下の政治改革特別委員会で指摘したことなのですが、細川総理も山花政治改革担当大臣も何ら反応を示さず、その後、確たる進展もみておりません。
 地方分権が徹底せず、国会議員が国益にも資する地方の利益を実現する役割を負う以上、定数の削減は発言力の低下をもたらし、東京一極集中に更に拍車がかかることにもつながります。一方で、なかなか議論が盛り上がらない責任の多くが我々にあることは十分に承知しております。

 衆議院(2倍以内)に比べて較差が3倍以内と大きい参議院の在り方も見直さなくてはならないのであり、衆議院が「権力を作る院」であるなら、参議院は「権力を監視する院」としての特色を強く持つべきと思います。
 議院内閣制で、議員の中から大臣など政務三役のほとんどが出る以上、議会が政府の強い影響下に置かれることは不可避であり、三権分立が十分に機能しない欠点があります。参議院は政府に政務三役を出すことなく、党議拘束を緩めることなどによって、六年間の任期が保障された見識ある議員たちが、より高い見地から議論を行うなどの改革も本来検討されてしかるべきです。選出方法も権能もほとんど同じ院が二つ存在していても、二院制の妙味は十分に発揮されないものと考えます。

 最近、戦前の帝国議会で反軍演説や粛軍演説を行い、衆議院を除名となった斎藤隆夫に強い関心を持っています。昭和15年2月2日の演説の内容は決して軍を貶めるものではなく、むしろ政府と議会の姿勢を糾弾するものだったのですが、同年3月7日衆議院本会議で賛成276、反対7、棄権121の圧倒的多数で除名決議が可決されます。
 軍部大臣現役武官制の復活により、内閣は軍部に対して妥協せざるを得ず、議会も沈黙するような雰囲気が横溢していた時代です。そのような中、あらゆる批判を覚悟のうえで正論を述べた斉藤に改めて感動するとともに、除名に反対する議員が僅か7名、自らの立場を曖昧にしたまま責任を果たさなかった議員が121名であったということになんとも言えない思いが致します。
 YouTubeや、NHKの「そのとき歴史が動いた」のアーカイブ版で当時の様子は容易に観られますので、是非ともご覧いただきたいと思います。

 私が会長を務める「CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー、直交集成板)で地方創生を実現する議員連盟」は、4日月曜日に福島県いわき市と郡山市に現地視察に出向き、6日水曜日には経済同友会前地方創生委員長の隅修三東京海上ホールディングス会長、現委員長の地下誠二日本政策投資銀行常務、市川晃住友林業社長をお招きして勉強会を開き、企業人ならではの簡素で分かりやすいお話をお聞きしました。
 詳細は回を改めて論じますが、CLTは地方創生の切り札になるものと信じています。EUとのEPAの行方によってはEUからCLTが大量に輸入されることにもなりかねず、日本国内での需要の拡大とコストの低減による国産CLTの普及は喫緊の課題です。

 米朝首脳会談を来週に控え、日米首脳会談が行われました。
 「今後『最大限の圧力』という言葉は使わない。なぜならすべてうまくいっているからだ」という言葉がトランプ大統領から発せられましたが、本当に「すべてうまくいっている」のかはわかりません。
 北朝鮮はロシアと中国を後ろ盾に「核」をディールの材料として使っているのですが、アメリカファーストのトランプ大統領は国益の多くを異にする日本に対しても巧妙にディールを仕掛けてきているのは明白です。それは首脳同士の親密さとは全く別個のものであり、総理の苦悩は察するに余りあります。
 日米間でディールをするためには日本もその材料を持たねば、そもそもディールは成り立ちえません。憲法や日米安全保障体制の見直しの本質は、まさしくそこにこそあると思っています。

 週末は、9日土曜日は徳島市で市町村関係者との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル・徳島市万代町)、「衆議院議員 福山守を励ます会」で講演・懇親会・夕食懇談会(午後5時~・同)。
 10日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、徳島市自民党関係者との朝食会(午前7時半・徳島市内)、徳島びっくり市21周年記念感謝祭(午前9時・繊維卸団地)、帰京後は都内で講演会と懇談会に出席する予定です。
 
 東京も梅雨入りし、すっきりしない天候が続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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イシバチャンネル第八十六弾

事務局です。イシバチャンネル第八十六弾をアップロードしました。「どうなる米朝首脳会談」 です。


ぜひご覧ください

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イシバチャンネル第八十五弾

事務局です。イシバチャンネル第八十五弾をアップロードしました。「倉吉フィギアミュージアム~魔神ブー、経済など」 です。

ぜひご覧ください

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2018年6月 1日 (金)

合区解消など

 石破 茂 です。
 先週からまた一転、米朝首脳会談がシンガポールで開催される可能性が出てきました。これがトランプ流のゲームであり、ディールなのでしょうが、何度も指摘している通り、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」の間にある乖離も、その「接点」が日本の安全保障に与える影響も、極めて大きいものです。
 「北朝鮮の体制を保証する」ことは、北朝鮮国民の置かれている悲惨な状況を是認することにもなりかねない。また、日本国の国家主権の侵害であるとともに重大な人権侵害である拉致問題との整合が取れないことになる。我が国にとっての望ましい解は、他のどの国よりも難しいことを痛感しています。

 今週久々に開かれた党首討論は、あまりに時間が短く、議論が交わらないままに終わってしまった感が致しました。与野党の話し合いの結果の時間配分なのでしょうが、もう少し長く、多くの国民が見られる時間帯に行なう工夫は出来ないものなのでしょうか。多様な意見の中から一致点を見出すのが議会の役割なのであり、それに資するような議論を心掛けねばと思います。

 参議院の合区解消に向けて、自民党内で一定の方向性が出つつあります。
 公職選挙法の改正によって、埼玉県の定数を2人増加させて選挙区間の最大較差を3倍未満とするとともに、参議院比例区で拘束名簿式の特定枠制度を導入することにより、合区によって候補者を出せない県の者を優先的に当選させるという内容で、現時点においては憲法を改正して参議院の独自性を明記するまでの緊急避難措置として、万やむを得ないものと考えます。
 「合区自体は解消されていない」「定数を増やすのは行革の趣旨に逆行する」「法の下の平等をどう考えているのだ」という批判も多く見られますが、憲法改正の発議に必要な衆・参全議員の3分の2の賛成が得られる状況にはなく、大都市部の定数を増やして格差を3倍以内に収めるためには40議席以上を増やさねばならず、比例区を削って都市部増の議席数とすることにはどの党の賛成も全く見込めず、結局これ以外に方法はないということでしょう。
 憲法改正以外に抜本的解決の道はありませんが、時間をかけてでも抜本的に改正すべき第9条と決定的に異なるのは、来年の7月には間違いなく参議院議員選挙が行われるという時限性です。
 仮にこの改正案が成立しても、東から西まで東京・名古屋間よりも長く、隠岐諸島という離島地域までを含む広大な鳥取・島根合区選挙区や徳島・高知合区選挙区は依然として残るということであり、暗然たる思いです。
 「政党のご都合主義」という定型的な批判は、実際に政治に携わることなく、責任を負うことのない立場だからこそ言えることです。暑いさなか、広大な選挙区を走り回る候補者や、その姿にほとんど接することも出来ない過疎地の有権者の辛さや悲しさをわずかでも斟酌する思い遣りを持って頂きたいと切に思います。
 2年前の参院選において、選挙区すべてを回れない青木一彦候補に代わって私も鳥取県内各地を回ったのですが「一度でいいから候補者を見たかった、話が聞きたかった」と言われた高齢の有権者の声が耳朶に残って離れません。

 常に最善の結論が得られるものではなく、時間も手間も経費も掛かる民主主義とは本当に難しいものだと思います。最近は「独裁の何が悪い」といったような言説も見られますが、私は決してそうは思いません。やはり「民主主義は最悪の政治制度である。ただし、今まで存在したあらゆる政治制度を除けば」(チャーチル)なのであって、その意味で「民主主義はやっぱり最高の政治制度である」(橋爪大三郎著・現代書館)、近著では「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」(坂井豊貴著・岩波新書)は示唆に富みます。前者は既に絶版になっているのかもしれませんが、後者は2015年以来10刷を重ねており、きちんと本を読む人もまだ多くおられるのだと少し安堵したり致します。

 河合雅司氏(産経新聞論説委員)が、昨年45万部のベストセラーとなった「未来の年表」の続編「未来の年表2 人口減少社会であなたに起こること」を上梓されました(講談社現代新書)。これからの人口急減社会において、それぞれの身の周りに何が起こるのかが具体的に描かれているのですが、末尾に記された「『豊かな日本』を作り上げてきた大人たちへ」からは、我々、ならびにその上の世代に対する著者の強い思いが感じられ、胸に突き刺さります。是非お読みいただきたいと思います。

 30日に開催した政策集団「水月会」のパーティにはおかげさまで会場いっぱいの方にご参加いただき、盛会のうちに終えることができました。ご参加いただいた方、ご厚志を賜りました方に心より厚くお礼申し上げます。
 第一部の私の講演にも大勢様お越しいただきましたが、席が足らずに立ったままお聞きくださった方には深くお詫び申し上げます。

 週末は、自民党鳥取県連青年局・女性局大会の諸行事のため、選挙区に帰ります。残余の時間は、水月会セミナーにおける講演をはじめとする最近お話しした内容の精査と手直しに充てたいと思っております。
 事前にそれなりの準備は行うものの、原稿なしの講演はどうしても即興的・瞬間芸的になってしまい、時間を経ないうちによく見直す必要を感じております。
 6月初日の都心は、心地良い晴天となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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