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2019年8月 9日 (金)

佐久訪問など

石破 茂です。
 8日木曜日に講演してきた長野県佐久市には、貞祥寺という同市を代表する古刹があるのですが、ここに太平洋戦争末期に帝国海軍で使用された人間魚雷「回天」の模型と世界平和を祈念する「回天の碑」があります。戦局の悪化を何とか打開すべく、その願いを込めて「回天」と名付けられた人間魚雷は、昭和19年11月にウルシー泊地攻撃(玄作戦)のため初めて使用され、終戦までに49隻が出撃したものの、大きな戦果を挙げることもないままに平均年齢21歳、145人の戦死者を出しました。この開発に携わり、11月20日に玄作戦で戦死した仁科関夫少佐(2階級特進・享年21歳)の父君の出身地が佐久市であったため、貞祥寺にこの碑と模型があるのだそうです。当初この計画に強く難色を示した海軍首脳部は、乗員脱出装置の装着を開発の条件としましたが、結局それも実現はしませんでした。

 前回、戦艦大和について記しましたが、神風特攻隊や回天など、愛する祖国や家族を想い、生還が不可能な作戦に殉じた人々の思いを我々はもう一度想起しなければならないと痛感しております。
佐久市は11の酒蔵を有する日本酒の街であり、安養寺味噌や安養寺らーめん、五郎兵衛米、鯉料理などの豊かな食文化や、バルーンフェスタなどのイベント、さらには「北斗の拳」の作者である武論尊氏の出身地としても知られていますが、この次行く機会には是非この貞祥寺も訪れてみたいと思っています。

 アメリカの提唱するホルムズ海峡での有志連合に我が国が参加するか否か、政府部内でも意見が分かれているようです。自民党内にも様々な意見がありますが、5日月曜日の会議において「そもそも海上自衛隊を派遣するような状況なのか、そこが明らかにならなければ議論する意味がない」「国民に対して明確な説明もないままに、自衛官の生命を賭けて派遣することはあり得ない」等々、真っ当な意見が展開されたことはとても良かったと思いました。事柄の性質上、公に言えないこともあることは十分に承知していますが、政府はきちんと議員の問いに答えるべきです。わざと答えを避けたり、はぐらかしたりするような対応は厳に慎んでもらいたいと思います。
臨時国会において、院の構成をしなければならない参議院は別として、衆議院においては全く議論のないままに閉会となりましたが、日米貿易交渉、米中貿易摩擦、日韓問題、中東情勢等々、議論しなければならない課題が山積しているときに、これで本当に良いとは全く思いません。「参院選において、憲法について議論すべきとの多くの声を頂いた」と言うのなら、これを受けて国会休会中に三日間でも四日間でも、自民党において集中して憲法問題を議論すれば、国民に自民党の真剣さが伝わると思うのですが、それも全くないままに夏休みに突入して永田町は閑散としていますし、マスコミの関心も九月に行われる政府・党役員人事に集中しつつあるようです。国会議員の責務とは何か、今更ながらに懊悩する日々が続きます。

 ここしばらく日韓関係について可能な限りの文献を読んでいるのですが、故・小室直樹博士の「韓国の悲劇」(カッパビジネス・昭和60年)は誠に優れた深い論考です。30年以上も前の、中曽根康弘総理・全斗煥大統領時代に書かれたものですが、それだけに本質を見極めておられるように思いました。
小室博士の「日本国民に告ぐ」(ワック出版・平成17年)や「国家権力の解剖」(総合法令・平成6年・色摩力夫氏との共著)「国民のための戦争と平和の法」(同・平成5年・同)など一連の著作には随分と蒙を啓かれたものですが、本作も、いま書店に平積みしてある「嫌韓本」とは全く厚みを異にする論考です。既に絶版とはなっていますが、入手は可能と思います。ご一読をお勧めいたします。

 7日水曜日には、鉄道雑誌の企画で宇都宮浄人・関西大学教授と対談させて頂き、同教授の交通政策論・都市政策論には随分と啓発されました。私自身、単なる「鉄道好き・乗り物好き」であってはならないことを反省させられたことでした。

 週末は地元でお初盆のご家庭を何軒かお参りさせて頂く予定です。酷暑の日々が続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年8月 2日 (金)

太平洋戦争を題材とした映画など

 石破 茂です。
 夏になり終戦(敗戦)記念日が近づくと、太平洋戦争を題材とした映画が公開されます。「連合艦隊司令長官山本五十六」「トラ!トラ!トラ!」「男たちの大和」など多くが公開されてきましたが、私が特に好きなのは、森繁久彌、鶴田浩二、中井貴一、古手川祐子などが出演した昭和56年の東宝映画「連合艦隊」で、これは何度見ても泣ける作品です。映画をご覧になっていない方も、谷村新司の歌う主題歌「群青」をご存知の方もおられるかもしれません。
 今年は同じく戦艦大和を描いた同じく東宝映画「アルキメデスの大戦」が現在公開中で、私はまだ観ておりませんが、かなりのヒットとなっていると聞いています。航空機が主力となる時代の変化の中にあって、大和型戦艦の建造計画に危機感を抱いた山本五十六が、東大数学科の天才・櫂直(かい・ただし)を海軍にスカウトし、数字でこの計画の誤りを指摘してこれを阻止しようとするストーリーだそうで、是非観てみたいものだと思っております。

「戦艦大和」はよくも悪しくも日本国の在り方そのものを体現したものであり、その本質は戦後74年を経た今もあまり変わっていないと思います。時代が全く変わっているのに既存の方針を変えない、個別の利益が優先されて全体の利益を考えない、責任の所在が何処にあるのかが明確にされないままに物事が決まっていく、異論を唱える者は排斥され、「あのときはあれでやむを得なかったのだ」との責任回避が横行する、正確な情報や数字を直視せず、都合の良い情報や数字しか見ず、ロジスティックス(兵站)を軽視し、勇ましい精神論が強調される…。
 斉藤隆夫の反軍演説とその後の衆議院除名(昭和15年2月・NHK「その時歴史が動いた」2003年)、総力戦研究所設立と報告書の握りつぶし(猪瀬直樹著「昭和16年夏の敗戦 日本人はなぜ戦争をしたか」文春文庫)等々、歴史に学ばねばならないことは数多くあります。
 昭和20年4月7日、沖縄特攻作戦に出撃し、不沈を謳われた大和は米海軍機の猛攻を受け、僅か2時間足らずで3千人の将兵と共にその姿を海に没しました。前夜開かれた最後の酒宴の席で、若い海軍士官が「日本は滅んで目覚める。我々はその魁となるのだ。それでいいではないか」と語る場面が「連合艦隊」の中にありましたが、日本人は本当に目覚めたのでしょうか。8月になると、いつもそのようなことを思います。

 今週は、来日した韓国国会議員との会議や討論、必ずしも得手としない分野での講演などが多くあり、心身ともかなり疲れました。
 体調が今一つ回復しないこともあり、週末は少しお休みを頂きたいと思っております。あまり深く学んでこなかった分野について少しでも知見が深まったことはとても有り難いことでした。

 今週の都心は、梅雨も明けて猛暑が到来致しました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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