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2019年11月29日 (金)

「日本の安全保障を考える議員の会」、大勲位ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨28日の「日本の安全保障を考える議員の会」は、香田洋二元海将、番匠幸一郎元陸将を講師としてお迎えして勉強会を開きました。
 2004年、前身である「21世紀の安全保障を考える若手議員の会」が発足したのには、2003年から 2004年にかけて審議された有事法制関連法案が9割の議員の賛成で成立した(反対したのは共産党と社民党のみ)という背景が存在していました。
 政府は極力誠実な答弁に努め、特別委員会の現場においては、与党の久間章生筆頭理事、野党の前原誠司筆頭理事の大変な努力がありました。
 このように、安全保障など国の根幹にかかわる政策は、与野党で徹底的に議論し、一致点を見出すべきものであり、当時「新国防族」と呼ばれた我々には、精神論を極力排し、法律・条約・運用・装備などに知見を持ち、内局の言うなりではなく、制服組に阿るのでもなく、政治家として責任ある安全保障政策を推進したい、との思いがありました。
 あれから15年が経ち、もはや若手ではなくなってしまいましたが、その後メンバーのそれぞれが防衛や外務の大臣、副大臣等を経験し、安全保障環境が激変する中にあって、敢えて再発足の運びとなりました。
 かつて小泉内閣の防衛庁長官在任時、国会で「航空自衛隊のF-15戦闘機で北朝鮮を叩けるのか」という議論があった際、「空自のF-15は侵入してきた敵機を排除する能力は世界第一級でも、他国領域まで進出してミサイル基地を叩くような能力は保持しておらず、そのような訓練もしておりません。それでも行けというのは神風特攻隊と変わらず、そのような命令は出せません」というような答弁をした記憶があります。戦闘機を用いた策源地攻撃のためにはその位置を正確に把握することは勿論、AWACSや護衛戦闘機、空中給油機、電子戦機なども随伴させなくてはなりません。その能力を保持するか否かは政治の判断ですが、能力を造成するためには長い年月を必要とします。
 安全保障政策は「合理性」と「リアリズム」を基本とすべきものであり、基本的な認識や知識を共有すれば、自ずと一致点は見出せるものと考えております。

 それにしてもマスコミ各社の報道は「ポスト安倍を睨んだ与野党連携か」的なものばかりで心底うんざりしてしまいます。
 昨日の、論客として知られる元制服組最高幹部との議論は久々に多くの示唆を受けた充実したものでしたが、その内容についての報道は一切ありません。報道する気も全く無いのでしょうが、これでは議員も政策について真摯に学ぶ意欲が削がれることもやむを得ないのかもしれません。しかし、ここで諦めてしまえば国の将来が危うくなります。

 昨日の衆議院憲法審査会の運営については、いかがなものかと思わざるを得ませんでした。政権にとって都合の悪い議論を忌避している、と国民に思われることは、決して国家のためにはなりません。いつの日にか大きな報いとなって跳ね返ってくることを認識すべきですし、それが自分たちにとってならば自業自得というものかもしれませんが、国家国民に跳ね返るような事態になることを心から怖れます。

 「桜を見る会」についても、それ自体が国家の重大事でないからこそ、早急に解明し、改めるべき点を直ちに改め、詫びるべき点は率直に詫びて、国家の重大事を議論できる環境を作らなくてはなりません。「こんな些末なこと」だからこそ、ある意味かえってリアリティを持って国民に受け止められているのではないでしょうか。
 敗戦直後、責任追及を免れるため軍や政府の書類が多く焼却処分されたと言われていますが、これを彷彿とさせるような事象にも嘆息を禁じ得ません。公文書の保存に尽力された福田康夫元総理の真摯さを改めて思い出します。

 本日、大勲位 中曽根康弘元内閣総理大臣が101歳で逝去されました。
 昭和61年、我々が初当選した際の総理大臣で、7月の同時選挙では自民党総裁として衆参公認候補4名応援のため、鳥取市にもご来援くださいました。偉大なご業績については後日改めて記したいと思いますが、当選直後、衆議院当選1回生を集めた会で、「君たち当選1回生にとって一番大事な仕事は、当選2回生になることだ」と言われたことを強烈に覚えています。
 「どんなに立派なことを言っても当選を重ねなければ実現は出来ない。政策や信念を実現するためには、当選したからと言って浮かれることなく、地元の基盤をしっかりと固めるように」、というようなお気持ちであったか思います。
 「暮れてなお 命の限り 蝉しぐれ」「したたかと 言われて久し 栗をむく」どちらも大勲位が作られた俳句ですが、徹底したリアリストでありながら理想を決して曲げず、したたかに政権を運営しながらロマンチストの一面を失われなかった、在りし日のお姿を偲び、御霊の安らかならんことを心よりお祈り申し上げます。

 週末は、30日土曜日が自民党綾部支部政治経済懇談会で講演(午前11時50分・京都府綾部市林業センター)、昼食懇談会(午後1時半・同所)、自民党福知山支部講演会で講演(午後4時・サンプラザ万助)、夕食懇談会(午後5時半・同所)。
 12月1日日曜日は自民党西脇支部時局講演会にて講演(午後1時半・西脇ロイヤルホテル・兵庫県西脇市)、内藤兵衛兵庫県議自民党県議団幹事長就任祝賀会(午後4時・同所)、という日程です。
 とうとう師走に入ります。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年11月22日 (金)

「桜を見る会」の招待基準など

 石破 茂 です。
 「桜を見る会」についての混乱は収まる気配がなく、今週も更に拡大の様相を呈しています。「こうなったら解散だ!」などという論も自民党内の一部にはあると報じられていますが、理解が困難です。野党が一致して「疑惑隠し解散」と攻撃してくることが容易に予想される中、「そんな些末な問題で国政を停滞させてはならない」とでも訴えるつもりなのでしょうか。これ自体が国政上の重大問題とは思いませんが、問われているのは我々の政権の公正性と透明性であり、その疑念を晴らして一刻も早く重要課題に取り組むことこそが政府・与党の責任でしょう。

 来年の「桜を見る会」は中止し、招待基準や人数を見直して再開するとのことですが、基準や人数の何処が何故見直されるべきなのかを早急に明らかにし、「各界において功績、功労のあった人を招き、日ごろの労苦を慰労する」という本来の趣旨に立ち返ったうえで、来年も開催すべきものではないかと思います。
 叙勲や褒章の受章者は皇居に招かれて天皇陛下からお言葉を賜る機会があるのですが、同じく厳正な審査を経て選ばれる各省大臣表彰者はそのような栄には浴しません。あくまで一案ですが、「公正性」「透明性」を確保する観点からは、そのような方々を招待するというような基準も考えられてよいのではないのでしょうか。
 民主党政権の時も同じようなことをやっていた、との視点もあり、それなりの牽制・抑止効果はあるのでしょうが、どこかとの比較ではなく「自民党は立派だ」とのご評価を頂くことこそが大切なのであり、自らを省みて反省すべきことばかりが多いことを痛感します。

 これを書いている時点ではまだ日韓GSOMIAについて最終的な結論は出ておらず、当面失効は回避されたとの報道があったところですが、日本側も引き続き協議を続け、「破棄やむなし」という姿勢は採るべきではないと思います。日米同盟、米韓同盟は存在しても「日韓同盟」は存在せず、両国を結ぶものの一つがGSOMIAであった以上、今後の努力は必要です。韓国を北朝鮮や中国の側により近づけてしまうことは日本の国益に反するものであり、韓国側の対応の背景や理由を知った上で、それも踏まえて日本の主張の正当性を相手方にも国際的にも理解されるような形で説明することが、北東アジア地域の平和に資するものと思っております。

 昨日の政策集団「水月会」の勉強会は赤澤亮正代議士の「災害は忘れる間もなくやってくる」と題する防災についての講演で、運輸官僚や防災担当内閣府副大臣の経験も踏まえた、とても内容の充実したものでした。啓発されるところ実に大でしたので、内容について次の機会にご紹介したいと思います。

 週末は、23日土曜日が能登地域青年会議所合同事業「我が国における過疎地域の未来」で講演と高野誠鮮氏との対談(午後1時・コスモアイル羽咋)。
 24日日曜日は日刊建設工業新聞社の新春対談(午前8時・鳥取市内)、国道482号線舂米(つくよね)バイパス開通式典・祝賀行事(午前10時・八頭郡若桜町現地)、物産館みかど花御所柿祭(午後1時・八頭町大門)、自民党賀露町支部総会にて憲法改正について講演、懇親会(午後3時・賀露神社)、等という日程です。
 花御所柿(はなごしょがき)は地元・八頭町の旧郡家(こおげ)町・旧大御門(おおみかど)村で主に生産されている、糖度が20度以上の非常に甘い柿で、東京ではごく一部の高級果実店を除いては販売されていませんが、通信販売も行っておりますのでネットでご検索の上、是非一度お試しください。
 来週で11月も終わり、いよいよ師走となります。週末は不安定な天候となることが予想されていますが、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年11月15日 (金)

「囲む会」、種子島訪問など

 石破 茂 です。
 11日月曜日の東京での政治資金パーティはおかげさまで盛会裡に終えることが出来ました。北海道から九州・沖縄まで、本当に多くの方にお出かけ頂き、心より厚くお礼申し上げます。高額の会費をお支払いいただき、時間を割いてくださった方々に出来るだけ会話や食事を楽しんで頂くため、挨拶は少なめに、アトラクションなどは一切行わないという進行を心掛けたのですが、どうしても華やかさに欠ける点は否めません。この両立はとても難しくて毎年悩んでいるのですが、不行き届きの点は何卒ご寛容くださいませ。誠に有り難うございました。

 

 総理主催の「桜を見る会」問題でやや荒れ模様の一週間でした。昭和27年から続くこの会は、天皇・皇后両陛下が主催される園遊会には人数制限や厳しい基準などにより招かれないが、各界で功労のあった方を総理が招待する、との趣旨の公的な行事であり、招待する基準もそれなりに客観性のある明確なものであるべきですし、自民党総裁ではなく内閣総理大臣が招待するのですから、公平性にも配慮すべきでしょう。「不穏当な人が混じってはいけないので推薦を受け付ける」というのはそれなりに合理的ではありますが、その上で基準を設けるように改善されなくてはなりません。
 招待者名簿を会の終了後直ちに破棄した、ということですが、同じ人が何年も続けて招待されるのも不公平でしょうから、重複を避けるためにも五年ぐらいは保存すべきものではないでしょうか。規模や予算の拡大についても、「テロ対策の費用や混雑緩和のため」というのなら、その内訳を示すべきでしょう。
 来年は中止したのだからそれでよい、というわけではなく、これらの課題について適切な解を得なければなりません。また公的行事を中止する以上、国民が納得できる説明があるべきことも当然です。私も他人様を非難できるような清廉潔白・公平無私な人間ではありませんが、権力を手にするといつしか感覚が麻痺してしまうことに対する怖れだけは常に持っていよう、与党の立場であればこそ、より一層自重自戒しなければ、と強く思っています。

 

 昨14日に開かれた自民党の憲法改正推進本部の講演(大石眞・京大名誉教授)と、衆議院憲法審査会の自由討議は、どちらも時間が制限されて消化不良のままに終わった感があり、とても残念なことでした。憲法改正について、「各々の委員が党の立場を離れて議論すべき」という立憲民主党の山尾議員の発言に、内心共感を覚えた委員は多かったのではないでしょうか。党の立場に拘束されてポジショントークに終始し、自分の意見が言えない、という状況があるとすれば、それは決して望ましいものではありません。

 

 9・10日に訪問した種子島は、歴史の魅力に満ちた島でした。1543年の鉄砲伝来の歴史と、宇宙センターの存在はほぼすべての国民が知っていることと思いますが、種子島が何処にあるかを知っていたり、実際に訪問したりした人は少ないのではないでしょうか。
 羽田からの直行便がないため、珍しく講演先で一泊し、島内全域を廻ることが出来たのですが、鉄砲館や遺跡ミュージアムの展示も意匠を凝らしたとても見事なものでした。また離島医療の在り方についても様々なご教示を頂き、今回の訪問にお力を賜った種子島医療センターの田上容正先生にも厚くお礼申し上げます。

 

 週末は、16日土曜日が公務員交流会「よんなな会」で講演(午後1時・渋谷ヒカリエ)、BS朝日「激論クロスファイア」収録(枝野幸男立憲民主党代表との討論、午後6時半・テレビ朝日、放映は17日午後6時~)。
 17日日曜日は「日曜報道 THE PRIME」出演(三浦瑠麗氏との対談、午前7時半・フジテレビ)、第7回Fish-1グランプリ2019(午前10時・日比谷公園)、という日程です。
 先週末から国会日程を縫っての講演や対談が続いて少し疲れているのですが、やや余裕のある週末で有り難く思います。
 ハロウィンも終わり、街には早くもクリスマスツリーが飾られるようになりました。
 今年もあと僅か、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年11月 8日 (金)

学園祭講演など

 石破 茂 です。
 慶応義塾大学連合三田会、麻布大学、早稲田大学、日本大学と続いた一連の学園祭関係の講演が一段落しました。一般市民の方にも公開していたこともあってか、どの会場も老若男女、多くのお客様にお集まり頂き、とても有り難いことでした。
 テレビであれ新聞であれ、我々の発言はその一部が切り取られて真意が伝わらないことが多く、「編集権」によって故意に歪曲されることもあるのですが、講演やその後の質疑応答では、そこにおられる方には真意は伝わりますので、出来るだけこのような機会を持ちたいと思っております。

 昨日の予算委員会も質問と答えがほとんど噛み合わない、残念なものでした。民主党政権が誕生する前の野党時代に厳しい質問をした経験のある議員が減ったせいなのでしょうか、野党の質問はいかにも中途半端でした。私が在任した小泉・福田・麻生内閣当時の野党質問は切れ味鋭いものが多く、閣僚席は緊張感に包まれていたものですが、そのような雰囲気は全く感じられなくなりました。
 総理の答弁も、問いに正面から答えるというよりは、一般論に置き換えるものが目立ちました。野党の力量不足もあって、質疑が中断や混乱することもあまりなく淡々と終わったのは政府・与党側とすれば結構なことですが、「任命責任とは何か」「説明責任とは何か」などについて深い議論にならないまま、「責任」という言葉が死語となってしまうのではないか、との危惧を覚えました。
 辞任された両閣僚は、「問題視されているような事実は全くないが、国会が混乱し、行政が停滞するのを防ぐために辞任した」と述べられました。その目的は既に達せられたのですから、閣僚辞任後は、そのような事実がなかったことについて明らかにするのが、政治や自民党の信頼を取り戻すために必要なことではないでしょうか。国民の意識の喪失や麻痺を甘く見てはなりません。いつか必ず大きな報いとなって跳ね返ってくることを、自分自身、肝に銘じなければならないと思っております。

 大学入試への民間の英語検定試験導入は延期・再検討となり、危惧された事態はひとまず回避されました。しかし小池都知事の「都民ファースト」から流行り言葉になった「○○ファースト」は、本来の意味からはかけ離れつつあるようです。「アスリートファースト」しかり、「受験生ファースト」しかり、言葉の本来持つ意味が失われつつあることにも大きな恐れを持っています。

 本日午前、茨城県筑西市の旧明野町自民党女性部の研修会で講演して参りました。旧明野町は農相や防衛庁長官、官房長官などを歴任された故・赤城宗徳代議士の出身地です。
 昭和35年の安保闘争で世情騒然とし、デモ隊の国会乱入を怖れて自衛隊の治安出動を考えた岸信介総理に対し、「自衛隊は国民に銃を向けてはならない。そのようなことをすれば自衛隊は国民の信頼を失うのであり、もしどうしてもやるというのなら私を罷免してからにせよ」と言って総理の打診を跳ね付けた赤城防衛庁長官は実に立派であったと思います。国を想い、職を賭するかつての立派な政治家に学ばなくてはなりません。

 また本日午後は、渋谷で開かれた20代~40代女性中心の「政治と多様性」をテーマとする集会にパネラーとして参加致しました。
 江戸時代の価値観は「安定」(天下泰平)、明治維新以降は「強さ」(富国強兵)、敗戦後今日に至るまでは「豊かさ」(経済成長・所得倍増)であったが、これからは「楽しさ」になる、と堺屋太一先生は「三度目の日本」(2019・祥伝社新書)に記しておられますが、その一つのキーワードが「多様性」であるように思います。時代の大変革期というのは、価値観そのものが大きく変わる時であることを再認識させられます。

 週末は、9日土曜日が種子島開発総合センター鉄砲館訪問・関係者との意見交換会(午後2時・西之表市西之表)、石破茂議員来島記念講演会「地方創生と離島医療、種子島の未来」(午後4時・ホテルニュー種子島)、夕食懇談会(午後6時半・同)。
 10日日曜日は終日、種子島各地を訪問する予定です。
 隠岐諸島や五島列島、甑島や対馬、沖縄の島嶼部など、離島にはこれまでも随分と行ってきたのですが、離島医療については今回をよい機会として学びたいと思っています。少子化・超高齢化と人口減少が急速に進む離島は日本の未来図を先取りしているのであり、学ぶことの意義の大きさを痛感しております。
 都心は小春日和の一日となっています。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2019年11月 1日 (金)

首里城焼失など

 石破 茂 です。
 昨日の那覇市の首里城の焼失は極めて衝撃的でした。独特の建築様式による琉球王朝の象徴であり、1925(大正14)年に旧国宝に指定されていましたが沖縄戦で焼失、1992(平成4)年に沖縄復帰20年を記念して再建され、2000(平成12年)年には跡地が世界遺産に登録されていました。今年1月に30年にわたる修復事業が完了したばかりで、焼失した建物自体は世界遺産ではなかったにせよ、沖縄県民の皆様の喪失感には計り知れないものがあると思います。消火設備、原因等々、現時点において不明な点は多くありますが、政府として再建に早急に取り組む意向が表明されたことはせめてもの救いです。

 

 先日の菅原経済産業大臣に続き、昨日河合法務大臣が辞任したことは深刻に受け止めるべきであり、かつての内閣の大臣辞任ドミノが頭をよぎります。
 あまりにも当然のことで、いつも申し上げることですが、ポストは国家国民のためにあるのであって、就任した当日から100%の働きが出来る「適材適所」でなければなりません。党の関係部会に出席し、地道に勉強して発言し、副部会長・部会長代理・部会長などを務め、国会では関係する委員会の委員や理事を務めて質問に立ち、政府においては政務官・副大臣を務めるなど、「適材」と評価されるにはそれなりの努力とキャリアの積み重ねが必要です。
 閣僚が辞任しても内閣支持率が大きく低下しない、と油断していると、いつか国民の心との間に大きな乖離が生じることを危惧しています。かつて自民党が厳しい批判に晒され、ついには下野するに至った経験を全く持たない議員が多数になっていることにも、同じく危惧を感じています。

 

 かつては、自民党が困難な状況に陥ったとき、声を上げるのは当選1・2回を中心とする若手議員でした。リクルート事件などで批判が高まったときも、危機感の薄い執行部の方もあった中、「文句があるなら派閥を出ろ!」などと言われながらも、若手議員が派閥を越えて立ち上がり、当時「永田町下級武士たちの決起」と言われたものでした。今は若手議員から声が上がるということは少なくなりました。若年層と都市部ほど保守的で、高齢層と地方が批判的、という今までとは全く逆の現象が起こっているのをひしひしと感じます。

 

 萩生田文科大臣の「身の丈」発言で注目を浴びる結果となった英語民間検定試験は、本日大臣が会見し、2020年度は導入を見送り、今後の対応については民間試験の活用の是非も含めて、1年をめどに仕組みの抜本的な見直しを議論した上で、24年度をめどとして新たな制度の導入を検討する旨を明らかにしました。ひとまず賢明な判断がなされたものと思います。
 これは、本当に受験生のことを第一に考えて導入される制度でなければなりません。
 英会話の能力は、外国人と話す機会の有無によって大きく差がつくと言われるところ、英会話学校などに容易に通える都会地とそうでない過疎地との差が生じること。7つある検定試験の受験料には6千円から2万5千円の幅がある上、家庭の経済事情によって試験を何度も受けられる者とそうでない者との格差が生じること。地方から受験するには多額の交通費、宿泊費がかかるため、地域間格差も生じること。7種類の異なる試験の成績をどのようにして公平に比較するのかが不明であること。民間業者が作問して試験を行い採点すると「虎の巻」的な教材の販売が横行・激化して経済的な負担が増すおそれがあること。等々、現場の校長会などからも多くの疑問点が指摘されており、これらに真摯に応えていくべきです。 
 教育の機会均等を図ることこそが文部行政の使命ですし、本来改善されるべきは学校における英語教育の在り方なのでしょう。民間の知見を導入したほうがいいところももちろん多くあるでしょうが、「教育よりもビジネス優先」などという批判を浴びることのないよう、大幅な見直しも視野に入れた再検討を望みます。

 

 週刊文春のムック本「週刊文春が迫る、BEAMSの世界」が発売中です。何故か私も取材対象となっていますが、ファッション系の本のグラビアに載るなど汗顔の極みです。見映えがすべてではありませんが、改善に向けた努力の必要性を痛感させられたことでした。

 

 先般来、日韓関係の本を多く読んでいるのですが、昨日から朝晩に時間を作って読み始めた「隣の国で考えたこと」(岡崎久彦著・中公文庫・1983年)は示唆に富んだ名著です。在韓日本大使館参事官や外務省調査情報局長、駐タイ日本大使などを歴任された岡崎先生(2014年逝去)は対米関係を重視する保守派の論客で、総理のブレーンのお一人でもありましたが、岡崎先生が韓国人を「日本人の唯一の親類」と捉え、創氏改名を「例のない愚挙」と指摘された上で「日本人は韓国の歴史と現状についてあまりに無知にすぎるのではないか」と論じておられることには少しく驚きを感じましたし、当欄で再々紹介している「韓国の悲劇」で小室直樹博士が述べておられることとの共通点も多く見出されました。卓越した外交官と碩学の見識に接することが出来たことは有り難いことです。
 かつて私も防衛庁長官時代、岡崎先生から何度か直接ご教示を頂きました。もっとお話を伺いたかったと、とても残念に思います。

 

 週末は、2日土曜日が早稲田祭2019・政友会後期講演会で講演(午前11時・早稲田大学14号館)、「コクミンテキギロンをしよう」スペシャル企画「とことんギロン憲法9条」で講演とパネルディスカッション(午後2時・渋谷キャスト 渋谷区渋谷1丁目)。
 4日月曜日(振替休日)は日本大学法桜祭・法学部政治研究会40周年記念講演会で講演(午後2時・日大法学部10号館)、福谷倉吉市議・古稀祝賀会(午後6時・倉吉市内)、という日程です。
 カレンダーも今月を入れてもうあと2枚となってしまい、時の経つあまりの速さに呆然とするばかりです。
 都心は寒暖差の大きい週でした。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

 

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