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2020年2月14日 (金)

「7:3の構え」など

 石破 茂 です。
 かつて自民党の国会対策には、国会を運営するに当たって、野党に7割の配慮をするという「7:3の構え」という教えがありました。予算案にせよ法律案にせよ、国権の最高機関である国会に審議をお願いし、早期成立を図る環境を作るのはあくまで政府・与党の側なのだから、可能な限り辞を低くし、平身低頭の姿勢に徹するよう教えられたものでした。
 その後、内閣の一員となり、予算や自分が所管する法案をお願いする立場に立ったとき、この教えの意味が本当に理解できたように記憶しています。野党からどんなに罵詈雑言を浴びせられようとも、予算や法案が国民のためのものであることを信じる限り、いかなることも耐え忍ぶのだ、その姿勢はやがて野党や国民にも伝わるに違いない、と自分に言い聞かせたものでした。
 対決モードに終始している国会審議を見ていると、この教えが風化しかかっているように思えてなりません。国会法により議員は「質疑する権利」を有し、これに対して閣僚は「説明する義務」を負うのであって、両者の立場は明確に異なるものなのです。
 私は立派な人間では勿論ありませんが、ことを為すに当たってはあくまで謙虚で謙抑的でありたいと願います。国会見学に来た子供たちに民主主義や議会政治の価値をいくら教えても、もし実際に見た議会の姿がそれとあまりに乖離していれば、失望と虚無感を芽生えさせることになりかねませんし、それがやがて民主主義そのものの崩壊に繋がってゆく可能性を心から怖れています。

 総理は今国会の予算委員会においても憲法第9条の改正に再三言及され、「自衛隊は憲法違反」と言う学者がいること、それを紹介する教科書もあることを改正の理由としておられますが、いわゆるリベラル派の学者からだけではなく、保守派の学者の一部からも「自衛隊違憲論」が主張されているのは、「いわゆる芦田修正論に立たない限り合憲とは考えられない」との理由であり、これは思想や政治信条ではなく論理の問題だと考えられます。
 予算委員会で総理は「仮に自衛隊を明記する(だけの)改正案が国民投票で否決されても自衛隊の合憲性に全く影響はない」とも断言されました。それはその通りなのですが、だとするとそれだけを理由に提出する改正案の正当性が問われてしまわないでしょうか。
 まずは、「憲法改正の4項目のイメージ案」を党内において正式にどのような扱いにするのかを、早急に明確にすべきです。民主主義の本質的な価値が「手続きの正統性」と「少数意見の尊重」にある以上、これらを重視した対応が求められます。

 東京高検検事長の定年延長についても、何故一般法である国家公務員法が特別法である検察庁法に優先するのか、検察官同一体の大原則を超越できる理由とは何か、仮に国家公務員法が優先するとしたとしても、この場合、上級庁である高等検察庁の検事長の定年を延長すべき特別の具体的な理由とは何であるのか、納得できる説明が必要です。審議をほとんど全て聞いている国会議員がよくわからないのに、国民に解って頂くのは至難と言わざるを得ず、事柄が国民を起訴するという強大な権限を有する検事に関わるものであれば、尚更説明が求められます。

 公文書管理も担当する北村誠吾地方創生担当大臣に対する厳しい質疑が続いています。内閣府の大臣は多くの担務を抱えており、国民の財産である公文書の管理も極めて重要ですが、北村大臣のメインの仕事は地方創生であるはずです。地方に対する深い思いを持ち、地元の信頼も厚く、人柄も立派な同大臣は地方創生担当大臣として最も適任の方であるだけに、技術的な知見を必要とする分野は可能な限り専門分野に通暁した事務方がサポートして、地方創生の仕事にもっと注力できる状況が早く作られることを心より願います。

 さる2月11日、山形県米沢市において、当選同期であった遠藤武彦元農相のご葬儀があり、相前後して農林水産政務次官、副大臣(総括政務次官)、農林水産大臣を務めた者として弔辞を述べて参りました。年齢が離れていたこともあり、極めて近しいという間柄ではありませんでしたが、独特で強烈な存在感をお持ちの方で、遺された言葉にはとても重みがありました。
「政治とは何か、支配か、権力か。違う、奉仕だ。
 現代民主主義の政治は、限りのない奉仕だ。全体への奉仕、国家への奉仕、国際社会への奉仕。奉仕とは対価・代償を求めない人間の働きだ。
 普段にはなかなかそんなことは出来ない。出来ないから代わりにやってくれる人を選ぶ。それが政治家だ。
 政治家はその生きざまにおいて、人間としての完成を目指すものだと思う。だから政治家になったら、命も暮らしも捨てる覚悟がいる。
 政治とは絶えざる奉仕であり、究極には他人のために死ねるかということであろう」(月刊誌「赤蜻蛉」連載「エンタケの永田町だより」より。原文ママ)
 「群れず、与せず、混じわらず」を信条とし、誰からも「エンタケさん」と呼ばれて親しまれ、希代の政治家であり、求道者でもあった遠藤武彦先生の御霊の安らかならんことを希います。

 週末は、2月15日土曜日が鳥取県自民党国会議員新春の集い(午前10時・ホテルニューオータニ鳥取、午後1時半・倉吉シティホテル、午後4時半・米子ワシントンホテルプラザ)。
 16日日曜日は第39回全日本畳事業協同組合中国ブロック会議で講演(午後1時・ホテルニューオータニ鳥取)、中部大志会総会・新年祝賀会(午後4時半・打吹回廊)、という地元中心の日程となっております。
 二月も中旬となりました。故・村岡兼造先生のご葬儀に伺った秋田県由利本荘市も、米沢市も小雪模様の寒い日でしたが、これが本来の冬の日本海側の天気です。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年2月 7日 (金)

コロナウイルス対応など

 石破 茂 です。
 当然のことながら予算委員会はなるべく離席せず、質疑を聴くようにしておりますが、かつての予算委員会とは随分と様変わりしたように思われます。かつて自民党予算委員は、理事は勿論のこと、委員もほとんどが大臣経験者という重厚な構成で、当選期数の若い議員は差し替えで座る以外、まず予算委員会には所属出来なかったものですが、良し悪しは別として今は期数の若い議員の姿が目立ちます。閣僚経験者が質疑に立つ機会も少なくなっているようです。
 野党がこの有り様である現状においては、与党、とりわけ自民党の中から政府をチェックする姿勢を示すことが重要です。政府も無謬でない以上、答弁の内容や論理構成で改善すべき点は糺していかなくてはならないのであり、あらゆる答弁に「よし!」とか「そのとおり!」などという与党席からの合いの手が入ることには少しく違和感を覚えます。
 発言の機会のないままに予算委員会に座っているのはやや負担ではありますが、質問者の質問や、総理・閣僚の答弁を聞いていて、自分ならどのように問い、どのように答えるかを考えるのはとても勉強になります。かつて安全保障委員会の理事を務めていた時、当時の久間章生防衛庁長官の隙の無い、緩急をよく弁えた答弁からは多くのことを学び、貴重な糧を得ました。

 我が国は現在、中国からの入国者について湖北省からの方の入国拒否としていますが、同省の他にも、感染が蔓延しつつある地域へ拡大することも早急に検討すべきです。併せて医師不足や対応機材の不足が深刻となっている中国への支援はさらに積極的に行わなければなりません。狭隘な嫌中論より、その方がよほど国益に適うものと考えております。また前回、憲法改正の緊急事態条項との通底性を指摘しましたが、この機に乗じて緊急事態条項の議論を俎上に載せるべきものでもありません。それではかえって議論の真っ当な進捗を遅らせることになるものと考えております。

 トランプ大統領の弾劾審議は上院で「無罪」が確定し、秋の大統領制に向けて攻勢を強めると報ぜられています。他国の政治に言及すべきではありませんが、最側近であったボルトン氏の証言を共和党が拒否するなど、どうにも釈然としないものが残ります。トランプ大統領が下院で一般教書演説原稿をペロシ議長に渡した際、握手を求めた議長を大統領が無視し、演説が終わった直後に今度は議長が原稿を破り捨てる、という映像は実に異様なものでした。アメリカ国内の対立と分断、人心の荒みは一体誰が引き起こしたものなのか、そしてこれでアメリカは何処へ向かっていくのか、世界はどうなるのか、強い不安を感じた光景でした。

 今日の予算委員会の一般質疑は「桜を見る会」に関する公文書管理についての北村誠吾担当大臣の答弁で紛糾し、結局休憩のまま散会になってしまいました。北村大臣は人格の優れた気骨のある方で、私はかねてより敬愛しており、ご自身が大臣として対応していた時のことでもない「桜を見る会」関連で追及されているのを見ると同情を禁じ得ません。

 今週は予算委員会の審議出席にほとんどの時間を費やしましたため、記述が簡略かつ粗雑になってしまいました。ご容赦くださいませ。
 先週末の日程が少しハードだったせいか、少し体調を崩してしまい、週末は9日日曜日の元自民党総務会長・村岡兼造先生のご葬儀に参列する日程(午後1時・秋田県由利本荘市)のみと致しました。慶應義塾の大先輩であり、運輸・建設関係に強かった先生には、私がまだ若かった頃、地元の案件でわざわざ鳥取までお越し頂き、現地を視察後、陳情を受けて頂いたこともありました。このようなご恩は大切にしなければならない、といつも自分に言い聞かせております。
 立春も過ぎましたが、都心は今季一番の寒さとなりました。地元鳥取市でも昨6日、今年初の6センチのまとまった積雪となったそうです。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


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