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2020年4月28日 (火)

【動画】鳥取の皆さんへのメッセージ

事務局です。鳥取の皆さんへのメッセージをアップロードしました。

ぜひご覧ください

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2020年4月24日 (金)

CDCと防災省(仮称)など

 石破 茂 です。

 一律10万円の定額給付への方針変更はあるべき方向だと思います。リーマン・ショック後の1万2千円の定額給付金は、金額が少なかったことと支払時期が遅くなったことであまり評価はいただけませんでしたが、今回は行政の大原則である「公平性・公正性」よりも「迅速性・簡便性」を重視し、「早くて簡単!」との実感を国民に感じて頂かなくてはなりません。給付金自体は全額国費ですが、実施主体は市町村ですので、マイナンバーカードの普及率や対応する電算システムの整備進捗状況などによって給付時期に差が出ます。私の地元鳥取市でも懸命に作業中で、いつ、どうなるのかを早急に市民に示すようお願いしております。

 危機管理時の行政に求められるのは、
①「想定外を想定し、平素には周到に準備し、有事には冷静に対応する」
②「政治的な思惑を排し、結果の全てに責任を負うとの決然たる意志をもって、論理的に、分かりやすく説明する」
という2点なのだということを改めて痛感しています。


 8500人の人員と170の職種を有するアメリカのCDC(疾病予防管理センター)や、300人の専門家で構成されるスウェーデンの同種組織に類するものを平素から機能させる必要があります。
 権限を付与する法律と、事業の執行に必要な予算は議会が確保し、実際の運用(オペレーション)はこの組織が政治的な思惑を一切排して行います。CDCは連邦政府保健福祉省に属していても、意思決定は独立しており、政治に左右されることなく自己完結的に運用されているとのことです(渋谷健司氏の論説・「Voice」5月号による)。軍隊における「軍政と軍令の分離」とよく似た構造で、最終的な責任は民主主義国家である以上、主権者に責任を負いうる唯一の立場にある政治家がとるのは当然です。これも民主主義国家における文民統制のあり方と類似しています。
 そのCDCを有するアメリカで世界最多の死者が出ている理由についても諸説あり、構造的問題(都市部の貧困、衛生状態、医療格差など)に加え、現在の米政権がCDCの意見を軽んじ、予算や人員を削減し、秋の大統領選を睨んで楽観的な判断や発言を行っているからだとの指摘もあります。
 かねてより申し上げている「防災省」(仮称)に内包するか別組織にするかはともかく、日本版CDCも必須です。また、防災省的なものがあれば、緊急時のロジスティックス(今回でいえば帰国者や軽症者の方々へのお弁当・食事の手配など)のノウハウはほとんどの場合に適用でき、既存の行政組織に必要以上の負荷がかかることもありません。

 非常時であると否とに関わらず、政府や自治体が施策を講ずるにあたっては「何故この施策を採るのか」「他の選択肢との比較において、どのような長短があるのか」「どのようなリスクが存在し、どのように最小化するか」を論理的・可視的に簡潔に説明しなければなりません。感情的な訴えでは、一時的な人気が集まることはあるかもしれませんが、施策自体に対する信頼は生まれません。

 

 抗体検査も、PCR検査も、体制が整った地域から早急に拡大すべきです。検査を行わなければ、どこで何が起こっているのか把握できませんし、現状が把握できなければ今後の適切な対策は困難です。
 国民の皆様にご理解いただくべきなのは、
①日本では新型インフルエンザやSARSの被害が甚大ではなかったこともあり、事前の検査体制が十分には整っていなかった。今後、機器の製造・配備、取扱者の増員、民間による検査実施の拡大、献血時など検査実施機会の拡大等により、これを早急に整備し、各地域における実態を把握する。
②流行初期におけるクラスター対策は有効であったが、感染が拡大した今、その効果は限定的となるため、今後は重傷者・重篤者の治療を感染症指定病院に集中させ、軽症者・未発症感染者は一般病院やホテルなどに収容するトリアージ(治療の優先順位を定めること。識別救急)体制に移行して、医療崩壊を防ぎつつ重篤者の死亡を抑え、もって医療関係者の負担を軽減する。
ということではないでしょうか。
 検査件数を増やせば感染者の数は当然増加しますが、医療を受ける適切なタイミングを逃さないことによって時間の経過と共に致死率は下がるものと思われます。大切なのは感染者数の少なさではなく、重篤化率と致死率の低さではないでしょうか。致死率が季節性インフルエンザと同程度の0.1~0.05%まで下がれば、それが一つの目安となるものと考えます。

 

 「アビガン」の使用についても、200万人分(70万人分との説もあり)備蓄されているとされるアビガンを早期治療に使うことは有効である、とのご意見は医療関係者には多くあり、これを等閑視してはならないのではないかと思います。
 昭和35(1960)年から36年にかけて、国内でポリオウイルスによるポリオ(小児麻痺・5歳以下の罹患率90%)が大流行し、予防に有効であった生ワクチンが国内で不足していた際、当時の池田内閣の厚生大臣であった古井喜実氏は「平時守らなければならない一線を越えて行う非常対策の責任はすべて私にある」と述べて、カナダとソ連から生ワクチンを輸入し、1300万人の子供に投与し、日本からポリオはほとんど姿を消しました。古井先生は私の亡父と同郷・同窓、かつ内務省の大先輩でありました。「責任」という言葉の持つ重さを改めて痛感させられます。

 女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスにより63歳で亡くなられました。1956年生まれということで、私と同学年であり、親近感を感じていただけにとても残念です。ガンの治療によって免疫力が低下していたとの報道もあり、因果関係の解明が今後行われることと思います。夫君の大和田獏氏は感染防止の対策を取った上で最後の対面を果たされたとのことで、それすらも叶わなかった志村けんさんの時とは異なる対応であったようです。御霊の安らかならんことを切にお祈り致します。

 日頃より敬愛してやまない谷公一代議士が、新型コロナによる影響を聴取していた選挙区の養父市で交通事故のため重傷を負われたとの報道がありました。選挙区のみならず、被災地や過疎地の多くの人々が同議員を心より頼りにしています。持ち前の不屈の闘志で一日も早く回復されますよう心よりお祈り致します。
 因みに谷議員の選挙区の中心は豊岡市など兵庫県北部の但馬地方です。昭和15年2月、与党の民政党議員でありながら衆議院本会議において有名な「反軍演説」(内容は反軍ではありませんでしたが)を行い、軍を侮辱したとの理由で衆議院を除名された斉藤隆夫議員の地元です。
 衆議院議員で斉藤の除名に反対した議員は僅かに7名、圧倒的多数で除名されながらも、昭和17年の総選挙では大政翼賛会の推薦を受けずにトップで当選し、復帰を果たします。但馬の有権者も本当に気概があると思います。演説の多くは現在も議事録から削除されたままなのですが、音声記録が残っていたのか、ネットで全文を読むことが出来ます。是非ご覧ください。

 今週末も在京の予定です。最近は厚生関係の文献を中心に目を通しております。基礎的な知識の習得のためには「人類VS感染症」(岡田晴恵氏著・岩波ジュニア新書)が役立ちました。「岐路に立つ日本医療」(大村昭人氏著・日刊工業新聞社)からも多くの示唆を受けましたし、厚生関係以外では「私の考え」(三浦瑠麗氏著・新潮新書)を面白く読みました。

 皆様どうか引き続きお気をつけて、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2020年4月17日 (金)

ご意見など

 石破 茂 です。
 今週も多くのご叱正やご意見、ご提案を頂き誠に有り難うございました。地元に帰ることもままならず、地方から上京される方もほとんどおられなくなり、直接お会いしてお話を伺える機会が激減している状態が続いていますだけに、このようなご意見が伺えることはこの上なく貴重です。すべてに目を通し、可能な限り対応しておりますので、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 前回の本ブログの末尾に、今週14日月曜日が締め切りとなっていた自民党本部への提案を掲載し、様々なご意見を頂きましたが、党本部はこれをどのように取りまとめて分析し、政策の糧としたのか現時点では判然としていません。ほとんどの党の会議が開催されない現状にあって、400人近い党所属議員のどれほどが意見を提出し、誰がどのような意見を述べたかを明らかにしなくては、党員や国民に対する責任を果たしたことになりません。「出さなくても構わない」「出してもどうせ反映されない」ということであれば、確実にモチベーションは下がってしまいます。
 マスコミ諸兄姉にも、これを採り上げるようにお願いしているのですが、私の知る限りこれが記事として掲載されたとは寡聞にして聞いていません。それをしないままで「自民党にはコロナに立ち向かう真剣さが足りない」「意見を言う議員がいない」「議員の質の低下が著しい」などと言うべきではありません。「ポスト安倍」のどうでもいい観測記事を書いている暇があるのなら、テレビや雑誌などのメディアに華々しく登場しなくても地道に努力している議員たちの姿をもっと報道してもらいたい。少なくとも、それぞれの選挙区には与野党問わず選出議員の姿を伝えて頂きたい。

 

 緊急事態の宣言を全国に広げることと、国民全てに一律10万円給付することへの変更が重なって、議論は相当な混乱状態となっています。緊急事態の宣言を全国に拡大したので、一世帯30万円の給付から一人10万円の所得制限のない給付に変更する、というのは論理的に若干の飛躍があり、あまりご納得をいただける論旨とは言えないのではないでしょうか。
 当面早急に為すべきと考えることは以下の通りです。
① 特に連休中の移動制限等の措置を徹底し、急速な感染拡大を阻止する。
② 感染拡大のカーブを出来るだけや緩やかなものとして重症患者の急増による医療崩壊を回避し、治療を徹底するとともに、ワクチンや対応薬開発までの時間を可能な限り稼ぐ。
③ 医療現場に対し、マスク、防護服、ガウンなどの資材を政府が責任をもって確保し、優先的に行き渡らせるとともに、関係者の宿泊先を確保する。宿泊費は国の負担とする。
④ 抗体検査を早急に拡大させるとともに、PCR検査は広く民間委託に任せ、行政機関であって臨床医学の場ではない保健所の関与を極力排除し、保健所の負担も軽減させる。どの地域で感染が拡大しているのか、感染者数と死亡者数のみでは把握が困難であり、抗体検査とPCRを組み合わせたサンプル調査を都道府県ごとに早急に実施する。
⑤ 感染症の専門家のみならず、公衆衛生学の見地を重視した対応組織を立ち上げる。自己完結型の独立した組織であるべきだが、形だけアメリカのCDCを模倣することなく、我が国において最も機能する形を考える。
⑥ 国民すべてに10万円支給するための手法(個人的にはマイナンバーの活用が望ましいと考える)を早急に確立し、第一次補正予算において実施する。
⑦ 二次補正も含め、需要・供給・雇用・金融システムのすべてが危機に瀕する危険性のある「有事」であるとの認識の下、経済対策は政府の直接支出である「真水」を中心とするGDP比20%程度の規模が必要と考える。

 

 当然、他にも為すべきことは多くあり、是非とも皆様からのご提案・ご指摘を頂きますようお願い致します。

 

 ここ数日の動きを見ていると、混迷・混乱の度が高まっているように思えて心配になります。選挙や政局をあまりに意識すると、必ず政策を誤ります。国民はよく見ているのであって、そこを決して軽視してはなりません。

 

 韓国の総選挙は与党が大勝する結果となりました。民族統一を一貫して指向し、ミサイルと核開発を続ける北朝鮮との融和は一層進むものと思われ、これを踏まえてアメリカ、中国、ロシアがどのような冷徹かつ戦略的な対応をするのか、あらゆるケースを想定しておかねばなりません。新型コロナ感染者が艦内で発生したことでアメリカ空母が南シナ海を中心とする海域から離脱したこともとても気がかりです。

 

 2009年の東宝映画「感染列島」は、ディテールにはいくつかの気掛かりな点があるものの、まるで今日を予見したかのような内容で、恐ろしい作品ですがよろしければご覧くださいませ。1980年の映画「復活の日」もウイルス感染を描いたものとして一見の価値があります。

 

 今週末も在京の日程となりました。今週も各種メディアの出演や取材等で存外に慌ただしく過ごすこととなりましたが、Webによる会議や電話取材など新しい取組も増えております。外出もままならず、ご自宅で時を過ごしておられる方が多いことと思います。
 コロナ後の世界は間違いなく今までのものとは一変しているに違いありません。ご教導・ご教示を重ねてお願い申し上げます。

 

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2020年4月10日 (金)

緊急事態宣言など

 石破 茂 です。
 ここ数週間のコメント欄やホームページのご意見欄にお寄せいただく多くの皆様のお考えやお気持ちには、深く頷き、気付かされ、考えさせられるものがあり、心よりお礼申し上げます。
 3月以降に予定されていた会合がほとんど中止・延期となったことに加え、外へ出る機会が激減してしまった中、ご提案やご意見、お怒りや憤りを率直にお伝え頂けることはとても有り難いことです。世の中の感覚と政治が乖離することが最も恐ろしいのであり、「与党議員や自民党本部に陳情に行ける者ばかりが社会的弱者だと思うな!」とのお声は本当に骨身に染みました。すべてに目を通し、可能な限り対応しておりますので、引き続き今後とも何卒よろしくお願い致します。

 

 新型コロナウイルスは確かに恐るべき感染症であり、人類はこれに打ち勝つべく最大の知恵と力を費やさねばなりませんし、我が日本国も朝野を挙げて対応に取り組んでいるのですが、政府をはじめとする行政や立法府と国民・市民との間に危機認識や情報共有の齟齬があり、意識の乖離が起こっているのは何故なのか。三十年余りにわたって議員の立場にあった者として深く反省するとともに、今後何年かかってでも、再び強靭で心温かな日本国を創るために努めなくてはなりません。
 地域社会や家庭は大きく様変わりし、持続可能性と連帯感を喪いつつあります。株主と経営者は豊かになっても、勤労者所得は減少して格差は拡大している。特に非正規労働者の賃金は低く、男女間の賃金格差は先進国最大であり、失業率が低下して総雇用者数と総所得は増えていても労働生産性は低いままに留まる。東京一極集中は一向に止まらず、地方の疲弊・崩壊が進行する。核家族化は極点に達し、単身世帯が激増した半面、共に扶け合う多世代家庭はその多くが消滅しつつある。
 これらは天変地異によるものでも何でもなく、すべて政策選択の結果であり、一にかかって我々政治の責任です。一昨年の自民党総裁選挙の時も申し上げたことですが、人々が多様な価値観による幸せを実現することのできる国にするため、日本の設計図を根本から書き換えねばなりません。

 

 1918年にアメリカ・カンザス州の陸軍兵営から発生し、全世界で1億人ともいわれる死者を出したスペイン風邪は、第一次大戦を終わらせる一因ともなりましたが、その後、1919年にナチス党の前身であるドイツ労働者党が設立され、1929年に大恐慌が起こり、1939年に第二次大戦が勃発しました。感染症は時に歴史を変え、時に極端な排外主義を生むことがあったのも事実です。
 今もまた、歴史の変わり目にいるという認識を強く持ち、己を律していかねばならないのだと思っております。

 

 7日火曜日に東京などの首都圏や大阪、兵庫、福岡などを対象地域とする緊急事態が宣言され、各都府県知事が実情に即した判断を行える法的な体制が整いました。「緊急事態」という言葉の持つ語感のせいなのか、未だに戒厳令のような捉え方が一部でなされているのはとても残念ですし、それを煽るかのような一部の報道姿勢にもいささか疑問を感じています。
 例えば自衛権(個別的自衛権)の行使の場合には、事態の度合いに応じて「武力攻撃予測事態」→「武力攻撃切迫事態」→「武力攻撃事態」と自衛隊の対応を法律的に分けているのですが、感染症の分野ではいきなり「緊急事態」となりうる。しかし「緊急事態」はあくまでも諸外国とは異なり、都市封鎖ではなく、基本的に強制力を伴うようなこともない、というのは一般の人々には理解しにくいかもしれません。
 また、今回の宣言によって法的に可能となる措置は、感染拡大と医療崩壊を阻止するために各都道府県の実情に即して行なわれるものであり、国が行う経済対策とは明確に分けて説明されなくてはなりません。混乱と困惑が広がらないよう、あらゆる努力をすべきです。

 

 医師、看護師をはじめとする現場の医療関係者の方々は、自らも感染の危険と向き合いながら、最大限の働きをして過労死寸前の方も多くおられます。ここが崩れてしまうことのないよう、医療の現場の実態を正確に把握して対策を考えるべきです。
 前線は呼吸器科と、第一対応を行う可能性の高い内科です。他の診療科は平常通りの体制を維持し、この前線の負担を少しでも軽くしなければなりません。そして差し迫った状況にある医療現場の支援をどのように計画的に行うかも喫緊の課題です。東京都の23区26市5町8村においてもそれぞれ事情は異なるはずですし、全国においても大きな差があるのではないか。全体像を把握し、政府・医師会・病院団体が一体となって的確な振り分けを行わなくてはなりません。これらは新型インフルエンザ等対策政府行動計画にも定められていることです。
 五輪の延期によって当面使用されることのない首都圏の競技場や宿泊施設なども、医療目的の転用を進めるべきです。医療スタッフについても、引退された資格保有者、高学年の医学生や看護学生を後方支援要員とすることと併せて、ローテーションを考えるべきでしょう。

 

 そして次回の補正予算では、今回の教訓を踏まえ、国民全てに一律(10万円程度)の給付金を支給すべきだと思っております。「世帯主の所得」、「コロナ禍により減収」、年収制限などにより、約2割の方々しか行きわたらないようでは、全国民に感染拡大阻止のための行動制限をお願いしていることとバランスが取れません。公務員や社会保障の受給者等については事後に調整すればよいのであって、大多数の困っている人に迅速に届くことの方が重要と考えます。
 その手段として、マイナンバーの利用拡大と、マイナンバーカードの普及もこの際に徹底すべきですし、テレワーク、テレエデュケーション、テレメディスンも、明確に数値目標を定めて普及を促進しなければなりません。

 

 党の会議がほとんど中止となったことから、党本部より所属各議員に対し、月曜日午後4時までに新型コロナ問題についての意見を書面で提出するよう指示がありました。今の段階で思っていることを末尾に載せておきますのでご高覧ください。

 

 新型コロナウイルスの感染者が出ていないのは、今や鳥取県と岩手県の2県のみとなりました。人口が少なく、人口密度も低いという以外の正確な理由は不明ですが、平井知事をはじめとする鳥取県民の努力とその勤勉性によるところも大きいと思います。小さな県だけに、行政と住民との距離が近く、一体感を持ちやすいということもあるのでしょう。地方から日本を変える魁たるべく、県民の一人として努力したいと考えております。
 鳥取砂丘をはじめとする県内の観光地は近隣からの若者を中心に意外な賑わいとなっているようですが、「ここは田舎だから新型コロナウイルスもないのだ!」などという心無い発言、思い上がったような言動は絶対に許すことができません。お越しの際には是非ともマナーやルールを厳守して頂きたいと思っております。

 

 世の中が新型コロナの報道一色になる中、このほど発表された今年度の航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)数はここ数年と変わらず、歴代3位の多さであったこと(特に中国機が顕著)、また先月30日夜に発生した中国漁船と海自艦「しまかぜ」の衝突事故についても、ほとんど報じられていないのではないでしょうか。このように報道がほとんどなされない重大な事案が生起しているのではないかと危惧しており、アンテナを極力高く保たねばならないと思っております。

 

 皆様、今後とも十分にお気をつけて、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2020年4月 3日 (金)

ご葬儀、マスク、経済対策など

 石破 茂 です。
 当ブログをお読みいただいている皆様、誠に有り難うございます。コメント欄にお寄せいただくご意見も本当に参考になり、心より厚く御礼申し上げます。
 かつて当選2回生の時、厚生系の議員を志して衆議院社会労働委員会(今は厚生労働委員会)の理事を務め、平成4年12月の宮澤改造内閣では厚生政務次官を希望していたのですが、諸般の事情で農林水産政務次官に回り、以来厚生関係からはずっと遠ざかってしまいました。そのため今回は及ばずながら随分と勉強(あまりこの言葉は使いたくないのですが)させて頂いております。
 
 厚生関係は事務量が他に比べて膨大なこともあり、中央と現場や地方との意思疎通があまり十分に機能していないように思われます。
 志村けんさんが亡くなり、ご遺骨となって自宅に戻った時、兄の知之さんが「入院中も会えず、(ご遺体は)そのまま火葬場に行き、家族は火葬場に行くことも、立ち会うことも、骨上げも一切出来なかった」と涙ながらに語っておられ、誰を非難するのでもない態度は誠にご立派だと思いました。しかしこの報道を見て「新型コロナで死んでしまったら、死に顔も見てもらえず、骨も拾ってもらえない。なんと恐ろしい病気なのだ」と思われた方は多いと思います。
 同時に、800度~1200度の高温で火葬されれば、ウイルスは死滅するはずなのに、何故遺族が遺骨も拾えなかったのか、不思議に思ったのは私だけではないはずです。

 調べてみると今年2月25日、厚労省の生活衛生課より各都道府県の担当部局宛に「遺体が非透過性納体袋に収容・密封されていれば遺体の搬送を遺族が行うことも差し支えない」「火葬に先立ち遺族が遺体に触れることを希望する場合は手袋の着用をお願いする」「遺族の希望があればこれを尊重して火葬は24時間以内に行なわなくてもよい」などの内容がQ&Aの形式で伝えられており、これを市町村に対しても周知させるように記されています。なぜこれが志村けんさんの場合には適用されなかったのでしょうか。
 厚労省、都道府県(志村さんの場合は東京都)、市区町村、関連民間事業者、それぞれの当事者の誰もこれを疎明しないままに国民に恐怖感や絶望感が広まっているのは由々しい事態です。

 4月1日に総理から発表された「一世帯に布マスク2枚を配布」という施策の評判もあまり芳しいものではないようですが、これも「中央と現場の認識のギャップ」の例ということなのかもしれません。マスク不足の不安に対応するために良かれと思って実行を決断されたに違いないのですが、1枚200円、5800万世帯とすれば郵送料、封筒代、宛名印刷料などすべて含めれば300億円弱の国費が使われることになるとなると、本当にこれが優先されるべき政策であったのか、疑問に思う方が多いのも仕方ないかもしれません。

 今一番の急務は感染拡大と医療崩壊の阻止なのであり、国費の使途も、緊急事態の宣言の可否や時期の判断も、その目的のためにこそなされなければなりません。
 「緊急事態」の持つ語感のため、あたかも随所で官憲による検問や私権の制限が行われる「戒厳令」のようなイメージで捉える向きもあるのですが、緊急事態宣言は海外でなされている「都市封鎖」のようなものではありません。
 政府が緊急事態を宣言することにより、都道府県知事が法的な根拠をもって外出の自粛を要請できるようになります。これは実態としては今東京都などが要請しているものとそれほど違いはありません(宣言後の要請にも罰則はありません)。一番強い権限は医療目的の土地や施設の使用で、最終的には所有者の同意なくして実行ができますが、集会施設の使用制限の要請、要請に従わない場合の指示、必要な物資の流通の確保、高騰を防ぐための措置等には、罰則はありません。これらを行うかどうかは都道府県民の選挙によって選ばれた知事の判断です。
 「いつ出すのか」ということばかりに関心が集中し、緊急事態が宣言されたら買い占めや売り惜しみ、価格の暴騰などが起こってパニックとなるのではないか、と懸念するのは話の順序が逆なのではないか。そうならないために緊急事態を宣言するのであることを丁寧に説明するのが政府の役割ですし、その故にこそ宣言の時には相当な具体的な措置(特に人的移動を制限する態様の具体化と、それによって直接打撃を受ける産業に従事する方々への経済的な手当て)と、実効性担保のための準備(人的・物的医療資源の確保や応援要請など)を併せて行っておかなければなりません。

 また、当面の資金・雇用対策と、それに続く経済対策とは明確に分けて実施すべきものです。全体の規模は、期間が不明な以上明確には出来ないと考えますが、財政資金(真水)でGDPの約1割である55兆円程度が目安との考え方もあります。生活・事業資金には特にスピード感と簡便性が求められ、早急な補正予算の成立と春の連休に入る前の執行が望まれます。

 太平洋戦争においては約230万人の戦没者を出しましたが、餓死・病死した将兵はそのうち6割を超えたと言われています。現場で何が起こっているかも掌握せず、掌握していても国民にそれを知らせることなく大本営発表を繰り返した歴史を我々はもう一度再認識しなくてはなりません。国家的な危機を乗り切るためにもそれは是非とも必要なことと思います。

 スウェーデンでは「日常を出来るだけ維持する」「専門家300人からなる公衆衛生局が強い立場で判断し、政府はそれに従う」「判断は政治的な思惑を排し、科学的に行われる」「政府は国民の理性を信頼する」「罰則を科して強制することは民主主義に反し、独裁肯定に繋がる」などの考えに基づいて、他国とは一線を画した、かなりユニークな新型コロナ対応がなされているそうです。当然、国内外から様々な評価がありますが、場当たり的や受け狙いではない対応は、民主主義の在り方そのものと深く関わるように思われます。
 我が国においても、危機管理の専門家集団の創設は今度こそ行わなくてはなりませんし、民主主義は意思決定機関と現場が近い距離にある地方においてこそ、より健全に機能するのだと思います。

 今週末も「密集・密閉・密接」を避けて行われる公の行事にのみ参加するため帰郷いたします。それ以外は、引き続き今まで読めなかった本を読んだり、深く考えてこなかったことを考える機会として大切にしなくてはならないと思っております。
 先月末、都心も思わぬ降雪と強風に見舞われましたが、それにもかかわらず国会周辺の桜はまだ健気にも咲いており、少しだけ心安らぐ思いが致します。
 皆様、引き続きお気をつけて、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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