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2020年10月30日 (金)

「富士山会合」など

 石破 茂 です。
 いつものことで今更驚きもしませんが、先週木曜日に水月会の会長退任を表明させて頂いて以来、報道は政策集団や所属議員の今後を巡るものばかりで、自民党の在り方や、政策についての議論は何処にも無く、嘆息・辟易するばかりです。
 「水月会のような、政策に重きを置くグループの存在は、自民党にとって必要なものであり、この結束を今後とも維持すると共に、残り一年を切った次期衆議院総選挙や再来年の参議院選挙において、構成メンバーが残らず当選するよう、私もこれまで以上に力を尽くしたい」
 私が申し上げたことはこれに尽きるのであり、この方針に沿って議論を進めて頂きたいと願います。水月会は矜持を持った一人一人によって構成された集団だと信じています。
 選挙は互いに助け合いながら必ず勝ち抜く。日本国が独立した(independent)、持続可能性を持つ(sustainable)国家として今後とも生き延びていくために、政治家は己や直近の利害を超え、主権者たる国民に誠心誠意訴え、理解を求める。そのような思いを、今後とも共有したいと強く願っております。

 合衆国の大統領選挙は来週には投票が行われます。結果は予断を許しませんし、仮に現職のトランプ氏が敗北しても、一方的に勝利宣言や選挙無効宣言を行ってそのまま地位に留まるなどという、考えられないようなシナリオまで取り沙汰されています。
 そんな報道に接するにつけ、アメリカは一体どうなってしまったのかと思いますが、かつて1950年代、ジョセフ・マッカーシー上院議員(共和党)を中心とする「赤狩り(共産主義者排斥運動・マッカーシー旋風)の嵐」が吹き荒れ、国内は大きな混乱状態に陥りました。マッカーシー議員の品位に欠けた侮蔑的な言動は、やがて国民の支持を失い、彼は失意のうちに亡くなるのですが、一時期は国民の過半が彼を支持し、意外なことに、民主党でリベラル派と目されていたジョン・F・ケネディ上院議員(のちの大統領)もマッカーシーの擁護者だったそうです。
 そう考えると、アメリカは混乱と狂騒が一時的に起こる国なのかもしれませんが、理想と思いやりのある、失われたバランスを健全な民主主義によって取り戻す力を持った国家となることを願わずにはいられません。

 さる24日土曜日に開かれた「富士山会合」(日米の政府関係者や有識者が国際問題を議論する会合。日本経済研究センター・日本国際問題研究所共催)の昼食会において、短いスピーチを行いました。中国を強く意識した発言が多い中にあって、アジアをより深く理解することの重要性と日米同盟の発展的な見直しを主張したのはやや異色だったのかもしれません。
 この必要もあって「中国海軍VS海上自衛隊」(トシ・ヨシハラ著・武居智久元海上幕僚長監訳・ビジネス社・2020・原題はDragon against the Sun)と「中国、日本侵攻のリアル」(岩田清文元陸上幕僚長著・飛鳥新社・2020)を改めて読み直してみたのですが、内容はとても示唆的です。ヨシハラ氏の著書は中国の文献の紹介が多く、やや一方的な見方もありますが、相当精緻・精密に日本ならびに日米同盟の能力を分析しています。中国の海軍力など所詮日米同盟の敵ではない、との思い込みは根本から改めなくてはならず、最新の知識が不足していたことを反省させられます。岩田氏の著書も、中国による台湾と先島諸島への同時ハイブリッド侵攻をシミュレーションしたもので、自衛隊の組織の根本的変革を訴えた力作です。
 現職自衛官が国会において答弁しないという慣例は、むしろ立法府による文民統制を大きく損なうものだとかねてから私は思っていますが、お二人のような直近までトップを務められた方を国会に参考人としてお呼びして質疑することは是非とも必要なことです。
 武居氏、岩田氏とも私と同じ昭和32年生まれですが、どちらも大変優れた方で、尊敬しています。是非ご一読ください。

 週末は党や地域の諸行事・諸会議出席のため鳥取二区も含めた地元へ帰ります。
 早いものでもう11月です。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年10月23日 (金)

水月会会長辞任意向表明など

 石破 茂 です。
 22日の水月会臨時総会において会長辞任の意向を会員議員各位にお伝えいたしました。その際に申し上げたことを以下掲載させて頂きます。

 このたび、政策集団 水月会の会長を辞したいと思います。
 過去4回、うち一昨年と本年の2回は、水月会を中心とした皆様のおかげで、総裁選に臨むことができました。
 日本国と自由民主党のあるべき姿を、党員と国民の前に示すことができたのは、本当に政治家として極めて恵まれたことであったと思っており、改めて心より感謝申し上げます。特に、この9月の総裁選においてお示しした党のあり方、国のあり方については、同志の皆様とともに考え抜き、私として納得のいくものでした。
 しかし結果を出すことができず、多くの皆様方のご期待に応えることができなかったところ、水月会、そして支援して下さった水月会以外の議員の皆様、全国各地の皆様方に、多くのご負担をおかけすることとなってしまいました。
 この責任は、一にかかって私にございます。この際、この責任をとるべきと考え、この決断に至ったものであります。
 なお、後任につきましては、会長代理ならびに事務総長であります鴨下一郎先生にお願いしたいと思っております。
 私としては、水月会が今後も結束を維持し、日本国のために更なる研鑽を重ねていくため、そして来たる選挙において、同志が一人残らず議席を獲得できますために、引き続き全力を尽くしてまいります。
 本日、表明をさせていただきましたのは、26日より始まります臨時国会の前が適切である、と判断したことによるものです。
 スタートしたばかりの政権が、国家国民のために大きな働きができますよう、私も自由民主党の一員として努めてまいります。

 二晩かけて、極力冗長とならないように推敲したものであり、これが全てです。これ以上でもこれ以下でもありません。
 政治家に限らず、責任者の出処進退は己の責任において決めるものであり、様々なご意見やご批判はすべて甘受しなければなりません。「評価は棺を覆った後に定まる」と言われますが、自分の損得を可能な限り排した意思決定としたいと思っております。
 垣根の無い政策議論を最も重視し、言うべきことを言い、選挙においては互助を徹底する水月会が、今後も議員が欠けることなく存続するとともに、日本国や自民党のあるべき理想を、単に語るだけではなく実現までできるような方途を見出さねばならないと強く思っております。
 今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 今週、井上達夫・東大名誉教授(法哲学)の講演を拝聴する機会を得、その後の質疑応答にも参加致しました。憲法第9条の改正議論のみならず、安全保障法制についての全般的かつ包括的な御見識に心から賛同したことでした。先生のご著書は本当に内容の深い価値あるものであり、お勧めいたします。
 先日の長岡出張の際に偶々新幹線で乗り合わせた片田敏孝・東大大学院特任教授(災害社会工学)から、ご著書「人に寄り添う防災」(集英社新書)をご恵贈頂きました。これも実に読みやすく、示唆に富んだものです。
 
 寒さすら感じる今週の東京都心でした。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年10月16日 (金)

長岡市など

 石破 茂 です。
 日本学術会議の会員任命について、会員になれば学士院会員になれる、多額の年金が貰える、などという根拠のない情報が発信され、それをそのまま拡散する議員がいるという事態は実に情けないものです。日本学術会議法にせよ、学士会法にせよ、根拠となる条文を、議員もメディアもよく確認しないままでは、官僚機構に対して意義ある意見を述べることはできないでしょう。様々な諮問機関的組織を改革の俎上に載せること自体は必要な場合もありますが、であればこそ政府もその都度、説明責任を果たすべきものです。

 

 10日深夜に行なわれた北朝鮮の軍事パレードは、北の軍事技術の着実な進歩をまざまざと見せつけられるものでした。金正恩党委員長の演説ではアメリカを名指しして非難するのを避けたことと併せて考えると、アメリカとの交渉再開を強く望む姿勢は見られましたが、脅威は能力と意図の掛け算の積なのであって、ICBMやSLBMの能力向上を甘く見るべきではありません。
 アメリカのM1戦車や日本の軽装甲機動車に酷似した不思議な車両の数々には「?」と思う他はありませんが、「所詮ハリボテの見せかけ展示で怖れるに足らず」というような楽観論にはとても与することはできません。
 予期せぬ「第一撃」による被害を出さないためにもイージス・アショアの果たすべき機能は早急に実現させるべきですし、敵基地攻撃能力を保持するとすれば、「専守防衛」の理念と違背しない具体的な法的根拠と、それに合致する装備体系とを整備しなければなりません。

 

 先週末は、土曜日に新潟県長岡市、日曜日に富山県高岡市でそれぞれ講演させて頂く機会を得ました。
 長岡、と言えば幕末の北越戦争で長岡藩を導いた上席家老・河井継之助、「米百俵」の小林虎三郎、太平洋戦争時の連合(聯合)艦隊司令長官・山本五十六(海兵32期)、の名が挙がりますが、今回この三偉人について改めて学ぶことが出来たのはとても有り難いことでした。
 河井継之助については高校生の頃、司馬遼太郎の小説「峠」(新潮文庫)を読んだ程度なのですが、江戸遊学中に交流のあったスイス人から学んだ「武装中立」の考え方に感銘を受け、長岡藩を官軍からも幕軍からも中立たるべく努力奮戦した末に敗れたとの記述に感動した記憶があります。
 そして、その北越戦争の敗戦後に石高を大きく減らされ、疲弊しきった長岡藩に友藩から送られた米を「教育に充てて人材育成に活用すべき」と唱えたのが、長岡藩大参事(副知事)であった小林虎三郎でした。
 山本五十六の言葉では「やってみせ、言ってきかせて、させてみて、誉めてやらねば人は動かじ」「苦しいこともあるだろう、言いたいこともあるだろう、不満なこともあるだろう、腹の立つこともあるだろう、泣きたいこともあるだろう。これらをじっとこらえてゆくのが男の修業である」の二つが有名ですが、「内戦では国は滅びないが戦争で国は滅びる。陸海軍の対立を避けるために三国同盟を結び、戦争に賭けるなどというのは本末転倒も甚だしい」という言葉も冷静に本質を言い当てていたと思います。「結局連合艦隊は全滅し、太平洋戦争に負けて国は焦土と化してしまったではないか、山本は無責任極まりない」と後世になって批判する見解も多くありますし、私生活を批判的に紹介するものがあることも承知していますが、私にとって山本五十六は今も光り輝く特別の存在です。他に太平洋戦争時の日本海軍提督では、山口多聞(海兵40期)、井上成美(同37期)、小沢治三郎(同37期)が好きです。

 

 かつての帝国陸海軍を、ただ批判することもただ礼賛することも厳に慎むべきですし、平和の大切さを語り継ぐべきは論を俟ちません。その上で、一人一人の軍人の人間としての生き様には、学ぶべきこと、感動させられることが多々あります。
 私の選挙区である鳥取市の出身では、戦艦「武蔵」の最後の艦長であった猪口敏平(いのくち・としひら)海軍中将、戦争末期に東海軍区(愛知・岐阜・静岡・三重・石川・富山)司令官を務めていた際、米軍爆撃機搭乗員を処刑し、B級戦犯として絞首刑となった岡田資(おかだ・たすく)陸軍中将が挙げられます。沈没間際に書かれた猪口艦長の遺書はとても感動的なものですし、戦犯裁判においてこれを「法戦」と位置づけ、「名古屋市民を無差別に殺戮したB29の爆撃はハーグ条約違反であり、搭乗員は戦犯であって捕虜ではない」と徹底的に主張した岡田中将の姿は、映画「明日への遺言」(2008年、アスミック・エース、主演は藤田まこと・富司純子、原作は大岡昇平の「ながい旅」)に描かれています。
 経済人、教育者、篤農家、武人、政治家…それぞれの地域に様々な人物がいて、それは地域の歴史・文化や風土と大きく関わっています。このような「郷土の偉人」については、それぞれの地域できちんと学ぶ機会を設け、市町村立中学校や都道府県立高等学校の試験にも出る、くらいのことを、検討する価値はあるのではないでしょうか。それが郷土への愛着や誇りを育むことや、あのような戦争を二度と繰り返さないことにもつながるのではないでしょうか。

 

 作曲家の筒美京平氏の逝去の報に接して「また昭和が一つ終わった」との感を深くしましたし、同世代の方で同じ思いを持たれた方も多いと思います。昭和、それも昭和40年以降、作詞家ではなかにし礼氏、阿久悠氏、作曲家では筒美京平氏が最も偉大であったように思います。今もご健在なのはなかにし氏だけになってしまい、とても寂しい思いが致します。
 春は「早春の港」(南沙織)「春おぼろ」(岩崎宏美)、夏は「エスカレーション」(河合奈保子)、秋は「九月の雨」(太田裕美)「哀愁のページ」「色づく街」(南沙織)等々、青春時代に聴いた名曲の数々がその時代の思い出と共に鮮やかに蘇ります。享年80歳、天才作曲家の御霊の安らかならんことをお祈りします。

 

 寒ささえ感じる週末となりそうです。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
 

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2020年10月 9日 (金)

自民党憲法改正推進本部など

 石破 茂 です。

 トランプ・アメリカ合衆国大統領は、どこで、どのようにして新型コロナウイルスに感染したのか、その経緯を可能な限り明らかにすべきだと思うのですが、日本においてそのような論調が(週刊誌以外には)ほとんど見られないのはとても不思議なことです。
 同大統領に対する評価はさておき、合衆国のみならず国際社会においても影響力を持つ重要人物が感染したにもかかわらず、大統領専用機(エアフォース・ワン)の機内では誰もマスクを着用していなかった、ホワイトハウス内では大統領顧問や報道官など10月6日現在で関係者18人が感染するなどほぼクラスター状態、果ては僅か3日で病院を退院してホワイトハウスに戻ったトランプ氏が「コロナ感染は神の恩寵だ」と述べたとされるに至っては、本当にアメリカは大丈夫なのかと案じてしまいます。
 大統領は合衆国の主権者である同国民が選挙において決めることであり、私があれこれ言うべきことではありませんが、アメリカや世界の理想を語り、格調の高かったかつての討論や演説がなぜ無くなってしまったのか、アメリカ社会の抱える問題の根は深いように感じますし、我が国においても夢や理想を語ることが「綺麗ごと」「政治は現実であり大切なのは結果」とばかりに忌避されているような雰囲気もないわけではありません。

 昨8日、衛藤征士郎・元衆議院副議長を本部長として、自民党憲法改正推進本部の陣容が新しくなりましたが、私は引き続き顧問に就くこととなりました。今後、自民党が作成した憲法改正4項目の「イメージ案」(自衛隊明記・緊急事態・合区解消・教育無償化の明記)を条文化し、国会の憲法改正審査会に提案する運びとなるようです。
 憲法は国民の日々の生活にそのまま直接影響するものではありませんし、一般的には細かい知識を持っていないのは当然で、国民から澎湃(ほうはい)として憲法改正の機運が盛り上がることなどないでしょう。だからこそ、特にわれわれ自民党は、物事の本質を誤ることなく、ひたすら丁寧かつ誠実に説明する努力を決して放棄してはなりません。

 「軍隊とは国の独立を守る組織である」
 「領土・国民・統治機構が国家主権の三要素であり、これを満たしているのを独立主権国家という」
 「国の独立を守る、とは国家主権が他国の急迫不正の武力攻撃によって侵されないことである」
 「独立国の国家主権を武力によって侵害する国が、被侵害国の法律を守ることはあり得ない。侵害を排除する際に適用されるのは専ら国際法である」
 「国家における最強の実力組織であるが故に、軍隊に対しては司法・立法・行政による最高度の統制が必要であり、それに相応しい栄誉が与えられる」
 「自己完結性が軍隊の持つ本質的特性であり、それには当然司法も含まれる」
 この「軍隊」を「自衛隊」に読み換えても、本質は全く変わるものではありませんし、これら事項の理解なくして国家も独立も適切に保全しうる憲法をつくることはできません。国民の持つ基本的人権が侵害された時、それを守ることができるのは国家のみなのだと思っております。
 仔細に論ずれば他にも多々論点はありますが、これはイデオロギーや党派性とは全く無関係です。国民の多くに理解されないほどに難解なものとは考えませんし、それを議論し、説得することも政治の役割のはずです。

 自民党は野党であった平成24年秋に、安倍体制のもとで憲法改正草案を完成させ、これを掲げて政権を奪還したのです。この原点を等閑視する姿勢があるとすれば、私には理解出来ません。この憲法改正草案では、第9条だけではなく「政党活動の自由の保障と政党法の必要性」、「国政上の行為の国民に対する説明責務」、「臨時国会召集について20日以内の限度の設定」等々、他党も、国民の多くも賛成するような改正点をいくつも挙げています。そしてこれらの点もまた、民主主義のために必要なものだと信じています。

 現在議論となっている日本学術会議会員の任命についても、党派性によらない憲法的な視点が必要です。
 ・憲法上、思想・良心・表現の自由が規定されているのに、さらに学問の自由を規定した理由
 ・学術会議が内閣総理大臣の所轄であることと、その独立性との整合性
 ・学問と政治とのあるべき関係性(1950〔昭和25〕年、当時の吉田茂総理は日米講和条約に否定的な南原東大総長を「曲学阿世の徒」と評しました。自由党・自民党と学術会議との対立にも長い歴史があります)
 ・法律上、政府は学術会議に諮問し、学術会議は政府に勧告が出来ると定められているが、近年それが少ないことをどう考えるか
 ・運営方法などにおける諸外国との比較
 ・学術会議と文科省所管の学士院との関係
 等々、論点は多岐にわたります。これを機に、建設的な議論と改革がなされるべきであり、私も微力を尽くして参ります。

 不勉強で知らなかったのですが、16世紀のフランスの裁判官・思想家であるエディエンヌ・ド・ラ・ポエシの著した「自発的隷従論」という古典的名著があるそうです(邦訳はちくま学芸文庫刊)。ポエシ18歳の時の著作とのことで、ある方から権力と国民との関係を理解するのに有益との指摘を頂いたのですが、なんだかとても難しそうです。お読みになった方がいらっしゃれば、ご教示くださいませ。

 10日土曜日は新潟県長岡市(泉田裕彦衆院議員国政報告会・午後2時・ホテルニューオータニ長岡)にて講演、午後9時からはテレビ朝日系Web「ABEMA TV」に出演。
 11日日曜日は富山県高岡市(高岡青年会議所主催「全国城下町シンポジウム高岡大会」・午後2時半・射水神社)にて講演の予定です。

 都心はとても涼しい週末となりました。台風も接近中です。皆様お気を付けて、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2020年10月 2日 (金)

米大統領選テレビ討論会など

 石破 茂 です。
 ようやく本欄を落ち着いて更新できるようになりました。改めまして、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 アメリカの大統領選挙のトランプ大統領対バイデン候補のテレビ討論会の、まるで子供の喧嘩のような有り様を見て、悲しく情けなく思い、アメリカという国は一体何処へ行くのか危惧の念を抱いた方は多かったと思います。
 アメリカ人は学校教育において、ディベートを積極的に取り入れ、そのルールを会得しているものと思っていたのですが、大統領選挙という最高のディベートの場においてあのようなことになるのなら、それもかなり怪しいと思わざるを得ません。世界の在り方も、国家の理想もほとんど語られることのない、罵詈雑言の応酬はこれで最後にしてもらいたい。あと二回残されている討論が少しでも実り多いものとなることを祈るような気持ちで切に期待します。

 日本学術会議会員の任命にあたって、推薦された候補者のうち6名を任命しなかったことが取りざたされています。総理大臣が任命権者である以上、任命権があるのなら拒否権も当然あるものと考えるのが自然でしょう。ただ、従来の内閣との関係(推薦された候補者全員をそのまま任命する)がなぜ変わったのか、ということについては、政府側が十分な説明を尽くす必要があるでしょう。
 日本学術会議は文部科学省ではなく内閣府の所管ですから、その担当大臣がいます。組織のルールとして、いきなり総理大臣が任命を拒否するとは考えられず、内閣府の担当大臣の承認を経て総理に上がると考えるのが自然ですが、今回どういう手続きを踏まれたのかも明確にしておいた方がいいのではないでしょうか。
 なお、この件に関連して、自民党の憲法改正草案では、国民の権利と義務の章に「国は国政上の行為につき国民に説明する責務を負う」と定めています。憲法改正は第9条や緊急事態に限られるものではありません。自民党で党議決定した唯一の案であるこの草案が等閑視されているのは本当に残念なことです。

 杉田水脈議員の発言は、自民党もその責任の一端を負わねばならないものでしょう。杉田議員は衆議院中国比例ブロックの比例名簿1位に登載されていたのであり、それはほぼ当選確実ということであったからです。このたび、下村政調会長が当議員に注意をされたとのことですが、自民党のイメージを低下させている点にも鑑み、党としてきちんとした対応が必要ではないでしょうか。
 このようなことの積み重ねが、「有権者を甘く見ている」との印象を国民や党員の方々に与え、大きな報いとなりかねないことを我々は知らねばなりません。中国ブロック所属の議員としてだけではなく、自民党所属議員の一人として、強くそう思います。

 ぜひとも週末に時間の合間を縫って読みたいと思っているのは、「『帝国』ロシアの地政学」(小泉悠著・東京堂出版・2019)、「ソ連はなぜ8月9日に参戦したか」(米濱泰英著・オーラル・ヒストリー企画・2012)、「中国海軍VS海上自衛隊」(トシ・ヨシハラ著・ビジネス社・2020)、「中国、日本侵攻のリアル」(岩田清文著・飛鳥新社・2019)、皇室典範改正への緊急提言(大前繁雄・中島英迪著・新風書房・2020)です。何が起こっても不思議ではない時代にあって、知識の習得と頭の整理が出来ておらず、国家国民のためにも、祖国の未来のためにもお役に立てないことを最も恐れます。

 10月となって、急に秋らしくなってきました。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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