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2020年12月25日 (金)

なかにし礼氏ご逝去など

 石破 茂 です。
 本年一年、大変なお世話様になり誠に有り難うございました。心より厚く御礼申し上げます。様々なご意見を当ページのコメント欄やメール、直筆のお手紙で頂きましたことにも、改めて感謝申し上げます。

 新型コロナウイルス一色に終わった一年でしたが、一年を終えるにあたって、ここでもう一度落ち着いて事態を冷静に分析し、対応を見直す必要があるように思われてなりません。
 陽性者数は増加の一途を辿り、コロナ対応病院におけるコロナ病棟の医師や看護師には過度のストレスがかかり、現場は医療崩壊の危機に直面しています。そして病院全体ではその他の来院者が減少し、経営が極めて厳しくなっています。
 ワクチンの接種も世界のごく一部で開始されたばかりであり、特効薬もない現状において、最も重要なのは「どのような治療を施せば重篤化した患者が死に至らないで済むか」ということではないのでしょうか。まずはあらゆるリソース(人、装備、資金)をこの点に集中させるべく政策を立案・実施することが優先されるべきで、いたずらに不安を煽るような言質はこれを妨げることになりかねないことを危惧しております。
 志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなった四月頃と比べて、なにが重篤化を招くのか、またそれに対する治療法は何があるか、分かったことも相当にあるはずですが、日々のワイドショーなどではそういった冷静な分析はほとんどされていないように思われます。医療現場に資金を配分すれば人材や医薬品・装備品を用意することができる余地のある間に(カネがあってもモノや人材が調達できずに恐ろしい思いをしたのは、ほんの数カ月前のことです)、重篤化対策を最優先とし、そこから順に手当てして、無症状者の隔離体制まで整えておくべきものではないでしょうか。
 自衛隊についても同様のことを申し上げたことがありますが、個々人の強い使命感とプロ意識のみに依存した体制は持続性を持たないのではないでしょうか。
 その上で、今回の新型コロナウイルスはエッセンシャルワーカーの方々や弱い立場にある方々をより高いリスクにさらしていることを踏まえて、社会的に弱い立場の方々を守るための経済的施策を、よりピンポイントで行えるよう考えるべきではないでしょうか。
 次期通常国会においてはこのような議論こそ行われるべきなのであり、党利党略は一切排すべきものです。正確な数字と分析によって、国民に少しでも安心感を持って頂けるようなメッセージを発し、国家としてのセーフティネットを明確に提示する、それによって弱い立場の方々が苦しむことの無いようにすることも政治の使命です。
 結果はいずれ、主権者である国民が総選挙において判断します。いわゆる「桜を見る会」関連の対応も然り、国民に対して誠実であるかどうかは、結局国民によって判断されるしかありません。こういった国民・有権者に対する怖れを決して忘れることの無いよう、改めて自戒して新年を迎えたいと思います。

 昨24日、作詞家・作家のなかにし礼氏が逝去されました。
 氏が手掛けられたザ・ピーナッツ、黛ジュン、いしだあゆみ、奥村チヨなどの作品群をはじめとして、大好きな作品も多く、やはり今年逝去された作曲家の筒美京平氏と共に、昭和を代表された偉大な方を喪い、まさしく一つの時代が終わったとの感を深くしています。
 この夏頃から、なかにし氏のご希望で、某週刊誌における私となかにし氏との対談が企画されており、私も楽しみにしていたのですが、ご病状の悪化とコロナウイルス感染への警戒感から二回延期され、結局実現することはなくなってしまいました。
 遺作となった「夜の歌」(講談社文庫)には、「王道楽土」を建国理念とし「五族協和」を唱えた幻の国・満州国に暮らし、その後、国家に見捨てられた人々の生き様が強烈なリアリティをもって描かれており、是非ともお話をさせて頂きたいと願っていただけに、ほんとうに残念でなりません。御霊の安らかならんことを切にお祈り致します。

 本日は「報道1930」(19時半・BS―TBS)に出演の予定です。
 12月30日は文化放送(ラジオ)特番「石破茂と古谷経衝、宇宙戦艦ヤマトを語る」が放送されます(20時・収録)。
 大晦日は恒例の「景気満開テレビ」に出演します(午前7時・フジテレビ系列)。

 今年の本欄はこれが最後となります。
 皆様ご健勝にて良い年をお迎えくださいませ。

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2020年12月18日 (金)

日本版CDCの必要性など

 石破 茂 です。
 各種世論調査で内閣支持率が大きく低下しています。その後もGo to キャンペーンの全国的な一時停止が響いたとか、ステーキ店での飲食が不評だったとか言われていますが、では仮にGo to をそのまま継続していればどうなったのでしょうか。「命の軽視」「経済優先姿勢鮮明に」などという見出しで強い批判に晒され、やはり支持率は大きく低下したように思います。最初から「とにかく叩く」という方針が決まっていたのではないかと邪推すらしたくもなりますし、自民党内が動揺している、などという報道に接すると、何を今更と言いたくなります。

 「5人以上の飲食」についても議論が混乱気味ですが、たとえ2人であっても至近距離で対面して大きな声で会話しながら飲食すれば危ないに決まっていますし、10人であっても間隔を十分にとって会話を極力控えていれば比較的安全なのであって、単に人数の多寡の問題ではないはずです。今後、「自粛警察」が再登場して5人以上の飲食者を告発することになるなど、想像したくもない光景です。

 春頃から言っているのですが、「命か経済か」のように二者択一を迫るような考えはあまりに一面的かつ単純ではないのでしょうか。どちらも大切であり、守るべきは「社会そのもの」なのだと思っております。
 旅行や外食、エンタテイメント参加などの「接触機会」を増やさなければ経済は上手く廻らないでしょう。しかしそれと併せて「感染機会」を減らすことは可能なはずです。マスク着用、消毒の徹底、距離を十分にとる配慮、大きな声での対面の会話はしない等々の対策を徹底して行うことで、健康と経済の両立を図るべきではないのでしょうか。
 建築基準法によって換気を義務付けられているホールであれば、相当の頻度で全体の換気が行われます。併せてマスク着用、会話禁止、一席かつ一列ずつ間隔を空ける、などの感染対策を徹底して行われるコンサートや芝居などは、もう少し頻度を上げて開催することも検討してもよいように思います。エンターテイメント業界への打撃は旅行業に次いで厳しいのであり、ここにも配意は必要です。

 一方で、医療崩壊を防ぐための医療資源(人員、設備、装備)への手当ても、本来もっと早くに秩序立てて行われるべきものではなかったのでしょうか。厚労省のホームページには、新型コロナウイルスに罹患した際の治療法が詳細に掲載され、随時更新されています。これを実行できる医療施設がどれほどあるのか、医療関係者にかかる負荷はどれほどなのかをよく調査・分析して、可能な限りの対処をしなくてはなりません。
 新型コロナには誰でもかかり得るのであり、どうすれば重篤化せず、死に至らないかをもっと啓蒙して国民の安心を確保すべきです。

 日本版のCDC(疾病予防管理センター)の創設の必要性について前回記したところ、「政府が大本営発表をするのでは意味がない」とのご意見を頂きました。まずは政府がバラバラな対応をしないこと、を主眼としての考え方で、しかもCDCの創設によって、現状よりもさらに科学的根拠を明確にした対応が可能となることを前提と考えております。
 台湾や韓国の関係者と新型コロナウイルス対応について意見交換をしたとき、「それはCDCが適切に機能したからだ」と全く同じ答えが返ってきたことが忘れられません。現在、我が国の医療現場が大変であり、事態が重大局面を迎えているからこそ、今一度、日本版のCDCはどうあるべきか、その必要性を訴えたいと思った次第です。

 週末はまた鳥取に戻る予定です。
 鳥取も含め、日本海側に突然の大雪で、色々な被害が出ています。まずは身の安全を確保することを考えていただきたいと思います。
 皆様、健康に留意され、お元気でお過ごしくださいませ。

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2020年12月10日 (木)

イージス・アショア代替案など

 石破 茂 です。
 明11日は午後から鳥取市で開催される鳥取大学振興協力会の創立20周年記念式典における記念講演で地元に帰りますため、10日に本欄を書かせて頂きます。御了察くださいませ。
 本日も東京都では新たに過去2番目に多い572人の新型コロナウイルスの感染が確認され、中でも65歳以上は過去最多の103人に倍増しました。高齢者施設でクラスターが発生したことが大きな要因とされていますが、それらの施設ではどのような感染防止策がとられていたのでしょうか。また、あまり外出しない高齢者が家庭内で感染した数はどれほどなのでしょうか。
 テレビの情報番組を見る機会があまりないのでよくわからないのですが、高齢者施設にせよ家庭内にせよ、換気や手洗いの励行、食事に時間差を設ける、食事の際の会話は極力控え、場合によってはアクリル板を設置する、等によって感染はある程度減らせるのではないでしょうか。
 テレビの情報番組には多くの学者やコメンテーターが出演して様々な見解を述べているのでしょうが、出来ることなら公的には政府のしかるべき立場の方と専門家一人ずつくらいが、毎日一定の時間に現状と対策を述べるなど、情報発信を一元化すべきではないかと思います。報道や言論の自由は当然尊重されなくてはなりませんが、多くの番組に複数の人が出演し、それぞれ異なる見解を述べられては、国民は混乱するばかりではないでしょうか。
 今国会でも議論にはなりませんでしたが、日本版CDCの創設は、防災省と並んで我が国に必要なものであり、公衆衛生の権威たるCDC長官が情報発信も一義的に責任を負う、という形があるべき姿だと考えます。

 

 突如として撤回が決定された陸上イージス(イージス・アショア)の代替案の方向性が、年末を控えた本日朝の自民党の会議で「ミサイル防衛専門のイージスシステムを搭載した艦船」にほぼ決定し、今後詳細を防衛省・自衛隊で詰めることとなりました。
 汎用性の高いイージス艦を日本海に24時間365日置いておくのは、限られた資源の活用方法としては効果的ではなく、また海上自衛隊の負担も大きいことから、イージス艦を緊張の高まる南西海域に回すべく、イージスシステム(レーダー)とランチャーを陸上に配備する、というのがそもそもの構想でした。グーグル・アースのみに基づいた杜撰な測量や、ブースターの落下範囲の見誤りなど、防衛省の責めに帰すべきことが多々あったとはいえ、今後どのように乗組員を確保するのか、自艦防護以外の能力を何処まで保持させるのか、等々難問はまだ山積しており、年明けに具体的な議論を進める必要があります。

 

 先週もご紹介した澤田廉三の「没後50周年記念フォーラム」はとても意義深いもので、深い感銘を受けました。
 澤田氏は1918年フランス在勤中、夏季休暇を利用してパリの南西、ブルターニュ地方を周遊するのですが、渡河する際に嵐に遭遇した時の船を操る地元の漁師の言葉はとても印象的です。
 (以下、「愛郷 外交官・澤田廉三の生涯」108ページより引用)
 「ムッシューはこの大波が怖くないのかね?普通は誰でも肝を潰す。さすがあんたは日本人だ」「パリジャンなど口ばかりで腰抜け野郎よ」「真の愛国者は田舎の漁師や百姓ですぜ」
 廉三は翌日から数日間フランスの田舎を巡った。国を挙げて戦争(第一次世界大戦)に苦しみながら、まるで中世のような農漁村の風景と純朴にして剽悍(ひょうかん)な漁師たちに、正直にして信心深い農家の人たちが黙々と働いている。ここにこそフランスのバックボーンがあるのだなと廉三は感慨を深くした。「ドッシリとした田舎が無ければしっかりした国はありえない」と「愛国は愛郷より」そのものを見る思いを深めた旅だった」(引用終わり)

 

 フォーラム出席前に、鳥取市のある農村集落での収穫祭に顔を出したのですが(集落の皆様30人余が参加され、コロナ対策には万全の注意を払っての開催でした)、この澤田廉三の言葉を深く実感しました。捕獲したイノシシの鍋をつつき、地酒を酌み交わしながら語られた内容には、地域と日本の将来、政治の在り方、国民の採るべき姿勢など、実に鋭く本質を突いたものが多く、ハッとさせられることばかりでした。かつて当選回数の少ない時は、毎週のようにこんな機会を持っていたものだとしみじみと思ったことでした。
 二週続けての澤田廉三のご紹介で恐縮ですが、昭和天皇、松岡洋右、白鳥敏夫、石原莞爾など、戦前・戦中の激動の時代に誰が、どのような思いで、何を語り、いかに行動したか、さらに知識を深めたいとの思いを一層強く致しました。

 

 明日11日金曜日は珍しく平日に帰郷いたしますので、かねてから行ってみたいと思っていた鳥取中央児童相談所を訪問させていただく予定です。現場を見ずして政策を語ってはならないと思いながら、ここまで訪問の機会を持たなかったことを深く反省しています。
 今年も本当にあと僅かとなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2020年12月 4日 (金)

澤田廉三など

 石破 茂 です。
 臨時国会は明日で閉会となります。
 新型インフルエンザ等対策特別措置法を、新型コロナウイルス対策を正面から取り入れ、あるいは都道府県知事の権限を強化し、あるいは日本版CDCを創設するなどして改正することや、米国新政権発足に伴う米中関係の今後と我が国の外交・安全保障政策の在り方、格差是正と経済成長両立のための経済・財政政策の方向性、「桜を見る会」や吉川元農林水産大臣の金銭授受問題など、さらに議論を深めなくてはならないテーマは多くあったはずですが、野党から提案された会期延長を与党が拒否してしまえばどうにもなりません。国会の存在意義そのものが問われているのであり、国民の間に「国会は存在してもしなくても同じだ」とのニヒリズム的な諦観が急速に広がりつつあるように感じられてなりません。
 これがいつしか「やはり検察権力しか政治腐敗を正せない」とか、「民主主義より専制・独裁政治の方が効率的だ」とか、挙句の果てに「本当に庶民のことをわかっているのは国を憂う自衛官たちだ」とかいう方向に変わっていくことを心より怖れています。
 いまさら「桜を見る会」のような話をいつまでやっているのだ、もっと重要な話があるはずだ、とのご批判もありますが、もっと重要なことがあるからこそ、これまで述べてきた主張の正しさを早急に明らかにして国民の納得と理解を得ることが政府・与党の責任であり、それを果たさずして批判する側に責任の矛先を向けるのは筋違いというものではないかと私は思います。

 コロナ感染が急速に拡大しつつありますが、情報発信は一元化し、様々な言説が流布しないような体制を構築すべきと思っています。
 コロナの感染者や重症者の増加も深刻ですが、自殺者数が4か月連続で増加し、今年10月は対前年同月比40%増の2153人と、2015年5月以来の多さで、中でも女性の自殺者の増加が顕著なのが気になります。これにコロナ禍がどれほど影響しているかは定かではありませんが、高齢者のみならず、女性、非正規労働者、低所得者等々、弱い立場の方に多くの負担がかかっているのではないでしょうか。

 6日日曜日に鳥取県岩美町で開催される「澤田廉三没後50年記念フォーラム」でゲストスピーチを行うため、同町浦富出身で元外務事務次官・元駐フランス特命全権大使・初代国連大使の澤田廉三氏について調べているのですが、お名前こそ知っていたものの、不勉強でその業績や人柄については全く知りませんでした。
 この8月に刊行された「愛郷・外交官 澤田廉三の生涯」(片山長生著・同書刊行会刊)は、澤田氏の生涯と、戦前・戦中・戦後の激動の歴史、その時代を生きた人々の発言と行動を生き生きと描いた作品です。中でも、昭和2年4月から昭和5年8月まで、外務本省の課長在任のまま、即位されたばかりの昭和天皇の侍講掛(じこうがかり・君主に仕えて学問を講義する役職)に任ぜられていた間の昭和天皇との会話は、昭和天皇の深い思し召しが強く感じられます。
「最も経済が発展し、豊かさを誇っていたアメリカでさえあのような悲劇が起こるんだね。結局、恐慌は自由主義の宿痾なのだね」
「私が一番しっかりした羅針盤を持たなければ駄目なのだね」
「私は裕仁だから(仁徳天皇と違って)徳がないのでこんな世にしてしまった。仁愛多き者になりたいのは人一倍なのだが。なぜ軍人たちも、議員たちも天皇の独立大権である統帥権を好き勝手に弄ぶのだろうね」
 当時の世界大恐慌や統帥権干犯事件を受けてのお言葉ですが、ひたすら恐懼する他はありません。

 子供のころから比較的歴史は好きなのですが、私の歴史勉強はともすれば年号の記憶に特化してしまったようで、深い知識に乏しいことは否めません。澤田廉三氏のみならず、学徒出陣に反対して東条首相と対立して文部大臣を辞任し、終戦直後に敗戦の責任をとって自決した医学者・教育者の橋田邦彦氏など、鳥取県出身者にも立派な人が多くおられたのですが、歴史を郷土史と重ね合わせる形でリアルに学ぶことの楽しさを今頃になって実感しています。「愛郷~」は当初700部の限定出版ですが、鳥取市内の書店にて発売中です。

 コロナの感染拡大によって、5日土曜日の関西での日程は延期となりました。
 6日日曜日は、岩美町でのフォーラムの他、いくつかの地元日程が入っております。鳥取県は感染者数、感染率ともに全国で最も低いレベルではありますが、十分に注意して行動しなければなりません。
 今年も残り少なくなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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