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2022年1月28日 (金)

野党質疑の迫力不足など

 石破 茂 です。

 総理と全閣僚が出席し、テレビ中継も入る予算委員会の基本的質疑が終わり、今後いくつかのテーマで集中審議が行われて討論・採決という流れになるものと思われます。

 閣僚退任後、随分と長く予算委員会に籍をおいていますが、質疑が中断する場面がここまで一度も無いのは初めてのような気がしています。緊張感に満ちた質疑が行われないのはすべて野党の気迫の不足と拙劣な質問技術によるものと断じる他はありません。
 最近の流行りなのでしょうか、与野党を問わず、質問の冒頭に「本日は質問の機会を与えていただき有り難うございます」と述べるのが決まりのようになっていますが、議会で質問するのは国会議員が国民から与えられた当然の権利なのであって、誰かから機会を与えられたというものではありません。ちなみに、自民党の会議でも、期数の若い議員などが冒頭に「発言の機会を頂き有り難うございます」と述べますが、これは丁寧とか礼節を弁えるとかいうものとは少し違うのではないかと思ってしまうのは私だけなのでしょうか。
 それはさておき、野党は国民からの批判を恐れてか「対決よりも解決」「提案型」に拘り、「私の提案を受け入れていただき有り難うございます」などという発言も目立つようになり、まるで与党議員の発言のようで存在意義が全く感じられません。これでは質問に迫力が出るはずもありません。対する閣僚が事務方の用意した答弁をそのまま読み上げても、二の矢、三の矢を放って議論を深めることもせず、「丁寧なご答弁をいただき有り難うございました。時間もないので次の質問に移ります」などとあっさりと引き下がってしまいます。おそらく、ストーリー性のある質問の組み立てが出来ていないのではないでしょうか。
 自民党が野党の時代、予算委員会の質問作りには膨大な時間をかけて準備し、このように訊けばこのように答えるだろう、では次にこのように訊き…という具合に、更問、更々問、更々々問まで用意して一歩ずつ政府を追い詰め、最後には「あなた方政府には何もわかっていない!」と決めつける、というのがパターンでした。今の政府は当時の民主党政府よりもはるかに強かで能力のある政府なのですから、攻める側の野党はより一層の努力をしなければならないはずなのに、ほとんどそれが見られないのは何とも情けないことです。
 折角、総理が答弁される予算委員会の場で、各委員会での質疑のような細かい内容の質問をすれば、事務方が用意した答弁でお終いとなってしまうことは当然予想すべきことであり、勿体ないことこの上ありません。野党には、委員会終了後に反省会を開いて次の機会に備えるような真摯さが求められると思います。

 特に「新しい資本主義」と「敵基地攻撃論」についての議論の深まりがないことには相当な深刻さを感じます。
 資本主義の捉え方とその修正の方向性には様々なバリエーションが考えられるはずです。人間の欲望が無限であること、それを叶えるためのフロンティアがあることを前提として発展してきた資本主義は、限りある地球資源、これ以上破壊されると人類の生存に関わる自然環境、あるいは発展途上国と言われる国々の飛躍的発展、などの現状に直面して、どのようにあるべきなのか。デジタル空間は次の資本主義のフロンティアたりうるのか。そう考えるとすれば、デジタル田園都市構想による地方創生との組み合わせでわが国の経済にはどのような発展があり得るのか。
 敵基地攻撃の範囲をどう捉えるか。従来の専守防衛といかなる関係に立つものなのか。政府は「日米の役割分担は基本的には変更しない」との立場ですが、「基本的」とは何であり、それ以外の部分で何を為そうとしているのか、それは抑止力の向上にどのように繋がるものなのか。
 これら二つの問題を議論するにあたっては、質疑者と答弁者の双方に「資本主義とは何か」「専守防衛とは何か」といった基本的な理解がなければなりません。
 地位協定に関する議論もまったく深まりませんでした。今週接した「日米地位協定」(山本章子著、中公新書)は、日本の国際社会における活動の広がりと併せる形で地位協定を少しでも改定しておくべきだった、との論説であり、啓発されるところ大でした。

 迫力を欠く野党の質疑の中で十分傾聴に値したのは、国民民主党の前原誠司議員と、有志の会の北神圭朗議員の質問でした。前原議員は新しい資本主義について、北神議員は人口急減を踏まえた国の在り方について、巧みに持論を交えた質疑を行い、与党席からも拍手が起こる内容で、予算委員会質疑とはかくあるべしと強く思ったことでした。

 月曜日に開かれた自民党安全保障調査会の勉強会では、礒崎敦仁・慶大教授の北朝鮮論、小泉悠・東大専任講師のロシア論を聞き、質疑応答が交わされました。両先生とも本質論を展開されてとても聞き応えがあり、私の質問にも的確にお答えくださいました。
 「北朝鮮はもはや日本に対して期待はしていない。中国とロシアはあくまで北朝鮮の体制を維持する」
 「プーチン政権は日本を自分では何も決められない半主権国家としか見ていない」
という両先生の指摘は、まさしく正しいものだと思います。
 拉致問題も、北方領土問題も、この10年内に前進を見なかった課題であったことは厳然たる事実であり、何故そうなってしまったのかを直視しない限り、新しい展開はあり得ません。
 北朝鮮のミサイル発射の頻度の高まりは異様ですが、これはロシアと中国が容認しない限りあり得ないことです。北朝鮮の体制を維持することはロシアと中国にとっては必要不可欠であり、日本の意向とは関わりなく支援が続けられると認識しておくべきです。
 ロシアにとってオホーツク海に戦略ミサイル原潜を潜ませておくことは、アメリカに対する第二撃能力を保持する上から絶対に必要なことであり、領土問題の是非とは切り離して考えているに違いありません。プーチン大統領が「北方領土が返還された場合、日本はそこに米軍基地を置かないと約束できるのか」と発言したことに、問題の核心が表れているのだと思います。

 去る23日に行われた鳥取県琴浦町の町長選挙では、二期目を目指した現職が、昨年末に突如として立候補を表明した女性元町議に敗れる、という波乱がありました。県庁職員出身の現職は長い知己でもあり、実務面でも精神的にも応援していたのですが、思わぬ結果となってしまいました。直前まで無投票が予想されていたため、陣営にも我々にも油断があったのかもしれず、選挙の恐ろしさをまざまざと感じたことでした。示された町民の意思を尊重しつつ、今後の対応に誤りのないようにしなければなりません。

 新型コロナ新株による感染拡大の影響で、週末も多くの日程が変更となりましたが、特定枠となっている今夏の参議院選挙鳥取選挙区の対応も含め、抱えているいくつかの諸案件に目途をつけなくてはなりません。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2022年1月21日 (金)

イシバチャンネル第百二十二弾

イシバチャンネル第百二十二弾、「年末年始の過ごし方から、大雪やトンガ火山などの災害について」をアップロードしました

是非ご覧ください

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本質的な議論など

 石破 茂 です。
 衆参本会議における総理の施政方針演説と質疑が終わり、来週から予算委員会が始まります。
 本会議での演説や質疑を聞く限り、総理は質問を聞かれる姿勢も、使われる言葉も極めて丁寧で低姿勢でおられました。
 今後、「平時と有事の医療体制の再構築」「日米地位協定改定や敵基地反撃能力保持の是非に象徴される今後の日米同盟の在り方」「新しい資本主義のさらなる具体的施策」「行政の国民に対するあるべき姿勢」等々、ご自身の考えを熱情を込めて率直に語る場面を期待しております。多くの反発を覚悟の上で、国民に新たな気付きと危機感を持って頂き、困難を共に乗り越えようという一体感を抱いてもらうことが今の時代には必要であるように思われてなりません。

 

 「オミクロン株の感染者が急拡大」と連日報道され、再び社会的な活動が停滞しつつありますが、「陽性者が急拡大」と言うのが正しいのであって、「感染者」でもなければ「発症者」でもないはずです。
 ウイルスやウイルスの死骸が鼻腔や口の中に入るのは、平素から誰にも起こることですが、これを検査可能な値になるまで増幅させるPCR検査で反応があれば「陽性」。そのウイルスが体内の細胞内に入った段階で「感染」、体内の免疫システムがこれを排除できない場合に「発症」で、問題とするべき段階はこちらです。ただ体内に入った「陽性」のみを対策の基準にし続けると、根本を間違える可能性が高いと思います。
 だからこそ、というべきか、本来はかなり大切な「免疫力をいかに高めるか」といった話も、報道において前面に出てくることはあまりありません。しかし「陽性」までで免疫システムがきちんと働けば、他の人にうつすほどにウイルスが体内で増殖することはないわけですから、本来「できる対策をみんなでしよう」というのなら、睡眠をきちんととる、少しでもいいので日光を浴びる、無理のない程度に歩く(運動する)、など、免疫力を高める数々の方策をもっと広めるべきなのではないでしょうか。
 そして発症の場合に迅速に医療機関における適切な治療が受けられる体制づくりには、大病院におけるコロナ患者受け入れ、それ以外の患者の中小病院への受け入れ、あるいは広域連携による患者の搬送など、「有事」の体制に切り替えられることが必要です。

 

 日米同盟の特質については当欄でも何度も述べましたが、互いが果たすべき義務が「米国の日本防衛」「日本の米軍への基地提供」と、非対称的であることにあります。これを将来にわたって是とするのかどうか、が集団的自衛権行使の是非の議論の本質ですし、日米同盟のあり方の本質です。「敵基地反撃能力」のみならず、将来的、本質的な議論を、党においても行い、防衛戦略などの方針に反映させなければなりません。

 

 日本の非正規雇用者数は2000万人を超え、年収200万円以下の人も1000万人を超えました。一方において年収1億円超の人はコロナ禍にあって1万人以上増加しています。成長と分配の好循環、成長なくして分配なしと言われる中で、株主最優先の体質を「公益資本主義」的体質に転換すること、労働分配率を上げること、所得性向の高い層の所得を増やし消費を上げること、を実現するには何が最も必要か、これも優先度の高い議論です。人口の減少に全く歯止めがかからないのには様々な原因がありますが、その最大の要因の一つとして結婚適齢期の若い層の所得が低いことがあるのですから、この解決にも大きく寄与するはずです。

 

 さて、「野党は批判ばかりしている」との指摘を怖れてか、今回の野党質問には「提案型の野党」「対決から解決へ」との姿勢が目立ち、著しく迫力を欠くものとなりました。我々の野党時代には、先輩議員から「批判ばかり、と言われようとも、とにかく徹底的に民主党政権を攻撃せよ。野党とはそういうものであり、解散に追い込むためにあらゆる手法を駆使せよ」と厳しく教えられたものでした。「提案型」の野党など、与党にとっては怖くも何ともないのであり、「私たちの提案を受け入れてくださりありがとうございました」などという擦り寄り方の野党しか存在しないのであれば、下手をすると大政翼賛会に類似した政治体制にもなりかねません。
 精彩を欠く野党質問の中にあって、立憲民主党政調会長の小川淳也議員の質問はなかなか聞き応えのあるものでした。与党席からは「そんな演説は新橋の駅頭でやれ!」とのヤジも飛んでいましたが、一般の人が聞いていて心を揺さぶられる質問でなければ意味がありません。このような質問に政府が正面から答える、そのような予算委員会となることを心から期待しています。立派な野党の存在があってこそ、政府もまた鍛えられるのです。

 

 総理の演説は勝海舟の名言である「行蔵は我に存す」で始まるものでした。「自分の決断は自分で決める。批判は人々が自由にすればよい」という意味の言葉で、福田康夫元総理の座右の銘であり、昨年私も総裁選挙で河野太郎氏を支持する決断をした時に使いました。だからといって、「岸田総理の安倍前総理への当てつけか」といった一部報道には、嘆息を禁じ得ません。

 

 今週は「安定的な皇位継承について」の書籍や論考を多く読みました。畏れ多いことではありますが、皇族の方々になぜ「基本的人権」をほとんど認めず、あれほどまでの精神的・体力的なご負担を強いるべきなのか、そこから考えなくてはならないような気がします。
 私は本来、雅子皇后陛下、紀子親王妃、眞子内親王(小室眞子さん)に対するバッシングなど、そもそも許されないと考えます。日本国民の品性の問題ですし、「自分たちの意に沿わない天皇は変えてもよい」という考えにも繋がりかねません。大切なものの価値を理解し、深い感謝の念を持たなければ、やがてそれを失うことになることを危惧します。
 「天皇」が日本国憲法の第一章に位置づけられながら、この議論を敢えて避けてきたことにも根本的な問題があります。大学の憲法の講義でも習った記憶が全くありません。もちろん「あまりに畏れ多いので」というのが主たる理由ではあるのでしょうが、だからといって避けていい問題ではありません。今までの自分の不勉強を深く恥じつつ、今後もさらに努力を重ねて参ります。

 

 近々、地方移住と地域再生をテーマとする楡周平氏の新著「サンセット・サンライズ」が講談社より発売されます。縁あって本の帯を書かせて頂いたのですが、名作「プラチナタウン」に匹敵する好著だと思います。国民意識の改革なくして地方創生は決して成功しないのですが、同時にビジネスとしても成り立つものでなければなりません。是非ご一読ください。

 

 早いもので一月ももう後半となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2022年1月14日 (金)

海部俊樹元総理ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨年三月に設置された「安定的な皇位継承についての有識者会議」が議論をとりまとめて総理に提出、総理から国会に手交されました。
 女性天皇や女系天皇について、「議論はかえって継承を不安定化させる」ので「機が熟するのを待つ」として、問題を完全に先送りしてしまったのは、とても残念なことでした。
 天皇陛下のお立場が日本国憲法により「国民の総意に基づく」となっている以上、法律の一つである皇室典範の改正を含む議論は、政治の側が国民世論に向けて喚起する以外にありません。ただ待ってさえいれば「機が熟する」などということはあり得ないと私は考えますし、残された時間はそんなに多くはないという焦燥感に駆られます。この際、まずは男系継承論の主張を丹念に読み、よく吟味するところからもう一度始めたいと思っております。

 

 通常国会開会前にオフィスの書類・書籍等を整理しなければならず、今週はこれにかなりの時間を費やしてしまいました。
 たまたま残していた雑誌「諸君」(文藝春秋刊。とても好きな雑誌でしたが、現在は廃刊状態となっています)の2005年6月号掲載の「占領憲法の終焉」と題する記事の中で、当時自民党幹事長代理であった安倍晋三元総理が「憲法第九条の第二項では『交戦権はこれを認めない』とされているが、解釈でこれをしのぐのは限界にきており、この条文も含めて第二項は全面的に削除し、改正すべき」と述べておられるのを見て、これを読んだ当時の感慨を思い出しました。
 ここで安倍元総理が述べているのは、今言われるところの「第二項全面削除論」であり「平成二十四年自民党憲法改正草案」であり、私のかねてからの主張そのものです。これがどうして「第一項・第二項はそのままに、第三項で自衛隊の存在を明文化する」という摩訶不思議な論に変わってしまったのでしょうか。
 政治家が主義主張を様々な事情から変えるのは決して悪いことではありませんし、私自身も何度か自分の考えを変えて参りました。しかしそこにおいては「どのような理由で考えを変えたのか」という説明が必要なのではないでしょうか。
 もしもその理由が「自衛隊加憲であれば通りやすい」というようなことだったのであれば、今一度この2005年当時の原点に戻っていただき、通りやすさよりも本来あるべき姿について論じていただけないものだろうか、と感じたことでした。

 

 オミクロン株の感染の急拡大の要因の一つとして、米軍基地在住者との関連が報じられています。しかしこの件について、日米地位協定を論じるものはあまり見受けられません。
 日米地位協定第9条は「外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」と定め、この「管理」に検疫も含まれるとされているため、在日米軍人および関係者は原則として日本の検疫体制に従うことはありません。
 地位協定の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」であり、日米安全保障条約と一体のものです。
 その日米安全保障条約が、世界に例を見ない「非対称的双務条約」(当事国の果たすべき義務が米国の「日本防衛」、日本の「領域の米軍への提供」と、互いに全く異なる内容となっている条約)であるという事実は、あまり日本人には認識されていません。
 この条約のあり方は、一方で「日本がアメリカ防衛の義務を負わない方が楽だし、基地負担は基地が所在する地域に引き受けてもらえばいい」といった非常に無責任な考えを無意識に生み出し、他方で米軍に「日本のどこにでも、どれだけでも、いつまででも、どのようにでも展開できる権利がある」と思わせてきました。
 本来、安全保障法制を成立させたとき、ごく限定的にせよ集団的自衛権の行使を可能としたのですから、この関係にも多少の変化があって当然だったと思うのですが、そうはなりませんでしたし、これに言及する人もほとんどいませんでした。
 今でも私は、在日米軍基地については米軍専用地域としてではなく、一義的に自衛隊が管理する駐屯地や基地の中に米軍が間借りする形にできる限りしていくべきだと思いますし、日米の防衛力の分担についても精緻な対話のもと、常に実行可能な具体的構想が共有されているべきだと思っています。

 

 この問題も皇位継承と同じく、「機が熟するのを待つ」などという先送りは許されません。政治が強い問題意識を持って国民に語らない限り「機が熟す」ことはあり得ないのであり、在日米軍による大事故や大事件が起こってしまえば、その時に日米同盟は決定的な危機に瀕することになるでしょう。韓国やフィリピン、あるいは同じ敗戦国であるドイツやイタリアが地位協定の改定を実現し得たのは、国民世論を背景とする彼らの粘り強い努力とともに、集団的自衛権を行使してともに戦うという同盟の質の相違によるところもあったのではないかとも考えられます。
 かくいう私自身、防衛大臣を拝命していた時は、国会で地位協定について質問された際、議論が混乱することを怖れて「今後も運用の改善で対処する」と定型的な答弁しかしてきませんでした。そのことへの反省も込めて、あるべき日米同盟の姿を追求していかねばならないと考えております。
 なお、地位協定については「日米地位協定」(山本章子著・中公新書)、「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」(矢部宏治著・講談社現代新書)を興味深く読みました。

 

 平成元年から二年余りにわたって総理大臣を務められた海部俊樹先生が91歳で逝去されました。
 平成元年8月8日、党本部8階ホールで開催された両院議員総会において、参院選に敗北した宇野宗佑総裁の後任として海部先生が総裁に選出された際、私は当選一回の最年少議員として総会決議を読み上げたのですが、33年前のその時の光景がまるで昨日のことのようです。
 政治改革の嵐の中で、我々若手議員は何度となく海部総理と面談して小選挙区制導入を迫りました。小選挙区制導入を掲げて解散・総選挙を断行しようとされたのですが、反対派にこれを阻まれ、結局退陣に至ります。その後の自民党離党、新進党初代党首就任、自民党復党などの際には様々な批判もありましたが、我々若手に対しても決して偉ぶることのない、表裏のない人柄の真っ直ぐな誠実で爽やかな総理でした。
 当時の私のリーフレットに載せた「初当選は同じ二十九歳、君もがんばれと海部総理」というキャプションを付けた写真を見ながら、しみじみと過ぎし日々を思い出したことでした。
 御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。

 

 国会休会中の間に、できるだけ地元に帰りたいと思っているのですが、悪天候で予定が大幅に狂うことが多く、本日も雪のため空路・陸路とも欠航・運休となり帰郷出来なくなってしまいました。
 15日土曜日は長い友人である田中学・元貝塚市議会議長の市政報告会でスピーチする予定です(午後2時・貝塚市市民文化会館コスモスシアター)。維新の会が強い大阪にあって、懸命に自民党の選挙の先頭に立って戦い、自民党所属青年議員の中心として活動してきた盟友のため、何かの役に立てれば幸いです。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2022年1月 7日 (金)

新年ご挨拶

 石破 茂 です。

 明けましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

   山陰地方は年末年始にかなりの降雪となりましたため、陸路・空路共に運休や欠航が相次ぎ、在京の年越し・迎春となりました。  最近は安全第一の考えからか、早々と前日のうちに運休や欠航を決めるようになりましたが、飛行機の場合、以前のように目的地まで条件付きで飛ばし、機長が僅かな雲の切れ間をついて着陸し、乗客から「有り難う!」との声と共に拍手が沸き起こるような光景はもう見られないのかもしれません。


 鉄道や飛行機ばかりではなく、4日には羽田まで向かうタクシーが予約した時間に到着せず、確認してみると「確かに予約は受けたが、ドライバーに伝えるのを忘れていた」との回答に唖然としてしまいました。他のタクシーに変更して何とか事なきを得たものの、この国の歯車は何処かが狂いつつあるように思われてなりません。使命感、責任感、矜持などという言葉が死語になるようではもはや国も終わりです。誠実や実直などといった価値観が軽侮され、阿諛追従や忖度が罷り通る日本の国であってはならないと痛切に思います。  年始に多くの日程が飛んでしまいましたため、お休みの期間に恒例としているNHKの「映像の世紀」を通して観る機会に恵まれました。中でも近作の「太平洋戦争 銃後 もう一つの戦場」「中国 革命の血と涙」の二作は大変見応えのあるもので、是非ご覧になって頂きたいと思います。  戦中から戦後など、価値観が大きく転換した際、「実は自分も前からそうだと思っていた」などと言い出す人は存外多く居るもののようです。今の経済政策にしても外交・安全保障政策にしても、同様のことが言えるのではないでしょうか。  資本主義、民主主義、安全保障政策、社会保障政策など、今我々が当然のものとして享受している社会のシステムは、全て人口の増加を所与の前提としていたのであって、それが崩れつつある今、根幹が揺らぎ始めるのは当然のことであり、根本論に立脚しないままに弥縫的に取り繕おうとしてもそれは無理というものでしょう。偽装的、欺瞞的な状況から何としても脱却する一年としたいものです。  オミクロン株の感染が沖縄・山口・広島などの米軍基地が所在する地域から拡大しつつありますが、日米地位協定により日本国の検疫が及ばないなどという事態はどう考えても不合理です。地位協定は、これと一体である日米安保条約とセットにして論じなくてはならず、集団的自衛権の本質的な核心はここにこそあります。    今まで怠惰にして突き詰めて考えることの無かった課題のあまりの多さに呆然とするばかりですが、本年も皆様のお知恵をお借り致したく、重ねて何卒よろしくお願い申し上げます。  明日からの連休、どうか皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2022年1月 6日 (木)

イシバチャンネル第百二十一弾

事務局です。イシバチャンネル第121弾「2021年振り返り~どうなる2022年」をアップロードしました。

2021年振り返り~どうなる2022年①

2021年振り返り~どうなる2022年②

2021年振り返り~どうなる2022年③

是非ご覧ください。

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