観光船事故など
石破 茂 です。
知床の観光船の遭難事故は何とも痛ましいものです。ご両親への親孝行の気持ちとして北海道旅行をプレゼントした男性の話など、あまりに痛ましく、言葉を失ってしまいます。旅行をプレゼントされたご両親は恐らく幸せ一杯の気持ちで観光船に乗られたのでしょう。ご両親が釧路市の和商市場で購入したカニが男性の神戸市の自宅に届いた時、もうご両親はこの世におられなかったのかもしれません。最後の時、何を思われたのか。佐賀県有田町の男性は、奥さんに「船が沈みそうだ。今まで有り難う。お世話になったね」と電話していたそうで、心を打たれます。
昭和60年8月12日、墜落していく日航ジャンボ機の中で「本当に今迄は幸せな人生だったと感謝している」との遺書を遺した川口博次さん(当時大阪商船三井船舶神戸支店長)にも心から深い感銘を受けたのですが、人の真価とはこのような時に現れるのかもしれません。そのように行動できるのか、私にはとても自信がありません。己の至らなさを恥じるばかりです。
未だに行方のわからない方々が一日も早く発見されることを願います。
海上運送法は船舶航行の安全について定めていますが、これが遵守されていればこのような事故は起こらなかったのでしょう。当選三回の時、衆議院規制緩和に関する特別委員長を務めていた際、経済的規制は可能な限り緩和されるべきだが、人命や身体の安全に関わる社会的規制の緩和には慎重であるべき理由として、消費者(交通機関の場合は乗客が、事業者の安全基準遵守の態様について情報を知り得る立場にいないことが挙げられているのを知って深く得心したものですが、今回それを改めて想起したことでした。
5月9日のロシアの対独戦勝記念日を間近に控えて、ウクライナ情勢は緊迫の度を増しています。
現在でもロシアは石油やガスで海外から一日で邦貨換算1300億円(年額50兆円弱)もの収入を得ているとの報道もあり、これが事実とすれば経済制裁の実効性もかなり疑問と言わざるを得ません。ロシアの銀行のSWIFTからの排除も、一部で喧伝された「金融の核兵器」的な効果があったとは思われないのですが、このあたりについての正確な情報が不足しているのは極めて残念なことです。
NATOは武力介入せず、資金や兵器などの提供によってウクライナを支援していますが、戦争は長期化し、無辜の民の犠牲は増えるばかりです。戦争が外交の延長であり、外交には内政が強く反映される以上、早期に終わらせるためにはロシアのプーチン、ウクライナのゼレンスキー両大統領が「ロシアは勝利した」「ウクライナの独立は守られた」という、それぞれの国内を納得させられるだけの交渉を行う他はなく、これについては良い悪いの問題ではありません。プーチン大統領の暴挙に対して正義を行うのは、停戦の後でも十分に可能です。停戦は降伏とは全く意味の異なる事実行為だからです。
一刻も早く戦闘を停止させ、無辜の民の犠牲を止める、核兵器の使用と、第三次世界大戦に繋がるような事態を阻止する。優先すべきはこの二つです。
ウクライナ戦争の当初から申し上げている通り、ロシアの行為を最も強く非難すべき立場にいるのは、中立条約を破って侵攻され、昭和天皇のポツダム宣言受諾の詔勅が発せられて以降も攻撃を受け、多くの人々が殺害され、シベリアでの強制労働に服せられて五万人もが命を落とし、今なお北方領土が不法占拠されている我が日本国です。
そして今回のロシアの侵攻を許した背景として、ウクライナがロシアから侵略されても武力をもって支援しないと早々に表明したアメリカをはじめとするNATO諸国の姿勢にも大きな責任があります。ブダペスト覚書でウクライナが核を放棄したにもかかわらず、その安全を保障したはずのアメリカやイギリスも、ロシアの侵攻からウクライナを守ることをしなかったではないか。
これらをよく認識した上で議論がなされなくてはなりません。
グテーレス国連事務総長がロシアとウクライナを訪れるなど、国連もそれなりの努力はしています。経済制裁には賛成していない中国は今のところ事態の推移を注視しているように見えます。
1956年のハンガリー動乱の際に、中国は「帝国主義の侵略政策に真っ向から対決してのみ平和を守り得る」と主張して、積極的に仲介の労をとりました(もちろん中国の動機はそのような綺麗事ばかりのはずはなく、様々な打算と思惑があったに違いなく、事実この仲介によって、その後しばらくソ連に対する中国の発言権は高まり、ソ連から核技術を供与されることに繋がったのだと言われています)。
国連や中国など潜在仲介国の今後の動向が戦争の行方を大きく左右するのであり、日本もただG7の中のポジションだけを確保していればいいのではないことを、政府首脳や外交当局はよく理解しているはずです。
本日、自民党に「ラーメン文化振興議員連盟」が発足し、お世話係を拝命することとなりました。
ラーメンはまさしくカレーと並ぶ国民食となりましたが、小麦価格の高騰と円安もあって値上げが予想され、コロナ禍で経営が困難になっているお店も多くあります。国民政党である自民党として、この振興に助力するべきことはむしろ当然であり、地方創生にも大きく寄与するものと思います。
今回初めて知ったのですが、同じ国民食でもラーメンは体育会系、カレーは文化サークル系なのだそうです。ラーメンは食べ歩きやチェーン店が全国展開でその覇を競うなど体育会系の色彩が濃いのに対し、カレーには一部を除いてあまりそのような面がありません。食文化の奥の深さに改めて気付かされる思いです。
明日から連休に入り、何日か地元に帰る他は在京して溜まった用務を少しでも済ませてしまいたいと思っております。
5月1日日曜日は「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系・午前7時半~)、5月3日火曜日は「日経ニュース プラス9」(BSテレビ東京・午後8時54分)、5月7日土曜日は「News BAR 橋下」収録(ABEMA TV・5月14日配信予定)に出演する予定です。
皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。