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2022年11月25日 (金)

鳥取市議会議員選挙など

 石破 茂 です。
 経済再生担当相、法相、総務相と閣僚の辞任が続いていますが、ここは何とか乗り切らねばなりません。問題点が指摘された閣僚は、論点を逸らしたり、その場しのぎの不誠実な言い逃れをすることなく、真実を明らかにしたうえで詫びるべきは真摯かつ率直に詫び、国民の納得が得られるように努めなくてはなりませんし、大臣を支える官僚達もたとえ大臣の機嫌を損ねることがあっても率直に諫言すべきです。私もかつて閣僚在任中、部下の率直かつ適切な諫言で救われたことが多々ありました。
 夕刊紙や週刊誌では後継内閣に向けての党内の動きが面白おかしく報ぜられていますが、頻繁に内閣を代えてよいわけがありません。昨年9月に、党員投票や報道機関の世論調査では下位にあった岸田氏を、自民党国会議員の多数で総裁に選び、衆参本会議で内閣総理大臣に指名したのですから、その責任は国民に対してきちんと負わなくてはなりません。内閣に足らざるところがあればそれを指摘し、補うのが与党の責務なのであって、批判もせず、意見も言わず、阿諛追従ばかりしているような態度があるとすれば、それはかえって内閣の足を引っ張ることになるのです。

 

 前回の本欄で、日本政府の言う「北朝鮮のミサイル発射に対し、北京の外交ルートを使って強く非難し厳重に抗議した」とは、誰が誰に抗議し、どのような反応があったのか」と外交部会で指摘したことを紹介しましたが、今週の同部会で外務省から「北京には日本も北朝鮮も大使館を置いており、日本大使館のその任にある者が東京の政府の命に従い、その意を受けて先方の担当者に伝えたということであって、外務省から直接中国政府に伝えたということではない」との回答がありました。そうならそうと前回言うべきだったと思うのですが、「誤解を招いたのなら訂正します」との慇懃な説明をいただきました。

 

 「ナショナリズムに訴えれば、当然、『北朝鮮は悪い』という認識を限りなく増幅させることになる。『実際、北朝鮮は悪いではないか』という反論があるかもしれない。拉致問題に関する限り、確かにそうであろう。しかし、だからといって『北朝鮮は悪い』という認識だけにしがみついて国内で集会をしてシュプレヒコールを挙げているだけで、二国間の問題が全自動洗濯機のように勝手に解決されるわけではないのである」「このことは、日本の戦争責任を問いたい中国の人々が、いくら『日本は悪い』というナショナリズムの心情を高揚させて中国でデモをしたりしても、そのことによって日中間の問題が自動的に解決するわけでは決してないことを考えれば、小学生でも簡単に理解できることだろう」「拉致問題を本当に解決したいのだったら、北朝鮮との間に持続的かつ緊密な関係を作らなくてはならない。これは核問題やミサイル問題に関しても同じである。このような関係の構築を通してのみ、二国間の関係を解決できるのである。でなければ戦争をするしかない。戦争が出来ないのであれば、緊密な関係を構築する以外に選択肢はただの一つもないのである」
 長い引用をしてしまい恐縮ですが、小倉紀蔵・京都大学教授はその著書「北朝鮮とは何か 思想的考察」(2015年・藤原書店)でこのように論じておられます。
 相手のある外交ですから、言えないことが多くあることはよく承知していますし、これは安全保障でも同じことです。しかし、単に「あれも言えない、これも秘密だ」ばかりでは、国会における議論や国民に対する真摯な説明や説得にはなりません。日本人の外交感覚や安全保障感覚が、単なる感情的なナショナリズムに堕することなく、正しく醸成されていくためには、我々政治の任にある者がより深く学び、考えなければならないことを痛感します。

 

 さる20日日曜日に鳥取市議会議員選挙が投開票されました。自民党公認・推薦の現職、保守系会派所属の現職、公明党公認候補の方々の街頭演説などのお手伝いは致しましたし、それなりの成果は得られたものの、投票率は史上最低を更新して40%を切るという結果になりました。
 鳥取は地方創生において多くの優良事例を積み重ねてきていますが、これだけの低投票率となると、一抹の危惧を感ぜざるを得ません。コロナのせいばかりではないでしょう。有権者に対する語りかけを、自分としてもさらに高めていかなければと反省しております。
 加えて、当選した自民党籍を持つ議員が傷害の疑いで逮捕されるという事態となりました。自民党鳥取県連として、事実が明らかになった時には当然適切に対応しなければなりません。県連会長として、市民・県民・党員に心よりお詫び申し上げます。

 

 クリスマスのイルミネーションで街は彩られつつあり、早くも来週は師走となります。今秋の都心は寒暖差、気圧差の大きい日々でした。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2022年11月18日 (金)

与党議員の責任など

 石破 茂 です。
 北朝鮮のミサイル発射が依然として続いています。飛翔距離の延伸と、着弾の正確性は着々と実現されつつあると見なければなりません。
 我々の反撃能力も一朝一夕にして得られるものではなく、法的な整理と装備品の開発・取得は、今までのやり方を根本から改め、少しでも早い能力の具備に努めねばなりません。反撃を日本単独で行うことはあり得ず、どのようなときにどのような部分を米国や韓国に委ねるのか、運用面の詰めも早急に行う必要があります。
 「専守防衛」のもとにあって、「先制攻撃」との批判を回避するためには、第一撃が行われることを所与のものとするのか。イージス艦搭載のSM-3も、SM-3で墜とせなかった場合に備える地上配備のパトリオットも、迎撃が100%確実ということはあり得ず、だからこそ国民保護の確実性を高めるためにシェルターなどの避難施設や民間防衛組織の整備、避難訓練の充実が急務となります。
 韓国では全国の地下鉄駅や地下街などが民間防衛避難所に指定され、その数はソウル市内だけでも3000ヵ所にのぼり、核大国の旧ソ連・現ロシアと長大な国境を接するフィンランドでは一定規模の床面積を有する施設にはシェルターの設置が法的に義務付けられ、首都ヘルシンキの大深度地下鉄駅など約5500ヵ所に90万人を収容できるシェルターがあり、スウェーデンも全国各地のシェルターに全国民の7割が収容可能とのことです(古谷知之・慶大教授の論説による)。
 世界各国のシェルターがどれほどあり、いかなる機能を有し、法的にどのように位置づけられ、整備に要した費用と期間がどれほどなのか、政府に調査を要請したのはもう数年も前のことですが、まだ整備費用と期間については揃っていません。ソ連が強大な核大国であった冷戦時代に、フィンランドやスウェーデンがNATOにも加盟せず、核武装もせずに独立を保持できたのは、このような営々たる努力があったからに違いありません。他方、ロシア・中国・北朝鮮という核保有国に囲まれた日本は、ひたすら米国の核抑止力に頼り、その実効性の検証も行わず、国民保護の体制もほとんど進まないままに今日を迎えてしまいました。政治の責任は、もちろん私も含めて極めて重大です。
 本日も北朝鮮はICBM級と思われるミサイルを発射し、我が国の排他的経済水域内の日本海に落下したものと推定されています。弾頭重量によっては15000キロメートルが射程距離となり、米国全土を含むとされています。
 日本政府は「断じて容認できず、我が国として北朝鮮に対し、北京の外交ルートを通じて厳重に抗議し、強く非難した」としていますが、日本政府の誰が、北京の誰にこれを伝え、それが北朝鮮の誰に伝わり、誰からどのような返答があったのか。「北京の外交ルート」とは一体何を指しているのか、中国政府ではないのか。これを本夕急遽開催された自民党国防部会・安全保障調査会合同会議で政府に質したのですが、「手の内を明らかにすることになるので答えられない」とのことでした。
 これは最近の政府がよく使うフレーズですが、実は何もしていなくてもわからない。昨日、総理大臣はバンコクで中国の習主席と会談され、その翌日にこのような事態となりました。中国は北朝鮮の後ろ盾であり、ミサイル発射を容認しているのはほぼ確実ですが、その中国を通じて何をどう伝えたのか。政府にはきちんと答える義務があるのではないでしょうか。
 その他にも、落下予想地点にいる航空機や船舶に情報を伝達したと言うが、伝えた後にどのような行動をとるべきかについて事前に指示をしていたのか、今回の軌道はおそらくミサイルからの電波をキャッチできるのが北朝鮮国内に限られるからなのであり、実際にはどこに落下したのか、それはどの国がどのように把握するのか、画像情報をとる周回衛星の機数を増やせば、発射の兆候を把握できるようになるのか…等々の私の問いに、誰も明確に答えませんでした。
 これは一体どういうことなのでしょうか。北朝鮮側の相手が「手の内を明らかにする」ので言えないというなら、せめて日本側の誰が発信したのかくらいは報告できるはずです。これほどにミサイルを発射されて、今までと同様の対応で良いはずはありません。これは政府が与党をも軽視している、ということなのでしょうか。官僚は国民を見くびっているのか、それともモノを言えば、自分の立場が危うくなるので発言をしないで黙っているのでしょうか。
 野党ではなく、自民党こそがもっときちんと監視をしなくては、この傾向は変わらないように思います。相手が政府であろうと、言うべきことを言わないのは、与党議員としての責任を放棄することだと私は思っております。

 加えて、政府に設けられた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の内容とされるものが某紙に掲載されていましたが、その内容自体はともかく、なぜ与党への説明や与党との協議がなされる前にこのような記事が出るのでしょう。情報管理の甘さを非難すべきか、意図的に流したと考えるべきか、いずれにしても政府と与党との信頼関係、政府と言論の緊張関係に大きなヒビが入ってしまいます。危機感を持つのは私だけなのでしょうか。

 内閣府が発表した7~9月期の国内総生産の速報値は年率換算で1.2%の減少とのことでした。これは主に個人消費の伸び悩みによるものですが、ではなぜ個人消費が伸び悩むのか。結局、「大胆な金融緩和を行い、物価が上昇すれば個人消費は上向く」のではなかった、ということではないでしょうか。原因はやはり、将来不安を払拭できないことにあるのではないでしょうか。
 社会保障に裨益することの少ない非正規労働者は、多少の賃金上昇があっても貯蓄に回し、消費に向かわない。これは実は正規労働者も同じなのではないか。多くの企業が最高益を得、賃金として「分配」しても、社会保障制度を改革しない限り、個人消費は上向かないように思います。

 11月も後半となります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2022年11月11日 (金)

防衛三文書改訂など

 石破 茂 です。
 防衛三文書(国家安全保障戦略・防衛大綱・中期防衛力整備計画)改定に向けた作業が進捗しているらしく、昨日の自民党の会議で内閣官房や防衛省から一通りの説明がありましたが、どうにもよくわかりませんでした。総理が「概ね一年をかけて策定する」と述べられたのは昨年12月のことで、時間が足りなかったというようなことはないはずです。
 ともすればお買い物リストを羅列し、財源をどこに求め、総額をどれほど伸ばすかという議論に終始しがちですが、それで足りるとは全く思いません。政府に設けられた「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」というネーミングの会議も、議事録を読む限り、本質的な議論が十分になされているとは思えません。
 「敵地反撃能力」の保持を決めるからには、「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略」である専守防衛との関係を明確に整理しなければなりません。
 「武力攻撃を受けた時」とは、「相手方の武力攻撃によって我が国に被害が生じたとき」では遅く、「単に相手方が武力攻撃を行う恐れのあるだけのとき」では早すぎる、ゆえに「相手が武力攻撃に着手したとき」である、とするのが政府答弁の定番で、「相手方が数時間はかかり、中止することが困難な液体燃料の注入を始めるなど、攻撃のプロセスが不可逆的になった時」を指すとしてきましたが、発射台が固定式で、液体燃料を用いていた20年も前ならともかく、現時点でそのようなことがあるとは考えられません。護衛艦から亜音速のトマホークを発射しても、発射台に到達した時点では既に発射を終えて移動していると考えるのが常識でしょう。
 「反撃能力」というからには、相手からの攻撃があることを前提としているのであり、それが弾道ミサイルである場合には、これをもれなく撃ち落とさなくては犠牲や被害が生じてしまいます。だからこそミサイル防衛が重要なのですが、これとてもあらゆる場合に対応できるわけではありません。だからこそ、国民を避難させるシェルターが重要なのであり、これについての議論がほとんど見られないのは怠慢か無責任の誹りを免れないと思います。「お買い物」が大事で、国民保護を等閑視するのでは、「防空法」で市民に空襲時の避難を禁じて消火活動に当たらせ、多くの犠牲者を出した戦前戦中の日本と何ら変わりません。
 一部メディアが「トマホークを保有」と、何だか大層な兵器を保持して攻撃能力が飛躍的に増大するかのごとき幻想に国民を導くのもいかがなものかと思います。巡航ミサイルの基本原理は飛行機と同様なので速度が遅く、迎撃される蓋然性が高いこと、目標に到達したときには既に攻撃目標が移動もしくは潜伏している可能性が高いことに加え、構造上、核を積まない限り貫通力や破壊力に乏しい、というデメリットもあります。全体の構想における「反撃力」の位置づけを明確にしたうえで、他の手段も併せて取得せねばならないのではないでしょうか。
 一部報道にあるような、全幅が戦艦大和よりも大きいイージスアショア代替ミサイル防衛専用艦も、このとおりで進められるのかは不透明です。報道されている新規の装備品には摩訶不思議なものが多いように思います。
 陸・海・空の三自衛隊「統合司令官」の創設や、各国に駐在する防衛駐在官(武官)を現在の外務大臣の指揮監督下から防衛大臣の指揮監督下に移し、本来の役割を果たさせる、などの法改正も急務です。自衛官の最高位である統合幕僚長はあくまで「総理や防衛大臣の最高の専門的助言者としての幕僚の長」であって、司令官ではありませんので、その米軍のカウンターパートは統合参謀本部議長であって、実際に米軍を指揮するインド太平洋軍の司令官ではありません。総理や防衛大臣に助言をしながら、三自衛隊を指揮するなどということはどんなスーパーマンでも不可能です。
 手間がかかるからと法改正を先送りし、装備品の調達と予算の増大に特化した「防衛力の抜本的な見直し」になるのではないか、と危惧の念を持たざるを得ません。これらは防衛庁長官や防衛大臣に在任していた頃から指摘してきたことですが、私の能力不足から賛同が広がらず、今日に至るまで改善を見ませんでした。大きな反省のもとに、今回可能な限りの努力をしたいと思っています。

 

 葉梨法相の交代が報ぜられています。ご本人をよく知っているわけではありませんが、警察官僚出身のとても真面目な方だとの印象を持っていただけに、今回の法相の職務に関する一連の発言はとても残念に思いました。短期間に相次いで閣僚が辞任する事態はかつてのリクルート事件の時の竹下内閣や民主党の野田内閣を彷彿とさせ、この後の展開はかなり厳しくなるのかもしれません。
 死刑制度の存否については、法学部の学生時代以来ずっと悩んでいますが、いまだに自分としての結論が出せないままでおります。団藤重光先生の死刑廃止論や、新しくは平野啓一郎氏の「死刑について」(岩波書店・2022)をもう一度読み直してみたいと思っています。

 

 都心は今週も小春日和が続きました。皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

 

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2022年11月 4日 (金)

北朝鮮ミサイル発射など

 石破 茂 です。
 北朝鮮のミサイル発射の頻度が一層高まっていますが、日本政府の対応はお決まりの「外交ルートを通じて断じて容認できないとの強い決意を伝えた」を繰り返すだけで、「誰がどのような外交ルートを使って誰に意思を伝え、それに対して誰からどのような反応があったのか」も全く明らかにされません。外交ルートで間に介在しているのは中国なのでしょうが、このルートが日本の意思が北朝鮮に伝わるような機能を果たしているのか、甚だ疑わしいものですし、これを誰も問い質さないのもとても不思議なことです。
 北朝鮮は今回のウクライナ事変から「核の使用を示唆すればアメリカは介入しないし、決して攻撃も受けない」ことを改めて学び、強く実感したのでしょうし、その示唆が現実性を帯びるためにミサイルの威力と精度を急速に上げる必要があるのでしょう。北朝鮮が(こちらからは)理解不能な(と思われる)危ない行動をすることは、地域の不安定化を狙う中国やロシアにとっては必ずしも悪いことではないでしょうし、北の方針を容認し、政治的・技術的・資金的にも支えていると見るのが妥当です。
 「国民が飢餓に瀕しているときにミサイルに多額の資金を費やすのは狂気の沙汰」的な見解もありますが、国民が飢餓に瀕しているからこそミサイルに資金を振り向けられるのであり、金正恩体制になって一層強化された独裁制がこれを可能にしています。
 東京五輪開催中の1964年10月16日に中国(当時日本では「中共」と呼称していました)が初の核実験を行った際、北京放送は「これは中国の国防力を強化し、米国の核恐怖と核威嚇の政策に反対する中で勝ち取った大きな成果である」と述べましたが、北朝鮮も全く同じ思考です。昨年1月に改正された北朝鮮労働党規約は「南朝鮮における米帝国主義の侵略軍隊を追い出して植民地支配を清算し、日本軍国主義の再侵略の企図を挫折させるための闘争を展開する」と明記しており、趣旨は実に酷似しています。
 毛沢東は「たとえズボンを穿かなくても核を持つ」と述べたと伝えられますが(実際は外務大臣の発言であったとの説あり)、この思想も北朝鮮に共通のものでしょう。もはや良いとか悪いとか論じる余裕はなく、北朝鮮が国家目標の実現に向けて、強固な意志の下に着々淡々と行動しているという事実を我々は直視せねばなりません。中国は長く国際社会において孤立し、大躍進政策や文化大革命などの国内の疲弊と混乱も続きましたが、今や国連の常任理事国の座を占め、世界第二位の経済大国に成長するに至りました。北朝鮮がこれをモデルとしているのは間違いありません。

 日本政府は今回の北朝鮮のミサイルは変則軌道をとった可能性がある、とコメントしていますが、仮にそうだとすれば、その技術のベースとなっているのはロシアのイスカンデル・ミサイルと見るべきなのでしょう。
 2011年にはウクライナでミサイル技術を盗もうとした北朝鮮の工作員が摘発されていますが、ウクライナから北朝鮮にミサイル技術が流出した可能性も指摘されています。ウクライナは廃棄状態にあった空母「ワリャーグ」を中国に売却し、これを改修した「遼寧」が原型となって二番艦の「山東」が就役し、電磁カタパルトを装備した三番艦「福建」も2024年には就役予定と言われています。今回の戦争の非がロシアにあるにせよ、ウクライナからの技術流出が我が国の安全保障環境に影響を与えているということも我々は知っておかねばなりません。

 かねてからの持論なのですが、北朝鮮に対しては、東京と平壌に互いの連絡事務所を置き、国交正常化の糸口を見出すことから始めねばなりません。拉致・ミサイル・核の問題を解決するためにも、国交のないままに非難の応酬だけをしている現状をまず打開することが必要です。小泉総理の訪朝と日朝平壌宣言発出から20年、当時の金正日国防委員長は拉致問題を認めて謝罪し、拉致被害者5名の帰国も実現しました。しかしその後事態は何も進展しないどころか、かえって悪化してしまったのは何故なのか、小泉訪朝で生まれかけた関係の萌芽は何故潰えてしまったのか、真摯に検証したいと思っています。一番の犠牲者は拉致被害者とそのご家族なのですから。

 今週も円安の基本的な基調は変わりませんでしたが、政府が急激な円安は好ましくないとして協調介入ではなく日本単独の為替介入を行ったとされる一方で、日銀が円安の一番の原因となっている金融緩和をやめようとしないのは、外部から見れば大きな矛盾と映るのではないでしょうか。日銀総裁は金融緩和を継続して景気回復を支える、としていますが、円安に苦しむ国民や企業はこの発言に大きな違和感を覚えたに違いありません。金融緩和による円安で業績が好調となったのは一部の企業に偏っており、マネタリーベースの拡大を続けても資金需要は増大せず、異常な低金利でおカネの世界におけるマーケットメカニズムが機能しなくなっていることとも相俟って、不必要なところに資金が滞留する現象が続き、日本経済の体力が大きく低下している一因となっているのではないでしょうか。
 異次元の金融緩和を政策の主軸としたいわゆるアベノミクスは「日本が世界で企業が一番活躍できる国」を目指しましたが、トリクルダウンを否定していた以上、一方において労働者の視点が欠落した政策ではなかったのでしょうか。企業は株主と経営者だけのものではなく、そこに働く労働者やその家族、ひいては社会全体の公益に資するべきものであり、基本的に分断と格差の拡大を所与のものとする資本主義の宿痾を是正するため、今の状況に合った施策が必要です。

 今週の都心はまさしく小春日和のお天気が続きましたが、本格的な冬の到来も間近です。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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