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2023年7月28日 (金)

本土空襲など

 石破 茂 です。
 最近講演で安全保障を語る際、その地が太平洋戦争において受けた空襲等の被害について可能な限り言及するようにしております。敗戦後78年が経過し、実際に戦争を経験された方も減る中にあって、戦争そのものに対するリアリティが急速に失われつつあるように思われ、戦争の記憶は相当に意図的にリマインドしていかなければなりません。
 かく言う私自身、昭和32年生まれの完全な「戦無世代」ですが、それでも子供の頃、周りには従軍した人や戦災に遭った人が大勢居ましたし、中学に上がる頃までは「日本は戦争に負けたのだ」というフレーズをほぼ毎日のように聞いていた記憶があります。田中角栄元総理は「あの戦争に行ったヤツが世の中の中心にいるうちは日本は大丈夫だが、そうでなくなった時が怖い。だからよく勉強してもらわなくてはならない」と語っておられましたが、まさに今は「そうでなくなった時」であり、意識してよく学ばねばならないと思っています。

 さる23日日曜日に神戸市で講演の機会があり、いくつかの資料に当たってみたのですが、昭和20年2月以降8月に至るまで、神戸に対する米軍の攻撃は実に徹底した凄まじいものだったようです。既に米軍は東京、名古屋、大阪の主要部を焼き払っていたのですが、これらの都市に対する爆撃で得られた教訓や反省を生かし、神戸を「どうすればより効率的に都市を焼き払うことが出来るか」という実験場としたようにさえ思われます。
 ガソリンを主成分とする油脂焼夷弾の生産が追い付かなくなったため、投下弾を「エレクトロン爆弾」(2500度の高温で燃え、水を掛ければより燃え広がる、マグネシウムを主成分とする爆弾)に転換し、東京の8倍、大阪の4倍の爆弾を投下して市街のほぼ全域を焼き払い、さらには消火活動を妨害し、避難する市民を殺傷するため、爆発すると鋭利な鉄片が四方に飛び散るクラスター爆弾の原型とも言うべき「破片爆弾」を使用し、多くの市民を殺傷しました。これでもなお足らず、最後のトドメとして「餓死(Starvation)作戦」が展開され、神戸港に大量の機雷を投下して港を封鎖し、海運による食糧の荷揚げを完全に途絶させたことが記録されています。
 にわか勉強的に仕入れた知識で恐縮なことでしたが、講演でこのお話をしたところ、多くの若い世代の方々にとっては初めて聞く話であったようです。反米感情を煽る意図は全くありませんが、戦争がいかに人間が平常時に持つ感覚を麻痺させ、慈悲心や道徳心を喪失させる恐ろしい狂気の世界であるのかについては、常にリマインドすべきでしょう。ウクライナでクラスター弾が使用され、多くの民間人が犠牲となっていますが、それは80年近く前に神戸市において我が同胞が経験したことでもあるのです。

 7月27日の朝鮮戦争「戦勝記念日」にロシアのショイグ国防相が参加したことは、ロシア・中国・北朝鮮の連携を強く印象付けるものでした。朝鮮戦争の休戦協定は国連軍と中朝連合軍との間で交わされたものであり、ソ連(法的な継承国家はロシア)は当事国ではないはずなのですが、ウクライナにおける戦いが北東アジアに及ぼす影響と北朝鮮の急速なミサイル能力向上の背景はまさにこういうことなのだと痛感させられます。停戦に向けた外交努力とともに、ミサイル防衛能力、シェルター整備を含む国民保護体制、核共有議論の強化・促進は喫緊の課題であり、政府はこれをもっと国民に語らねばなりません。

 ここ数日、必要があってこの度NATOに加盟したフィンランドの国防政策を調べているのですが、同国では国民の人口554万人に対して440万人分の退避壕が整備され、人口60万人の首都ヘルシンキには外国人や観光客も含めて90万人分のシェルターがあり、簡易ベッド、トイレ、洗面所の設備も完備、核攻撃にも耐えられる設計となっているそうです。
 フィンランドは男性に対して徴兵制が採用され(スウェーデンとノルウェーは女性も徴兵制)、これに加えて常備の10倍以上の予備役が確保されています。日本もフィンランドと同様に「ロシアの隣国」なのですが、彼我の差には愕然とせざるを得ません。「軍隊とは何か」「国は誰が護るのか」という国家の基本についての議論から目を背け、これを怠ってきたツケはいつか必ず国民に回ってきます。たとえどんなに受けが悪くても、政治がこの議論から逃げてはなりません。

 毎年この季節になると戦争に関する文献を読む頻度が高まります。今週読んだ「神の国に殉ず 小説 東条英機と米内光正」(阿部牧郎著・祥伝社文庫・上中下巻)はとても読み応えのあるものでした。東条は戦犯として絞首刑となり、米内は日米開戦に最後まで反対した良識派として評価されていますが、ともに戦前・戦中に総理大臣を務めた二人の岩手県人(東条は父君が岩手県人)の対照的な生き様を描いたこの作品は、もっと広く読まれるべきものだと思います。
 どちらかと言えば官能小説家として位置付けられる阿部牧郎(令和元年没)ですが、「それぞれの終楽章」(第98回直木賞受賞作)、「ゆっくりと悲しげに」(文藝春秋書下ろし文芸作品)等の私小説や、「英雄の塊 小説 石原莞爾」「危機の外相 東郷茂徳」等の評伝小説に秀作が多いように思います。ご存命中に一度お会いしてお話を伺ってみたかったのですが、果たせなかったのはとても残念なことでした。

 今週も恐ろしく暑い日々が続きました。昭和40年代のはじめ、鳥取での小学生時代に外気温が30度を超える日が続いて、暑中見舞いに「アツイ!」とだけ書いて出したことを妙に覚えていますが、今はそれどころではありません。あの当時はエアコン(クーラーと言っていました)のある家庭はとても珍しかったのですが、なくてもそれほど苦にはなりませんでしたし、山間部の田舎にある茅葺の家に行けば、中は風通しもよくてとても涼しかったことをよく覚えています。夏休み、海にクラゲが出始めるお盆まではほとんど海辺の町で過ごし、後半は山間部の村で川遊びに明け暮れて、最後の一週間で宿題の仕上げに追われた(何週間も前の絵日記をでっち上げるのと、読書感想文書き、自由研究が地獄のようでした)半世紀以上も前の夏の日々がとても懐かしく思い出されます。もう海や川で泳ぐことはないのだろうなと思うと、とても寂しく感じられます。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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イシバチャンネル第百三十六弾

イシバチャンネル第百三十六弾、「国会議員の夏休み」をアップしました。

ぜひご覧ください

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2023年7月21日 (金)

「正義」など

 石破 茂 です。
 「嫉妬は正義の仮面をかぶってやってくる」とは名コラムニストであった故・山本夏彦氏の言葉であったと記憶します。随分と前のことになりますが「正義と嫉妬の経済学」(竹内靖雄著・講談社・1992年)を読んで初めてこの言葉を知った時、なるほどと深く得心したことでした。
 引用で恐縮ですが、日本は世界一の「誹謗中傷大国」なのだそうです(窪田順生・ダイヤモンドオンライン・7月20日)。この記事によると、日本人はツイッターの利用者率、利用時間、匿名利用率、削除要求件数のすべてが世界一なのだそうで、そうだとすればかなり異様なことでしょう。言論の自由が保障されるべきは当然ですが、匿名で自分は安全なところに身を置いて、会ったこともない相手を、事情も深く知らないままに罵倒して正義を気取る、というのは醜悪の極みです。これがやがて「正義」を掲げる勇ましい世論となり、「正義」が暴走して批判を封殺し、最終的に国を誤ることになるのが一番恐ろしいと思います。

 戦前や戦中、戦争に反対する人を「非国民」と断罪し、日米の国力差も知らずに好戦ムードを高めていったのは他ならぬ「正義感に燃えた」多くの一般市民であり、これを煽ったのがラジオや新聞などのメディアでした。残念ながら、一般市民は反戦であったのに国家権力がこれを抑圧した、というのはおそらく正しい分析ではありません。
 そしてコロナ禍が猛威を振るっていた頃、「自粛警察」なる行動が各地で起きていたことにも、ある種の類似性を感じます。もしこれが、日本人が持つ性癖であるとするなら、健全な民主主義の発達のためにもこれを顧みる必要があります。

 広島サミットにウクライナ大統領が登場し、日本の世論の大勢も「日本は『善』なる被害国ウクライナと常に共にあるべきだ」というものになっています。
 ロシアの不法な侵略行為は明白な事実であり、ウクライナの民間人が殺害されることは強く非難されるべきもので、そのようなウクライナ国民にできる限り寄り添うべきことはその通りですが、それは直ちにウクライナが一方的な「善」であることを意味するものではありません。国家間の争いはそう単純なものではなく、また日本として我が国の国益の観点がどうしても必要になるからです。
 2014年のミンスク合意(ミンスク議定書)は、ウクライナ東部の親ロシア派支配地域に特別な地位を与える代わりにウクライナから外国の部隊が撤退する、という内容でした。これが誠実に履行されなかったのはロシアだけの責任である、と断じるのはなかなか難しいでしょう。
 そして我々日本人として、中国初の航空母艦「遼寧」のベースとなった空母ワリャーグをスクラップとして売り渡し、北朝鮮にミサイル技術を供与したのがウクライナであることを忘れるべきではありません。
 ウクライナへの支援に異を唱えるつもりはありませんが、「善か悪か」「正義か不正義か」の二分的な思考で物事を一方的にしか捉えないことは現に慎むべきであり、我が国は国連安保理議長国として早期の停戦実現に向けて議論を主導し、加速させていかねばなりません。

 本日は浜松市での講演、週末は神戸市での講演の他、地元での行事がいくつか入り、慌ただしい日々となりそうです。
 今週の東京はまだ梅雨明け宣言もないままに酷暑の日々が続きました。秋田をはじめとする豪雨の被災地に心よりお見舞いを申し上げますとともに、皆様のご健勝を祈念いたしております。

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2023年7月14日 (金)

平松茂雄先生ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨晩のBSフジ「プライムニュース」は佐藤丙午・拓殖大学教授、鶴岡路人・慶應義塾大学准教授との討論でした。正確で豊富な知識を持つ、人格も優れた学者の方々との討論はとても楽しく、勉強になるものです。
 長く議員を務めていると色々な学者や評論家に会う機会があり、変幻自在なポジショントーク術や、垣間見える人柄に辟易とさせられることもままあります。そのほうが視聴率が取れるのか、テレビに登場する機会が多いのかもしれませんが、世の中を悪くする言説の流布というのは残念ながら確実にあると思います。
 そんな中で、佐藤先生や鶴岡先生のような立派な学者と討論できる機会を与えていただけたことに感謝するとともに、己の知識や見識の浅さに嫌気がさしてしまうことも往々にしてあるところ、私自身も真っ当な学者との討論に耐えうるよう、自己研鑽に努めたいと思ったことでした。
 佐藤教授はその論考の中で、以下のような指摘をされています。
 「今回のウクライナの状況からわかるように、戦争が起こると一般国民にも多くの被害が出る。日本は専守防衛の方針の下、『本土決戦』主義を採用しているが、これまでの経緯の中で、たとえ戦争が起こったとしても国民には抵抗する手段は何も教えられていないし、何の武器も持たされていない」「そんな状態で上陸してくるロシア軍や中国軍に立ち向かわなければいけないというのは、竹槍でB-29を落とそうとしていたのと全く変わらない政策をしていたのだと改めて思わされた」(「財界」2022年夏季特大号)
 「外交を道徳的な視点で語るのは悪いことではない。国際的な正義を自分の側につけ、それに軍事の役割をかぶせていくのはアメリカの外交そのものだが、日本は道義性を過度に期待しすぎている」(朝日新聞デジタル 2022年4月30日)
 専守防衛を「本土決戦主義」と言うのはまさしくその通りで、私も漠然と感じていたことではありますが、ここまで言い切らなければこの言葉が含むある種の偽善性はわからないでしょう。

 

 日本政府はウクライナ支援のホームページに「日本はウクライナと共にあります」とのタイトルを冠していますが、「がんばれウクライナ!」の気持ちは別として、ひたすら正義を追求しようとする限りこの戦争の出口は見えず、罪のないウクライナ市民とウクライナ兵、またロシア兵の死傷数も増え、被害額も増すばかりです。
 5月の時点でウクライナの復興に要する費用は4110億ドル(約58兆円)と試算されており、その後決壊したダムの復興費用などを併せると金額はさらに増すものと思われます。日本政府は世界銀行の融資の保証と併せて約1.1兆円の支援を表明していますが、やがて「ウクライナ復興税」のような形で日本国民にも更なるご負担をお願いすることになるのかもしれません。
 湾岸戦争の際、日本は90億ドル、国民一人当たり約1万円の支援を行いましたが(その使途の詳細については、戦費に充てられたかどうかも含めて、結局明らかにはなりませんでした)、戦争参加国から「カネだけか」との批判を浴びました。
 「復興に要する費用は侵略国であるロシアが払うべきだ」というのはひとつの正論ですが、おそらくロシアはそれを認めないでしょう。平和を実現するためにはそれなりの負担を負わねばなりません。

 

 NATOの会議に日本も招待を受け、連携が更に強化されました。一部には「日本もNATOに加盟すべく、条約の適用される地理的範囲を拡大させるべき」との意見がありますが(グレンコ・アンドリー氏、石角莞爾氏等)、私は今のところ懐疑的です。
 もともとアメリカは1949年のNATO発足時に、アジア太平洋地域にも類似の集団安全保障組織である「太平洋協定」を発足させようとしていたのですが、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなどの反対により実現に至らなかった経緯がありました。NATO発足から74年を経た今、むしろもう一度この構想に立ち戻るべきではないでしょうか。「権利の法理」による集団的自衛権と「義務の法理」に立つ集団安全保障はよく似た概念ですが、日本の国内法の整備と併せて、実現に向けた議論を加速させたいと思っています。

 

 マイナンバーカードのトラブルが続出し、制度自体の信頼性が揺らいでいますが、カードの普及と利用の拡大そのものは、トラブルの原因究明とその除去方法を確立した上で、すすめていくべきものです。
 健康保険証のカード化にも多くの懸念と不安が生じていますが、本人確認が困難な紙の保険証である限り、3000億円にものぼると言われる不正使用は根絶出来ません。かつて厚生関係の仕事をしていた頃、「名医という言葉がある限り医学は科学ではない」との言葉を聞いて強烈に印象に残っていますが、医療を科学にするためには長年にわたる膨大な医療データを蓄積し、分析し、それが個々の医師の診療に生かされるような体制を整えなければなりません。複数の薬局で処方される多量の薬がカードの活用によって効率化され、医療費が適切に使用されることも期待されます。学生時代、物権法の指導教授から「病理現象があるからといって制度自体を安易に否定してはならない」と教わったことを思い出しました。

 

 中国軍事問題研究の第一人者、平松茂雄先生が老衰のため逝去されました。享年87歳。謹んでお悔やみ申し上げます。直接ご指導を頂いたのは数回に留まるのですが、実に峻厳なお人柄であったと記憶します。膨大な著作の三分の一も読めておりませんが、漫画でありながら実に内容が濃く、かつわかりやすい「日本核武装入門」(マンガ入門シリーズ・飛鳥新社・2010年)は、今読み返してみても新鮮さを失わない内容です。私自身は日本の核武装には否定的な立場(シェアリングには積極的に賛成)ですが、実に多くの示唆を受けた一冊でした。ご一読をお勧めいたします。

 

 今週、都心は恐ろしく暑い日々が続きました。皆様ご自愛のうえ、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2023年7月 7日 (金)

核抑止など

 石破 茂 です。
 ロシアとウクライナとの戦闘はいかなる形で停戦となり、そして終戦となるのかについて、我が国においても議論が必要です。
 この事態が深刻なのは、侵略国であるロシアが核を保有した国連安全保障理事会の常任理事国であり、プーチン大統領が「ロシアが先制核攻撃を受けた時」「通常兵器によるものであっても、ロシアの存亡に関わる事態となる攻撃を受けた時」は核を使用すると明言しているところにあります。2018年にプーチン大統領はテレビ番組で「ロシアが存在しない世界がなぜ必要なのか」と発言しており(同様の発言をかつて北朝鮮の金正日国防委員長もしていたように記憶します)、これを単なる脅しと片付けるべきではありません。
 いかにロシアが国際法に違反した一方的な侵略国であっても、ロシアを決定的に存亡の淵にまで追い詰めた場合、世界的な全面的核戦争になりかねないという恐ろしさがあります。アメリカもこの危険性を十分に認識しているからこそ、現在のような対応に終始しているのでしょう。。一方においてウクライナのゼレンスキー大統領はクリミアの奪還を大きな目標として掲げており、これをプーチン大統領が「ロシアの存亡に関わる事態」と判断した場合に何が起こるのか。
 ウクライナが一方的な被害国で、正義はウクライナにあり、ロシアが決定的に悪であるとしたところで、正義だけが平和をもたらすわけではないでしょう。このように考えると、ヒトラーに妥協して結果的に第二次大戦を引き起こす結果となったチェンバレン英国首相を想起してしまいますが、ナチス・ドイツは核兵器ほどの大量破壊兵器は保有していませんでした。核の恐ろしさをまざまざと見せつけられる思いです。
 ところで、ロシアの民間軍事組織「ワグネル」の反乱はあっけない幕切れとなりましたが、なぜあの名称がドイツの大作曲家であり、ゲルマン人芸術の精華としてヒトラーが心酔していたリヒャルト・ワーグナーに由来するのか、私にはよくわかりません。どなたかご存じの方があればご教示ください。
 ことほど左様に、ウクライナ問題を理解することは恐ろしく困難であると最近痛感しており、不勉強を恥じるばかりです。

 ロシアはウクライナを激しく攻撃しても、NATO加盟国に対しては攻撃を仕掛けてこないのは、NATOを敵としてしまえば勝算が全くないからに他なりません。同じことは中国と台湾との関係においても言えるのであって、仮に中国が台湾を攻撃する際に、日本まで攻撃してしまえば直ちに日米同盟を敵に回すことになり、勝利は見込めない。台湾有事となり、米国が在日米軍基地の使用について事前協議を求めた際に、日本としてこれに応諾しない事態はまず考えにくいのですが、その時に中国から「事前協議に応諾すれば日本に対して核兵器を使用する」との脅しを受けた際に、日本は国家の存亡をかける覚悟を持たねばなりません。
 朝鮮半島有事の際は、米軍には国連軍地位協定によって事前協議を必要としない「朝鮮国連軍」として在日米軍基地から出撃するというオプションがありますが、北朝鮮がこれを受けて、在日米軍基地や日本の政経中枢に対して弾道ミサイル攻撃を仕掛ければ、それは日本有事以外の何物でもありません。つまり台湾有事は自動的には日本有事とならない可能性もありますが、朝鮮半島有事はそのまま日本有事に直結するとの認識が必要です。
 北東アジアの平和と安全を考える際、多くの法的な枠組み、特に国連軍地位協定について今一度再検証する必要があります。日米地位協定についてはある程度までは研究もしてきたつもりなのですが、国連軍地位協定についてはそれほどではありません。「本当に『台湾有事は日本有事』なのか」「台湾有事は極東有事である」「朝鮮半島有事こそ日本有事」「誰も知らない国連軍地位協定」…以上は「ウクライナの教訓 反戦平和主義が日本を滅ぼす」(潮匡人著・育鵬社・2022年)の中の小見出しですが、多くの示唆を与えられるとともに、己の不勉強を痛感させられます。

 昨日・今日とソウルでの日韓政治リーダー対話に出席しておりました。明日は故・安倍元総理の一周忌法要、明後日は出雲市で故・青木幹雄先生のお別れの会です。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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