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2024年4月26日 (金)

安来市など

 石破 茂 です。
 昨日も衆議院島根県第一区補欠選挙の応援で安来市に参り、旧広瀬町、旧伯太町で街頭演説、街頭宣伝活動、個人演説会に参加致しました。各種世論調査では厳しい情勢が伝えられ、補選の結果次第では政局が流動化するなどと喧しく報ぜられておりますが、選挙は最後まで分からないのであり、日々勝利を目指してやるべきことをすべてやっておかなくてはなりません。

 現在の安来市は平成16年に旧安来市に能義郡広瀬町と伯太町が合併して誕生したものですが、広瀬町は昭和30年に山佐村と比田村が合併し、昭和42年に布部村を編入、伯太町は昭和27年に安田村、母里村、井尻村を合併し、昭和29年に赤屋村を編入した経緯があり、昭和の合併前のそれぞれの旧町旧村に独自の歴史と文化があるのであって、応援に行く際には事前にこれらをきちんと調べておかなくては訴えに共感を持って聞いて頂くことは出来ません。日本のすべての地域において、候補者は勿論のこと、応援に来る自民党の議員がここまで自分たちの地域のことを知っている、と地元の方々に実感して頂くのはとても大事なことだと思っております。
 偉そうなことを言っていますが、私自身も今回慌てて下調べをしてみて、日本で唯一10月を「神有月」と呼ぶ出雲地方の歴史や文化の片鱗に接し、大きな驚きと感動を覚えました。古事記をきちんと学んでこなかったことを今更ながらに悔いています。
 安来市古川町にある足立美術館は、米国の日本庭園専門誌のランキングで21年連続最高の評価を受けた庭園を有し、横山大観、上村松園などの名画を数多く所蔵している素晴らしい美術館です。私は上村松園の美人画が好きなので、ここに所蔵されている「娘深雪」「待月」を是非一度見てみたいと思っております。

 20日夜に伊豆諸島沖で発生した海上自衛隊の対潜ヘリ衝突事故で殉職された自衛官に心より哀悼の誠を捧げますとともに、今なお行方不明の諸官の一日も早い発見を願います。冷戦期から今日に至るまで、日本防衛の大きな要の一つが対潜水艦戦(ASW)能力であり、この維持向上は極めて重要であるところ、現場の部隊に過大な負担がかかっているとすれば、その改善は喫緊の課題です。対潜哨戒機の稼働率の向上も含めて政治の責任において可能な限り検証する必要があり、防衛予算の増額はこの観点からも精緻に議論されなくてはなりません。

 今週の憲法審査会も「言いっ放し、聞きっ放し」の残念な展開に終始致しました。演説会ではないのですから、論点が拡散され一向に収斂されない現状は誠に由々しきことです。憲法ですから、3分の2の議員が賛成すればそれでよいなどということにはなりません。まずはどの会派も一致して賛成しうる条項(臨時国会の召集期限など)を取り上げ、議員としても国民としても憲法が実際に改正しうるものである、との実感を体験することが、迂遠なようでも優先されるべきと思います。前回も論じたように、あくまで権利を本質とする「集団的自衛権」と義務を本質とする「集団安全保障」は信頼性が大きく異なるのであり、ウクライナ戦争を踏まえた憲法議論はこの点をよく踏まえて行われなくてはなりません。来週の憲法記念日を前に、強くそのように思います。

 明日から連休に入る方も、連休にもお仕事の方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2024年4月19日 (金)

島根補選応援など

 石破 茂 です。
 本日夕刻より衆議院島根一区補欠選挙のにしこりのりまさ候補の応援のため、島根県奥出雲町と雲南市へ参ります。この地区を訪問するのは地方創生大臣在任中の2015年以来になりますが、10年近くを経た今、地方創生がどのような進化を遂げたのか、是非観てみたいと思っております。

 

 松本清張の傑作「砂の器」の舞台の一つである奥出雲町は、須佐之男命(スサノオノミコト)が降り立った地とされる、魅力に富んだまちです。雲南市も訪問介護ステーション活動や移住者が集う「おっちラボ」など、地方創生の先駆けとなったまちです。10年目を迎えた地方創生プロジェクトの発展が楽しみです。
 「砂の器」は加藤剛・丹波哲郎主演で映画化されて(1974年・松竹・野村芳太郎監督)大ヒットしましたが、加藤剛扮する天才ピアニストの薄幸の愛人役を演じた島田陽子の美しさが際立っていました。加藤剛も島田陽子も既に亡く、時の流れを感じずにはいられません。

 

 地方創生の取り組みが始まったばかりの2015年頃は、全国各地で地方創生に向けた期待と熱気が感じられたように思いますが、だんだんとその熱量は下がっていってしまいました。担当する衆議院の特別委員会の名称も「地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会」となり、「地方創生」という言葉自体が消えてしまいました。
 地方創生プロジェクトの2年目に、突如として「一億総活躍」なる新しい政策が登場し、地方創生は徐々に主役とは言い難い位置に追いやられてしまったように思います。都度都度に鳴り物入りの政策が掲げられ、世間の耳目を集めることには成功しましたが、結果を見ないままに次々と重要政策が変わっていき、とても残念な思いもしました。
 出雲国と私たちの因幡国とは、出雲の神である大国主命(オオクニヌシノミコト・大黒さま)と、因幡の美しい女神・八上媛(ヤカミヒメ・鳥取市河原町に居たと伝えられる)との恋物語に始まり、いくつものご縁で結ばれています。
 今回も出来る限りの支援をしてきたいと思っております。

 

 昨18日木曜日には、衆議院本会議において総理の訪米報告と質疑が行われました。華やかな外交成果を誇る報告でしたが、これに比べて地方の衰退に歯止めがかからない現状を我々は政府・与党として厳しく受け止めなくてはなりません。
 「唯一の同盟国であるアメリカとの信頼関係の一層の強化」は確かに重要であり、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との認識も恐らくは正しいのでしょうが、同盟国がアメリカ一国しか存在しないということの恐ろしさも、そしてそれが憲法の集団的自衛権についての解釈に由来することも、同時に認識せねばなりません。
 冨沢暉(ひかる)元陸上幕僚長がつとに指摘されるように、集団的自衛権行使による安全保障と集団安全保障によるそれとは、信頼性という点において大きく異なるのであり、憲法第9条の議論においてこれを欠かすことは出来ません(冨沢暉著「逆説の軍事論」・バジリコ刊・2015年)。「今日のウクライナは明日の東アジア」というのはロシアを中国に、ウクライナを台湾或いは日本に置き換えた議論なのでしょうが、わかりやすい議論には注意が必要です。
 ウクライナの現状について、アメリカの責任もないとは言えません。バイデン大統領がわざわざ、「ウクライナはNATO加盟国ではないので、アメリカは直接的な軍事支援はしない」旨を表明しなければ、プーチン大統領がウクライナ侵攻の決断をしなかったかもしれない、という説は根強くあります。NATOとロシアの直接対決は避けなくてはならない、とのアメリカの意思は十分に理解できますが、抑止力を損なわない形で立場を表明することは十分に可能だったはずです。
 抑止力のあり方についても、我が国の安全保障を語る限り、必ず根底に憲法問題が横たわっています。更なる議論と結論を得る努力が必要です。

 

 桜も散り、早いもので再来週にはもう大型連休に入ります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
   
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2024年4月12日 (金)

憲法53条改正など

 石破 茂 です。
 11日木曜日、今国会において初めての衆議院憲法審査会が開催されましたが、議論は今までの延長線上で何らの進展もなく、実に虚しい思いが致しました。
 何の理由かさっぱりわかりませんが、開催時間は午前10時から11時半の1時間半で、最初に自民党から有志の会まで各会派の7人の幹事が1人5分ずつ意見を述べて40分以上が経過、その後委員の自由討議に移るのですが、これも審査会長が与党と野党各会派を交互に指名するため、人数の多い自民党の委員は発言意思を示す名札を立ててもほとんど指名されないままに「まだ発言を希望されている委員もあるようですが、時間も参りましたので本日はこれにて閉会と致します」との審査会長の終了宣告でジ・エンド。これで議論が深まるはずもなく、このようなことで国民に国会の本気度が伝わるなどとはとても思えません。
 日本維新の会は立憲民主党が意図的に審議を遅らせていると口を極めて非難していますが、確かにそのような面はあるにしても、意見の分かれる第9条や教育無償化に拘泥することなく、すべての改正に絶対反対の立場である共産党は除き、立憲など他の野党も乗れるような条項から先に議論するという手法もあってしかるべきだと思います。自民党として党議決定した平成24年憲法改正草案と野党の主張には、いくつかの共通点もあるのです。

 例えば、憲法第53条は、衆参いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があった時、内閣が臨時国会の召集を決定しなければならないことを定めますが、その期限が設定されていないために、要求があっても内閣が召集を引き延ばす例が過去に何度か見られました。自民党の平成24年草案では、「内閣は要求があった日から二十日以内に臨時国会の召集を決定しなければならない」としており、これなどは与野党の多くが一致できる例の一つだと思います。
 昨年9月12日、最高裁第三小法廷は、2017年に安倍内閣が臨時国会の召集要求に98日間応じなかったのは違憲だとして野党議員らが起こした訴訟(憲法53条違憲国家賠償等請求事件)の判決で、憲法第53条は個々の国会議員の権利を保障したものではないとして請求を棄却しましたが、宇賀克也裁判官(行政法学者出身))は「臨時国会での審議を妨げられるのは議員の利益の侵害」として反対意見を付けました。学説も「臨時国会の召集があまりに遅れては、召集要求権の制度は無意味になる」として「国会開会の手続きのために客観的に必要とみられる相当の期間内で、できるだけ速やかに召集されることが決定されなければならない」と論じています(清宮四郎・憲法Ⅰ新版・法律学全集3・有斐閣)。臨時国会の召集要求は国会議員の権利であるとともに、主権者である国民の権利でもあるはずで、この行使が内閣の恣意で妨げられることは民主主義の根幹にも関わることだと思います。
 憲法は改正できるのだ、という、一種の成功体験を、主権者である国民と、その代表である国会議員がともに経験することができれば、日本国憲法の捉え方は大きく変わると思います。ですから、迂遠なようでも、まずは国民の理解と賛同を得やすい条項から始めるべきだと私は思っております。

 台湾の地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
 それにしても、地震発災から3時間で個室テントや簡易ベッド、シャワー用のテントなどが完備された避難所が開設されるなど、今回の地震の被災者に対する台湾の迅速な対応、官民の連携は実に見事なものだと感心させられました。台湾やイタリアでできることが何故日本ではできないのか、防災省(名称は防災庁でも国民保護庁でも何でも構いませんが)設置の必要性を改めて痛感させられたことでした。

 今回の日米首脳会談において、日米の連携強化が確認されたことは意義あることだったと思います。ガザ情勢についてハマスのテロ行為を強く非難したことは当然ですが、イスラエルの軍事行動も明らかに自衛権の範囲を逸脱したものがあり、この点についての言及がなかったことは残念に思いました。
 かつて大平正芳内閣の伊東正義外相は1980年の国連総会演説において、「我が国は、公正かつ永続的な中東和平の実現のためには、イスラエルが全占領地から撤退し、かつ国連憲章に基づき、パレスチナ人の民族自決権を含む正当な諸権利が承認され、尊重されなければならないと考える」「パレスチナ情勢の悪化の第一次的原因は占領地におけるイスラエルの入植地の建設など、イスラエルの占領政策に起因していることは非常に遺憾なことであり、イスラエルが国際社会の声に素直に耳を傾け、平和的な話し合いに応じる勇気と柔軟な態度を示すよう切に願う」と述べており、ここには日本国の決然たる意志が感じられます。
 今から半世紀近くも前のことだ、時代が違う、と言ってしまえばそれまでですが、ここには積極的に平和国家たろうとする日本国の矜持が明確に示されているようで、改めて感動に近いものを感じたことでした。

 来週火曜日16日には東京、島根、長崎において衆議院の補欠選挙が始まります。東京と長崎は自民党が不戦敗の様相ですが、隣県の島根だけは何とかがんばりたいものです。強い逆風の吹く、極めて困難な情勢の中ですが、山陰から日本国と自民党の再生を図るため、応援遊説など、出来る限りの支援をして参りたいと考えております。

 久しぶりに憲法学の教科書を読んでみると、かつて学んだことをほとんど忘れてしまっていることに愕然とします。赤線が引いてあるので確かに読んだはずなのですが、49年の月日の経過がなせる業なのか、それとも実は全然理解できていなかったのか、なんとも悲しいことではあります。

 今週前半の春の嵐で都心の桜はほとんど散ってしまいました。今年もお花見をする機会はありませんでしたが、いつかは楽しんでみたいものです。この時期になると麗美の「花びらの舞う坂道」(1985年 作詞・作曲:松任谷由実)を聞いてみたくなります。あまりヒットはしませんでしたが、この季節に相応しい佳曲です。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2024年4月 5日 (金)

平林鴻三先生ご逝去など

 石破 茂 です。
 いわゆる「派閥裏金問題」に関与したとされる党所属議員に対する処分が決定されましたが、党内には不満、怨嗟、憎悪の声が満ち満ちており、世の中の評価も総じて低く、今後の先行きには不透明感が漂っています。
 党の自浄作用を示すことは必要ですが、検察の捜査で立件されなかった者を処分するからには、当該議員が何を為したのか、それがどれほどの党規約に抵触するものであったのか、過去の処分との整合性をどうとるのかを説明のつく形で示さなくてはなりませんが、強制的な捜査権限を持たない党紀委員会にそのようなことが果たして可能であったかどうかは甚だ疑問です。「これで幕引きは許されない」的な報道が多くなされ、国民の皆様にも同じ思いを持たれる方が圧倒的であることはよく承知していますが、最終的には選挙で有権者の判断を仰ぐ他はありません。
 政権復帰後、徐々に自民党の規範意識が劣化したことは否めませんし、その間4年にわたって幹事長や閣僚を務めてきた私自身にも責任がありますが、安倍政権当時、官邸や党執行部に意見をすること自体が疎んじられる雰囲気があり、また権力に阿る人々は政界のみならず、官界、経済界、メディアにも多く居たのは間違いない事実でしょう。「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」というイギリスの思想家ジョン・アクトン卿(1834~1902)の言葉は永遠の真理であり、我々はこれをよく噛み締め、常に自戒せねばなりません。

 

 4月16日告示、28日投開票で、東京第15区、島根第1区、長崎第3区で衆議院の補欠選挙が行われますが、自民党が公認候補を立てられるのは島根県だけとなる見通しです。私にとっては隣県で、参議院では鳥取・島根が合区でもあり、ここに可能な限りの力を尽くしたいと思っております。自民党の立候補予定者である元財務省中国財務局長の錦織功政(にしこり・のりまさ)氏は、人物・経歴ともに立派な人物ですが、知名度不足を早急に補わなければなりません。

 

 元鳥取県知事、元衆議院議員、元郵政大臣 平林鴻三先生が、さる3月28日に93歳で逝去されました。
 昭和49年、亡父・石破二朗の参議院転出に伴い43歳の若さで当時最年少の知事として後継となられ、3期半ばで衆議院議員に転出、5期を務められ、第二次森喜朗内閣において郵政大臣を務められました。
 石破二朗の後継知事と長男という本来兄弟のような間柄でありながら、中選挙区であった鳥取全県区で地盤と人脈が完全に重なる二人が相争う、まさに血で血を洗うような厳しい戦いが10年以上にわたって続きました。私が熱心な小選挙区論者になった背景には、自民党同士が仇敵のごとくに戦うという中選挙区にたまらない嫌気を感じていたという事情があったのですが、小選挙区に移行後は先生が比例中国ブロック、私が鳥取一区との住みわけがなされ、それまでの対立構造は無くなりました。
 ただ一度だけでしたが、二人だけで夕食を共にしながら、専ら共通の趣味であるクラシック音楽の話に興じた時のことを今も鮮明に覚えています。好きな曲目や演奏者が共通していたことも驚きでしたが、名曲にもかかわらず比較的マイナーなビゼーの交響曲に話が及んだときはとても嬉しく思ったことでした。政界引退後は一切公の場には出られることがなく、ご自宅で音楽を聴きながら県立図書館で借りてこられた本を読んでおられたとのことですが、殺伐とした政治の世界と訣別されて心豊かな晩年をお過ごしであったことと拝察します。「権力は謙抑的に使うもの」との教えを思い出しますが、もっとお会いして亡父の話や政治の在り方についてお聞きしたかったと悔やまれてなりません。今頃、先生が亡父とどのような話をしておられるのかと思うと、感慨深いものがあります。

 

 相沢英之先生(元経企庁長官)、野坂浩賢先生(元官房長官・社会党)、武部文先生(元物価問題特別委員長・社会党)、西村尚治先生(参院議員・元総務長官)、坂野重信先生(参院議員・元自治相)は既に亡く、今回平林先生が逝去されて、私が初当選した昭和61年当時の鳥取県選出の国会議員は、私の他はすべておられなくなってしまいました。党や派閥は異なっても、それぞれ人間味豊かな立派な方々でした。38年の時の流れを実感するとともに、一人残されてしまったような寂寥感を強く感じております。

 

 先月29日、去年より15日遅く東京の桜の開花が発表されましたが、昨日、今日と東京都心は冷たい雨となりました。本日が満開で、週末から来週にかけてが見頃となるようです。いつかゆっくりと花見が出来ることを願っているのですが、今年も実現しそうにはありません。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2024年4月 3日 (水)

イシバチャンネル第百四十三弾「イスラエルとパレスチナ」

イシバチャンネル第百四十三弾「イスラエルとパレスチナ」についてをアップしました

是非ご覧ください

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