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2024年5月31日 (金)

「モンテロッソ」など

 石破 茂 です。
 昨30日木曜日、沖縄県議会議員選挙(6月7日告示・16日投票)に向けた、新垣新(しんがきあらた)県議の後援会集会に出席のため、久しぶりに沖縄県糸満市に行って参りました。
 昭和20年3月末から6月末にかけて沖縄では日本唯一の地上戦が行われました。その末期、海軍地上部隊の指揮官(沖縄方面根拠地隊司令官)であった大田実少将は、海軍次官に宛てた6月6日の電報で、沖縄県民が沖縄防衛のためにどれほど献身的に尽くしたかを綴ったうえで、「沖縄県民斯(か)ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と結びました。県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦の実際をきちんと学ばなければ、戦争や平和について語る資格はないと今更ながらに痛切に思います。魂魄(こんぱく)の塔、ひめゆり平和祈念資料館、平和の礎(いしじ)など、沖縄戦を今日に伝える場所は、今を生きる日本人すべてが訪れるべきです。昭和32年生まれの私自身、小学校から大学まで沖縄戦について学んだことはほとんどなく、上記の地を訪れたのも国会議員になってからでしたが、その時に受けた衝撃は実に大きなものでした。「かく戦へり」を今一度学ぶとともに、「特別の高配」がなされているのか、その検証の必要性を改めて感じたことでした。

 

 昨30日午前、岡山市で開催された全日本建築板金業者の全国大会に振興議員連盟の会長として出席して参りました。本年4月から建設業の就業者に対しても時間外労働の上限規制が適用になりましたが、元受が短い工期を設定するとどうしても建設板金業や左官業、鳶職などの下請けの現場にしわ寄せが行くこととなり、この規制に抵触するような事態が起こりかねません。建設業に従事する就労者は480万人で全就業者の約7%を占めますが、この方々の残業収入の減少にもよく留意する必要があります。「働き方改革」自体は評価すべきものですが、現場の実情と乖離が起こらないように制度を調整しなければなりません。振興議連として、適切な工期と価格の設定がなされることを今後とも政府に対して要望して参ります。

 

 東京渋谷・道玄坂にイタリアンレストラン「モンテロッソ」が開店し、先日プレオープンセレモニーと試食会に参加して参りました。
 同店は建設現場の足場などのリースを本業とする日建リース工業が直営するのですが、提供される魚は同社が開発した、全国各地の港から魚を生きたまま低コストで輸送できる「活魚ボックス」で送られてきたもので、これは実に画期的なシステムです。以前、自民党水産総合調査会のスマート漁業に関する勉強会でのプレゼンの際にもとても面白く思ったのですが、私の地元の「モサエビ」が鮮度を保ったまま美味しく提供されたのを試食して、心から感嘆したことでした。このエビは鮮度の落ちが速いため、美味なのにほとんど全国に流通しないのですが、このような低利用魚に付加価値を付けて販売し、漁業者や漁村の雇用と所得を増大させるのはとても素晴らしい取組で、民間の創意工夫の素晴らしさを実感したことでした。お近くにお出かけの際はぜひお立ち寄りくださいませ。

 

 来週6月5日午後9時より、TBS系列で「もしも今富士山が噴火したら?超緊急事態シミュレーション」と題する番組が放映予定で、私も解説者のような立場で少しだけ出演致します。
 昨年も同様の企画があり、テーマは「もし東京に巨大隕石が落下したら」というものでした。巨大隕石の落下は直近では2013年2月15日にロシア・チェリャビンスク州で実際に発生しており、その際に放出されたエネルギーは広島型原爆の20倍であったそうです。そして火山学者によれば、記録に残っているだけでだいたい過去70年に1回の頻度で噴火を起こしている富士山が、1707年(元禄時代)の宝永の大噴火以来300年以上も沈黙していること自体が不気味なことだとされています。元禄時代の学者・新井白石が残した記録によれば、江戸市中には2週間にわたって火山灰が降り続けたのだそうで、仮に今同じことが起これば、飛行機も電車もクルマも全面的にストップするのみならず、火山灰の細かな粒子が入り込んだコンピューターはすべて機能障害を起こし、電波障害でスマホも使えなくなり、停電や断水などによって社会活動は完全に停止し、目や呼吸器などに疾患を起こした人々が医療機関に殺到して医療体制も崩壊、光合成が出来なくなった作物も枯死し、家畜も全滅して食料の提供も途絶する事態が予想されます。徒に脅かすつもりはありませんが、ドイツの保険会社が、災害の蓋然性が高い上にヒトとモノが極度に集中している東京を「世界一危険な都市」と算定していることの意味は、こういうところにあるのかもしれません。
 この期に及んでもなお、国民の保護体制を一元的かつ継続的に企画立案する政府組織の必要性が認識されないのは、政治の不作為以外の何物でもありません。戦争であれ災害であれ、政治が安易な楽観論に流された時、その報いを受けるのは一般の国民なのです。

 

 明日から6月に入ります。6月といえば、1993(平成5)年6月18日、宮沢内閣不信任案が可決されて衆議院が解散となり、自民党が分裂、下野した時のことが強烈な記憶として思い出されます。あの時、宮沢総理は「(衆議院の選挙制度改革を柱とする)政治改革は必ずやる。私は嘘をついたことがない」とテレビ番組で発言されたのですが、自民党内の意見をまとめることが出来ず、衆議院選挙制度改革法案は次期国会へと先送りになりました。これに反発した野党から内閣不信任案が提出され、自民党竹下派の羽田・小沢グループが同調して、同案は可決されました。
 小選挙区比例代表並立制への移行は、自民党として正式に党議決定され、その後の衆・参国政選挙でも自民党の公約として掲げたものでしたが、これを総務会の決定で覆すという手法には私もどうしても納得ができず、当時拝命していた農林水産政務次官の辞表を提出した上で不信任案に賛成したのでした。
 あれから30年の歳月が流れ、自民党は再び政治不信の渦中にありますが、党・内閣の人事や解散の有無が盛んにメディアで取り沙汰はされても、あの時のような熱気や高揚感は全く感じられません。我々政治に関わる者が己の利害を捨てて、国家の在り方を国民に正面から問うとの気概が失われてしまったことがその大きな原因であるように思われます。30年前の伊東正義・政治改革本部長や後藤田正晴・本部長代理などの大先輩のような存在に、到底なり得なかった自分の不徳と至らなさを反省するばかりです。

 

 今週、半藤一利氏の遺稿となった「戦争というもの」(PHP研究所・2021年)を読み返して、感慨新たなものがありました。「昭和史」三部作(平凡社・2009年)も、もう一度読み直してみたいと思います。

 

 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2024年5月28日 (火)

イシバチャンネル第百四十五弾

イシバチャンネル第百四十五弾「ラーメン議連について」をアップいたしました。

是非ご覧ください🍜

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2024年5月24日 (金)

日沿連など

 石破 茂 です。
 さる21日夕刻、自民党ラーメン文化振興議員連盟のメンバーで、渋谷区千駄ヶ谷にあるラーメンの名店「玉(ぎょく・店主の玉川氏が全日本ラーメン協会長)」で総会を開いた後、国産小麦、輸入小麦、国産米粉による麺の食べ比べを致して参りました。「国産小麦や米粉で作ったにしては美味しい」ではなく「国産小麦や米粉で作った麺は美味しい」というレベルに達しており、ここまで進歩を遂げたのかと深く感銘を受けたことでした。開発に当たってこられた方々の長きにわたる並々ならぬご努力に深く敬意を表します。まだまだ価格が高いという問題はありますが、「安全・安心な国産小麦を使用」「小麦アレルギー疾患を持つ人にも安心して食べて頂けるグルテンフリーの米粉麺」を積極的にアピールすれば、相当の需要が見込めるように思います。
 物価高騰の影響で、ラーメン店の経営にも影響が出ており、お店を閉めるところも出るようになりました。ラーメンには以前から「千円の壁」があり、「ラーメンなのに千円以上もするのはけしからん」との声もあるようですが、スパゲティなどのパスタ類では千円越えが多く見られるのに、これは一種の偏見であるようにも思います。「良いものにはそれに相応しい適正な価格を」との意識が無ければ、経済は発展しません。

 

 今朝開かれた自民党整備新幹線等鉄道調査会において「幹線鉄道の在り方プロジェクトチーム」の提言案が示されたのですが、議論が多く出て提言案を再考することとなりました。今までこの会議には出席してこなかったので、発言することも憚られたのですが、人口急減と地域間格差の拡大、財政の悪化、Co2削減の緊要性の中にあって、国家としての鉄道の在り方を示すためと思い、いくつかの指摘をさせて頂きました。
 そもそも、中曽根内閣において断行された国鉄の分割民営化が、今の日本にとってどうなのか、顧みる必要があります。JR北海道、四国、九州の三島会社の厳しい経営について、東、東海、西の本州三社は一切関与しない、なぜならそれぞれが独立した民間企業だから、という姿勢が今も妥当するのか私は甚だ疑問ですし、世界の鉄道では当然とされる上下分離方式がなぜ日本では広く取り入れられないのかについても釈然としません。
 「民間企業」と言いますが、リニアに対する国の支援は無担保で30年据え置き、3兆円に上る破格の財政投融資で、ただの民間企業には到底考えられないものであり、仮にその返済が滞った場合には、それは最終的に国民の負担になるものです。都合のいいところだけ民間の論理を持ち出すな、と言われても仕方ないのではないでしょうか。
 もっと本質論でいえば、航空会社やバス事業者は空港建設や道路建設の負担を求められることはあり得ないのに、何故鉄道だけが建設負担も運行負担も共に求められた上、赤字であれば廃止せよと迫られるのか。同じ公共交通機関としてこれは著しく不公平なのではないでしょうか。今後の鉄道の在り方は、このような根本的な議論の上で示されるべきだと思ったことでした。

 

 リニア推進について少しでも疑問を呈すれば、「反日のサヨク」「中国の回し者」「不勉強」といった感情的かつ非論理的な匿名の反論がネット上に殺到しますが、この言論空間は一体何なのでしょう。保守の本質は、自分の意見と異なる意見にこそ耳を傾ける寛容性にあるところ、ただただ異論を否定する勢力が自らを「真の保守」と称することには強烈な違和感を覚えます。これは憲法第9条第2項削除論を否定し、ひたすら自衛隊明記論を賛美する議論とも通底するのではないでしょうか。もはや立ち位置すら「右」でないのに「真の保守」とは恐れ入ります。集団的自衛権の全面行使を否定し、アメリカだけを唯一の同盟国と誇るような言論に、日本国の独立や愛国心が語れるとは思えません。
 このような様子を見ていると、「国民の底意地の悪さが経済低迷の元凶」という加谷珪一氏の所論にも妥当するところがあるのではないかと思ってしまう昨今です。
 匿名の投書(ネット上の匿名投稿などなかった時代の話です)については、井上靖の小説「欅の木」(昭和50年)に面白い記述があります。新聞に随想の連載を持っていた実業家に対して、辛辣な匿名の批判の投書が数回寄せられ、立腹した実業家がその批判の主を探し出したところ、病院に入院している真面目な青年であったというお話ですが、当時に比べて批判の質も随分と落ちてしまったのかもしれません。

 

 このたび、細田博之前衆議院議長のご逝去に伴い空席となっていた「日本海沿岸地帯振興促進議員連盟」の会長に就くこととなり、昨日の総会において承認されました。昭和39年の創設以来、福田一先生、桜内義雄先生、綿貫民輔先生等、錚々たる衆議院議長経験者が務めてこられた役職であり、私には大変な重責ですが、偏に議歴の長さ故のことだと思っております。
 日本海側のことを「裏日本」という、聞き方によっては侮蔑的とも思える言い方をするようになったのは明治28年、それまで日本一であった新潟の人口を東京が抜いた時からで、同年発表された「中学日本地誌」に登場したのが始まりだそうです(それまでは日本海側を「内日本」、太平洋側を「外日本」と呼称していたとか)。私が中学生の頃まで、NHKでも「明日の裏日本の天気は…」などと言っていて、言いようのない屈辱を感じたことを覚えています。日本海側に限らず、明治維新以来の日本の経済的発展は、人為的に作られた首都一極集中政策によるところが大なのであり、首都一極集中に起因する人口急減と大災害に対する脆弱性を抱えた今、人為的に作られたものは人為的に変えていかなければなりません。

 

 国会会期末が近づき、今週は何かと慌ただしい一週間でした。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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2024年5月21日 (火)

食べ比べ

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 事務局です。伊東良孝先生、遠藤利明先生と、国産小麦、輸入小麦、米粉麺を食べ比べです。

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ラーメン議連

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 事務局です。
 ラーメン文化振興議連の総会・試食会で、玉・新宿店にお邪魔しています。

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2024年5月17日 (金)

AIによるキャッチフレーズなど

 石破 茂 です。
 今国会会期末の6月23日まであとひと月余り、ここのところの永田町の話題は専ら解散や人事に関するもので、報道も主に政局ネタを取り扱っているようですが、この光景にはもう辟易気味です。「誰と誰が、いつ、どこで会った」とか、「日頃の面倒見が良い、悪い」とか、政治の生業が人間相互の関係を調整することも含むこと、それらが極めて重要であることも十分に承知しておりますが、まずは「この国をどうするのか」の議論があってしかるべきでしょう。近年それが大きく欠落していること、あるいはメディアがこれを全くと言っていいほど報じないことに、慄然とするような危機感を感じております。

 

 ウクライナとロシアの戦争も、純粋に軍事力だけを比較すればロシアの兵員数はウクライナの5倍、戦車数は6倍、戦闘ヘリ数は17倍、戦闘機数は16倍です。国際法の順法意識、法の支配の重要性、人道主義の重要性などは、単なる美辞麗句ではなく小国が味方を得るにあたっての重要な価値観ですが、今後の戦局については通貨価値や財政事情も冷静に考慮した上で論じなければ方向性を見誤ります。このような全体を考える機会が今のところ見出せないことにも違和感を覚えます。

 

 「異次元の金融緩和」を続けた結果、日本円が下落し、付加価値の総和であるGDPは人口も就労者数も日本の3分の2であるドイツに抜かれて世界第4位になりました。GDPに占める輸出の割合は、ドイツ47%、韓国44%に比して日本は18%で、OECD36カ国中35位なのですが、これをどのように考えるべきなのか。ドイツはMade in Germanyに拘り、決して安売りはしないそうです。日本は国内投資を抑え、非正規労働者を増やして賃金を上げず、人材も育成せず、生産拠点の多くを海外に移し、通貨安で儲けてきました。
 AIを使って作成した自民党の広報ポスターは「経済再生 実感をあなたに」と謳いますが、キャッチフレーズは侃々諤々たる議論の上で定めるべきものではないのか、これが国民感情と乖離しないことを切に願います。あまり議論されてはいませんが、働き方改革によって全就業者の12%に当たる建設業や物流業に従事される方の残業代が減ったことにも注意が必要なのは当然です。

 

 本日の総務会で政治資金規正法改正案が了承され、国会提出の運びとなりました。多くのご批判が予想されますが、政治資金の透明性の確保もさることながら、政治資金を今以上に党に頼ることになるのは決して好ましいこととは思っておりません。説明は困難ですが、国民にどのようにご理解を頂くのか、今後なお一層の努力が必要です。

 

 いつにもましてバタバタとした慌ただしい一週間でした。今週、小泉元総理や山崎元副総裁、亀井元政調会長から賜ったご指導を拳拳服膺しながら、週末は少し心静かに過ごしたいと思っております。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2024年5月10日 (金)

世論の分断など

 石破 茂 です。
 4月28日の衆議院島根1区の補欠選挙については、自民党で行った世論調査や、選挙当日の出口調査などを今後詳細に分析してみなければなりません。選挙は科学だ、とはかつて故・渡辺美智雄先生がよく口にしておられたことですが、年代別、地域別、男女別、職業別、支持政党別に今までと何がどのように変わったのか、それらがわからないままに周章狼狽したり、責任の押し付け合いをしていても何も始まりません。

 

 自民党の強い地域で思わぬ敗北を喫するのは、支持政党「自民党」と回答する自民党の支持者が、党の現状を憂いてその覚醒を期待して野党に投票するときです。2007(平成19)年、第一次安倍政権下で行われた参議院選挙では、自民党の牙城であった鳥取・島根両県で自民党公認の現職が敗れました。自民党鳥取県連会長、選対本部長を務めていた私は、お詫びの挨拶で県下支部の幹部の方々を廻った際、多くの方から「今回は自民党に立ち直ってもらいたくて、敢えて民主党候補に投票した」と言われて愕然としたものでした。
 社会調査研究センターの調査によれば、今回、島根一区の自民党支持者の3割が野党候補に投票しており、恐らく同じ現象が起こったものと思われます。党の改革を早急に進めてイメージを改めなければ全国的な雪崩現象が起きかねず、これは「表紙を変えればよい」などという甘いものでは断じてありません。

 

 新聞や地上波テレビなどの従来型メディアに多く接している比較的シニアな層と、それらにほとんど接することの無い若い層とでは、全く反応が異なるような気も致します。アメリカでも社会の分断が深刻になっていますが、この背景にはニューヨークタイムスやワシントンポストなどを読む人が激減し、それぞれが自分好みのネットメディアからの情報にしか接しなくなってしまっているとの事情があり(ニューヨークタイムスの発行部数は2002年の111万部に対して2019年は48万部、ワシントンポストは81万部が36万部と17年間で半減以下)、日本においても同様のことが起こっているように思われます。日本新聞協会の発表によれば、日本における新聞の発行部数は1997年(平成9年)の5376万部をピークとして年々減り続け、ここ数年は年間約200万部減、2023年は2859万部とほぼピークの半分で、単純計算すればあと13年で新聞購読者は消滅することになります。新聞を定期購読しているのは30代で30%、40代で42%、60代で73%、70歳以上で81%、大学生で週3回以上新聞を読むのは僅か3%なのだそうです。これはかなり深刻な事態と言わなければなりません。
 40年以上も前の私が新入社員の頃、出勤時間の満員電車の中で新聞を四つ折り、八つ折りにして読んでいるサラリーマンが多く居たものですが、今ではそのような光景は全く見られなくなってしまいました。スマートフォン等で必要な情報は入手出来ると言いますが、画面スペースの容量から提供される情報量はごく限られたものですし、アルゴリズムによってやがて自分の好む情報にしか接しなくなり、思考の幅が恐ろしく狭くなる危険性も有しています。子供の頃から、インターネットなどの電子媒体だけではなく、本や新聞などの活字媒体に接する習慣を身につけさせるのは決して容易ではありませんが、早急に取り組まなければ日本にも恐ろしい分断社会が出現すると思います。

 

 報道によれば「今回島根で勝ってしまうと、総理が自信をつけて衆議院を解散してしまうかもしれないので、島根の応援は敢えて手抜きをする」と言い放った自民党の国会議員がいたとのことです。真偽のほどは知る由もありませんが、このような者が仮にいたとすれば、もっての外と言わねばなりません。今国会の会期はもうあと一か月余り、緊張感を持って臨みたいと思っております。

 

 3日の憲法記念日には憲法改正推進派、反対派双方が毎年恒例の集会を開きました。反対派はともかくも、改正推進派集会に登壇したジャーナリストや元自衛隊制服組最高幹部の方が「9条の改正に当たっては、自衛隊を明記するのみならず、第2項の戦力不保持や交戦権否認の条項の改正が必要だ」旨発言されていたとの報道に接し、そのように思われるのであれば安倍晋三総理のご存命中に言って欲しかった、との思いが強く致しました。別の改正推進派の学者の方も、日本会議の機関誌で「まず半歩前進である自衛隊明記を必ず実現させながら、その過程で9条2項を改正することが、我が国が普通の自由民主主義国になるために絶対必要な道だという点を広く国民に知らせる活動を平行させるべき」と述べておられますが、これについても同様の感慨を持たざるを得ません。

 

 環境大臣に意見を述べていた水俣病の患者の方々に対して、環境省の事務方が発言時間を制限した上に、時間が経過したらマイクのスイッチを切ってしまった行為は、絶対にあってはならないことでした。世論からの「弱者に冷たい政府」という批判を回避するために、誠心誠意対応する他はありません。国民こそが有権者であり、政治家や官僚は預かっただけの権限や権力を努めて抑制的に扱うべき、という行政の基本を我々はもう一度認識しなければなりません。

 

連休中では「東大白熱ゼミ 国際政治の授業」(小原雅博著 ディスカバー21 2019年)、「国民の底意地の悪さが日本経済低迷の元凶」(加谷珪一著 幻冬舎新書 2022年)、「ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座」(井沢元彦著 徳間書店 2004年)を面白く読みました。

 

 週末は地元鳥取県八頭町、滋賀県長浜市、大阪府豊中市で講演の予定です。連休が明けて4日が経ちましたが、休みの感覚がいまだに抜けないのは困ったことです。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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