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2024年7月 5日 (金)

都議補選など

 石破 茂 です。
 東京都知事選と9選挙区での東京都議会議員補欠選挙の投開票日を7日に控え、私も一昨日は八王子市と府中市での個人演説会、昨日は板橋区での街頭演説会で登壇して参りました。「知名度の高さ故の人寄せ要員」であろうとはいえ、候補者の人となり、訴えている政策の他に、当該選挙区や演説会場の所在地(八王子市加住町、府中市西府町、板橋区成増など)の各種指標や地域特有の課題などを事前にある程度承知しておかなければ、説得力のある応援演説にはなりません。東京都には62の市区町村があるのですが、人口増減率、世帯平均所得、出生率、婚姻率、人口当たりの病床数等々、さまざまな数値が大きく異なることに驚かされます。
 最近はこれらに加えて、太平洋(大東亜)戦争時の戦災状況も事前に調べるように努めて心がけているのですが、東京も昭和20年3月10日の東京大空襲だけではなく、府中市を含む東京都西部は同年5月25日、板橋は6月10日に大規模な空襲を受け、多数の犠牲者を出しています。シェルターや避難所を整備するにあたって、こういった歴史の教訓も今一度よく検証するべきです。市民や国民の避難を第一に考えていない、という点において、日本は戦前と戦後が連続しているように見えることに、改めて慄然と致します。

 都知事選や都議補選が終われば、政治報道は一気に自民党総裁選挙一色になるのかもしれませんが、内外の現状をどのように認識し、どのような政策を志向しているのかを等閑視して、ひたすら活劇調に「政局」のみを面白おかしく報じることは、日本政治にとって何のプラスにもなりません。未だに既存メディアの影響力が大きい中、「第四の権力」と言われるメディアに対しては三権分立的な相互抑制のシステムが存在していません。先週もこの点を指摘しましたが、もしメディアが暴走したら、立法府、行政府はどのような手段をとるべきなのでしょうか。司法による解決は裁判所への訴えという形がありますが、これには相当の時間がかかります。

 英国の総選挙では野党・労働党が大勝し、14年ぶりに政権が交代する運びとなりました。日本ではイギリスのような単純小選挙区制とは異なり、いわゆる「死に票」を生かすために比例代表制を並立で組み合わせているため、このような劇的な形での政権交代は起こりにくく、それが中途半端な感じを与えてしまっているのかもしれません。
 現在の小選挙区比例代表並立制は、それまでの中選挙区制度の「同じ自民党同士で戦うためにサービス合戦となりカネがかかりすぎる」「政策ではなく個人を選ぶことになる」「天下国家の在り方ではなく地域の利害を語る」等々の弊害を改めるため、長い侃々諤々の議論を経て導入されたものですが、それらの弊害は改められたのか、そして他の問題が生じてはいないか。自民党で中選挙区制度で戦った経験を持つのは、岸田総理や浜田衆議院国対委員長など、当選10回生以上のごく少数になってしまいましたが、そうであるだけに我々が残っている間にもう一度徹底した議論を行い、改めるべきは改めていかなくてはなりませんし、これは小選挙区制を導入した我々の責任であると思っています。

 日本銀行券の肖像画が、一万円券が渋沢栄一、五千円券が津田梅子、千円券が北里柴三郎に変更になり、この3日より流通が始まりました。福沢諭吉先生(慶應義塾で「先生」と呼ばれるのは福沢先生だけで、塾長であれ、教授であれ、すべて「君」で呼ばれます)が使われなくなったことに慶應のOB(「塾員」といいます)が反発しているとの報道も一部にありますが、最高額紙幣の肖像になっただけでも十分に名誉なことで、それほど拘ることでもないと思っています。そもそも紙幣の肖像画に政治家や軍人を使うことには慎重であるべきで、世界的な学問的功績のあった学者を優先すべきと思いますし、もちろん、時の政府の意図が働くようなことは断じてあってはなりません。

 前々回の当欄で「昔のクルマはうっとりするほどに美しかった」的なことを記しましたが、五木寛之氏の1972年の短編「わが憎しみのイカロス」には、BMW2000CSの美しさに惚れ込んだ少年の鬼気迫るような姿が描かれ、これを読んだ時の衝撃は今も忘れられません。五木氏の小説はほとんど読んでいますが、初期の短編や中編には何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていて、今も時折読み返しております。

 明日6日土曜日は自民党愛知県連大会で名古屋市へ、7日日曜日はかねてより親交のある元竹田市長の首藤勝次氏の叙勲祝賀会で大分県竹田市へ、8日月曜日は衆議院当選同期の木村義雄前参院議員の政経フォーラムで高松市へ、それぞれ参ります。
 酷暑の中、地方への出張が続き、心身ともにかなり疲れ気味ではありますが、何とかこなしたいと思います。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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コメント

石破閣下

ポンコツモデラーのポンコツコメントです。

 東京都知事選の応援ご苦労様です。目上の人にご苦労様はダメだという人が多いですが(目上感があかんらしいのか)お疲れ様でも同じようにも(ねぎらい感は良いのか)。不快感は避けたいのですが、それとは違いますが選挙になると弁士は良いことしか言いません。何内を解決します。自分にはこれこれが出来ますと。そこの地域の生業から可能性を見出す論旨は良いと思います。ご苦労様です。
 話は変わりますがかみさんが近くの医院で総合病院は精密検査に行くよう紹介状を貰って来ました。ひょっとするとガンかも知れないし車で送っていくことにしました。地元の市民病院ではなく近隣市町村の総合病院へです。ここは愛知県です。決して人口減少に苦しむ市町村ではありません。良いことづくめのリップサービスを聞かされて、でもこれがその素晴らしき成果です。人がすることはそもそも過ちが多い。それを自覚する謙虚さがない政治がすることは、たくさん飴をばらまいた者が勝ち。
 選挙は制度が作るものではないと思います。民主主義も制度ではなく暮しよい社会を作るための制度では無いでしょうか。投票だけが民主主義では無く、各々の立場でより良い社会、生活を実現することを目指す事ではないかと思います。社会は変わるのでしょうか。乱文・乱筆お許しください。

投稿: 野村嘉則 | 2024年7月 5日 (金) 20時51分

石破様こんにちは。明日は都知事選ですね。地方でも街頭で東京の方に都知事選の投票に行くよう演説されている方がいました。今、日本は選挙ブームが来ているのかもしれません。自民党もピンチかもしれませんが、国民が再び政治に興味を持ってくれるチャンスなのかもしれないと思いました。ライバルがいて初めて切磋琢磨するので、自民党もいつまでも民主党政権の失敗を追及し続けるのもいかがなものかと思います。石破様期待しています。

投稿: hitomugi | 2024年7月 6日 (土) 12時34分

【目出度いことが勝手に向こうの方から重なる日があった。それが7月8日という日】

時事の記事が簡潔である。
『任期満了に伴う東京都知事選は7日に投開票が行われ、無所属で現職の小池百合子氏(71)が、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏(41)、前参院議員の蓮舫氏(56)ら新人55人を破り3選を果たした。』
この記事の約10時間ほど前に久しぶりの慶事が米国で起きていた。
これも時事の記事。

『【ロサンゼルス時事】米大リーグは6日、各地で行われ、ドジャースの大谷はブルワーズ戦に1番指名打者(DH)で出場し、4試合ぶりの本塁打となる28号ソロを放つなど2打数2安打1打点、2四球、1死球だった。』

簡潔にまとめられた記事は喜びを誘うものだ。
大谷選手の28号は小池知事にとって当選を誘う光のように思えた。鉄人28号のような勢いだ。

自民党的には惨敗という表現があったがそれが正しく表現されるのは衆議院選挙を待たねばならない。メガネが正しく評価されるのだから。

それはさておき、小池知事の3選と大谷選手の28号を素直に喜びたい。目出度い一日だ。

投稿: 旗 | 2024年7月 8日 (月) 03時43分

こんにちは

新紙幣は書体のデザイン等については以前のが良かったという意見があるみたいですが、実際に手元にきて確認するのが楽しみです。

都知事選は小池さんでした。
豪雨とかコロナとか有事の際の会見での対応が落ち着いてらっしゃるなと感じていました。

今週もお仕事頑張ってください。

投稿: くま | 2024年7月 8日 (月) 12時29分

石破先生

今晩は!!。
連日、殺人的な酷暑となり静岡などでは40℃を超えると云う恐ろしさであります!!。
わが日本列島は熱帯地方への仲間入りかと思う酷さであります。
先生に於かれましては、通常国会が終わったばかりながら、この炎暑の中都議選の補欠選挙への応援をはじめ、各地の講演などをこなされ大変お疲れ様であります。
小生は先生と同郷、鳥取県出身の「国の将来を憂う」者であります。
本日も、この一週間の出来事などより拙論を述べて見たいと存じます。

さて、あれほど世間を騒がせました東京都知事選挙も、小池百合子氏の三選決定にて終了致しました。
然し、石丸伸二候補が蓮舫候補を抑え二位と云う結果でありました。
石丸伸二候補については、安芸高田市長の頃の2年前よりユーチューブ動画にて知って居り、今回の東京都知事選への出馬以降も連日その動向を動画にて追いかけて居りました。
街宣活動の現場は、都内都下を問わずその都度数千人と云う大変な数の聴衆が集い、驚くべきでありました。相変わらず「切れの良い正論」であり、群衆は酔いしれる程の拍手の連続でありました。
特に、最終回に当たります7月6日(土)の東京駅丸の内広場には、5000人以上も群集が押し寄せて居りました。

然し、小生は選挙戦の中盤には「かなり疑問と思う点」もあり、石丸陣営の選挙事務所へ電話をかけてみようかと思い立ちましたが、選挙事務所の電話番号は公表されておりませんでした。
その内容は
1、石丸陣営はユーチューブ動画にて、数十万と云う大変な数がその都度拡散されて居りましたが、どのように有権者の投票行動に結びつけ、得票として読むことが出来るのか?
2、彼の得意とする分野である「経済アナリスト」との知識と経験が強調されておりましたが、中高年層以上と女性層では「経済効率重視の政策となり、人間的温かみは疎外されるのでは?」との不安は出ないのか?などと言う疑問でありました。
やはり、石丸候補の得票の内訳は20歳代~30歳代と40歳代に多く、年齢が上がる程少なくなる傾向でありました。

然し、彼石丸候補が終わってからの記者会見に於いて、「東京都の有権者がそのような選択を行った」と言うだけです。」と淡々とした言葉でありました。
今回、石丸伸二候補は「政党のしがらみを拒否し」無所属を貫き通して、結果は破れましたが既成政党による選挙が続き、政治に倦んでいる若者世代と良識人にとって、この先には「新しい波のうねり」になるものとの予感が致します。

そして、中盤、小池都政の「都議会の様子」をユーチューブ動画にて見る機会がありました。その内容は驚くべきでありました。
野党都議員からの「プロジェクションマップ」への発注形態と、その実態についての疑惑の質問、更に神宮外苑開発に於ける三井不動産との関係を小池知事に質問しても、まったく答弁をせず他の局長クラスの「まったく問題ありません」的、回答の答弁ばかりでありました。
ところが自民党、公明党、都民ファーストの都議員への質問には、小池知事自らが、ほとんど答弁に立っているとの事でありました。

先般、「権力は必ず腐敗する」と当欄へも記入しましたが小池都政二期八年に於いては、都民への思いにどれだけ沿っていたのか?と疑問に思った次第であります。
国会に於ける質疑応答もこれほど酷くはなく、石破先生に於かれましては、過去の政界での関係も深く「小池都知事を姉上」として敬愛されているとの報道もある事ながら、大変申し訳ない事ですが、三期以降に於いて「小池都知事にリコール運動も起こり得る」と予感が致した次第であります。
色々僭越なる申し状をご容赦下さいませ!!。


投稿: 桑本栄太郎 | 2024年7月 8日 (月) 19時44分

「メディアには相互抑制のシステムが存在しい」というご指摘に我が意を得た思いです。

私は、大手新聞が相互チェックするのが良いと思っていました。

1 一定数の部数以上の新聞は、日曜版の全面を相互チェックの紙面とする。

2 その週の記事の内容、1年前の記事の内容について、他の新聞社の記者が批評をする。

そうすれば、朝日の記者が書いた産経新聞の記事批評や、読売新聞の記者が書いた毎日新聞の記事批評が新聞に載るわけです。

1年前の記事を批評されるとは、新聞が歴史の法廷に立つということです。

本来なら新聞各社が自主的に行うべきですが、やる気がないようなので、立法化するべきだと思います。

投稿: 水の月 | 2024年7月10日 (水) 21時13分

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