本人コメント

2017年11月25日 (土)

 石破 茂 です。
 今週も、出張や講演の多い一週間でした。解散前に設定されていた日程が多く、本会議や委員会出席との調整がなかなか困難です。
 学園祭シーズンで、今年もいくつかの大学で講演する機会があったのですが、前々回にも記したとおり、国家の独立とは何か、国家主権とは何かについて語っても「そのような話は初めて聞いた」との反応が多く、やがてこれらについて考えたこともない世代ばかりになることを思うと暗澹たる気持ちにもさせられます。大切なものの価値を認識しなければ、やがてそれを失うことになることの恐怖を感じています。

 23日勤労感謝の日に「出川哲郎のアイ・アム・スタディ」なる番組の収録で人気タレントの出川氏と「ミサイル防衛と日本の安全保障」というテーマでご一緒したのですが、短時間でわかりやすく、かつ正確に解説することの難しさを改めて思い知らされました。
 「北朝鮮が米国や日本を攻撃することには何のメリットも合理性もない、それほど心配する必要はない」との論を唱える専門家もおられますが、メリットや合理性の有無で考えられるのなら歴史上の戦争の大半は避けられたはずであり、このような論には与し得ません。

 ここのところ世の中は日馬富士の事件でもちきりのようです。選挙区の鳥取市で起きた事件でもあり、人並みの関心は持っているのですが、どうにも不可解至極でよくわかりません。まず相撲協会において真相が解明されるべきだとのご意見も多いようですが、れっきとした傷害事件であるとするなら警察の手に委ねるべきなのではないのでしょうか。歴史と伝統のある世界だけに、牢固たるしきたりや庇い合いの文化が存在しているということもありうるのでしょう。貴乃花親方がそれに挑戦されることにも、大変な困難があるようです。

 週末は、25日土曜日が社会福祉法人関連団体集会にて講演(午後5時・福島市)。
 26日日曜日が「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、立正大学熊谷キャンパス開設50周年記念講座で講演(午後1時半・熊谷キャンパスアカデミックキューブA101教室・熊谷市万吉)、夕刻は27日月曜日に仁川で開催される「次世代のグローバルガバナンスと北東アジア協力」フォーラム出席のため成田から訪韓します。月曜日午後には帰国の予定です。

 皆様良い週末をお過ごしくださいませ。

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2017年11月17日 (金)

自民党憲法改正推進本部の再開など

 石破 茂 です。
 
 小池百合子都知事が希望の党代表を辞して都知事に専念することを表明したことは、極めて当然のことと思います。首都東京の知事と国政政党の代表という二つの激職を兼ねることはいかな超人であってもまず不可能なのであって、結局どちらも中途半端に終わりかねないことでした。

 しかし、民進党という、憲法観も政治に対する価値観も大きく隔たった人々が一つの党を構成しているという状況が解消されたことは、日本政治にとって一つの前進であったように私は評価しています。
 かつて同盟系の労働組合を支持母体として存在していた民社党は、憲法観や安全保障観において自民党よりも優れた面が多々ありましたし、西尾末広氏や春日一幸氏らの所論には大いに共鳴したものでした。
 希望の党の前途はまだまだ多難と思われますが、「働く人の幸せを第一に考える」「健全な国家観に基づき現実的な外交・安全保障政策を採る」という路線を貫いて、旧民社党のように自民党に良い刺激を与える党になって貰いたいと思います。

 昨日、自民党憲法改正推進本部が再開され、第9条、緊急事態条項、教育無償化、合区解消に向けての議論が行われています。昨16日の会合では合区解消について概ね一致を見ましたが、衆・参両院の役割の見直しについての議論は先送りの形となりました。
 そもそも昨年の参議院選挙の際に、合区などという手法を採ったこと自体が間違いだったとの思いが拭えない中、憲法上規定されている「法の下の平等」を超える憲法理論を見出すためには、この議論は避けて通れないように思われます。私自身は、衆議院を「権力を創る院」、参議院を「権力を監視する院」として位置づけ、機能を分化するべきだと考えています。
 もっともこの議論を始めると、自民党対各党、各党内部でも衆議院対参議院、都市対地方、参議院内部でも選挙区選出議員対比例区選出議員等々、様々な思惑や利害が交錯し、果てしない応酬が繰り返されて全く結論が得られないことは必定で、残念ながらとても実現可能性があるとは思えません。

 私は決して一院制論者ではありませんが、議院内閣制の下で二院制を採る以上、ほとんど同じ権能を持った院が二つ存在することは二院制の妙味を欠くもので、三権分立の観点からも、行政権力から独立した第二院の存在が必要であり、そのためにも第一院との権限の分担・調整が必要と考えています。
 類似した選挙制度と権能を持つ院の選挙が毎年のように繰り返されることは、国政の安定性から考えても決して好ましいものではありません。

 今週も「地方創生と我が国の安全保障」と題する講演が多い一週間でした。
 毎回構成はほとんど一緒なのですが、聴衆の方々の反応を見ながら少しずつリニューアルするように心がけています。毎回新たな気付きや出会いがあり、とても有り難く思っていますが、「こんな話は初めて聞いた」との反応が多いことに前途遼遠の感を深くしてもおります。

 13日月曜日に開催させて頂いた「囲む会」には多くの皆様にご参加頂き、誠に有り難うございました。おかげさまで盛会裡に終えることが出来、心より感謝申し上げます。何かと不行き届きの点はどうかご容赦くださいませ。

 週末は、18日土曜日が平成29年度自衛隊音楽まつり(午前10時・日本武道館)、鳥取県立八頭高等学校翠陵会(正午・都内)、成蹊大学文化祭「欅祭」政治学研究会で講演(午後2時・成蹊大学8号館・武蔵野市吉祥寺)、第3回Japan fisherman‘s festival 2017(午後5時・日比谷公園)、伊藤病院創立80周年記念祝賀会(午後6時・都内)、テレビ朝日AbemaTV「みのもんたのよるバズ!」出演(午後八時・テレビ朝日けやき坂スタジオ)という日程です。
 自衛隊音楽まつりに行くのは本当に久しぶりですが、音楽隊員諸官の自衛官としての矜持に満ちた壮大華麗なステージにはいつも感動させられます。自衛隊に関心のおありでない方々にも是非一度ご覧頂きたいステージです。

 街には早くもクリスマスのイルミネーションが輝き、クリスマスソングが流れています。この間まで夏だったのに…まだひと月以上もあるのに…と思ってしまいますが、クリスマス商戦に向けて雰囲気を盛り上げるためなのでしょうね。焦燥感ばかりが募ります。
 皆様良い週末をお過ごしくださいませ。

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2017年11月10日 (金)

法政大学学園祭講演など

 石破 茂 です。
 トランプ大統領訪日や総理外遊のため、国会は事実上開かれない1週間でした。
 トランプ氏訪日の詳細な内容は知る由もありませんが、北朝鮮の核開発とミサイル技術の進捗状況、拡大抑止の実効性向上策、ミサイルディフェンスの信頼性向上などについて認識の共有がなされたものと信じます。物事全てにおいてリスクがあるのは当然であり、これをどこまで国民に伝えるかは難しい判断です。可能な限りの論説には目を通しているつもりですが、識者によって見方が大きく異なっており、やや困惑気味です。
 「同盟とは、共に戦うことはあっても決して運命を共にはしないものである」(シャルル・ドゴール)、「同盟とは、相手国の戦争に巻き込まれる恐怖と、相手国に見捨てられる恐怖の相克の間でマネジメントされるものである」(マイケル・マンデンバーム)、という教訓が思い起こされます。

 さる5日、法政大学学園祭で「安全保障と地方創生」をテーマに講演する機会があり、現役学生、OB、社会人諸兄姉多くにご来会頂いたのですが、「国家主権とは何か」「国家の独立とは何か」「軍隊と警察の相違は何か」などについて、「そんな話は初めて聞いた」という方が大多数でした。
 小学校から大学まで「国民主権」については嫌と言うほど教わるのですが(故・田中美知太郎先生は「日本に本当の意味での国民主権など存在しない」と著書「市民と国家」の中で述べておられますが)、「国家主権」について教わったことは全く無く、従って国の独立も、軍隊と警察との任務の相違についても、意識の片隅にもないという方がほとんどなのが現実です。かく言う私も一応法律学科を卒業しているのですが、この意識を持ったのは議員になってからしばらく経った頃でした。
 「自民党の大勝により、憲法改正の議論が加速する」との見方が報道でなされていますが、基本中の基本について正確な知識と意見を多くの議員が有して議論に臨んでもらいたいと切に願っております。集団的自衛権と憲法の議論も、まさに国家の独立そのものに関わることです。

 国会の論戦が開始されるに当たり、質問時間の配分を巡って与野党間にかなりの意見の隔たりがあるようです。法案にせよ、予算案にせよ、国会に提出される案件についてはそのほとんどが与党の事前審査・承認を要するのが慣例であり、与野党の質疑時間が議席数に純粋に比例すべきものだとは思いません。また、野党の質問に丁寧に答えることによって政府・与党案の正当性を世に知らしめる大きな効果が得られるものと考えます。
 もちろん「与野党比1対9」などと言うのは譲りすぎですが、野党にひたすら誠実に正確に答弁することによって、野党の揚げ足取り的な質問も減少するように思うのは私だけなのでしょうか。質問の価値は単なる時間の長さだけではなく、質問時間と内容との積によって決まるものです。

 週末は、11日土曜日が自民党岐阜県連主催「ぎふ未来塾」で講演(午後1時・自民党岐阜県連・岐阜市藪田)。
 12日日曜日は「衆議院議員赤沢りょうせい君を囲む会」(午前11時・皆生グランドホテル・鳥取県米子市)、自民党関金町支部「石破代議士を囲む国政報告会」(午後1時半・関金町文化センター・倉吉市関金町大鳥居)、自民党三朝町支部小鹿地区「石破代議士を支援する会」(午後3時・バンビセンター・三朝町高橋)、自民党賀露支部総会(午後5時半・賀露神社会館・鳥取市賀露町)、という日程です。

 比較的小春日和の多い都心の1週間でした。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年11月 2日 (木)

改めて憲法改正論議など

 石破 茂 です。
 総選挙も終わり、自民党の憲法改正推進本部も陣容を新たにして再スタートします。検討すべきテーマを再度ひととおり洗い出して、優先順位を定めるべきと考えます。

 当欄をお読みくださっている皆様も、この度の総選挙にあたり、前回の総選挙後に任命された最高裁判所裁判官の国民審査に投票されたことと思いますが、その際にどれほどの方が最高裁裁判官の名前や判決の時の行動をご存じでしたでしょうか?
 最高裁裁判官は内閣の任命によるもので、時の政府の恣意による任命が行われる可能性を排除できないことから、国民審査が置かれているというのが憲法制定時の想定です。この国民審査は、国民の公務員選定・罷免権(憲法第15条)から派生したものとされますが、国際的にもあまり例を見ない制度です。
 もしこの国民審査が形骸化し、十分に機能していないとすれば、憲法改正論議においては、三権分立の観点からも、何らかの形で国会が関与するシステムも考えてしかるべきだと思っております。
 なお、国会に設けられている裁判官弾劾裁判所は、裁判官の罷免事由を「職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠ったとき」「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」に限定しており、裁判官の判決内容の当否などは罷免事由となりませんし、弾劾裁判所は国会とは別の独立した常設機関であって国会の機関ではないとされています。

 前回若干提起したところですが、第9条の関連として、「軍」と言う言葉を忌避するあまり、今までほとんど取り上げてこられなかった「政軍関係」という論点があります。
 我が国においては国家行政組織法上、実力(軍事)組織たる防衛省・自衛隊が警察と同様に行政機構にそのまま組み込まれているため、法理的に「文民統制」という概念が生じる余地が無いようになっていますが、これは国際的にはかなり異様な形態です。
 民主主義国家においては、軍事組織に対して、司法・立法・行政の各機能からそれぞれ統制がなされるのが本来あるべき姿なのですが、我が国においては、軍事組織が「行政」であるため、その他の統制機能が特別に設けられていません。その結果、①有事における軍事組織と一般社会とでは法の適用が全く異なるのにもかかわらず「軍事裁判所」が設けられていない、②自衛官(いわゆる制服組)は国会において一切の説明も答弁もしない、③防衛分野に必ずしも通暁していない者が大臣に就き、作戦(運用・軍令)まで握ることがままある、などという現象が起きますが、決して望ましいこととは思えません。
 この政軍関係論から考えれば、戦前の統帥権独立が日本の失敗を招いた、というよりはむしろ、陸海軍大臣の補任資格が「現役の陸海軍大将・中将」であったため、軍の意に沿わない内閣には大臣を出さないことにより、軍が政治に対して多大の影響力を行使できたことの方が、影響は大きかったように思われます。
 自衛隊を憲法上位置づけるにあたっては、交戦権否認の削除のみならず、文民統制を憲法上に定め、政治と自衛隊の関係を明確にする必要があると考えます。

 自民党の憲法改正草案においては、財政の健全化も新しく盛り込まれています。
 異次元の金融緩和により円安が起こり、外国人投資家がお買い得となった日本の株を買い、株価が上昇するのは自然の成り行きですが、日銀が民間銀行の保有している国債を買い、日銀にある民間銀行の当座預金口座に資金を供給することには自ずと限界があり、地方創生や規制緩和によって潜在的な成長力を最大限に引き出すとともに、医療を主体とする社会保障改革は避けては通れません。経済政策は情緒論に堕することなく、すべて数字を基に議論されるべきです。

 このように論点は多岐にわたるのであって、徒に時間をかけるべきではありませんが、憲法改正発議を主導する立場にある自民党においては、新人も含めて党所属議員が論点を正確に理解し、明確な意識を持って論議に臨むべきものと考えます。

 週末は、3日金曜日・文化の日が北海道グラウンドワークフォーラム講演会にて講演・関係の方々との懇談会・夕食会(午後1時半~・札幌プリンスホテル)。
 4日土曜日は(株)セコマ釧路配送センター見学(午前9時20分・釧路市)、猛禽類医学研究所見学(午前10時半・同)、北海道グラウンドワークin釧路にて講演(午後1時・釧路プリンスホテル)、釧路コールマイン(株)見学(午後4時・釧路市興津)、関係の方々との夕食懇談会(午後6時・釧路市内)。
 5日日曜日は、太平洋石炭販売輸送釧路臨港鉄道石炭列車見学(午後4時・釧路市春採)、法政大学自主法政祭・志雄会主催講演会にて講演(午後3時・法政大学市ヶ谷キャンパス)、という日程です。

 カレンダーもあと二枚となってしまいました。ここから年末・お正月まではあっという間です。例年のことながら焦燥感のみが募ります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年10月26日 (木)

総選挙を終えて

 石破 茂 です。
 おかげさまで11期目の任期を賜りました。定数465人の衆議院議員全体では、最多当選の小沢一郎氏(当選17回)から数えて14番目、自民党では野田毅氏(当選16回)から数えて11番目に多い当選期数となり、31年という時の長さをしみじみと感じます。
 当然のことながら長きが故に尊からずなのであって、今回の公約に掲げた「地方創生と安全保障の確立」と「より謙虚で誠実・正直な自民党の実現」に向けて具体的な成果を着実にあげなくてはなりません。

 選挙期間中、初日と最終日の数時間しか選挙区には居られなかったのですが、10万6425票、得票率にして全国第2位の83.6%というご支持を頂くことが出来ました。
 投票日当日の鳥取県地方は大雨・暴風警報が発令される大荒れの天気でしたが、ご高齢の方や身体のご不自由な方が投票所に足を運んでくださっているお姿を見て、胸が熱くなる思いでした。亡父が県知事時代、「何の義理も恩もないのに儂に投票してくれる人が23万人もいるということが、どれほど重くて有り難いことかお前にわかるか」と言っていたのを思い出したことでした。

 当選6回以降、選挙期間中不在のことが多いのは誠に心苦しく、鳥取一区の有権者の皆様には毎回申し訳なく思っております。選挙期間中居られないのはやむを得ないとしても、平成大合併前の旧町村単位での国政報告会の頻度を次回からはもう少し上げなくてはならないと思っております。
 また亡父の話で恐縮ですが、知事選でも参院選でも、圧勝が確実なのにも拘らず、選挙では一切の手抜きをしない人でした。
 「昭和37年の県知事選挙の時、青谷境から選挙カーに同乗し白兎海岸を過ぎた頃『オイ安蔵(アゾウ)に回ってくれ』と言い出された。安蔵といえば今は鳥取市でも、もと気高郡明治村の岡山県境に接する寒村、しかも戸数数十戸許りの山奥の集落。国道9号線から入ると2時間はタップリかかる。これでは今日の日程が消化出来ん、選挙後にされては!と言うと『いやあんな県民こそどうでも救ってやらねばならんでなァ』私は目頭のうるむ思いで車を回すよう命じた」
 西尾泰章氏(元鳥取県議会副議長・故人)はこのように「石破二朗回想録」に書いてくださっていますが、この気持ちを決して忘れてはならないと改めて自戒しております。

 東京都議会議員選挙との大きな違いは、街頭演説の際、政策論に最後まで多くの方が耳を傾けて下さったことでした。勿論街頭の僅か10分あまりの演説で、細かな政策を語ることは困難でしたが、税と社会保障の一体改革の必要性、大胆な金融緩和の成果とその限界、地方創生の理念と実行策、人口オーナス期における経済政策と労働政策の在り方、北朝鮮の脅威に対してこれを外交的に解決するためにこそ必要な抑止力向上の方策、について出来る限り具体的かつ平易に話すよう心掛けました。反省点ばかりが多くあります。
 10分あまりの時間で、なぜこの候補者に一票を投じて頂きたいのかをご理解いただくことの難しさを痛感したことでしたが、選挙カーでの街宣活動は別として(うるさくて多くの方にご迷惑をおかけしました)、演説で連呼哀願を繰り返したり、砂糖菓子のように甘いことばかり言うのなら、選挙の意味はほとんどないものと思います。

 政策集団水月会の候補者も18人全員が当選を果たすことが出来ました。
 愛知11区のように労組が圧倒的な力を持っている選挙区や、高知2区のように野党が一本化した選挙区、更には新潟1区のように立憲民主党が相手の選挙区は極めて困難な戦いでしたが、各地で皆様がご支援下さった賜物です。心より厚く御礼申し上げます。本当に有り難うございました。

 結果だけ見れば与党の圧勝に見えますが、総有権者を分母とする自民党の小選挙区での「絶対得票率」は約25%、有効投票数を分母とする「得票率」は47.8%、一方自民党の「議席占有率」は74.8%、というのは厳然たる事実です。小選挙区制度を推進してきた者としては忸怩たる思いですが、これを忘れてはなりません。
 民意との乖離を起こすことのないよう、更に努めていく必要があります。

 短い期間の中で、憲法もほとんど語ることが出来なかったことはとても残念です。
 「軍」という語感に拒否反応を示す方が多いのは確かな事実ですが、これに目を背けるばかりに、本質論である「政軍関係」について全く法的な手当てがなされないことの方がよほど危険なことのように思います。これについて回を改めて論じたいと思います。
 この論点につき、「軍人が政治家になってはいけない本当の理由」(廣中雅之著・文春新書)は多くの示唆に富む好著です。是非ご一読ください。

 26日木曜日、27日金曜日は大阪市、豊岡市と地方出張が続きます。
 28日土曜日は平成29年度自衛隊殉職隊員追悼式(午前10時・防衛省)。
 29日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、という日程です。
 朝夕はめっきり肌寒くなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年10月 6日 (金)

論点など

 石破 茂 です。
 突然の解散となったため、どの党も公約が急拵えで論理一貫性に欠けるきらいがあるのは否めませんし、公認候補自身も所属政党の公約をどこまで理解して有権者に訴えているのか、怪しいと言わざるを得ません。
 私自身は憲法第7条による解散は努めて抑制的であるべきだと考えていますが、仮にこれを行う場合には政策を可能な限り詰めて議論した後に成案を得、候補者たちがそれをよく理解した上で論点を整理して提示し、有権者に選択を求めることが、政策を選択する選挙の在るべき姿だと思っています。
 「それは理想論であり、現実の政治はそんなものではない」とのご批判が容易に予想されますが、そのようなことを言っていてはいつまで経っても日本の政治はよくなりません。政党が理想を放棄してどうするのでしょうか。

 憲法第9条についても、
*国家の独立を守る組織が「軍」である
*国家の独立とは、領土・国民・統治機構という国家主権の三要素を守ることを指すのであり、この三つは何があっても外国に侵されてはならない
*「軍」は行政組織と完全な組織性・同一性を本来有しないが故に、文民統制の概念が必要となる
*「文民統制」とは、立法・司法・行政の三権により行われるべきものである
などという基本的なことを捨象して、「自衛隊を憲法に書き込む」対「9条を守る」的な議論をしていても積極的な意味はないものと思います。
 「軍」という言葉を忌避するあまり、「国家の独立」や「政軍関係のあり方」という物事の本質を直視しないことはあまりにも危険なことです。

 北朝鮮に対する「圧力」を語るにあたっては、この問題を外交的に解決することを可能とするための抑止力の強化が不可欠です。拡大抑止の信頼性とミサイル防衛の実効性を向上させ、国民保護の体制を整備することが必要なのはかねてから申し上げてきたとおりです。北朝鮮にのみ目を奪われることなく、中国やロシアに対する抑止力を確保するために、グレーゾーン事態対処の明確化とさらなる統合運用能力、情報収集能力の整備は急務です。

 製造業に限らず、サービス業を含む多くの産業において、「同じ商品を、安く、沢山、大勢の人で、男性の長時間労働をベースとして提供する」という発展途上国型の産業モデルから転換できていないことが、日本経済の最大の問題点だと考えています(私の若い頃には「24時間戦えますか」というドリンク剤のCMソングが流行ったものでした)。
 日本国の在り方を「高度で多様な価値観に適合した」「高付加価値の」「少量多品種の商品を」「男女の適切な役割分担による生産性の高い労働力で」提供するという、人口オーナス期に合致した形に早急に転換するためにこそ政治のリーダーシップが発揮されなくてはならないのであり、急速に深刻の度を増す人口減少、地方の衰退と東京一極集中、医療や介護・子育てなどの課題も、この文脈においてもっと語られるべきです。消費税の増税や使途の変更だけが論点なのではありません。

 一昨日は三鷹と調布、昨日は水戸と、連日街頭やハコモノでの演説を行っていますが、有権者が具体的な政策を求めていることを痛切に感じますし、ひたすら対立を煽り、劇場型を演出する手法には辟易しているように思われます。
 国家の直面する課題を語り、具体的な政策と国民政党・自民党の在るべき姿を提示し、主権者たる国民の審判を仰ぎたいと思います。

 国民の審判が降る前に選挙後の政権の枠組みなどを語ることは、主権者に対して礼を失する行為以外の何物でもありません。

 閏月がある関係で、今年の中秋の名月は一昨日、満月は今夜という、何だかよくわからないことになっています。
 昨日の常磐線の車窓から見た月は誠に見事でしたが、天空と下界との有り様の異なりを思ったことでした。

 朝夕は寒さを感じる頃となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年9月29日 (金)

「国難」など

 石破 茂 です。
 「日本の国難」とは、2100年5200万人、200年後には1391万人になると予想される急激な人口減少と、激変する北東アジアの安全保障環境です。この時期の解散なのですから、この二つに明確な選択肢を国民に提示しなければなりません。
 日本の高度経済成長の背景となった人口ボーナス期とは全く異なる人口構造になったにも拘らず、産業構造の転換も、人口政策も後手に回ったことは、我々政治に携わる者に大きな責任があります。金融緩和と財政出動で生まれた時間的猶予の間に、産業構造の転換と、地方・女性・人生のベテランが持つ潜在力を最大限に引き出す必要があります。
 「やりっぱなしの行政・頼りっぱなしの民間・全然無関心の市民」という「地方創生失敗の三位一体」は秋田市在住の漫画家・こばやしたけし氏の言葉ですが、まさしくその通りですし、「行政」を「中央」に、「民間」を「地方」に置き換えても構図はほとんど同じです。

 私が防衛に政策の重点を置くようになったのは、25年前、金日成主席の80歳の生誕祝賀行事の際に北朝鮮をこの目で見てからです。
 当時は拉致問題も顕在化しておらず、核もミサイルも未だ実験しておらず、我が国巡視船との銃撃戦も無く、金丸自民党副総裁がお祝いのために訪朝するような時代でしたが、徹底した反日・個人崇拝、国民に対するマインドコントロールの実態を見て心底驚愕し、この国は将来必ず日本にとって大きな脅威になると直感したものでした。
 その後、有事法制の成立、ミサイル防衛システムの導入など、拒否的抑止力の向上に努めてきましたが、北朝鮮の脅威が現実のものとなった今、核抑止を含む日米同盟の実効性向上、ミサイル防衛体制の拡充、国民保護体制の整備を早急に図り、脅しに屈しない外交による平和的解決を可能としなければなりません。

 民主党政権当時の岡田外相が「危機的状況や重大な局面においても非核三原則を貫くかどうかについては時の政権が判断する」と国会で答弁しているように、非核三原則のうち「持ち込ませず」については実質曖昧な状態になっているのですが、危機的な状況になってから「持ち込み」を行うことはかえって事態の悪化を招きかねませんし、仮に米国が「持ち込まない」という判断をすれば米国の決意が疑われかねず、どちらもあまり得策とは考えられません。平時における抑止力の実効性について、精緻な議論を経た結論を得ることが必要不可欠です。
 ミサイル防衛については、SM-3ブロックⅡA(日米共同開発の新型迎撃ミサイル)とイージスアショアの早期配備、EMP対応も可能なブーストフェイズでの破壊能力(BPI)の具体化と法整備を急がねばなりません。
 国民保護については、国家緊急事態基本法の制定を急ぐとともに、情報伝達の迅速性と正確性を向上させなければその実効の確保は望むべくもありません。

 以上の二つの実現は、極めて急を要します。この選挙は「自公VS希望の政権選択選挙」「安倍VS小池」と言われるようになってきましたが、「国難突破か、しがらみのない政治か」などという抽象論を闘わせたり、「疑惑隠しの自己都合解散」「急拵えの実質第二民進党」などという応酬に終始することなく、双方が具体的な政策を提示し、国民に問う選挙でなくてはなりません。

 自民党は、五年前に政権に復帰した時に国民が期待した「謙虚で、誠実で、正直な党」としてその原点に立ち返らねばなりません。これも強く訴えていきたいと思います。

 地元である鳥取一区には初日と最終日に短時間しか入れない見通しですが、水月会メンバー、与党の同志が一人でも多く戻ってくるように最大限活動してまいります。

 週末は、明日30日(土)が鳥取県倉吉市議会議員選挙応援、県政記者室インタビュー。
 10月1日(日)が水月会秋田セミナー(午後1時半・秋田キャッスルホテル)にて講演、懇親会、という日程です。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年9月22日 (金)

党内議論と意義の説明など

 石破 茂 です。
 今回、解散・総選挙になるとすれば、その意義は何か。25日と言われている総裁からの説明を聞いてみなくてはわかりませんが、我が党の候補者、特に期数の若い諸君が有権者からの共感を得られるような説明をして頂きたいと強く願います。
 メディアで散々言い尽くされているような「今なら自民党が勝てる」というのではとても共感が得られるとは思えませんし、そのようなものではないでしょう。「来年は北朝鮮の事態が更に緊迫している」というのも、今解散を断行する理由とは考えにくいように思います。

 医療・介護の充実に加えて、子育てや教育にも消費税を充てるということについても、具体的な説明を必要とするでしょうし、憲法改正の党内議論も尽くされているとは言い難い現状です。
 第9条について、自民党憲法改正草案の説明も、総裁の考えと伝えられる案(第1項・第2項をそのままにして自衛隊の存在のみを第3項に追加するという案)についての説明も、党内で全くないままに国民にこれを問うことなどあり得ませんし、仮にそのようなことになれば党内の民主的政策決定プロセスは崩壊してしまいます。ことは最高法規である憲法の問題であり、就中我が国の独立と平和についての第9条です。都議選終了後直ちに党所属全議員による徹底的な議論をしていれば、今回の選挙で国民に明確な選択肢を提示できたのにと思うと残念でなりません。

 「森友・加計は小さな問題」というような考えも党内にはあるようです。東アジアの現況、国内外の多くの課題と比べればそのような見方は当然可能でしょうが、これは大小の問題ではなく、行政の公平性や信頼性という質の問題であると国民の多くは思っているのではないでしょうか。東京都議会議員選挙で示された有権者の感覚を決して軽視してはなりません。政策と併せて、「自民党は逃げも隠れもしない」という党幹部の発言に象徴される党の姿勢が国民に理解されるように努めることも、与党の一員である我々の責任です。

 なお、衆議院が解散されて衆議院議員が全て居なくなっても参議院は残っており、政府も存続しているのですから「政治空白を避けるべき」との批判は当たりませんが、万が一の際の重大影響事態、存立危機事態に備えて、参議院の緊急集会も含めた態勢整備も怠ってはなりません。

 今週も必要に迫られて何冊かの本を読んだのですが、「国家国民のリアリズム」(三浦瑠麗氏と猪瀬直樹氏の対談・角川新書)と「労働時間革命」(小室淑恵著・毎日新聞出版刊)からは大きな示唆を受けました。ご関心のおありの方は是非ご一読ください。

 週末は本日22日金曜日、杉浦記念財団のまちづくりシンポジウム(午後13時15分・ウィンクあいち・名古屋市)、丸和電子化学とこじまこども園の見学、自民党愛知11区支部の街頭演説会(午後5時・豊田市駅前)、同時局講演会(午後6時・名鉄トヨタホテル)。
 23日土曜日が大阪府堺市市長選挙・大阪府議会議員・堺市議会議員補欠選挙街頭演説会(午前8時~午後2時。堺東駅・三国ヶ丘駅・深井駅・庭代台近隣センター・泉ヶ丘駅・ライフ福泉店前等)、(株)三谷組・(株)ウオタニ資本業務提携記念祝賀会(午後5時・城西館・高知市上町)、自民党高知県連との意見交換会(午後7時半・高知市内)。
 24日日曜日は自民党香川県連三木支部総会で講演(午前11時45分・三木町農村環境改善センター)、自民党香川県連地方政治学校「香川政経塾」で講演(午後1時・リーガホテルゼスト高松)、全国左官技能競技会前夜懇談会(午後5時半・松山全日空ホテル・愛媛県松山市)、という日程です。

 急な解散・総選挙となるのであれば、以前から予定していた日程との調整がかなり大変です。選挙中の各地への移動はなるべく非有効時間帯である夜間・早朝を使うようにしてきたのですが、夜行列車がほとんど廃止になってしまい、日程が相当非効率なものにならざるを得なくなってしまいました。いつものことながら、選挙戦は気力・体力の限界との戦いです。

 場合により、本欄の更新は不定期となりますことをご容赦ください。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年9月15日 (金)

抑止力の向上など

 石破 茂 です。
 本日7時前に北朝鮮がミサイルを発射した際の報道の混乱ぶりはよく理解が出来ません。
 NHKニュースは政府の発表として「ミサイルが午前7時4分頃、日本の領域に侵入し、午前7時6分頃、領域から出て、午前7時16分頃、襟裳岬の東およそ2000キロに落下した」と伝えました。
 「領域」とは領土・領海・領空の総称であるため、高度500キロ以下を飛翔したのかと思っていたら、その後の発表ではこれをはるかに上回る高度であったようで、我が国の国家主権の及ぶ「領域」も「領空」も侵犯はされていないはずです。
 細かいことのようですが、国家主権が侵犯されたか否かでその意味は全く異なるのであり、どうしてこのように基本的なことがあやふやのまま発表がなされたのでしょうか。本日の自民党の会議で政府はその誤りを認めましたが、何故、情報を伝えた防衛省も、受け取った内閣官房も、「領域」ではないことに全く気付かないままに発信してしまったのか。南スーダンの「戦闘」という日報の表現を巡って大混乱に陥ったことに対する反省が活かされていないのではないでしょうか。
 
 政府は午前7時にJアラートを通じて北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、長野の道県に警報を伝え、当該道県では「北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、又は地下に避難してください」というアナウンスが流れたとのことですが、この時点ではすでに着弾地点は把握できているはずです。「着弾はしないが、デブリ(破片)が落ちる可能性がある」ということだったのでしょうか。それはどのような根拠によってその範囲を特定したのでしょうか。
 せっかく警報を発するのであれば、同時に国民にどのような状況であるかも可能な限り正確に伝えなければ、避難すべきか否かの判断がつきません。このようなことを繰り返していると、やがて国民の政府に対する信頼が失われることになるのではないかと強く危惧します。

 西欧諸国が冷戦時代、旧ソ連の核の現実的な脅威をどのように乗り切ったのかを検証し、応用しうる点は早急に整備しなくてはなりません。自国も核を保有した英・仏、自国に米国の核を配備した旧西ドイツ、ニュークリアシェアリング政策を採る現在のドイツ・ベルギー・イタリア・スペインなど。あるいは核シェルターを整備し、避難訓練を常時行ってきた北欧諸国やスイスなど。いずれも核抑止の実効性と国民保護を徹底させたからこそ、ヨーロッパにおいて冷戦に勝利し得たのであり、議論さえ行わない我が国との差は歴然としています。

 党の会議に出てみると、総じて官僚機構のここ最近の状況には極めて憂慮すべきものがありますが、本来優秀であるはずの彼らが問題先送り、その場凌ぎの体質になってしまったとすれば、それは明確な方向性を責任をもって提示しない我々にこそ問題があるはずです。官僚を難詰するのが我々の仕事なのではありません。

 週末は、16日土曜日がJA中央梨選果場訪問(午前9時・倉吉市秋喜)、鳥取ライオンズクラブ認証60周年式典・祝賀会(午前11時半・鳥取市内)、自民党鳥取1区支部東部地区支部長・幹事長会議(午後3時・同)、全管協自民党ちんたい支部鳥取県意見交換会(午後4時半・同)、どんどろけの会総会(午後7時・同)。この日は亡父の命日でもあり、墓参りにも行く予定です。
 17日日曜日は、石橋邑南町長、山中町会議長、州浜県議との意見交換会(午後2時・島根県邑智郡邑南町)、邑南町商工会青年部地方創生特別講演会で講演(午後3時・同)、町・商工会青年部関係者との夕食会(午後5時・同)という日程です。

 9月も半ばとなりました。ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年9月 8日 (金)

ニュークリア・シェアリングなど

 石破 茂 です。
 先月29日の北朝鮮によるミサイル発射に続き、さる3日は6回目となる水爆と思われる核実験と続いたため、3日の水月会研修会における講演では核抑止政策の在り方についてお話したのですが、予想外の反響となり、今週はいくつかのテレビに出演し、新聞各紙でも取り上げられることとなりました。
 このテーマについて言及したのは今回が初めてではなく、欧州のニュークリア・シェアリングをはじめとする核戦略については随分と以前から公の場でも論じてきたのですが、その時は全くと言ってよいほどに反応はありませんでした。本来このようなテーマは、平時に冷静な環境の下で論じられるべきなのですが、いつもながら、危機が顕在化してからでなければ議論が具体化しないのは誠に残念なことです。

 中国が最初の核実験を行ったのは1964年10月16日、まさに前回の東京オリンピックの開会中でした。このオリンピックに「中国」として参加したのは中華民国(台湾)であり、当時「中共」と呼称されていた中国は国際的にも広く認知されず、日本との関係は極めて悪かったと記憶していますが、大会の真っ最中に核実験を強行したことに当時の北京政府・毛沢東共産党主席の強烈な意志を感じます。
 「パンツをはかなくても核を保有する」という言葉はあまりにも有名です(正確には、当時の陳毅外相が「ズボンを質に入れてでも核を保有する」と述べたものが、毛沢東の言葉として伝えられているようですが)。
 「同盟は共に戦うものだが、決して運命を共にするものではない」と述べたのはフランスのドゴール大統領ですが、フランスはアメリカの強い反対に遭いながらも核を保有し、インドもソ連からの核の傘の提供を受けることなく独自に核を保有し、現在に至っています。
 「他国の庇護のもとにあることを潔しとせず、民族として自立する」という価値観それ自体は否定できるものではないでしょう。その意味で言えば、金正恩委員長も、北による朝鮮半島の統一を念頭にそのように考え、中国に対しても「貴国と同じ政策を採っているのになぜ我々を非難するのだ」と考えているようにも思われます。

 NPT体制には「核のアパルトヘイト」と呼ばれるように「米・露・英・仏・中5か国だけが核を保有できる」「インドやパキスタンのように『やったもの勝ち』である」「NPTに入っていない国にはそもそも適用がない(イスラエル?)」という様々な不公平さがあります。
 日本がそれでもなおこれに加盟し、強く支持するのは「唯一の被爆国である日本が核を保有すれば核ドミノが引き起こされ、どの国も核を持つ世界は今よりもなお悪い」との考え方に基づくものです。これに加えて日本が核を保有することは、ウランの輸入や使用済み燃料の再処理を可能としている米国やフランス、カナダなどとの2国間協定の破棄をもたらしてエネルギー政策が成り立たなくなりますし、そもそも核実験をする場所など日本のどこにもなく、極めて非現実的と言わざるを得ません。

 「米・露・英・仏・中は特権を有し、インドやパキスタンにも核保有が許されているのに、何故北朝鮮には許されないのか」という問いに正面から答えるのは意外と難しいのではないでしょうか。
 自国の体制を守るために核を保有することは認められないというのは、答えになっているようでなってはいない。「人権を無視し、特異な独裁体制を持つ国の核保有は認められない」という他はないように思われますが、これも「では人権を尊重する民主主義国なら核保有は許されるのか」という問題にすぐ逢着してしまいます。
 だからこそ全面的な核保有禁止なのだということになるのでしょうが、そこに至る道筋は困難極まりないもので、唱えていればいつかは叶うというものではありません。どのように考えてみても「核を使用しても効果はなく所期の目的は達せられない」という拒否的抑止力(ディナイアル・ケーパビリティ)を高める他はないように思われます。
 弾道ミサイルが速度が遅く、姿勢制御も多弾頭化も困難で比較的脆弱な状態にある、ブースト段階(発射直後)での迎撃能力を追求することは一つの解となりうるものであり、急務でしょう。

 「脅威」とは能力と意図の掛け算の積なのであって、意図はともかく、能力を持ち、意思決定が迅速に可能な国は、北朝鮮に限らず我が国周辺に存在しています。意思を軽減するのが外交であり、その重要性は極めて高いものですが、それだけで安全保障は十分なのではありません。
 かつて日本の首相がソ連の中距離核ミサイルSS20を知らず、世界を驚かせたのは40年近くも前のことですが、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則に加えて「議論もせず」の四原則を、周辺情勢が激変した今もいまだに堅持することで平和が保たれると信じておられる方の多いことに改めて驚愕しています。いつまでもこんな思考不徹底の言論空間を続けている余裕など今の我が国にはないはずです。

 随分と以前に絶版になっているものと思いますが、「国家安全保障の政治経済学」(吉原恒雄・泰流社・1988年)は何度読み返しても新鮮な刺激を受ける本です。
 北朝鮮と米国については川上高司拓大教授のここ10年間の論考が、北の核政策については「不拡散における誘因の欠如 なぜ北朝鮮は非核化しなかったのか」(渡邊武・防衛研究所紀要2017年3月 ネットで検索可能)、核政策全般については「核神話の返上」(防衛システム研究所編纂・内外出版)が読みやすくて示唆に富みます。

 古典的・空想的な言論と、直接に取材もせず匿名座談会的な傾向の強い排外的な言論に取り囲まれている昨今ですが、異なる様々な立場から批判されることはむしろ良しとすべきなのでしょう。
 私自身、独善的になることのないよう、自重自戒して参ります。

 週末は、9日土曜日に全日本病院学会特別シンポジウム「明日の日本をデザインする」にパネラーとして参加いたします(午後4時・石川県立音楽堂・金沢市)。
 季節の変わり目、皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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