本人コメント

2018年6月22日 (金)

国会延長など

 石破 茂 です。

 国会は7月22日までの延長となりました。IR法案はなお国民の多数の理解を得るに至っておらず、参議院においてなお丁寧な説明が必要です。
 幹事長在任中、IR(統合リゾート)の視察にシンガポールに行った際、「カジノ自体が目的ではなく、そこで得られた収益で国際展示場や国際会議場の利用料を下げ、誘致を促進することが目的」と力説され、その収支計算が精緻であったことと、不正行為や常習者対策が徹底して行われていたことが極めて印象的でした。
 日本においてそれらの課題にどのように対応しているのか、それなりの対応は当然講じられているはずで、政府の更に誠実な説明が必要です。

 加計学園の理事長が会見されたことは一歩前進でしたが、その目的は会見すること自体ではなく、この問題に対する国民の疑問を払拭し、納得を得ることにあったはずで、大阪での震災翌日、わずか2時間前の通告、岡山の記者クラブ対象という手法は、本当にその目的を達成するために最善であったかどうか、もっと工夫の余地があったように思われて残念でなりません。本来国家戦略特区の閣議決定に明示された条件を満たしてさえいれば当然に認可されるべきものであり、策をあれこれ弄する必要など無かったはずです。

 米朝首脳会談から日が経過し、その構図が明らかになりつつあります。金正恩委員長にとって大切であったのは「核放棄のプロセスの間、米国は北朝鮮を攻撃しない」という「安全の保障」が、トランプ大統領は「朝鮮半島における米軍の駐留負担の軽減と北朝鮮の経済発展に対する米国の関与」が最も大事であったとすれば、両者の思惑は見事に一致していたように思われます。

 そもそも「体制の保証」などどの国にも出来ることではありません。ロシアから分離独立したウクライナの体制を、核を放棄することを条件に、米・露・英、後には仏、中も共に保証した「ブダペスト覚書」がプーチン大統領によって反故にされたことを金委員長は熟知していたはずですし、おそらく彼はトランプ大統領に、北朝鮮のカジノ開発に米国企業が参加出来るようにする、というようなことも囁いたのではないでしょうか。

 日本はこの後どのように対応すべきなのか。決して気を緩めることなく防衛力を着実かつ早急に整備することと併せて、日韓基本条約(1965年)、日朝平壌宣言(2002年)、ストックホルム合意(2014年)などを精緻に点検し、拉致問題も含めて国際法的な立場を今一度確認し、今後の交渉力を高めていかなくてはなりません。
 更に、将来的に朝鮮国連軍が解消された場合、英国をはじめとする米国以外の10か国が在日米軍基地の使用することを可能とする「朝鮮国連軍地位協定」はその根拠を失うのであり、これは我が国の安全保障に重大な影響を与えることにもなりえます。
 これらの問題の多くは政府が「憲法上行使不可能」とする集団的自衛権行使と密接に関わります。私自身は、何度も申し上げている通り、集団的自衛権行使の態様は憲法解釈から導き出されるものではなく、あくまで政策判断であり、行使の態様は安全保障基本法で制約し、我が国の外交・安全保障の選択の幅を広げることが論理必然であるとともに国益に適う、との立場ですが、今後この問題は我が国に重くのしかかってくるに違いありません。その場しのぎの対応は必ず将来に禍根を残すものと思い、なお努力を重ねてまいります。

 先週の早稲田大学大隈塾、今週の東京・新代田の学生さんのシェアハウス「アオイエ」での講演とそれに続くディスカッションはとても内容の濃いもので、こちらも多くの刺激を受けました。政治が真剣に語れば応えてくれる方の多いことにとても安堵しています。

 大阪の震災で犠牲になられた方、被災された方に哀悼の誠を捧げ、お見舞いを申し上げます。通学路に限らず、ブロック塀の点検と改修は急務です。

 今週末土曜日から来週月曜日午前にかけては、兵庫県・宮城県・岩手県内各地において講演会や懇談会に臨みます。
 梅雨の中休みのような今日の東京都心でした。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年6月15日 (金)

米朝首脳会談など

 石破 茂 です。
 
 米朝首脳会談は壮大な政治ショーではあったものの、現段階で評価するのは極めて難しい。対立から対話へと大きく舵が切られたこと自体は評価すべきですし、それが今回の最大の成果だったのですが、長い対話の道のりの始まりとも言うべきものでしょう。
 金正恩委員長は、南北首脳会談と中国訪問に続く華々しい外交デビュー第三幕を果たして世界中にその存在を見せつけ、体制の保証(保障・Guaranteeではなく)を取り付け、中国の要人専用機に乗ってシンガポール入りして中国が後ろ盾であることも誇示し、北朝鮮の非核化については「検証可能」という言葉が落ちたことが示すように何らの言質も与えないという、失うものの無い成果を手中にし、「偉大な委員長様に米国や世界が譲歩した」という国内基盤の強化も果たしたように思われます。
 対するトランプ大統領も、「今までのどの大統領もなしえなかったことを自分だからこそ実現することが出来た」とことさらに強調することで米国内向けに存在感を示すという成果を手にしたというべきでしょう。まさしくトランプファーストそのものです。
 我々が考えなくてはならないのは、今後日本ならびに北東アジアの安全保障はどのように変化し、その中にあって日本は何をなすべきかを徹底的に考え、施策を進めることです。

 米国一辺倒、米国頼みの外交から脱却すべきだとの見解も多く見られますが、外交と防衛は一体なのであって、米国を「唯一の同盟国」として防衛の多くを依存している以上、「米国頼み」にならざるを得ないのはむしろ当然というべきであり、選択の幅はもともと極めて狭いのです。
 だからこそ国連の中核概念である集団的自衛権の行使を憲法上は容認し、その行使の態様は法律によって制約されるとすることで政策的判断の幅を広げ、防衛力を強化し、拉致問題を含む国連における発言力を高めるべき(北方領土問題も問題解決の鍵はここにあるはずです)とここ20年近く訴えているのですが、どの立場からも全くと言っていいほどにこの声が上がらないことはどういうことなのか。
 反対派は「集団的自衛権は米国と共に世界中で戦争する道を開くもの」という固定的な観念から一歩も抜け出せず(この立場に立つ政党が本当にそう信じるなら、政権に就いたら国連の場で国連憲章にある集団的自衛権条項の撤廃を訴えると公約すべきです)、保守派はこの問題については沈黙を決め込み、議論が全く進まない日本をよそに、世界の情勢は急変しようとしています。

 今回の米朝共同声明は「朝鮮半島の平和体制が実現すれば非核化が実現する」との論理であり、「非核化が実現すれば朝鮮半島の平和が実現する」という従来の米国の論理とは真逆になっています。
 戦争の終結宣言から平和条約に至るまで北朝鮮は時間を稼ぐことが出来、その間に核・ミサイルの能力向上を図ることも可能となるのではないでしょうか。実験施設を破壊するなどのデモンストレーションは行うのでしょうが、既に実験が完了した実験施設を破壊しても実質的な意味はないでしょう。
 
 北朝鮮が主張する「朝鮮半島の非核化」とアメリカの主張する「北朝鮮の非核化」は全く異なり、この溝を埋めるのは容易ではありませんが、何よりも気がかりなのはトランプ大統領が会見で「米韓演習は挑発的であり、中止することで多額の経費を節約できる」と述べるとともに、将来的な朝鮮半島からの撤退の可能性にも言及したことです。それは在韓米軍のみならず、朝鮮国連軍の存在をも失わせるものであり、平和協定締結により日本と朝鮮国連軍との地位協定もその根拠が無くなります(米国のみならず、英、仏、豪など11か国が参加する朝鮮国連軍との地位協定により、諸国は日本の港や港湾を使っての活動が可能となっています)。
 そうなった場合、日本は新たな安全保障環境に今よりも格段に困難な状況の中で直面することになりますが、これをどう回避するのか、不幸にしてそうなった場合にどう対応するのか、今から考えておかなければなりません。

 北朝鮮の核放棄に私が懐疑的なのは、今回日本の報道ではほとんど触れられていませんが、1994年に米・露・英がウクライナの核の放棄と引き換えにその独立や主権を保証することを約束した「ブダペスト覚書」(後に中国とフランスも保証)を、ロシアがあっさりと踏みにじってクリミアを併合したという歴史的事実が、金委員長の念頭にあるに違いないと思うからです。
 クリミア併合の際、ロシアは独特の論理を展開してその正当性を主張しましたが、それは1968年、チェコスロバキアの首都プラハに旧ソ連の戦車部隊が侵攻して、民主主義の萌芽を武力で摘み取った時に展開した集団的自衛権援用の論理に酷似したもので、唖然とさせられたものです。
 プーチン大統領は大統領選挙の投票日をわざわざクリミア併合記念日に設定し、圧勝しました。同大統領やロシア人の領土に対する執念や力による外交の信奉は、経済的な利益を大きく超えた、日本人の想像を絶するものであるように思われます。

 外交でも内政でも、言葉の持つ重みや信頼性が急速に失われつつあるように思われます。ゲーム感覚が当たり前のように横行し、誰を、何を信じればよいのかわからなくなっている、今まで経験したことのない時代の到来を感じています。

 週末は、16日土曜日が旧三井銀行本町支店長 星野欣也氏の米寿を祝う会(午後1時・都内)、東京都中野区三田会総会・懇親会(午後5時・同)。
 17日日曜日は大阪府下各地での講演や懇談会、「ビートたけしのTV 日本の防衛はどうなるスペシャル」出演(午後9時・テレビ朝日系列・収録)という日程です。
 私の入行店である三井銀行本町支店長を昭和55年から2年間務められた星野欣也氏は人格・識見ともに実に素晴らしい方で、後に専務取締役まで栄進されました。星野支店長ご在任中に本町支店に在籍した者が集まって支店長を囲む会をここのところ毎年開催しているのですが、40年近い時空を超えて、新入行員として無我夢中で働いたあの時代の雰囲気が蘇る、年に一度の本当に楽しいひとときです。
 
 梅雨らしい日々が続いた今週の東京都心でした。皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2018年6月 8日 (金)

合区解消、CLT議連など

 石破 茂 です。

 参議院の選挙制度改革を巡っては、なお異論が燻っているようですが、他にどのような方法があるのかを示さないままに「場当たり、党利党略、お手盛り」と批判だけしている報道や発言者を見ていると、無責任な、心情の冷たい人たちがいかに多いことかを思い知らされます。
 人口減少県など日本に要らないのだ、とまで言い切る人までいる様(さま)を見ると、人間ここまで冷酷に割り切れるものなのかと空恐ろしい気も致しますが、本当にそう思うのなら正々堂々と自らの名を名乗って、合区対象県の地元紙に投稿するなり、当該県において拡声器を持って演説でもしてみればよいのです。それもせず、そもそもそんな気もないのに、匿名で自説を展開し、悦に入っているような人がいることに対しては、その無責任さ、卑劣さに対する嫌悪感を抱くとともに、日本社会の一部に広がりつつある深刻な病理を感じずにはいられません。

 本来、一票の格差は2倍以内であるべきと思っておりますが、そのためには「国会議員は憲法・外交・防衛・財政などの国政の基本にのみに専念し、地方の利益実現には関与しない」という体制を可能にする抜本的な地方分権が必要であり、これは四半世紀も前の平成5年、細川政権下の政治改革特別委員会で指摘したことなのですが、細川総理も山花政治改革担当大臣も何ら反応を示さず、その後、確たる進展もみておりません。
 地方分権が徹底せず、国会議員が国益にも資する地方の利益を実現する役割を負う以上、定数の削減は発言力の低下をもたらし、東京一極集中に更に拍車がかかることにもつながります。一方で、なかなか議論が盛り上がらない責任の多くが我々にあることは十分に承知しております。

 衆議院(2倍以内)に比べて較差が3倍以内と大きい参議院の在り方も見直さなくてはならないのであり、衆議院が「権力を作る院」であるなら、参議院は「権力を監視する院」としての特色を強く持つべきと思います。
 議院内閣制で、議員の中から大臣など政務三役のほとんどが出る以上、議会が政府の強い影響下に置かれることは不可避であり、三権分立が十分に機能しない欠点があります。参議院は政府に政務三役を出すことなく、党議拘束を緩めることなどによって、六年間の任期が保障された見識ある議員たちが、より高い見地から議論を行うなどの改革も本来検討されてしかるべきです。選出方法も権能もほとんど同じ院が二つ存在していても、二院制の妙味は十分に発揮されないものと考えます。

 最近、戦前の帝国議会で反軍演説や粛軍演説を行い、衆議院を除名となった斎藤隆夫に強い関心を持っています。昭和15年2月2日の演説の内容は決して軍を貶めるものではなく、むしろ政府と議会の姿勢を糾弾するものだったのですが、同年3月7日衆議院本会議で賛成276、反対7、棄権121の圧倒的多数で除名決議が可決されます。
 軍部大臣現役武官制の復活により、内閣は軍部に対して妥協せざるを得ず、議会も沈黙するような雰囲気が横溢していた時代です。そのような中、あらゆる批判を覚悟のうえで正論を述べた斉藤に改めて感動するとともに、除名に反対する議員が僅か7名、自らの立場を曖昧にしたまま責任を果たさなかった議員が121名であったということになんとも言えない思いが致します。
 YouTubeや、NHKの「そのとき歴史が動いた」のアーカイブ版で当時の様子は容易に観られますので、是非ともご覧いただきたいと思います。

 私が会長を務める「CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー、直交集成板)で地方創生を実現する議員連盟」は、4日月曜日に福島県いわき市と郡山市に現地視察に出向き、6日水曜日には経済同友会前地方創生委員長の隅修三東京海上ホールディングス会長、現委員長の地下誠二日本政策投資銀行常務、市川晃住友林業社長をお招きして勉強会を開き、企業人ならではの簡素で分かりやすいお話をお聞きしました。
 詳細は回を改めて論じますが、CLTは地方創生の切り札になるものと信じています。EUとのEPAの行方によってはEUからCLTが大量に輸入されることにもなりかねず、日本国内での需要の拡大とコストの低減による国産CLTの普及は喫緊の課題です。

 米朝首脳会談を来週に控え、日米首脳会談が行われました。
 「今後『最大限の圧力』という言葉は使わない。なぜならすべてうまくいっているからだ」という言葉がトランプ大統領から発せられましたが、本当に「すべてうまくいっている」のかはわかりません。
 北朝鮮はロシアと中国を後ろ盾に「核」をディールの材料として使っているのですが、アメリカファーストのトランプ大統領は国益の多くを異にする日本に対しても巧妙にディールを仕掛けてきているのは明白です。それは首脳同士の親密さとは全く別個のものであり、総理の苦悩は察するに余りあります。
 日米間でディールをするためには日本もその材料を持たねば、そもそもディールは成り立ちえません。憲法や日米安全保障体制の見直しの本質は、まさしくそこにこそあると思っています。

 週末は、9日土曜日は徳島市で市町村関係者との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル・徳島市万代町)、「衆議院議員 福山守を励ます会」で講演・懇親会・夕食懇談会(午後5時~・同)。
 10日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、徳島市自民党関係者との朝食会(午前7時半・徳島市内)、徳島びっくり市21周年記念感謝祭(午前9時・繊維卸団地)、帰京後は都内で講演会と懇談会に出席する予定です。
 
 東京も梅雨入りし、すっきりしない天候が続きます。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年6月 1日 (金)

合区解消など

 石破 茂 です。
 先週からまた一転、米朝首脳会談がシンガポールで開催される可能性が出てきました。これがトランプ流のゲームであり、ディールなのでしょうが、何度も指摘している通り、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」の間にある乖離も、その「接点」が日本の安全保障に与える影響も、極めて大きいものです。
 「北朝鮮の体制を保証する」ことは、北朝鮮国民の置かれている悲惨な状況を是認することにもなりかねない。また、日本国の国家主権の侵害であるとともに重大な人権侵害である拉致問題との整合が取れないことになる。我が国にとっての望ましい解は、他のどの国よりも難しいことを痛感しています。

 今週久々に開かれた党首討論は、あまりに時間が短く、議論が交わらないままに終わってしまった感が致しました。与野党の話し合いの結果の時間配分なのでしょうが、もう少し長く、多くの国民が見られる時間帯に行なう工夫は出来ないものなのでしょうか。多様な意見の中から一致点を見出すのが議会の役割なのであり、それに資するような議論を心掛けねばと思います。

 参議院の合区解消に向けて、自民党内で一定の方向性が出つつあります。
 公職選挙法の改正によって、埼玉県の定数を2人増加させて選挙区間の最大較差を3倍未満とするとともに、参議院比例区で拘束名簿式の特定枠制度を導入することにより、合区によって候補者を出せない県の者を優先的に当選させるという内容で、現時点においては憲法を改正して参議院の独自性を明記するまでの緊急避難措置として、万やむを得ないものと考えます。
 「合区自体は解消されていない」「定数を増やすのは行革の趣旨に逆行する」「法の下の平等をどう考えているのだ」という批判も多く見られますが、憲法改正の発議に必要な衆・参全議員の3分の2の賛成が得られる状況にはなく、大都市部の定数を増やして格差を3倍以内に収めるためには40議席以上を増やさねばならず、比例区を削って都市部増の議席数とすることにはどの党の賛成も全く見込めず、結局これ以外に方法はないということでしょう。
 憲法改正以外に抜本的解決の道はありませんが、時間をかけてでも抜本的に改正すべき第9条と決定的に異なるのは、来年の7月には間違いなく参議院議員選挙が行われるという時限性です。
 仮にこの改正案が成立しても、東から西まで東京・名古屋間よりも長く、隠岐諸島という離島地域までを含む広大な鳥取・島根合区選挙区や徳島・高知合区選挙区は依然として残るということであり、暗然たる思いです。
 「政党のご都合主義」という定型的な批判は、実際に政治に携わることなく、責任を負うことのない立場だからこそ言えることです。暑いさなか、広大な選挙区を走り回る候補者や、その姿にほとんど接することも出来ない過疎地の有権者の辛さや悲しさをわずかでも斟酌する思い遣りを持って頂きたいと切に思います。
 2年前の参院選において、選挙区すべてを回れない青木一彦候補に代わって私も鳥取県内各地を回ったのですが「一度でいいから候補者を見たかった、話が聞きたかった」と言われた高齢の有権者の声が耳朶に残って離れません。

 常に最善の結論が得られるものではなく、時間も手間も経費も掛かる民主主義とは本当に難しいものだと思います。最近は「独裁の何が悪い」といったような言説も見られますが、私は決してそうは思いません。やはり「民主主義は最悪の政治制度である。ただし、今まで存在したあらゆる政治制度を除けば」(チャーチル)なのであって、その意味で「民主主義はやっぱり最高の政治制度である」(橋爪大三郎著・現代書館)、近著では「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」(坂井豊貴著・岩波新書)は示唆に富みます。前者は既に絶版になっているのかもしれませんが、後者は2015年以来10刷を重ねており、きちんと本を読む人もまだ多くおられるのだと少し安堵したり致します。

 河合雅司氏(産経新聞論説委員)が、昨年45万部のベストセラーとなった「未来の年表」の続編「未来の年表2 人口減少社会であなたに起こること」を上梓されました(講談社現代新書)。これからの人口急減社会において、それぞれの身の周りに何が起こるのかが具体的に描かれているのですが、末尾に記された「『豊かな日本』を作り上げてきた大人たちへ」からは、我々、ならびにその上の世代に対する著者の強い思いが感じられ、胸に突き刺さります。是非お読みいただきたいと思います。

 30日に開催した政策集団「水月会」のパーティにはおかげさまで会場いっぱいの方にご参加いただき、盛会のうちに終えることができました。ご参加いただいた方、ご厚志を賜りました方に心より厚くお礼申し上げます。
 第一部の私の講演にも大勢様お越しいただきましたが、席が足らずに立ったままお聞きくださった方には深くお詫び申し上げます。

 週末は、自民党鳥取県連青年局・女性局大会の諸行事のため、選挙区に帰ります。残余の時間は、水月会セミナーにおける講演をはじめとする最近お話しした内容の精査と手直しに充てたいと思っております。
 事前にそれなりの準備は行うものの、原稿なしの講演はどうしても即興的・瞬間芸的になってしまい、時間を経ないうちによく見直す必要を感じております。
 6月初日の都心は、心地良い晴天となりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年5月25日 (金)

米朝首脳会談中止など

 石破 茂 です。
 米朝首脳会談が中止となりました。そもそも突如として実現の運びとなった時から懐疑的であった私としては、ああ、やっぱりという思いです。北朝鮮の主張する「朝鮮半島の非核化」とアメリカの主張する「北朝鮮の非核化」は全く異なるのであって、接点を見出すのは相当に困難です。北朝鮮の背後にある中国やロシアの思惑にも強い警戒感を抱いたのでしょう。
 トランプ大統領が「米国本土まで到達するICBMの廃棄」を北朝鮮に約束させることをもって「米国の安全確保にとって大きな成果が得られた」として合意を見るような事態は、我が国の安全保障にとっては悪夢以外の何物でもなかったのであり、振り出しに戻って現状が維持される方が日本にとってはまだましだと思う他はありません。この間にミサイル防衛体制の拡充やシェルターの整備など、拒否的抑止力の向上に努めることが急務です。

 日大のアメリカンフットボール選手の関西学院大との試合中の行為が大きな社会問題となっていますが、当事者の主張も食い違い、疑惑を持たれている側の説明が全く説明になっておらず、記者会見を開いた日大側の取り仕切りも大きく常識と外れていると言わざるを得ません。
 言を左右にして逃れようとする日大前監督の姿も見苦しく思われますし、記者の質問を遮ろうとする日大の広報担当者の姿勢には、真実を伝えようとする誠意の欠片も感じられません。自校の選手が勇気を奮って会見したのに、それに正面から応えないのは、教育に携わる者としてあるまじきことでしょう。
 劣化は随所において見られます。「世の中は所詮こんなものだ」という諦めが蔓延してしまうのが一番恐ろしい。日本国の在り方に最も重い責任を負う国政の責任は極めて大きくかつ重いことを痛感します。

 素朴な疑問として、財務事務次官と国税庁長官の不在には速やかに対処すべきものなのではないか、と思います。財務省の事務方と国税の両トップが不在という異常な事態に対応するためにこそ、内閣人事局の存在もあるのではないでしょうか。内閣人事局本来の役割をぜひとも発揮してもらいたいと願わずにはいられません。

 昨24日、本会議終了後に、高知市で開催された日本左官業組合連合会定時総会後の懇親会に左官業振興議員連盟会長として出席し、全国の左官業の皆様と懇談する機会を得ました。
 左官さんの数はピークの十分の一に激減してしまっているのですが、この技術なくして姫路城の修復もユニバーサルスタジオジャパンのホグワーツ城の建築もありえなかったのであり、何とか振興を図りたいと強く思っております。すべて国産の珪藻土で賄い、シックハウスのアレルギーもなく、調湿、抗菌、消臭、防・遮・吸音の効果も高い漆喰は、壁紙に比べて工期がかかる、高価である、デザイン性に乏しいなどといった難点もほぼ克服されつつあり、民泊にも活用できる古民家の再生や中古住宅の価値向上など、今後の発展の可能性が大いに期待されます。振興議員連盟として更に努力したいものです。
 余談ですが、国歌「君が代」のさざれ石とは、正式には石灰石礫岩のことで、長い年月を経て、小さな石灰石と石灰石が一つになって巌となる、それは国民一人一人が一致協力し、苔のむす長きにわたるまで、日本国を存続させよう、という思いの象徴なのだそうです。世の中には知らないことが多くあるものだと改めて思わされました。

 週末は、27日日曜日に自民党東京都第25区支部女性部「新緑の集い」にて講演、引き続いての昼食懇談会(午前11時・フォレスト・イン昭和館)、という日程です。
 先週木曜日は全国建築板金業者全国大会で仙台に、昨日は前述のように日本左官業組合連合会大会で高知市に、どちらも振興議員連盟会長として出席しましたが、季節の変わり目で寒暖差が大きかったこともあって移動にやや負担を感じるようになりました。週末は体調回復にも努めたいと思っております。
 皆様、体調にご留意の上、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年5月18日 (金)

西部大志会など

 石破 茂 です。

 米朝会談の行方が不透明になりつつありますが、北朝鮮は最初から一貫して「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」を主張しているのであって、手のひらを返したわけでも何でもなく、北朝鮮に対する過度の期待や楽観は禁物です。
 北朝鮮問題は米中関係の従属変数との面があり、その体制がいかに暴虐非道の独裁政権であっても、緩衝地帯として北朝鮮という存在を維持したいと望む中国が鍵を握っていると考えます。
 大統領補佐官を務めるボルトン氏がかつて主導したリビアモデルが北朝鮮に適用可能か、という議論も徹底して行われるべきでしょうが、リビアの場合、非核化は実現したものの、その後カダフィ体制は無残な終焉を迎えたのであり、金正恩氏がやすやすとそれを受け入れるとも思われません。
 現在は休戦状態にしか過ぎない北朝鮮と米国(国連軍)との関係が「平和条約の締結」という事態となれば(その前に米朝の国交回復が前提となるでしょう)、在韓米(国連)軍の駐留はその根拠を失うのであって、その場合に日本の安全保障体制はどのように変わるのか、についても今から念頭において対応方針を模索し、あらゆる事態に対応できるような体制を構築しなくてはなりません。

 一県を代表して総理大臣官邸に赴いた愛媛県の関係者と、総理秘書官とが、面会したかどうかの確認は困難であるとする答弁書が本日閣議決定されたとのことですが、本当にそうなのであれば愛媛県の努力は随分と虚しいものであったということにもなるのでしょう。
 国家戦略特区とは、規制の岩盤に強力なドリルで穴を開け、日本の姿を変えていく総理肝いりの大政策なのに、不思議な感じがしないではありません。官僚の劣化、などとまるで他人事のように言ってはならないのであって、政治の劣化こそがそれを招いたのだという強い反省と自覚が我々には求められるのだと痛感しています。

 16日、我々の青春時代に一世を風靡した歌手、西城秀樹さんが63歳の若さで亡くなりました。
 70年代、女性アイドルにしか関心のなかった私にとっても、その存在感は圧倒的であり、強い光彩を放っていたように記憶しています。
 二度の脳梗塞を、大ヒット曲「傷だらけのローラ」をもう一度ステージで歌いたいという強い意志を持って克服した姿には改めて心底感服します。世の中には立派な人がいるのだ、という思いを強くするとともに、御霊の安らかならんことをお祈りいたします。人生長きが故に尊からず。

 週末は、20日日曜日に「西部大志会」との懇談会(午前9時・米子ワシントンホテルプラザ)、自民党鳥取県支部連合会平成30年度総務会、第63回定期大会、昼食懇談会、記念講演会(午前10時より。同)、という日程です。
 西部大志会は私が鳥取に帰った昭和59年に発足した鳥取県西部の後援会青年組織で、小選挙区制の導入により選挙区ではなくなってからもずっと続けて支援してくださっている、とても有り難い方々です。
 米子市や境港市などの鳥取県西部地区は、私の出身地である東部とは最も遠く、親戚も同級生もおらず、ここを主地盤とする他の自民党現職が圧倒的に強い地域で、政財界人の多くがほとんど相手にしてくれない中、新人の私の活動は困難を極めたのですが、その時に中心となって支えてくださったご恩を終生忘れることはありません。小選挙区へ移行後、疎遠になってしまった方の中にはもうすでに物故された方もおられ、大変申し訳なく思っております。
 最下位でやっと当選した初回(昭和61年7月)、西部でも大幅に得票を伸ばした2回目(平成2年2月)、西部地区のほとんどの市町村でもトップとなった、中選挙区最後となった3回目の選挙(平成5年7月)…お互いにまだ20代から40代であった、随分と昔のことが、妙に懐かしく思い出される今日この頃です。

 早いもので5月も後半に入ります。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


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2018年5月11日 (金)

「富士山会合」など

 石破 茂 です。
 連休前半の訪米は、自分の考えを整理する良い機会となりました。
 日経「富士山会合」主催の、スタンフォード大学フーバー研究所における長時間にわたるディスカッションも有意義なものでしたし、シュルツ元国務長官(レーガン政権)、ペリー元国防長官(クリントン政権)のお話も示唆に富んだもので、お二人とも90歳を超えているとはとても思えない明晰ぶりでした。
 ご一緒した森本敏先生や田中明彦先生から啓発されたことも多くあり、充実した二日間を過ごすことができたことを有り難く思っております。テーマが多岐にわたったため、拡大抑止の強化や地位協定の改定などの各論に深く話が及ばなかったことは少し残念でしたが、またこのような機会を得たいものだと思ったことでした。

 昨日の衆議員予算委員会における参考人質疑は、やや後味の悪いものでした。
 柳瀬元総理秘書官の「官邸にいると世間の感覚とずれてしまうので、面会希望があった人にはすべて会うようにしていた」「東大元教授が滔々と話していたので、愛媛県や今治市の関係者がいたことは認識していなかった」などとする答弁や、「石破四条件」を何度も口にしたことには相当の違和感を覚えましたし(国家戦略特区として認定する際の四つの条件は、平成27年6月30日に日本再興戦略2015改訂版として閣議決定されたもので、「安倍内閣四条件」と言うべきものです。一人の大臣の意向では閣議決定はできません)、八田国家戦略特区ワーキンググループ座長は国家戦略特区の意義について延々と語って質疑時間を消化してしまうなど、相当の混乱ぶりが見られました。真実を解明する、という安倍総理の意向が実現されるべく、さらなる努力が必要です。

 週末は、12日土曜日に自民党鳥取県第一選挙区支部主催街頭演説会(午前11時・鳥取駅前、午後1時半・倉吉駅前)、自民党鳥取市国府町支部通常総会(正午・交流サロン一の宮)。
 13日日曜日は「激論クロスファイア」出演(午後6時・BS朝日・収録)、「賢者の選択」(午後8時・BS12・収録)という日程となっています。残余の時間は資料読み込みと整理に充てたいと思っております。

 雑誌も含めれば一週間に30冊ほどの本が送られてくるのですが、とても読み切れないままに山と積まれる状態が続いております。読むほどに自分の知識不足を痛感しますし、原典に当たらないで引用などすると正確性を欠くことになりますのでこれを取り寄せたりしていると時間がいくらあっても足りません。
 高校生や大学生の諸君を相手にお話しする際に、読めるときにいろいろな角度からの本を読んでおきなさい、とよく申し上げるのですが、私の本音であり、実感です。
 様々な角度からの情報に触れることなく、自分好みの情報にのみ接し、違う考えを持つ人やメディアにレッテル貼りをして口を極めて論難・罵倒する一部の風潮には空恐ろしいものを感じています。いつから日本の言論空間はこのように歪になってしまったのでしょうか。
 かつての論壇誌「諸君!」(文藝春秋刊・現在は休刊中)のような、静かな中にも深みのある保守の思想を体現する活字媒体を懐かしく思い、その登場がより多くあることを渇望しています。

 木曜日までは肌寒さすら感じられる連休明けの都心の一週間でした。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年4月27日 (金)

南北首脳会談など

 石破 茂 です。
 本日、南北首脳会談が行われ、共同宣言では非核化について、
「完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現する」
「今後それぞれ自らの責任と役割を尽くす」
「朝鮮半島非核化のため、国際社会の支持と協力を得るべく、積極的に努力する」
朝鮮戦争については、
「今年、終戦を宣言して停戦協定を平和協定に切り替え、恒久的で強固な平和体制構築のための南・北・米三者、または南・北・米・中四者会談の開催を積極的に推進する」などとしたと報じられています。

 これから精緻に分析が必要ですが、文大統領が北朝鮮と米国の仲介役を果たす意味は大きいと考えられます。
  「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」を謳い、「停戦協定を平和協定に切り替える」というのがポイントで、韓国は休戦協定の当事国ではないため、中国と共に実質的な当事国である米国に対して要請することになるのでしょうし、平和協定が締結されることは在韓米軍の駐留の根拠を喪失させることに繋がります。
 圧力が効いて北が対話に転じた、との見方もありますが、同時に北が長距離弾道ミサイルと核の小型化にある程度の自信を持ったことも、態度を転じた理由と考えるべきなのではないかと思います。ポンペオ氏の訪朝、金正恩委員長との会談は、米・朝間で何らかの意思の疎通が図られたものと考えるべきなのでしょう。
 これらが日本の安全保障にどのような影響を与えるのか、今後の日朝関係はどのように推移させるべきなのか、日韓併合や朝鮮戦争まで遡って過去の経緯を検証することと併せ、連休中に深い考察をする必要性を痛感しております。

 沖縄市長選挙は桑江氏が大差で再選を果たしました。多くの方のご支援に厚くお礼申し上げます。

 連休中に読まねばならない文献は山積しているのですが、文藝春秋五月号の半藤一利氏・保坂正康氏・辻田真佐憲氏による鼎談、中西輝政氏・佐伯啓思氏の対談はとても示唆に富んだものでした。自分の知らないことがなんと多いことかを思い知らされます。

 明日から大型連休に入ります。
 29日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、同日から「富士山会合(国際関係・安全保障についての日米の政府関係者・専門家対話 日本経済研究センター・日本国際問題研究所共催)」に出席のため訪米いたします。
 メインは30日のスタンフォード大学公開シンポジウムでの基調講演ですが、その他フーバー研究所幹部とのワークショップ、宇山総領事との懇談昼食会、米海軍幹部との懇談晩餐会、等が予定されています。
 5月6日日曜日はBS日テレ「深層ニュース特別企画 政界鉄ちゃん旅」収録(午後2時・福井えちぜん鉄道)、という日程です。残余の日は年に一度の定期健診や、山と積まれた資料・文献の精読に充てたいと思っております。

 明日から9連休の方も、連休中にもお仕事をなさる方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2018年4月20日 (金)

沖縄市など

石破 茂です。
16日月曜日に、22日投開票の沖縄市長選挙に再選を期して立候補している桑江朝千夫氏の応援に行って参りました。
市が中心となって2020年度のオープンを目指して計画
している一万人収容のアリーナの建設が争点の一つとなっていますが、スポーツやライブを「する側」からだけではなく「観る側」や「興行する側」の視点からも捉えるこのアリーナの建設には、従来の「ハコモノ」とは全く異なる大きな意義があるものと考えています。
八角形の設計は、どの席から見てもスポーツやライブが楽しめるように配慮したものですし、トラックが直接会場に乗り入れ可能となることによって、ライブの音響や照明の機材搬入が容易となり、感動的な舞台の演出が容易になります。このアリーナは、沖縄市の持つ地理的利便性やチャンプルー(ごちゃ混ぜ)文化の多様性と合わせて
国際的にも優位性を発揮することになるものと思います。

沖縄市(旧コザ市)には、ベトナム戦争(1964~1975)当時に出撃基地として使用された米軍嘉手納基地が所在し、多額の戦時手当を手にした米兵が酒とロックンロールに溺れてつかの間の休暇を過ごし、米兵が落とす金を目当てにアジア諸国から大勢の人が来沖し、エイサーに代表される地元の文化と相俟って世界の何処にもない独特の文化が形成されるに至ったと伝えられています。
1970年のコザ暴動の記憶も随分と薄れてきましたが、沖縄の苦難を沖縄だけのものとして捉える限り、基地問題の解決はあり得ません。                 

森友、加計、自衛隊の日報、財務次官の不適切な発言等々、本質的な政策論とはかけ離れた問題で今週も政界は混乱を極めました。挙証責任、という言葉が正確を欠くとのご指摘も頂きましたので、説明責任と改めますが、裁判で黒白を争っているのではありません。この種のことについて、批判を封殺したり、国民の常識と乖離した対応をしたりすれば、政治の信頼性が脆弱化し、政権基盤そのものを大きく揺るがすことになりかねません。
 今回の財務省の対応は、危機管理の初動を大きく誤った典型のようなものでした。「官庁の中の官庁」「最強の官庁」と呼ばれる財務省においてこうなのですか
ら、政府全体の危機管理体制も、全省庁もう一度徹底して見直す必要があります。官僚にのみ責任を押し付けたりすることのないよう、我々政治の側の責任がそれ以上に重いことも肝に銘じなくてはなりません。

 日米首脳会談は報道されている限り、「サスペン
スとディールの大統領」であるトランプ大統領の真骨頂の一端を垣間見る思いです。
日朝関係は基本的に米中関係の従属変数ですが、大国同士のディールにいかに関与するかは、日韓・日中間で信頼と認識をどれほど共有できるかにもかかっています。トランプ、習近平という指導者を持つ国の間にあって、ただ中国・韓国を感情的に非難するようなことでは、結局国益を大きく損ないかねないことを認識しなくてはなりません。

週末は21日土曜日が岩手県釜石市で懇談と講演(午後3時 釜石市内)。
22日日曜日は神戸学院大学経済学部ゼミナールで講演(午前11時・同大有瀬キャンパス)、自民党兵庫県連青年局ひょうご次世代育成塾で講演(午後2時・神戸市内)、という日程です。
先週に引き続き移動の多い土日です。
ところによっては夏日となる週末となるようです。
皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2018年4月13日 (金)

文民統制の本質など

 石破 茂 です。
 
 柳瀬前総理秘書官の「記憶の限りでは愛媛県職員に会っていない」などとするコメントには、なんとも歯切れの悪さを感じます。総理の仰るとおり、「総理の意向で行政が左右されたことはない」ということに信頼性を持たせるためにも、問題となっている事実に関して曖昧な立場を採るべきではありません。
 愛媛県の職員に柳瀬前秘書官が会ったことが事実でないならば、それを明確に否定すればよいことですし、同氏が記憶を呼び覚まして、会っていたことを思い出したなら「これは総理案件であるなどということは一切言っていない」と自身で言えば、すべて解決するのです。
 
 急激に変化する朝鮮半島情勢や、今秋の中間選挙を睨んでトランプ米国大統領が仕掛ける「貿易戦争」に対する対応など、総理が出席されるテレビ中継入りの予算委員会で、国民の前で議論しなくてはならない案件は山積しています(外務委員会、安全保障委員会などの一般の委員会は基本的に担当大臣が答弁に立ち、テレビ中継はありません)。
 森友問題にせよ、加計問題にせよ、挙証責任は政府の側にあるのであって、そこから逃れるべきではないでしょう。「時が経てばやがて沈静化する」などと思っていては、政府・自民党に対する国民の信頼感をじわじわと失わせる結果に繋がることを肝に銘じなくてはなりません。

 自衛隊の日報事案は、25万人を擁する膨大な規模、かつ陸・海・空・内局という4つの異なる文化が混在する自衛隊という組織を統制するとはどういうことなのか、という根源的な問題に正面から向き合うことなくして解決は見られません。
 「文民統制の重要性」と安易に唱えられるようですが、これは政軍関係という、どの国も長きにわたって悩み抜いている大問題です。「統制」というからには、統制する「主体」と統制される「客体」が存在するはずです。民主主義国家における「統制する主体」は、あくまで選挙によって国民に直接責任を負いうる政治(国会議員)なのであって、内局の背広組ではありません。事務次官以下の内局官僚、いわゆる背広組もあくまで統制される側の「自衛隊員」なのです。
 防衛庁長官在任中にこの議論を委員会で行ったのですが、朝日新聞に「やはり文官統制は必要だ」と題する社説で批判されて、誤植ではないかと我が目を疑ったことでした。

 「自衛隊は必要最小限度の実力しか保持せず、必要最小限度の行動しかできないのだから『戦力』ではなく、『軍隊』でもない」「国家行政組織法に位置付けられた法執行機関であり、交戦権も行使できない」などという政治的な配慮による憲法との整合を図ってきた結果として、自衛隊の「軍隊」としての本質から目を背け続けてきたのですから(私自身、国会でそのように答弁してきたのも事実です)、文民統制の概念が確立してこなかったのもけだし当然というべきなのでしょう。
 自衛隊は緩み切っている、けしからん、許せない、との批判も多くありますが、同時に政治の自衛隊に対する向き合い方も問われなくてはなりません。この状況を脱するべく、出来る限りの努力を重ねます。

 官僚の不祥事が連日のように報道されています。無謬の人などこの世にはいないのですし、政治家も官僚も聖人君子ではありませんが、政治家であれ、官僚であれ、公職に就いている者にはそれなりのノーブレス・オブリージュが求められるとは思います。
 「自分には権力がある」「自分には更に上の権力者がついているから大丈夫だ」などという思いを持った者が行う政治や行政に、国民が納得と共感を覚えるはずはありません。日本の統治システムがどこか根本的なところで狂い始めているように思われ、自らを戒めなくてはならないと痛感しています。

 週末は、14日土曜日が故・野中広務元自民党幹事長お別れの会(午前11時・ホテルグランヴィア京都)、明和会医療福祉センター渡辺病院創立65周年・社会医療法人認定10周年・増改築竣工記念式典ならびに祝賀会(午後4時・ホテルニューオータニ)。
 15日日曜日から16日午前にかけて沖縄市長選挙応援(沖縄市)という日程です。移動の多い週末です。
 沖縄市長選挙は幹事長在任中、秋の沖縄県知事選挙の前哨戦ということもあって三回沖縄市入りするなど全力で取り組み、勝利を得て桑江現市長の当選となりました。あれからもう4年、早いものです。

 島根県西部で発生した地震、大分県中津市での山崩れで被災された方々、犠牲となられた方にお見舞いとお悔やみを申し上げますとともに、懸命に捜索や復旧に当たっておられる皆様に感謝し、敬意を表します。

 都心では週半ば、春の嵐が吹き荒れました。全国各地で不安定な天候が続いています。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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