石破 茂 です。
農林水産省の「ヤミ専従関係者に対する刑事告発の見送り」につき、ご意見を多く頂いております。もちろんすべての責任は、大臣たる私が負うべきものです。
ただ、これは私からのお願いなのですが、「新聞にこう書いてあった、官僚の言いなりで実に怪しからん、見損なった」というだけではなく、もう一呼吸おいたご自身のお考えをいただければなお有り難いと存じます。発表当日の記者会見全文を掲載いたしますので(事務局注:本投稿の一番下に入れました)、ご覧いただければ幸いです。
本問題につきましては、私なりに持っている法律的な知識を可能な限り用い、最新の判例・学説を精査し、有識者とも、省内でも長時間侃侃諤諤の議論を重ねた末に、くどいようですが私の責任において判断を下したものです。
単に世論受けを狙うなら、「とにかく告発だ!」との結論ありきで臨むべきだったのでしょう。
しかし、告発が単なる「アリバイ作り」に終わってしまうのでは意味がありません。告発の主体が同じ政府部内の行政庁であることを勘案すれば尚更のことです。
もっと本質的な問題は、「法治国家とは何か」「公務員と民間人の人権は同じように保護されるべきか」という点にあります。私は公務員であることだけで、基本的な人権が過度に保護されることは断じてあってはならないが、公務員であるから民間人よりも侵されてよいとは思いません。
随分前にも書いたと思うのですが、ロッキード事件で世間が騒然としていた大学一年生の頃(昭和51年)、田中派参院議員であった父に「いくらお父さんが尊敬する田中さんでもこれはよくないと思う」と言った私に、父は恐ろしく静かな口調で「お前は田中に会ったことがあるか。会ったことも無く『新聞にそう書いてあったから』というだけで批判することは許さん。俺は田中と三十年来の友人だ。お前よりもずっと田中を知っている。その田中が貰っていないと言うからには貰っていないのだ。いいか、人を信じるというのはそういうことだ。お前がどう考えようとお前の勝手だが、自分の頭で考えてからものを言え」と答えたのです。
「人を信じるとはそういうことだ」、今回の主題とは異なりますが、それは単なる無条件な肯定とはどこかが決定的に違うのでしょう。その言葉の持つ意味を今も私は考えつづけているのですが。
○石破大臣記者会見概要(9月11日(金)10:47~11:35 於:本省会見室)
(冒頭発言)
無許可専従法令遵守委員会の関係でございます。先ほど先生方の方から皆様方に対してご説明があったというふうに承知をいたしておりますが、それを受けてどのようにするか、ということについて申し上げます。少し長くなりますが、ご了承をいただきたいと思います。
お手元に日本国憲法並びに民法、刑事訴訟法をお配りをいたしておろうかと思います(後掲)。何であれば、お手元に持っていただいた方が、ご理解の助けにはなろうかと思ってお配りをしたものでございます。それでは申し上げます。少し長くなりますがご容赦ください。
無許可専従問題及び記者の皆様方に対して提出をいたしました資料改ざん問題、この関係者を刑事告発するか否かにつきましては、弁護士4名、公認会計士1名からなります計5名の専門家による「農林水産省法令遵守委員会」に検討をお願いをしてきたところであります。
本日、第5回目の法令遵守委員会が開かれまして、いずれの問題につきましても「告発の必要はない」旨の意見が、全会一致した見解として提示をされたということは、皆様方、ご案内のとおりでございます。
法令遵守委員会の意見書におきましては、無許可専従者等について、詐欺罪又は背任罪のいずれかが、記者の皆様方に対しまして提出されました資料の改ざんにつきましては、虚偽公文書作成並びにこの行使罪の成立が考えられるとされておるわけでございますが、告発の是非については、諸事情を総合的に考慮し、「告発の要はない」というふうにされておるわけでございます。
このような専門家のご見解も踏まえ、私といたしましては、以下に述べます理由により、「刑事告発は行わないことが適当である」と判断をいたしました。犯罪が成立するか否かということと、告発することが適当かどうかということは、分けて考えなければならないということでございます。
無許可専従問題につきましては、「労使関係問題特別調査チーム」におきまして、弁護士等の専門家からなります第三者委員会の指揮・監督の下で真相の解明のための調査を進め、去る7月15日に「無許可専従問題に関する調査報告書」として調査結果を公表いたしました。
無許可専従は、憲法第15条に定められました「全体の奉仕者である」という公務員の理念を蹂躙(じゅうりん)する行為であり、厳正に措置をするという方針で対処してまいりました。
具体的には、無許可専従者など198名、退職者1名を除いておりますが、これにつきまして、1日7時間以上無許可で職員団体業務を行っていた者23名につき「停職1か月」、1日4時間以上7時間未満の者75名につき「減給2か月・10分の2」、1日2時間以上4時間未満の者34名につき「減給1か月・10分の1」、1日2時間未満の者66名につき「戒告」といたしております。これら行為者とその上司・指導監督者を含め、全体で約900名に及ぶ職員に対して処分を行いました。
農林水産省の無許可専従につきましては、社会保険庁のように勤務の実態が全くなかったケースとは異なりまして、一定の勤務を行っております。その意味で、法令遵守委員会からも「犯情は軽い」とされておるわけでございますが、当省におきます処分としては、特に悪質であった23名の者については、最も重い「免職」に次ぎます「停職」といたしております。無許可専従に関する処分としては、「減給」で留まっておりました社会保険庁の前例よりも、極めて重い処分を行ったということでございます。
次に、給与についてであります。無許可専従者などの行為者に支払われておりました給与につきましては、これも条文をご参照いただきたいのですが、民法第704条、不当利得における悪意の受益者の返還義務がございます。これに基づきまして、返納を求めました。根拠条文は、民法第704条でございます。その際、返納すべき額の全てについて、民法第404条、法定利息でございますが、給与支払時点から年利5パーセントの利息を付しまして請求を行ったところであります。
この結果、不当に支払われました給与相当額27億円に、利息相当額7億円を加えまして、総額34億円となるわけでございますが、その全額につきまして、9月7日までに国への納付手続が終了しております。これによりまして、国、すなわち納税者の皆様方の財産的被害は、回復されたということであります。
社保庁(社会保険庁)の事案を、ちなみに申し上げますと、時効が成立しました元本及び利息相当分については、全額が返納されておりませんが、農林水産省におきましては、これにつきましても、全額返納がなされているということであります。
また、全農林労働組合は8月1日の定期大会におきまして、中央本部の委員長、副委員長及び書記長の3役の引責辞任を決定しております。8月23日には新委員長を選出し、法令遵守を徹底した組織運営の確立というものを目指して努力が行われているというところであります。
農林水産省におきましては、これは、あえて労使と言えば、「使」の方でありますが、農林水産省におきましては、新たな労使関係の構築に向け、無許可専従問題の再発防止策を着実に実施をしているところであります。
去る7月16日に労使間の徹底した話合いの下で、「新たな労使関係の構築に関する基本方針」を決定し、従来の労使間の取決め、交渉慣行、これを全て廃止をいたしました。
この「基本方針」を踏まえまして、全農林労働組合においては、専従許可者のいない「組合事務室」、これを全て明け渡すこととなりまして、昨日、9月10日、本省庁舎にございます10分会の「組合事務室」の明渡し作業が完了いたしたところであります。地方組織は108分会ございますが、地方組織の108分会の「組合事務室」につきましても、今月中には、明渡し作業が全て完了する予定というふうに報告を受けております。
刑事告発についてでございますが、社会保険庁のケースで、これは告発を行っております。このことはよく承知をいたしております。東京地検は、この告発を受けまして、不起訴としておるわけであります。この理由についても精査をいたしました。東京地検が、この告発を受けて不起訴とした理由は3つ、主なものとして、3つ承知をいたしております。第1に、給与を返納していること。第2に、懲戒処分を受けていること。第3に、無許可専従なるものが、事実上慣習化していたということがあり、不起訴ということになっておるわけでございます。私として、このことは指摘を申し上げ、どうなっているかということについて、相当に議論を行い、勘案をいたしたところでございます。
また、資料改ざん問題についてでありますが、これも繰り返しになって恐縮ですが、前秘書課長に対する懲戒処分は、「減給3か月・10分の2」となっております、これは、過去10年間、農林水産省の課長以上が受けました処分としては、最も重い処分を行っております。
3月26日には、前秘書課長を更迭をし、6か月近くにわたり、役職が解かれたままの状態が継続をいたしております。
大きく実名報道がなされ、厳しく社会的な制裁を受けたということだという認識を、私自身強く持っております。法令遵守委員会におきましては、このような事由のほか、昨年4月の調査が不十分であったとはいえ、従来、手がつけられることのなかった無許可専従問題に前秘書課長が取り組んだという意味で、一定の評価もしうると、本人自らが深く反省をいたし改悛の情を示しているということが考慮され、告発の必要はないというふうに、法定遵守委員会においては判断がなされております。
このように、改ざんを行いました本人に対する措置は厳しく、つまり、10年間、過去10年間で最も厳しい処分を行ったということもございまして、厳しい措置を講じてまいりました。専門家のご意見も踏まえ、「告発を行わないということが適当である」と判断をしたものでございます。
もう一つ、私がかなりこだわった点でございますが、刑事訴訟法第239条第2項に、公務員の告発義務に関する規定がございます。これも条文をご覧いただければと思います。この239条第2項では、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」というふうに条文に定められております。これをストレートに読むと、犯罪があると思料しておるわけでありまして、告発をしなければならない、こうストレートに読めば、そういうことになるわけで、一体ここはどうなのか、という議論は相当行いました。刑事訴訟法についてお詳しい方には、繰り返しになって恐縮なのでございますが、この条文については、2つの考え方がございます。法的な義務規定ではなく訓示規定であるという考え方。もう一つは、単なる訓示規定ではなく法的義務であると、こういう2つの考え方が、当然ございます。
仮に、訓示規定とは解さず、法的義務であるという考え方に立ちました場合でも、「告発を行うか否かについては公務員に裁量がある」とされております。これ、刑事訴訟法のコメンタール、解説書をずいぶん私も読んでみましたが、「義務がある」と解する立場に立ちましても、公務員に裁量があるというふうに書かれており、この考え方が一般的でございます。
「総合的かつ慎重に検討」して判断すべきという考え方が一般的だと、一体何のことだということになるわけですが、法令遵守委員会の意見書の中にも、この旨の記述があるわけでございます。慎重に検討するのは、当たり前のことなのですが、総合的に考える、そこは、告発を行わないということについて、国民の皆様方のお考えに沿うものなのかどうなのか、ということが一つあります。
もう一つは、事実関係をよくよく精査をし、農林水産省の関係者ではなく、この法令遵守委員会に、なぜ専門家をたくさん入れたかということは、農林水産省の中の恣意が入らない、世の中に言う「身内に甘い」ということを、国民の方々が思われないようにということで、この法令遵守委員会のメンバーというものを改めたところでございます。そういう方々から、「告発を行わないことが適当である」ということが出ました。さらに、社保庁は告発をしておるわけでございますが、それが不起訴になっているという一つの前例がございます。同じ政府の中で、もちろん、社保庁と農林水産省は違う組織でございますが、実際に勤務の実態がある、それから犯情が軽い、更に、重い処分を行っているということ、検察当局において、不起訴とされた理由というものを考えた時に、今回、告発を行っても、あえて言えば、より軽い社保庁の場合もこうであったにも関わらず、同じことを行うということの意味は一体何なのか、ということであります。
「それを判断するのが検察ではないの」というお考え方も当然あるわけでございますが、過去のケースとして、より軽かった社保庁において、不起訴となっている。軽かったといいますか、より重かったというべきかな、ごめんなさい。それよりも犯情が軽い農林水産省が告発をしたとして、社保庁と比べてどうなのだということは、当然、判断の要素としてございました。そういうことが、「総合的」という意味の中身でございます。
実際に、財産的損害は回復をされている、利息も付与されている、そして、極めて重い処分を行っている、そういう、今まで縷々(るる)申し上げましたことが、「総合的」の中身でございます。
刑事告発を行うことが適当であるということは、私自らの責任において判断をいたしたところでございます。重要なことは、今後、二度とこのような無許可専従、あるいは提出資料の改ざんのような問題が発生をいたしませんように、ごめんなさいね、言い間違えたかも知れません。「総合的かつ慎重に検討をし、告発を行わないことが適当である」と、自らの責任において判断をしたということでございます。
繰り返しますが、重要なことは、今後、このような無許可専従、あるいは報道の関係の方々に提出する資料、これを改ざんするような問題が発生をしないように、職員の勤務管理や法令遵守を厳格化し、再発防止に万全を期すということが、極めて重要であります。
農林水産省改革というものは、単に二度と行わないという反省をするということだけでは足りませんので、新たな監察を行う組織の創設も含めまして、これが組織的にワークをするものでなければならない、みんなが深く反省をし、自覚をするということだけで済むのであれば、誰も苦労しないのであって、これを、監察組織の新設も含めまして、新たな省の組織の改革というものを、現在、議論を進捗させておるところでございますが、今後とも、農林水産省改革を徹底をし、国民の皆様方が納得していただける、国民視点に立ったというのは、そういうことだと、私は思っておりまして、農林水産行政が展開をされるということが重要であると、私は思っておるところでございます。私からは、以上です。
(配布資料)
○日本国憲法(昭和21年憲法)
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
② すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
③ 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
④ すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
○民法(明治29年法律第89号)
(法定利率)
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
(悪意の受益者の返還義務等)
第704条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
○刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)
第239条 何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる。
② 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
(記者との質疑応答)
Q: 無許可専従問題についてなのですけれども、大臣から、縷々(るる)説明がございましたけれども、やはり、素朴な国民感情というか、ところからすると、やっぱり、すっきりしないものが残ると思うのですよね。
法律の話であるとか、あるいは、今、縷々ご説明になったような解釈は、確かに、そのとおりかも知れないのですけれども、やっぱり、悪いことをしていたではないかと、それで、「中でも処分されているし、財産も返納があったからいいではないか」というのは、立場、身分も、処分はありましたけれども、身分もそのまま守られているようなところがあるわけで、やはり、ちょっと納得しない部分があるのではないかと思いますけれども、その辺り、今のご説明で国民の皆さんもすっきり理解していただけるであろうと、国民感情にもそぐう判断であろうと、大臣失礼ですが、お考えでしょうか。
A: これは、本当に長い時間かけて議論しました。私の大臣室でも、全部で、十数時間にわたる議論をしております。私は、そのことはそのこととして、きちんと申し上げておきたいと思います。つまり、事実関係というものを、最も知りうる立場の者、知っている者が、このことはどうなのだということを議論をし、そして、この国は法治国家ですから、それは、今ある条文と、そしてまた、今までに行われた判断の積み重ね、そういうものによって、法というものは動いています。個人の権利というもの、人権というもの、それは公務員であれ、公務員でないものであれ、それは守られねばならないということは、当然のことでございます。
それは、公務員だから守られるとか、公務員でないから守られないとか、そういうことは、あってはなりません。そういうことは、あってはならないのですが、公務員であれ、そうでなくても、人権というものは、きちんと法によって守られるべきものだというふうに思っています。事実を本当に知った者たちが議論をし、そして過去、社会保険庁の事案、そして今回の事案も併せて、経験豊かな、見識ある専門家の方々が、長い時間議論をして出された結論というものがある、それが、「いや、国民感情が納得しませんからね、とにかく告発しましょうか、それで不起訴でも仕方がないですね。」、先ほど申し上げた、なぜ社保庁のケースが不起訴になったかということを、詳しく申し上げたのはそういうことです。
私は、告発をすることによって、国民感情が満足をする、満足をするという言い方が、よくないとすれば、「にかなうもの」という判断がなされて、でも、「結果として、不起訴になりました。」、農林水産省として、過去の前例からいって、それは不起訴になるということは、ほとんど確実なことでございます。でも、「一応告発はしました」、私は、そのことはどうなのだということは、併せて考えなければなりません。
よくいただくご質問に、「最初から結論ありきではないか」というふうに言われますが、私自身、この農林水産大臣という立場は、この農林水産省という組織の代表者であるとともに、主権者、納税者の代表という二つの立場を持っているという自覚は、常に持っているつもりであります。
ですから、これは本当に、実際に私の乏しい法律知識からいっても、これは、犯罪成立するでしょうと、大学の論文で、これはどっちか論ぜよと言われたら、これは、「成立する」と書かないとバツですよ、たぶんね。
しかし、成立するかどうかということと、告発するかどうかは、別の問題であるというふうに冒頭申し上げました。それは、実際に私として、「では、告発しました、不起訴になりました。でも、これで責任を果たしました。」ということが本当に正しいのかどうかというギリギリの判断でございます。この責任は、全て私が負います。
Q: もう一点、無許可専従問題であるとか、他の問題がいくつか出た時に、大臣、春頃だと思うのですが、「組織文化」という表現を使われた記憶があるのですけれども、以来、大臣、筆頭に立って農水省の改革であるとか、意識の面も含めて進めてこられたわけですけれども、組織文化の刷新というか、いい方向に変わっているというのは、今の時点で、どのくらいのところまできたと、大臣、実感がありますか。
A: これは、不可逆性、「もう戻らないよ」ということが、担保されたという実感を持つには至っておりません。それは、他の省の大臣も務めましたが、戻ってきてみると「あらあら、全然変わってないじゃないの」という経験が、私にはございます。
それは、組織文化というものが、1年で変わるほど、そんなに、あえて言えば、「ヤワなものじゃない」ということだという実体験みたいなものは持っています。
しかし、この省改革を論じる際に、通り一遍の省改革の手法というものは用いなかったつもりです。本当に、省内多くから意見も求め、そして多くの時間を費やし議論をし、そこにおいて、従来の幹部の方々の意向というものが入るということを排除してきたつもりです。改革チームと私との間で議論をしてきた、という今までにないやり方をやってまいりました。
私は、一人一人の自覚の問題に帰するつもりはありませんが、要は自分達がやっていることが、納税者から見ればどう見えているのか、自分がやっていることが、本当に納税者の納得が得られるのか、ということを常に自ら問いかけるというマインドは、多くの人が持つようになったと思っています。
新政権、新大臣の下で、それが、更に徹底される。私ども野党という立場にあっても、この組織文化の変革というものが、不可逆的に一つの流れとなるように、野党としての立場としても努力をしたい。
したがって、もし相手が受けていただければの話ですが、大臣引き継ぎの時に、このことは、相当、力点をおいて申し上げたい。事実関係も全てご説明をし、大臣が変わったから、それが途切れるということがないようにしておかないと、それは、私自身が過去味わった苦い経験を繰り返すことになりかねない。それは、決して国民、納税者のためにならないと思っております。
Q: もうちょっと広い立場でお話をお伺いしますが、事故米問題から始まって、それから無許可専従問題があり、それから職務怠慢問題があったと。
この流れの中で、クビになった人は誰もいない、刑事告発はしない、それから事務方の最高責任者の当時の白須前次官は、好条件で天下る。「やっぱり、現政権は、公務員に優しいな」と、こういう感情を持たれるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
A: それは、例えば、私、先ほど「人権」という言葉を使いました。それは、公務員である、公務員でない、ということによって、人権が守られるということに差があってはならないと思っております。
例えば、皆様方は、民間報道機関に属しておられると、いろいろな問題があった、それで、本当に、では、そういう方々が、全て免職になったか。私は、全ての例を承知しているわけではありません。財産的損害が回復をされ、そして、過去10年間例のない処分がなされた、そして実名で大きく報道がなされたということで、「なお、足りない、なお、公務員に優しい」ということになるのだろうか。それは、公務員であるから、特に過度に人権が擁護されているかと言えば、私は、そうは思っていないのです。
白須さんの問題と、この問題は分けて考えなければいけないと思っておりまして、私は、全て、日本国民である以上、同じように人権が守られねばならない、ですから、今のご質問、私は全ての例を存じておりませんので、お答えとして必ずしも適切だとは思っていませんが、もし、民間人に比べて過度に人権が守られているということであれば、そのご指摘は、きちんと受けなければいけないし、そういうことであるとすれば、いささかもそういうことがあってはならないと思っております。
Q: 大臣室で長時間の議論が行われているのは、すみません、存じ上げなかったのですが、ところが、残念ながら、法令遵守委員会の議論は、大臣室に比べると、あまり十分に行われたというふうに見えないというのが、私個人の感想でして。
なぜかと申しますと、初回、第1回です、終わった直後に、委員長が、「もう結論は決まった」と、「もう来週には提出します」と言ってみたり、2回目、3回目も同様の趣旨の発言がございました。「もう論点はないのだ」と、「これ以上開く、あまり意義が感じられないのだ」という感じの発言がございまして、3回目に至っては、確かに、私どもとして、当然報道機関の立場から、「これで十分なのか」という質問をしましたが、そうしたところ、突然、意見書提出の予定が延期になった、更に2回開かれたという、これはもう客観的な事実としてございます。
そうすると、先ほど大臣がご説明になった、「恣意が入らないように、身内に甘いというふうに思われないように、こういう法令委員会を、専門家で、外部専門家で作ったのだ」という、必ずしもちょっと説得力を持たないような気がするのですが、その点については、どのように思われますか。
A: 先ほどのお答えの中で、私は注意して申し上げたつもりなのですが、私は、この省の代表者であると同時に、納税者、主権者の代表としてここにいる、という自覚は常に持っております。
ですから、法令遵守委員会でいろいろなことがあった。本当にそれはそうなのかということは、大臣室において、本当に相当の議論をいたしました。
私は、こういう専門家の方々を選ぶ時に、農林水産省寄りの方を選ぶとか、そういう考え方を持ったことは一切ございません。こういうことに通暁せられた方、そして、厳正な措置を講じてこられた実績のある方、そういう方々にお願いをしてまいりました。ですから、彼ら、そういう先生方は、もう今まで経験もあるし、法律的にも、当然、知見の高い方々ですから、そこの議論というのは、「社保庁の時もこうだったね」と、「だけれども、農林水産省はここは違うね」ということであれば、議論の時間は短いことはあり得るんだと思います。
ただ、今ご指摘のように、最初から結論があって、それから理屈をつけていくということがやられたとは、私は思っていません、私の実感として。私から、「ここはどうなんですか」、「あそこは一体どうなんですか」ということは、私自身、いかばかりかの、幾ばくかの法律的知識は持っておるつもりでございますので、もっとも二十数年前の、30年ぐらい前かな、学生時代の知識ですから、それは、今のとはずれているのかも知れません。私の法律的な知識から言って、そして、国民感情からいって、「ここはどうなんですか」と、このことについてどうおっしゃっておられるかということの議論は、本当に十数時間行いました。
ですから、最終的な私の判断としての議論の時間というのは、法令遵守委員会でなされた議論、プラス大臣室で行った議論、それを全部足したものとして、ご理解をいただきたいと思っております。
Q: おっしゃることは分かるのですが、専門家ゆえの、専門家なので結論が先に見えてしまうというのはあるのは分かるのですが、例えば、社保庁の例を引けば、仮に告発をしたとしても、不起訴になるのであろう、起訴猶予になるであろう、というのは、専門家ゆえにすぐに見えてしまうというのは分かるのですが、しかし、ここは、検察庁ではなくて、行政機関の中の諮問委員会ですので、専門家は、当然、パッと結論が分かったとしても、それは、精緻に議論の整理をして、国民に説明をするというのが、農水省なりの法令遵守委員会としたら、そちらの方があるべきであったのではないかと思うのですけれども、その辺りはいかがでしょうか。
A: それは、位置付けとして、法令遵守委員から大臣に対して意見書を出す。国民に対して説明をする義務を有している者は、私なのです。その意見を受けて、私がどう判断したかですから、現政権の大臣として、国民の皆様方に説明する義務を負っている者は、それは、私なのです。ですから、私の責任において、ということを、注意して申し上げました。
Q: 話は変わるのですけれども・・・。
A: 変わっていいの、もし、関連のご質問があれば、どうぞ。
Q: 大臣、説明責任を負われるとおっしゃいましたし、法理の面から見ても、ご説明はそのとおりだろうと思われます。ただし、松島さんの処分以降、後任の方も、我々に対して、過程において虚偽の説明をされたり、結果的にそれは記者団が追及したことによって、より上席の方が出てきて、それは間違いであることが判明するというようなことを、やはりやっているわけですよね。
要するに、記者の取材に対して、不適切な回答を行ったりだとか、ということが今だに行われています。そういう現状において、やはり今回の処分というのは、いささか、本当に反省しているのだろうかと、農水省は、という疑念をどうしても抱かざるを得ないのですね。
いつも明晰なお答えをされる大臣のご所見であるので、それなりに納得はいくのですけれども、それだけに、やはり、逆に納得がいかないということをどうしても感じます。その点いかがでしょうか。
A: それは、新政権がどういう運営をなさるかは、私は存じません。私は、記者会見というものには、常に誠心誠意臨んできたつもりです。もちろん、皆様方に十分ご理解、ご納得いただけない点は、多々あったと思いますが、私は、本当に、最終的な場はこういう場だと思うのです。
仮に担当者たちが、皆様方にご不信を抱かれるような対応をした時には、こういう場で、「こういうことがあるのだけれど、どうなんだ」というふうに聞いていただければ、それでいいことなのだと思う、そうあるべきものなのだと思っております。
つまり、もちろん、国会議員でない大臣という者もおりますが、国民に、国会議員であれなかれ、国会において選ばれた内閣総理大臣によって任命された国務大臣という者が、国民の、一つの、何て言うのだろうな、その信任というものを得て、この場に立っているわけですね。国民の代表たる国務大臣、ある意味で、国民の意見を代表されるというのか、国民のいろいろな声を、その背に背負っておられる皆様方との議論というのが、ともに、何て言うのでしょう、我々、直接国民の負託を受けているということですね、皆様方は、国民に直接伝達する手段を持っておられるということですね。そういう意味で、全ての議論というのは、この場に集約されるべきものではないのだろうか、というふうに思っております。
これから先、新政権がどういうふうなお考え、記者クラブがどうなるのかということも含めて、私にはよく分かりません、申し上げるべきことでもありませんが、私は、事務方の会見というものもあるのですけれど、最終的には、大臣と報道との真剣勝負、「勝負」という言い方はおかしいかな、真剣な議論の場という認識を持って、今後もあって欲しいなと思っております。
仮に、事務方に、そういうような、今ご指摘のような不行届きがあるとすれば、またご指摘ください。
ただ、全責任は私が負うべきものでございます。