本人コメント

2017年5月26日 (金)

憲法改正、与謝野先生ご逝去など

 石破 茂 です。
 昨25日金曜日の前川喜平前文部科学事務次官の会見で、加計学園の今治市への獣医学部新設問題は新たな局面を迎えているように見えますが、問題の核心は以下の通りと考えています。
 すなわち、私が国家戦略特別区域担当大臣であった平成27年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」において示された、
「①既存獣医師養成でない構想が具体化し
②ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり
③既存の大学・学部では対応が困難な場合
④近年の獣医師需要動向も考慮しつ
全国的見地から本年度内に検討を行う」
との、4条件ブラス「全国的見地」に適合する公正・公平な決定であったかどうか、それが問われるべきであり、政府はこれを明確に立証すればよいのです。4条件が満たされ、全国的見地から必要とされれば、提案主体がどこであろうと認めなくてはなりませんし、その逆もまた然りです。これは広島県と今治市を国家戦略特区として3次指定した際の同年12月15日の閣議後定例記者会見で担当大臣として申し上げていることであり、ご関心のある方はそちらをご参照くださいませ。

 報道や伝聞でしか知りませんが、憲法改正について自民党内にどのような組織を作るかについて水面下で様々な動きがあるようです。
 自民党では平成17年11月に「新憲法草案」を、平成24年4月に「日本国憲法改正草案」を、侃侃諤諤の議論の末に取りまとめて党議決定し、政権復帰後、衆・参それぞれ2回の国政選挙においてこれを掲げて国民の審判を受けています。
 もちろん、これらは絶対ではありませんし、今後の議論や修正の余地も多分にありますが、これを弊履のごとく捨て去ろうとする姿勢が党内にあるのであれば、それには強い違和感を覚えます。
 「日本国憲法改正草案」の策定後に議席を得た自民党議員が全体の約半数にもなるのですから、まずこれをベースとして、どのような過程でこれが作成されたのかを丁寧かつ濃密に検証することが作業のスタートになるはずです。「時間が無い」「そのような作業は手間がかかる」として改正案作りに関わるメンバーを限定し、作業を簡素化して年内に案を作ろうとするのであれば、将来に禍根を残すことにもなりかねません。

 あらゆる法規範の頂点に立つ日本国憲法に真摯に向き合わないとするならば、すべてにおいてその姿勢は誠実を欠くということになると私は思います。
 天皇陛下のご生前ご譲位の議論の際も、「皇室典範の改正には手間がかかるのだから、チャチャッと特例法でやるべきだ」と、大意そのような発言をテレビでしていた方を見て愕然としたものでしたが、憲法においてもそのような発想は断じてあってはなりません。
 問われているのは自民党の真剣で断固たる姿勢ではないのでしょうか。党本部8階には所属議員全員を収容できるホールがあるのですから、そこで毎週一回でも全議員を対象とした勉強会を開催することによって自民党議員の理解は深まりますし、何よりもそのことが「自民党の本気度」を示すことになります。ただ野党を批判してばかりいても自民党自体は全く向上しません。「民進党よりはまだマシだから」ではなく「自民党が良いから」を支持理由に挙げて頂くための努力が更に必要です。

 一部報道でしか総裁の考えを窺い知ることは出来ませんが、第3項を加えるか、9条の2というかたちにするか、いずれにしても議論の焦点は
・「国民の多くがその存在を肯定している自衛隊を憲法に書き込む」という現状追認型の憲法改正とするのか(それでも現第2項との論理的整合は極めて困難と思われます)
・独立国とは何か、それを守る組織とは何か、同盟とは何かに至るまで、国の根幹を問い直す憲法改正とするのか
であるべきではないのでしょうか。
 確かに国民は政治家を信じてはいないでしょう。しかし政治家が「どうせ国民にはわからないから」という態度で国民に真剣に向き合わないのなら、政治家の側も国民を信じてはいないことになります。国民を信じていない政治家が、国民に信じてもらおうなどと甘いことを考えてはなりません。政治すべてにおいて、我々は主権者たる国民に対して常に畏れと怖れの気持ちを持つべきなのだと自戒しております。

 憲法についてはよくわからない、という方もおられると思いますが、「憲法のことがマンガで3時間でわかる本」(津田大愚著・明日香出版社・2006年)は、マンガの体裁をとりつつも、かなり深い内容を平易に解説している好著です。あまりに多くの文献を読んで頭が混乱した時に、このような本はとても有益です。

 今週移動中に目を通した本の中では「フランスはどう少子化を克服したか」(高崎順子著・新潮新書)から多くの示唆を受けました。1980年代に合計特殊出生率が1・4前後にまで低下していたフランスは、現在2・0前後にまで回復しているのですが、単に婚外子を認めたり、移民を受け入れたりしたことだけが回復の理由ではないことがよくわかります。
 日本でそのままフランスの政策を導入することは困難だとしても、検討し、採用すべきものも多くあると考えます。

 官房長官や財務大臣、自民党政調会長などを歴任された与謝野馨先生が逝去されたことは、極めて残念です。私利私欲を持たず、一貫した姿勢で財政健全化などの政策の実現に尽くされたお姿は、政治家のあるべき理想像の一つでした。
 平成20年9月、福田康夫総裁の辞意の表明を受けて急遽行われた総裁選で候補者としてご一緒し、麻生内閣でも共に閣僚を務め、その憂国の情とバランスのとれた政治姿勢に深い感銘を受けました。野党時代に離党されることなく、自民党再生のためにご尽力いただくことを望んでいたのですが、ご自身に残された時間が少ないことを悟られて政策実現に邁進されたかったのでしょう。
 東日本大震災発災直後、大連立を呼びかけるお電話を頂いたこともありました。「それならばまず政策協議から始めましょう。外交や安全保障政策について最低限の一致が無いままの、震災対応のためだけの連立などあり得ません」と政調会長を務めていた私はお答えしたのですが、それきりご連絡はありませんでした。

 総裁選の最終日は、雨の降る横浜での最後の合同街頭演説会でした。登壇を待つ街頭宣伝車の車中で「石破さん、今日は孫が聞きに来ているんだよ。少し私のことを褒めてくれないかな…」と与謝野先生は照れたように仰いました。
 総裁選を通じて先生のお人柄に敬服していた私は、さりげなく、でも心を込めて、先生を褒める言葉を自分の演説の中に織り込みました。あの時の先生のお顔が今も鮮やかに蘇ります。
 本当に立派な、素敵な方でした。御霊の安らかならんことを心よりお祈りいたします。

 先週は建築板金業者全国大会が茨城県ひたちなか市で、日本左官業組合連合会の創立80周年記念大会が東京で開催され、振興議員連盟会長として出席し、昨日は日本鳶工業連合会の全国大会の後、鳶工業議員連盟が設立され(鴨下一郎会長)、夕刻には全国建設クレーン業協会の全国総会で顧問として祝辞を述べて参りました。
 建設・建築の第一線で活躍されている業界の方々の総会のシーズンなのですね。どの業界も人手不足、後継者難、法定福利費など共通した課題を抱えており、その解決のために我々は尽力しなくてはなりません。
 額に汗して働く人々が報われる社会、というのは決して革新政党だけのスローガンなのではありません。

 週末は、27日土曜日が自民党鳥取県連総務会(午前10時・倉吉体育文化会館)、自民党鳥取県連定期大会(午前11時・同)、ボーイスカウト日本連盟平成29年度全国大会鳥取大会開会式(午後1時・とりぎん文化会館・鳥取市)、鳥取県中部1市4町議員の会勉強会で講演とその後の懇親会(午後3時・倉吉シティホテル)。
 28日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、自民党衆議院茨城県第1区田所よしのり発信大会で講演(午後2時・水戸プラザホテル)、田山東湖茨城県議会議員県政報告会で講演(午後5時半・大洗町文化センター)、という日程です。
 大洗町は井上靖の「大洗の月」という短編小説を読んで以来、一度行ってみたかった町です。最近は漫画「ガールズ&パンツァー」で有名なようですが…。

 昨日までの暑さとはうって変わって、今日の都心は肌寒い雨模様です。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年5月19日 (金)

ICBMなど

 石破 茂 です。
 連休中の安倍総裁の憲法第9条「加憲」発言に加えて、14日日曜日早朝には北朝鮮のロフテッド軌道によると思われる「新型」ミサイル発射があり、今週はいつにもまして慌ただしい日々が続きました。
 ミサイル防衛については「ロフテッド軌道」「コールド・ローンチによる発射」「装軌式TEL(テル。電話ではなく、輸送起立発射機のこと)」「SM-3ブロック2A迎撃ミサイル」等々、一般の方々には馴染のない専門用語が飛び交い、これに法律用語が加わりますので、テレビなどでなるべくご理解いただけるように話すのはかなり難しいことで、わかりやすく話すように努めるあまり正確性を欠くことがあってもなりませんし、それなりに苦労の連続です。
 着弾精度に劣るロフテッド軌道で発射したことには、ロフテッドそれ自体に意味があるのではなく、長距離を飛翔させる能力を示す意図があったのかも知れませんが、いずれにせよ技術が確実に進化しつつあることだけは事実です。

 ここで我々はもう一度、ICBM(大陸間弾道弾)という兵器の持つ意味を考えてみなくてはなりません。
 人工衛星もICBMも原理は同じものですが、射程1万キロのICBMは、長距離を飛翔した後に大気圏に時速マッハ24で再突入し、その時の表面温度は摂氏7000度にもなります。これに耐えて正確な角度で弾頭を落下させるためには相当に高度な技術を必要とするのであって、未だ北朝鮮はその技術を会得していないものと思われます(ちなみに米国・旧ソ連ともに、核爆発とICBMの実験は何度も行ってきましたし、米国は今もICBMのテストを頻繁に行っていますが、両者を組み合わせた実験は一度も行われていません)。
 つまり、米国は未だ北朝鮮のICBMの脅威には直面しておらず、北朝鮮が韓国を攻撃する際にはロケット砲や地対地ミサイルなどで十二分に事足り、我が国はノドンなどのIRBM(中距離弾道弾)の射程にかなり以前から国土のほぼ全域が入っている、というのが現状です。日本、米国、韓国の三か国が緊密に連携して、という表現が常套句のように使われ、それは確かにその通りなのですが、三か国の置かれた状況は全く異なるのですから、それぞれの脅威認識の相違を念頭に置いたうえでの協議でなければ、一致した対応が困難になりかねないことを危惧しています。
 米国まで届くICBMを保有し、体制の保障などの要求をのませるのが北朝鮮の狙いだと考えられますが、これは「この子の命が惜しければ言うことを聞け」という誘拐犯の手法と何ら変わらず、絶対に認められるものではありません。

 いつも申し上げることですが、拡大抑止もミサイル防衛システムも決して万能ではありません。これらに加えて国民保護や民間防衛のシステムを構築しなければならないのですが、我が国の人口あたりの核シェルターの普及率は、スイスの100%、ノルウェーの98%、アメリカの82%、イギリスの67%、シンガポールの54%などに比べて三桁少ない0・02%というのが現状です。この数字はNPO法人日本核シェルター協会の資料によるものですが、「やりっぱなしの行政・頼りっぱなしの民間・全然無関心の市民」という地方創生が失敗する際の原則は、安全保障でも当てはまるようにも思われます。

 憲法第9条の議論がにわかに活発になりつつありますが、「集団的自衛権行使の範囲」や「専守防衛の意義」が大きな論点になるはずです。集団的自衛権についてはすでに何度も言及しているので繰り返しませんが、専守防衛についてもこの際徹底した議論が必要です。
 専守防衛とは「相手から武力攻撃を受けた時にはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限度に限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう」(防衛白書)と説明され、私自身も何度か国会でそのように答弁してきましたが、これがあらゆる防衛戦略の中で最も難しいものであることがどこまで国民に理解されているのでしょうか。
 専守防衛は基本的に国土が戦場になることを想定しているいわゆる「籠城戦」的な戦略ですが、これが成功するためには「強い国民の意思」「堅固な守りの体制」「十分な兵糧・弾薬・人員」「国土の縦深性」「味方来援の確実性」の5つの要素が必要となります(野口裕之氏の所論による)。専守防衛に徹するなら、この確保に全力を注がなければならないのであって、ただひたすらにこれを唱えていればよいというものではありません。
 「決して他国の脅威とならない」とのフレーズもよく使われますが、脅威とは意図と能力の掛け算の積なのであって、決して他国を侵略しないという国民の強い意志があればその積は零なのであり、能力向上を怠ってよいことには決してなりません。

 14日日曜日に訪問した福岡県うきは市の取り組みには、とても勇気づけられました。他の地域からうきは市に移住した方々が「本当にここはよいまちだ」と口々に言われていた姿がとても印象的で、RESAS(リーサス)システム(地域経済分析システム)を率先して活用してこられた高木典雄市長をはじめとする皆様の真摯な姿勢に心から敬意を表します。
 敬愛する岡山県真庭市の太田昇市長が再選されました。27年の合計特殊出生率が全国トップレベルの2.21に達するなど確実に成果をあげておられます。市長は「まだ緒についた段階」と言っておられますが、全国各地で着実に地方創生を実践しておられる市町村長さんにお会いできることはとても嬉しいことです。

 週末は、20日土曜日が公益社団法人オイスカ(The Organization for Industrial, Spiritual and Cultural Advancement)「名取市民の森平成29年度植樹祭 海岸林再生プロジェクト10か年計画」開会式でオイスカ活動促進議員連盟会長として挨拶、植樹(午前9時・宮城県名取市市有林)、その後徳島県市町村長との意見交換会(午後4時・徳島グランヴィリオホテル)、福山守衆議院議員地方創生フォーラムにて講演(午後5時・同)、祝賀懇親会(午後6時・同)。
 21日日曜日は自民党埼玉県衆議院第12選挙区支部大会にて講演(午後4時・熊谷流通センター組合会館)、同懇親会(午後5時半・熊谷市内)、という日程です。

 5月も後半となりました。時々爽やかな初夏の日和となり、ほんのつかの間の楽しさを感じることもあった一週間でした。
 もうすぐ梅雨入り、荒井由実の「雨の街を」(1973年)が似合う季節となりますね。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年5月12日 (金)

加憲案など


 石破 茂 です。
 5月3日の憲法記念日に、民間団体が主催する憲法改正フォーラムにおいて安倍総裁が「憲法第9条に新たに第3項を加えて自衛隊の存在を憲法上明確にしたい」旨発言し、同趣旨は当日の読売新聞朝刊にもインタビューに答える形で表明されました。
 このようなご発言は本来、3月5日に開催された自民党大会において自民党総裁として表明して頂ければもっと良かったと思いますし、一民間紙ではなく党の機関紙である「自由民主」に掲載していただければ良かったと思います。
 
 憲法改正、なかでも第9条に関する議論が遅々として進まないのは、肝心の自民党内における意思統一が十分になされていないことも大きな原因だと考えています。憲法改正が立党の原点であり党是でもある自民党においては、長い議論を経て平成17年に「新憲法改正草案」を取りまとめ、更に手を加えて野党時代の平成24年に「日本国憲法改正草案」を決定しているのであり、あくまでもこれが議論のベースとなります。
 もちろんこれは完全なものではありませんし、修正の余地も多分にあると私自身も思いますが、まずは憲法改正を発議する国会を構成する自民党の国会議員全員がこれを正確に理解し、改めるべきは改めて党議決定し、他党の理解を求め、国民投票を行う国民に説明できるまでにならなくて、憲法改正が出来るとは思えません。我が国の最高法規である憲法についての議論を疎かにする政党は、国家の将来について真摯であるとは言えません。

 かつて自民党においては、多くの課題を巡って侃侃諤々たる議論がありました。まだ米価が政府決定であった頃は幾晩も徹夜で議論したものでしたし、湾岸戦争勃発時に日本国がなすべき活動についても、小選挙区制導入を柱とする政治改革についても、賛成・反対、様々な立場から多くの議員が参加して大激論が交わされ、議論に負けないように必死で勉強し、それが党の活力であったように思います。
 今の自民党は、残念ながらその雰囲気が薄れてしまった気がします。党大会・両院議員総会に次ぐ、通常時の最高意思決定機関である総務会においてすら、「今日は石破総務が発言しなかったので早く終わってよかった」(総務会メンバーの発言。5月10日付毎日新聞報道による)というように、議論そのものを敬遠する空気が広がっている気がします。

 20年以上前の政治改革論議の際、「小選挙区にして党中央に権限が集中すれば、議員たちは党幹部の顔色を窺い、発言しなくなる」との指摘を受けて必死に反論したものですが、小選挙区制を採用している国すべてがそうなのではありません。

 「仮に自民党内がまとまっても、それだけでは衆・参両院それぞれにおいて総議員の3分の2の賛成は得られない。政治は現実であり、結果を得ることこそが大事なのだから、最も多数の賛成が得られる案として、現行憲法第9条第1項と第2項をそのまま残し、自衛隊の存在のみを3項に加えてはどうか」という考え方であるとせば、第3項として「日本国の独立を守り、地域ならびに国際社会の平和の維持に寄与するため、陸・海・空自衛隊を保持する」と規定するのが最も現実的な案のようにも思われますが、そうであったとしても第1項、第2項との論理的整合性をどう確保するかに解を出さなくてはなりません。

日本国憲法第9条第1項
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
*国権の発動たる戦争:最後通牒を発し宣戦布告を行うことによって開始される正規の戦争のこと。国連憲章は自衛権の行使と集団安全保障による以外の一切の武力行使を禁じているので、今日的な意味は乏しい。
*武力による威嚇又は武力の行使:最後通牒も宣戦布告も伴わないが、事実上行われる戦争のこと。
*国際紛争を解決する手段としては:侵略のための武力行使は認められないが、自衛のための武力行使は認められる、との意味。

同第2項
「前項(第1項)の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」
*陸海空軍その他の戦力:自衛のための必要最小限度を超えるもの。
*国の交戦権:「戦争をする権利」ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称(例えば人を殺傷し物を破壊しても殺人罪・傷害罪・器物損壊罪に問われない、正規の交戦者は捕虜となる資格を持つ、など)。自衛のための必要最小限度の範囲内のものは認められる。

 政府見解を注意書きしましたが、これを外して文言のみを素直に読めば、第1項で自衛のための武力行使は認められているものの(このような書き方は他国の憲法にも例がみられます)、第2項において実力としての軍は保有しないのだから、他国から侵略を受けた際は国民一人一人が、捕虜としての待遇も受けられず、惨殺される覚悟で戦う他はない、ということになります。
 憲法前文で「日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼してわれらの安全と生存を保持しようと決意した」ことになっているのですから、信頼が裏切られたらそうなる他はないということなのですが、それではいくら何でも酷かろう、ということで衆議院憲法改正特別委員長であった芦田均が「前項の目的を達するため」という「芦田修正」を加え、第66条に文民条項も付け加えて、将来的に実力組織(陸海空軍)を保有する余地を持たせた、というのが歴史的経緯として伝えられています。
 しかし、吉田茂総理はこれに全く言及せず、安倍総理も「政府として芦田修正の立場は採らない」旨明言し、自衛権は国家固有の権利であるとしています。
 吉田総理は、将来的に全面改正をすることを念頭に、中途半端な文言を付け加えるような対応を忌避したのではないかと推測されますが、その立場を維持する限り、第2項をそのままにして第3項に自衛隊の存在を明文化すれば論理的整合性を欠くことになり、今の矛盾を憲法で固定化してしまうことにもなりかねません。

 いつも申し上げることですが、日本国憲法が作られた時、連合国の占領下にあった日本国は国家主権を持たず、独立国家ではありませんでした。従って「国の独立を守る」ことを主たる任務とする軍隊の存在が規定されていなかったことは極めて自明のことなのであり、サンフランシスコ条約発効により独立を果たし、国家主権を回復したからには、「軍」の存在を明確に規定するために、論理的整合性をもたせて前文や第9条の改正を行うことは理の当然です。これは右とか左とかいった立場の相違などとは全く関係がないはずです。
 このような経緯を丁寧に説明して、それでもなお理解が得られなければどうしようもありませんが、最初から「どうせわかるはずがない、できるはずがない」と決めてかかってはならないのではないでしょうか。

 天皇陛下のご譲位についても、この19日にも閣議決定がなされると報道されています。世論調査によって国民の7割近くが「今上陛下ご一代限りではなく、恒久的な制度とすべきだ」と考えていることとどのように整合しているのか、これを明らかにする責任が自民党にはあるはずですが、本日午後2時より急遽開催された自民党の会議において、政府は私の問いに答える形で、衆参正副議長による議論の取りまとめにおいて示された「このような法形式をとることにより…これが先例となって、将来の天皇の退位の際の考慮事情としても機能し得る」との文言が生きていることを言明しました。この趣旨を来週23日の総務会で確認するとともに、法案審議における議論も注視していきたいと思います。

 9日火曜日に開催した政策集団水月会の講演とパーティは、当日同時刻に衆議院法務委員長解任決議案を取り扱う本会議が開催されるなどの突発事態のために綱渡り的な運営になったものの、おかげさまで2200名様ものご参加を頂いて、なんとか無事に終えることができました。誠に有り難うございました。相変わらず報道は政局的な見方しかしてくれませんが、時節柄致し方ないのでしょうね。

 週末は13日土曜日が「石﨑とおる衆議院議員パパママこども会」(午前11時・新潟ジョイアミーア)、自民党衆議院新潟4区支部「党勢拡大 地方創生を語る会」にて講演・懇親会(午後1時・ホテルオークラ新潟)、帆苅謙治新潟県議会議員在職30周年記念講演会で講演・祝賀会(午後3時・ANAクラウンプラザ新潟)。
 14日日曜日は道の駅うきは視察(午後2時・福岡県うきは市)、うきはビジネスカフェ視察(午後3時・同)、日本青年会議所九州地区福岡ブロック協議会第45回大会で講演(午後4時20分・うきは市文化会館)、という日程です。

 今週は、まるで夏のような天候の日々となりました。皆様ご自愛の上、お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年4月28日 (金)

言論の自由など

 石破 茂 です。
 経産政務官の辞任・離党に続き、復興大臣の失言・辞任という事態で今週も国会は変則的な運営となりました。
 私自身、閣僚や党役員の時、少なくとも二回、失言・撤回・陳謝という失態を演じており、偉そうに他人様のことを批判できる立場にはおりませんが、同じことを言っても一般人とそれなりの責任ある立場にある者は受け止められ方が全く異なるのであり、マスコミを批判してもどうなるものでもありません。
 全体ではなく片言隻句こそが批判の対象となるのであって、それを十分承知の上で、どこを切り取られて報道されてもいいように注意しなければならないということなのだと思います。どれほど悪意に満ちた報道であっても、報道があってこその民主主義なのだと割り切る他はありません。
 本来は「健全な」報道があってこそ、と言いたくもなりますが、「健全」とは何か、明確な解はありません。立法・司法・行政間のように相互牽制に基づくチェック機能が働かない第四の権力であるマスコミ各位には、それだけの見識と矜持を期待したいものです。

 同様に、誤解や曲解に基づく批判にはきちんと反論すべきであって、黙殺や泣き寝入りはすべきではありませんが、ためにする批判や誹謗中傷、罵詈雑言に対しては対応すればするほど相手の術中に嵌るという面もあります。ゆえに「言論の自由」とはとても困難なテーマですが、報道が権力に迎合することこそが最も恐ろしい結果を招くのだと思っております。国際NGO「国境なき記者団」によれば我が国の報道の自由度は対象180ヶ国中72位、G7の中では最下位なのだそうで、評価の基準についての議論はあるものの、権力側も、報道の側も、これを真摯に受け止める必要がありそうです。

 内閣や党の支持率がそう大きく下がらないのは、その実績もさることながら、北朝鮮の動向などを強く意識した国民の大多数が「やはり野党にこの国の安全を任せるわけにはいかない」と感じていることも一因でしょう。
 民主党政権時代の安全保障体制は、鳩山・菅政権では総理ご自身が門外漢でしたし、野田政権では総理の見識は前二者に比べれば遥かに優れてはいたものの、一川・田中両防衛大臣は目も当てられない有り様でした。閣僚をはじめとする枢要ポストの人選は、当選年次や年齢のみならず、その分野の政策や担当省庁の内情に通暁した人を起用するのも国家・国民のためというものでしょう。

 明日から連休期間に入りますが、28日は自民党長崎県連長崎市第8選挙区支部での講演(午後6時半・ホテルニュー長崎)。
 29日土曜日は「激論!クロスファイア」出演(午前10時・BS朝日・収録)、ユースデモクラシー「デジタル憲法フォーラム」にて講演と質疑。
 30日日曜日は鳥取県調理師連合会「惣和会」発会式(正午・倉吉シティホテル)、自民党三朝町支部総会にて講演(午後1時半・プランナールみささ)。
 3日憲法記念日はテレビ大阪「わざわざ言うテレビ」収録(午後5時・都内)、「プライムニュース」出演(午後8時・BSフジ)。
 7日日曜日は宮城県気仙沼市の漁業に関するヒアリング、「日本と気仙沼の水産を考える会」で講演、その後のレセプション(午後3時半~・南三陸ホテル観洋)、水産実務指導者との懇談会(午後7時半・気仙沼市内)、という日程です。
 
 5月3日憲法記念日の「プライムニュース」では憲法について共産党の小池晃書記局長と討論の予定です。小池議員とは委員会やテレビで何度か議論したことはありますが、このような形で討論するのは初めてです。
 防衛庁長官や防衛大臣在任中、共産党の質問に対しては最も時間を割き、機関誌「前衛」や「しんぶん赤旗」などを丹念に読みました。共産党は我々とは思想や立場が全く異なりますが、理論的には一貫し、精緻なものがあるのでいつも手強い相手でした。良い機会なので、きちんと準備して臨みたいと思っています。

 閣僚でもなく、党三役でもなく、海外出張の予定もない連休は何年振りでしょう。読みたかった本や論文を読み、ここのところ不調が続いた体調管理にも努めたいと思っています。
 この時期の議員の海外出張は物見遊山的と批判されますが、閣僚の時も党三役の時もすべて機中泊、一日の会議や会談が10件近くという超過密スケジュールでした。真面目に務めている議員が多い中、一部の者のためにすべてがそう見られてしまうのは残念なことです。
 まだ当選一・二回生の頃、挨拶廻りや地区の会合に出かける前の早朝に自分で運転して、初夏の山陰海岸の景色を楽しんでいた頃が懐かしく思い出されます。
 
 お休みの方、この期間もお仕事の方、どうか皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年4月21日 (金)

引き続き朝鮮半島情勢など

 石破 茂 です。
 半島情勢が緊迫しつつあるため、このテーマでのテレビ出演が増えています。毎回違う話も出来ないので、番組ごとに少しずつ表現を変えているのですが、安全保障問題を少しでもわかりやすく話すのはなかなか難しいものです。
 米国の発するメッセージは、北朝鮮に向けてというより、北朝鮮を緩衝地帯として維持しておきたい中国に対して向けられたものであることは言うまでもありません。
 北朝鮮が戦闘状態になれば、中朝同盟の一方の当事国である中国は関わり合いを持たざるを得ないでしょうし、北朝鮮難民が大量に流入して朝鮮民族独立行動などを起こされてはたまらない。北朝鮮崩壊後、米国の影響下にある統一朝鮮が誕生し、それと直接国境を接する事態になるのも避けたい。そのような思惑で中国が北朝鮮を支えている間に、時間は北朝鮮に有利に働き、とうとう事態はここまで来てしまったのだから、中国が北朝鮮の体制を変更する責任を負うべきであるし、中国がそれをやらないのなら、アメリカが実力を行使してでも体制を変更する。これはそれなりに論理の通ったものであり、北朝鮮を中国の影響下にある「よりましな体制とする」ことをも許容する可能性を含むものと考えるべきでしょう。
 このことは随分と以前からアメリカの当局者たちに対して私が申し上げてきたことではあるのですが、当時彼らはあまり芳しい反応を示しませんでした。
 日本としても、日米同盟の範囲内で圧力をかけるとともに、万が一の事態で被害が及ばないためのミサイル防衛や国民避難・保護、我が国に未だ潜伏していると思われる北朝鮮の工作員による破壊活動の未然防止、難民対策等々を怠りなく講じておくことは当然です。日豪2プラス2で来日中のオーストラリアのビショップ外相、ペイン国防相(どちらも女性)との昨朝の意見交換会でも、この点は意見が一致いたしました。

 先日発売となった拙著「日本列島創生論 地方は国家の希望なり」(新潮新書)はおかげさまで2刷となりました。お買い上げいただいた方、お読み頂いた方、誠に有り難うございます。ご指摘やご批判を頂ければ幸いです。

 週末は、22日土曜日が八頭町立八頭中学校国会見学で挨拶(午前9時・国会内)、富山県総合デザインセンター訪問(午後1時・富山県高岡市)、(株)能作創業100年記念ならびに新社屋竣工式典・工場見学・懇親会(午後1時半・同社・富山県高岡市)、ネット配信番組「みのもんたのよるバズ!」出演(午後9時・テレビ朝日。「朝ズバ!」ではなく「よるバズ!」です)。
 23日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、「ビートたけしのTVタックル」出演(正午・テレビ朝日系列・収録)、鳥取市立鳥取東中学校国会見学(午後3時・国会内)という比較的余裕のある日程で、有り難いことです。
 24日午後11時15分からのテレビ朝日系列「橋下×羽鳥の番組」にも出演予定です。
 
 毎年のことですが、4月・5月の連休前後は、国会見学のシーズンでもあります。私たちが中学生の頃はバスで京阪神方面に行くのが定番でしたが、今は飛行機で東京というのが主流のようです。世の中随分と変わったのですね。
 初当選以来、できるだけ事務所のスタッフや国会職員に任せることなく自分で挨拶するように心がけています。私自身政治家の家に育ちましたが、父親以外の国会議員を直に見ることは極めて稀でした。中学生たちが国会の仕組みや役割、日本や地域の課題などを直接議員本人から聞くことには、政治を身近に感じる観点からも意味があることと思っています。
 
 都心は風の強い日が多かった1週間でした。4月も下旬、皆様お元気でお過ごしくださいませ。
 

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2017年4月14日 (金)

朝鮮半島情勢、東浜駅など

 石破 茂 です。
 朝鮮半島情勢がにわかに緊迫の度を高めています。懲罰的・報復的抑止力が十分に機能しない、想像を絶する独裁体制の国相手なのですから、予想もしない展開となることを覚悟しなくてはなりませんし、想像力の限りを尽くしてあらゆる事態に対応できる体制を構築しておくことが政府の国民に対する責任です。
 ミサイル防衛の実効性向上、在外邦人退避、日本国内におけるテロ対応、武装難民を含むかもしれない流入難民対策等々、法律・装備・人員・運用すべての面にわたって可能な限りの手立てを尽くすことは当然です。
 あらゆる事態を想定し、心配して心配して対応を考え、結果として「ああ何もなくてよかった」と言えることが危機管理の基本であることを改めて痛感しています。

 イオンの岡田元也社長が取扱商品の値下げにあたって「デフレ脱却はイリュージョン(幻想)だった」と述べています。私は必ずしもそうは思いませんが、物価上昇それ自体を政策目標に掲げることにはある程度の違和感があることもまた事実であり、むしろ賃金の上昇を政策目標に掲げるべきではないかと思っています。社会主義国ではないので政府が命じて賃金が上がるものでもありませんし、政府・与党として経済界に賃金の上昇を要請し、それなりの成果は得ていますが、可処分所得の増大、生産性の向上のための諸政策こそが重要であると考えます。

 12日水曜日、2時間だけ地元に帰り、6月17日より運行を開始するJR西日本のクルーズトレイン「トワイライトエキスプレス瑞風」の停車駅となる山陰本線東浜駅のリニューアルオープンと旧保育園を改装したレストラン「アルマーレ(イタリア語で海浜の意)」のお披露目に参加してまいりました。
 サプライズの形で城崎方面から「瑞風」の車両が入ってきて、出席した人は大喜びでしたし、帰京の飛行機の時間が迫っていたので試食会には参加は出来ませんでしたが、イタリア製の石窯を使って新鮮な海山の幸を焼き上げるイタリアンレストランも、日本海の絶景を臨む最高のロケーションと相俟ってとても期待が出来そうに思いました。
 東浜駅は、私にとっての鉄道の原風景の一つであり、幼稚園児から高校生まで、ひと夏を過ごしたこの地域がとても賑やかだった往時が偲ばれて、感慨深いものがありました。一昨年だったか、交通新聞社から依頼されて小型時刻表に載せた雑文の末尾の文章は東浜駅での思い出を記したものです。

 先週もお知らせしましたが、8日土曜日に岐阜県飛騨市で行われた「おくひだ1号」の復活運転と日本ロストライン協議会の設立総会は期待以上に素晴らしいものでした。あいにくの空模様にもかかわらず、のべ5千人を超える参加者が集まり、10年ぶりに列車が走るという感動を共有しました。尽力されたNP0法人神岡・街づくりネットワークの鈴木進悟理事長や都竹飛騨市長をはじめとする皆様に心より敬意を表します。

 明日15日に久しぶりの新著となる「日本列島創生論 地方は国家の希望なり」(新潮新書)が発売になります。2年間の地方創生担当大臣在任中に感じた思いを記したものです。マスコミは「政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の『日本列島改造論』にあやかった題名の本を出版することにより総裁選の支持拡大を狙ったもの」というような、相変わらず政局に絡めた取り上げ方しかしていませんが、大臣を退任した際、在任中に学んだことや新たになった自分の考えを明らかにし、世の批判を仰ぐのも政治に携わる者の大切な務めだと思っています。
 自著のことで誠に恐縮ですが、お目をお通し頂ければ幸いです。

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 週末から週明けにかけては、15日土曜日に自民党とちぎ未来塾第8期開講式で講演(正午・ホテルニューイタヤ・栃木県宇都宮市)、自民党愛知県連日進市支部にて講演(午後5時半・日清市民会館)、日進市支部の方々との夕食懇談会(午後6時・日進市内)。
 16日日曜日は自民党鳥取県連常任総務会(午前11時・鳥取県連)、平成29年さつき会(後援会女性部)春の懇親会(午後1時・ホテルニューオータニ鳥取)ならびに鳥取市商工会合併10周年記念講演会(午後4時・同)にて講演、どんどろけの会(勝手連的支援団体)主催「政治生活30年を祝う会」(午後6時・ホテルモナーク鳥取)。
 17日月曜日は「大竹まことゴールデンラジオ」出演(午後2時25分・文化放送)、自民党茨城県連県政懇談パーティ(午後6時・水戸プラザホテル)、という日程です。
 花冷えが続いていた都心にもようやく暖かさが戻ってきました。
 皆様お元気でお過ごしくださいませ。

追記

 今年がJR発足30年ということもあり、最近鉄道に関する取材を多く受けますが、本文で書きました小型時刻表(交通新聞社刊)に載せた雑文は以下のとおりです。
              
 わが思い出の列車
 
 この原稿の依頼を受けた時、真っ先に頭に浮かんだのはかつて山陰線のクイーンであった「特急まつかぜ」と「特急出雲」であった。昭和40年5月号の時刻表を見ると、山陰線を走る特急は「まつかぜ」のみで(浜田・新大阪間の「特急やくも」の運行は同年10月から)、京都・博多間13時間余のロングラン、食堂車を含む堂々13両編成の颯爽たる姿はまさしく「特別な急行」であり、我々子供たちにとっての憧れの存在であった。その姿を見るだけでとても幸せな気持ちになったものだし、数年に一度、乗る機会を得た時は天にも昇る心地であった。
 山陰と東京を直通で結ぶ唯一の列車であった「出雲」は昭和47年春のダイヤ改正で急行から特急に格上げされた。九州路線からの転用ではあったものの、あの優美な20系車両が鳥取駅に滑り込んできたのを見た時、山陰線に本当にブルートレインが走ることがにわかには信じられなかった。あの時の驚きと感動を私は今も忘れない。その年高校進学で上京したものの、東京の雰囲気にどうしても馴染めず故郷が懐かしくてたまらなくなった時、東京駅の東海道線ホームに昇って発車前の「出雲」から聞こえてくる山陰・鳥取の言葉に懸命に耳を傾けたものだった。「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」、啄木の歌をまさしく地で行く心境であった。
 昭和61年、衆院議員になって以来、ブルートレイン「出雲」には、平成18年3月のダイヤ改正で廃止されるまで、恐らく最低月に4往復8回、総計1000回以上は乗ったと思う。時には4晩連続で乗ることもあったが、それが少しも苦にならなかった。あの10時間余りの「自分だけの時間」にどれほど救われたことか。好きな本や必要な資料を読み、好みの酒や肴を飲みかつ食し、ウォークマンや個室寝台備え付けのVHS再生機(両者とも今は絶滅状態)で音楽や映画を楽しむひとときは私にとって至福で珠玉の時間であった。「出雲」車中での気分転換がなければ、衆院議員を続けることは出来なかったかもしれないし、今の自分もなかったかもしれない。
 時は流れ、「まつかぜ」は鳥取・益田間を結ぶ「スーパーまつかぜ」として、「出雲」は伯備線経由の「サンライズ出雲」としてその名を残して運行されているが、機能性重視のビジネス列車の性格が強い。私にとっての鉄道は単なる「移動」ではなく非日常性をその本質とする「旅」なのだが、両者とも早くて快適ではあるものの、残念ながらかつての風格や旅情はほとんど感じられない。
 抜けるような青空が拡がり、夏草が生い茂り、蝉の大合唱が聞こえる山陰線の鄙びた無人駅。通過待ちをするSL牽引の普通列車。ホームに降りて待つ私たち子供の前を轟音と共に通過する特急「まつかぜ」。過ぎ去った後にはただ蝉の鳴き声だけが聞こえている・・・あれから半世紀近く。夏が巡ってくるたびにふと思い出されるこの光景が私にとっての鉄道の原風景なのである。


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2017年4月 7日 (金)

北朝鮮ミサイル発射など

 石破 茂 です。
 初の道徳教科書の検定において、東京書籍の小学一年生用教科書にある「にちようびのさんぽみち」と題する読み物に登場する「パン屋さん」が「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着を持つという点が足りない」との指摘を受けて「和菓子屋さん」に差し替えられたことが報じられています。なんで和菓子屋さんなら良くてパン屋さんが駄目なのか、どうにも理解が出来ません。
 検定に携わる委員や文科官僚たちがなんらかの意向を「忖度」したのか、彼ら自身もそのような考えを持っているのか不明ですが、違和感を禁じ得ません。戦時中に英語を敵性語として排除し、野球のストライクを「よし」、ボールを「駄目」と言い換えていたことを連想してしまうのは私だけでしょうか。

 東京都議会議員選挙を6月に控え、自民党としては各政策集団(派閥)に対応を指示するなど、党本部として主体的に取り組む体制のようです。まずは各派閥としてそれぞれの所属議員がいる選挙区における都議選候補者の必勝を期すのが順序というものであり、我々水月会としても4人の所属メンバーがいる選挙区での対応を考えたいと思います。
 4年前、幹事長として携わった際も党本部として可能な限り取り組み、民主党に対する大逆風もあって候補者全員当選という成果を得ましたが、今回は昨年の都知事選での敗北に加え、公明党との連携が困難との事情もあって状況が相当に異なります。選挙は追い風でない時にこそ真価が問われるのであり、任期中どれだけ地道な活動をしてきたかが重要です。

 「テロ等準備罪」の審議が昨日から始まりました。
 どうも論点がうまく噛みあっていないような気がしてならないのですが、重大テロから国民を守るとともに、その権利が不当に侵害されないために、捜査機関の恣意を排除し、「何が犯罪となり、何がならないのか」を明確にする罪刑法定主義が機能することを説明するのが最も重要であると考えますし、これこそが民主主義国家における立法府が果たすべき責任です。

 今週もまた北朝鮮によるミサイル発射がありました。北の体制は間もなく崩壊する、と20年以上も前から言われているにも関わらず依然として磐石なのは、皮肉なことに制裁を中途半端に強化するほどに指導者の権威が高まるからだ、とかねてから私は思っています。
 苦しくなるほど「党委員長様の恩寵」の価値は増し、「我々の生活が苦しいのは、米国をはじめとする諸外国が制裁を科しているからであり、制裁をやめさせるためには核とミサイルの開発が必要だ」との身勝手かつ倒錯した理屈がまかり通ることになります。制裁が中途半端なのは北朝鮮を緩衝地帯として維持したい中国の思惑と、民生用と称する物資の移動に抜け穴があるからであり、ここを突き詰めて議論しない限り解はありません。
朝鮮戦争はいまだ、国連軍(実質的には米国)・北朝鮮・中国の間で成立した休戦協定による「停戦状態」なのであって、戦争自体が終結しているわけではありませんし、米国と同盟関係を結んだ我が国も、北朝鮮から見れば明確な敵国として位置づけられているはずです。このリアルな認識を我々日本国民は持つ必要がありますし、それを説明するのが政府・与党の責任です。

 週末から週明けにかけては、8日土曜日が東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設見学(午前11時半・同所・岐阜県飛騨市神岡町)、飛騨市関係者との昼食会(午後1時・同町内)、旧神岡鉄道「おくひだ1号」走行イベント(午後2時・奥飛騨温泉口駅前)、「飛騨市ロストラインフェスティバルin神岡」で講演(午後4時・同町内・同)。
 9日日曜日は、益城復興市場屋台村訪問(午前10時20分・熊本県益城町)、原田五ヶ瀬町長・関係の方々との昼食会(正午・五ヶ瀬町町民センター・宮崎県五ヶ瀬町)、地方創生講演会にて講演(午後1時・同)、政策集団「水月会」宮崎セミナーにて講演・懇親会(午後5時・宮崎観光ホテル・宮崎県宮崎市)、宮崎経済界・宮崎大学の方々との懇談会(午後7時半・同)。
 10日月曜日は宮崎大学地域資源創成学部生との意見交換会(午前9時・宮崎大学)、産学・地域連携センター教員との意見交換会(午前10時半・同)、池ノ上学長・吉田学部長・学生との昼食懇談会(正午・同)という日程です。
 岐阜県神岡町で開催される、保存されていたディーゼルカー「おくひだ1号」が廃線である旧神岡鉄道を10年ぶりに走るという信じられないようなイベントには、鉄道ファンの一人としてワクワクするような思いで参加します。大学における地方創生への取り組みも着実に全国に拡がっており、とても嬉しく思っています。
 
 都心の桜も満開となりましたが、今週いっぱいで見ごろは終わってしまうようです。桜が散る時期には、「ささやかなこの人生」(唄 風 作詞・作曲 伊勢昭三 1976年)が一番似合うように思います。もう40年も前の作品ですが、今も旧さを感じさせない名曲です。
 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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2017年3月31日 (金)

抑止力など

 石破 茂 です。
 森友事案について世の中の騒ぎは沈静化しつつあるように見えますが、スキャンダルめいた話はともかくとして、行政が適切に執行されたかについては依然として釈然としないままです。コメント欄のご投稿を拝見していると、本当にそうだなと思わされるものが多くありますが、内閣支持率がそう大きくは下落していないにも拘らず、経緯についての政府の説明に納得していない人が国民の7~8割に達しているという事実には注意が必要です。きちんと説明し、今後改めるべき点は改めると率直に言った方が国民の理解と共感が広く得られるように思います。

 国連核兵器禁止条約の制定交渉に我が国は参加しないこととなりました。この交渉に米・露・英・仏・中の核保有国(勿論すべて安保理常任理事国)が参加していないので、日本が参加しても保有国・非保有国の対立を深めることにしかならない、というのがその理由と言われています。
 一方、自民党安全保障調査会・国防部会においては「敵基地に対する反撃能力」を我が国としても保有すべく、政府において検討し、成案を早急に得るよう求める提言をまとめました。
 報復的・懲罰的抑止力(攻撃を上回る報復を受けることが予測されるため、相手方が攻撃を思いとどまる、という抑止力)を持たない我が国としては、これを米国の拡大抑止に依存し、拒否的抑止力(攻撃を加えても所期の目的が達せられないことが予想されるため攻撃を思いとどまる、という抑止力)としてのミサイル防衛システムの実効性向上に努力しているのですが、飽和攻撃(多数の弾道ミサイルの飛来など防御側の処理能力を超える攻撃)を受けた場合など、対応しきれない事態も現状では当然想定されるのであって、あくまで自衛権行使の範囲内で相手の攻撃能力を奪うことは法理論上も当然許容されるものです。

 手段としてはトマホークなどの巡航ミサイルを保有することが考えられますが、バスやトラックを買ってくるのとはわけが違うのであって、米英の運用するこのシステムを我が国が取得できるのか、策源地の位置をどのように把握するのか等々、今後の課題は山積しています。
 防衛庁長官在任時に内々検討はしたのですが、具体化には至りませんでした。あれからもう15年が過ぎましたが、己の力不足を反省するが故に、今後の努力の必要性を強く感じています。

 核兵器禁止に反対する人はほとんどいないでしょうし、私も「核のない世界」を願っています。悲惨極まる広島や長崎の原爆資料館や当時の記録映像を見れば、そう思わない人などいないはずですが、問題はそこに至るプロセスをどうするか、核兵器の持つ絶大な懲罰的・報復的抑止力に代わる実効性ある拒否的抑止力をどのように構築するか、です。殉教的思想を持つテロ国家やテロリストに報復的抑止力は機能しない可能性が高いのであり、実効性ある拒否的抑止力の構築はなおさら必要と言わねばなりません。
 コメント欄でご紹介のあったローマ法王の「我々は核抑止力を乗り越える必要がある」との言葉は確かにそのとおりなのですが、どのようにして乗り越えるのか。我々の悩みは深いものですね。
 
 韓国は前大統領逮捕という事態に至りました。韓国では大統領の任期が一期五年に限られていることも、歴代大統領のほとんどがスキャンダルで終わることと無縁ではないのでしょう。
 大統領制と議院内閣制にはそれぞれ一長一短がありますが、国民感情が激しやすい国においては議院内閣制の方がよりリスクは低いのかも知れません。北朝鮮情勢が不穏である今の時期に、韓国がこのような情勢であることと、駐韓日本大使がいまだに帰任していないことには憂慮の念を持たざるを得ません。

 私は全く知らなかったのですが、「昨年最も読まれたWebマンガ」に選出された「四十七大戦」(泰文堂刊 一二三〈ひふみ〉作)という漫画があり、紹介して下さる方があってパラパラと読んでみました。
 帯には「都道府県擬人化 首都争奪戦バトル! 日本の首都鳥取に!?」、書き出しには「鳥取県。極東の島国日本の最果てに存在する世界でも類を見ない秘境である。不用意に足を踏み入れた者は不毛の砂漠に絡めとられ、生きては帰れないという」とあり、いくらなんでもあんまりだと思わずにはいられませんが、とにかく四十七都道府県それぞれにいる「ゆる神」様たちが首都争奪戦を繰り広げ、最後は鳥取県が日本の首都になるという奇想天外な物語のようです。相当にデフォルメされてはいるものの、各県の特色がよく描かれており、こういう地方を題材とした漫画が若い世代に多く読まれていることをとても興味深く思いました。

 週末は、日本製鋼所室蘭製作所訪問(4月1日土曜日 午前10時30分 北海道室蘭市茶津町)、ジビエ移動解体車見学(午前11時45分・中嶋神社)、自民党室蘭支部との昼食懇談会(正午・同)、自民党北海道9区支部室蘭地区政経セミナーで講演(午後1時・同・蓬莱殿エクセレントホール)。
 週明け3日月曜日は自民党沖縄第3区支部講演会にて講演(正午・ニューサンワ・沖縄県うるま市)、という日程です。北海道から沖縄まで、日本は広いですね…
 明日から4月、先週末から思いがけず寒の戻りとなっていた都心もようやく春めいてきました。
 季節の変わり目、皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年3月24日 (金)

G1サミットなど

 石破 茂 です。 
 23日木曜日に、参議院に引き続き衆議院予算委員会で籠池森友学園理事長に対する証人喚問が行われ、私も予算委員として現場で質疑を聞いておりました。
 誰が虚偽を述べているのか、証人が偽証罪にも問われる可能性のある証人喚問という場を自民党主導で設定したのですから、真実が明らかにされ、安倍総理、昭恵夫人、政府関係者が述べていることが正しいという確証を国民が持つように最大限努力するのが与党の務めでしょう。あまりにも当然のことであり、「政権の足を引っ張るのか」などと短絡的に反応するのは的外れとしか思えません。
 我々、立法府や行政府に籍を置く者は、常に納税者や消費者の立場を忘れてはなりません。今回国が負わないとした瑕疵担保責任(売買の目的物に通常の注意では発見できない欠陥がある場合に売主が負うべき賠償責任・民法561条以下)は消費者保護の観点を含むものですし、財政法は財産の共有者でもある国民や納税者の立場から「国の財産は適正な対価なくして譲渡や貸し付けをしてはならない」(第9条)と定めています。これらの趣旨からすれば、今回の一連の行政の対応は、違法ではないと思われますが、極めて異例であるようには感じます。

 21日春分の日に、久しぶりに参加したG1サミットのパネルディスカッションでは、安全保障分科会で神保謙・慶大教授、津村啓介・民進党衆院議員、小原凡司・東京財団研究員と、地方創生分科会では鈴木英敬・三重県知事、阿部守一・長野県知事、末松弥奈子・ツネイシホールディングス専務とご一緒させて頂きました。
 パネル自体はそう長い時間ではなかったのですが、核心的・本質的な議論が出来たように思います。基本的な知識を共有し、空想的ではなく現実的な議論が展開できる方々との時間はとても充実していて楽しいのですが、翻って国会は…我々は更なる努力が必要ですね。
 GIサミットの会場となったルスツリゾートは、東京ディズニーランド、ディズニーシー、ユニバーサルスタジオジャパンに次ぐリゾート施設なのだそうです。新千歳空港から車で一時間半もかかるのが難点のように思うのですが、リゾート地とは本来そういうものなのかも知れません。G1サミットは「日本版ダボス会議」を目指しているものですが、スイスのダボスがそうであるように、そう簡単には行けず帰れない地で開催し、日頃の仕事を離れて濃密な議論を行うことには大きな意義があると思います。

 今週の政策集団「水月会」勉強会は「医学の勝利が国家を滅ぼす」(新潮新書)の著者である國頭英夫・日本赤十字社医療センター化学療法科部長の「サトゥルヌス(古代ローマの農耕神。英語ではサターン。ゴヤの絵画『我が子を喰らうサトゥルヌス』は有名)」と題する講演で、とても刺激と示唆に満ちたものでした。この本は是非ご一読をお勧め致しますし、皆様のご意見をお寄せ頂ければ幸いです。
 國頭部長は本書を「里見清一」のペンネームで著しておられますが、これは山崎豊子氏の「白い巨塔」で描かれている良心的な医師・里見脩二に因むものだそうです。この小説も実に考えさせられる内容の深いものでした。

 週末は、25日土曜日が自民党石川県連珠洲支部政経セミナー(午前11時・珠洲商工会館)ならびに自民党輪島支部能登半島地震復興10周年講演会(午後2時・輪島文化会館)にて講演。
 26日日曜日は「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)、地域交流館みほふれ愛プラザ施設見学、同竣工式にて挨拶(午前9時半・茨城県稲敷郡美浦村)、自民党兵庫県連宍粟市支部・春名哲夫県議会議員主催の講演会にて講演(午後4時・宍粟防災センター)、竜友会OB会懇親会(午後7時・鳥取市内)という日程です。
 
 東京都心は全国で一番早い桜の開花宣言となりました(標準木は靖国神社のソメイヨシノ)。満開となるのは4月1日とかで、まだとてもそんな感じではありませんが、もうしばらくするとお花見の時期となるのですね。
 まだ当選一、二回の頃、当時住んでいた九段議員宿舎近くの千鳥ヶ淵に夜桜見物に行った時のことが懐かしく思い出されます。毎年この季節になると荒井由実の「花紀行」(1975年)や麗美の「花びらの舞う坂道」(作詞・田口 俊 作曲・荒井由実 1985年)を無性に聴きたくなります。若い世代の方はご存じないかも知れませんが、とても素敵な作品です。
 来週末はもう4月、皆様お元気でお過ごしくださいませ。

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2017年3月17日 (金)

森友事案など

 石破 茂 です。
 奇怪な「森友事案(事件ではなく)」で今週も国会は混乱気味でした。火曜日の衆議院本会議における民進党議員の質問などを聞いていると、ただ感情的に絶叫するばかりで、あれでは議論は全く深まりませんし、本来の議題である物品役務相互提供協定(ACSA)には付け足し程度に触れるだけで、時間のほとんどを森友事案に費やしていたことも不見識と言わざるを得ません。
 
 本案件について、国民のほとんどは「何が何だかよく理解出来ない」というのが実感のように思われます。
 政府としては「何故今回、国は瑕疵担保責任を負わなかったのか」「ゴミの除却費用の算定をどのように行ったのか」「森友学園側が除却を適正に行ったか否かの検証はどのように行われるのか」などについてわかるように説明しなくてはならないでしょう。
 政府が「委員会ではきちんと説明している」といくら言っても、どんなに説明しても、理解が得られなくては疑問が増すばかりで、説明していないのと同じことになってしまいます。私自身、国民に対して得心のいく説明をしたいと思っているのですが、現時点でその域には達しておりません。与党議員がこんなことではいけないと自戒を込めて思っています。
 政治家の関与があったかも大事ですが、まずは一つ一つの事実の解明が優先されるべきです。政府を支える立場の与党こそがその責を負わなくてはならず、「自民党は逃げている」という印象を国民に持たれることは断じて避けなくてはなりません。
 来週23日木曜日には、衆・参の予算委員会において籠池氏の証人喚問が行われる予定です。場合によっては同氏が偽証罪にも問われる極めて効果のあるものとは思いますが、何をもってして「偽証した」と告発し得るのか、議院証言法のコンメンタールや判例の解説をよく読んでみなくてはなりません。

  私は籠池氏なる人に会ったこともありませんので論評する立場にはありませんが、私が覚える違和感の最大の所以(ゆえん)は、彼ならびに親族の不可思議な言動ではなく、「このような人が保守を名乗るのか」という一点に尽きます。
 故・江藤淳氏は著作「保守とは何か」(文芸春秋刊・平成8年)の中で「保守主義というと、社会主義、あるいは共産主義という主義があるように、保守主義という一つのイデオロギーがあたかも存在するかのように聞こえます。しかし、保守主義にイデオロギーはありません。イデオロギーがない、これが実は保守主義の要諦なのです」と述べておられますが、そのとおりだと思います。この本は自社さ連立政権時代に書かれたものですが、今読んでも示唆に満ちています。
 イデオロギーがないが故に、保守主義は奥深くかつ内省的なものであり、反中国や反韓国を唱えることが保守なのではない、というのは先般も申し上げた通りです。

 自衛隊の日報問題も、事実の早急な解明が最優先であることは論を俟ちませんが、文民統制の名のもとに政治家や官僚たちが制服自衛官たちにあまりに高圧的な姿勢で臨むべきではありません。
 実力組織は単に権威や権力で統制は出来ないのであり、法律・装備・運用・人員について可能な限りの知識を持つとともに、自衛官や家族の皆さんの共感と信頼を得る努力を最大限にすべきです。
 私自身、在任中精一杯の努力はしましたが、足らざるところは極めて多かったと反省しております。
 しかし同時に、誰が大臣であろうとも国の独立と国民の生命・身体を守るため、全力でこれを支えるのが組織というものであって、仮に感情でこれを怠るようなことがあれば、それは国家国民に対する背信行為です。
 文民統制は統制する側もされる側も、常に強い自覚と責任を持たなくては機能しないものです。
 「警察は政府に隷属し、軍隊は国家に隷属するのであり、同じ実力組織でありながら警察に文民統制の概念が存在しないのはその故である」というような論に以前接したことがあります。この論をすべて肯定は出来ませんが、文民統制の本質を含んでいるようにも思ったことでした。

 3月11日に米子市で開催した自民党鳥取県連主催「憲法改正を考える県民集会」は島根県連のご協力も得て2000名を超える方々にお集まりを頂き、ひとまずの成功を収めることができました。開催に当たってご尽力くださった安田優子県連幹事長はじめ関係の皆様に心より感謝致します。
 自民党が本当に憲法改正を目指すのであれば、47都道府県連においてこのような会を開催し、所属国会議員がその思いを述べ、広く党員から意見を聴いて理解を広げるべきです。
 憲法について議論することは国のあり方そのものを考えることに繋がります。政治の側から積極的・能動的に動かなくては憲法改正の機運など高まることはあり得ません。それもしないままに「国民の関心が薄い」などと言うのはエクスキューズに過ぎません。

 第9条ばかりが取り沙汰されますが、第6章「司法」についても改正の必要性を強く感じます。総選挙の際に最高裁判所裁判官の国民審査が行われますが、一体どれだけの人がその名前と経歴、彼らがどのような裁判においていかなる立場を採ったのかを実際に知っているのでしょうか。圧倒的多数の人が何も知らないままに不信任の×印を付けることなく投票しているというのが実態ですが、これこそ形骸化の典型ではないでしょうか。
 自民党憲法改正草案では、国民審査の方法は憲法に定めず、法律でこれを決めることとしています。
 最高裁裁判官は内閣の任命によることとなっており(長官は天皇陛下のご認証を要する)、時の内閣の意向がどうしても反映されがちになるでしょう。三権分立をより実効あらしめる観点からも、審査の方法に加えて国会の関与についても議論し、より良いものとする点があるように思います。
 これらの憲法の議論につき、15日水曜日の水月会勉強会における門山宏哲代議士(比例南関東・千葉一区)の講演やその後の質疑はとても有意義なものでした。

 週末は、18日土曜日が「石破茂君を囲む会」にて講演、その後懇親会(午前11時・リーガロイヤルホテル大阪)。
 20日春分の日は第9回G1サミット第9部分科会A「日本の防衛政策 東シナ海・北朝鮮の脅威にどう対抗すべきか」、第10部全体会「地方創生 政府・自治体・企業の役割とは」にパネラーとして出席(午前8時~ ルスツリゾート北海道 北海道蛇田郡留寿都村)という日程です。
 党役員や閣僚在任中はG1サミットにはなかなか参加できなかったので、今回はとても久しぶりです。
 
 寒の戻りで、東京都心はとても寒い日が続きました。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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